焦りは禁物(柊 花蓮視点)
焦りは禁物(柊 花蓮視点)
4時間目に考えていた通り、昼放課も話しかけることすらできず、帰りのSTすら終わってしまい放課後になってしまった。
予定通りと言えばそうなんだけど、ここからどうするかが問題なんだよね……。
今なら帰ろうとしてる人帰ってる人がかなりいるからクラスの半分より多いかな?ぐらいしか居ないから、話しかけるタイミングとしては最適なんだけど、怖いよねぇ……。
いや、もうやるしか無いんだよ!
なんか今やらないとこのままグダグダ言ってやらなくなる気がするからね。
勉強でも趣味でもそうだけど、意外とやってみればできたりすることだって多いから!
いける!いけるんだよ!
「私ならできる、私ならできる……」
自分に言い聞かせるように呟いた。
……よし!自己暗示完了!行くぞ!
そして立ち上がった時にちょうど楓斗も立ち上がった。
お!ちょうどいいことに出口はこっち側だから来てくれるじゃん!
こっちから話しかけられるからちょうどいいね。
でもなんか、待つだけだと怖いから、こっちからも行くけどね。
よーし、話しかけちゃうぞ!
「「楓斗/柊さん!」」
「「え?」」
え?かぶった?
どういうこと?楓斗も私に話しかけようとしてたってことだよね?
つまり、私に何か言いたいことがあるって事?
……なにそれ、こっっっっっわぁ!
この前のことで「もう、君の癇癪に付き合わされるのは嫌だから、関わらないでくれ」みたいなこと言われたら私立ち直れるかわかんないよ!?!?
優しいからそんなこと言わないと思うけどね……?
そんなことを考えていると、楓斗の方から口を開いた。
「えっと、柊さんお先にどうぞ?」
譲ってくれるのね、だったらまだ私とお話してもいいと思えるレベルってこと?
でも、楓斗の用事を聞いて安心してから謝りたいな……。
「いやいや、楓斗なんか私に話したいことあるんでしょ?先いいよ?」
「いやいや、柊さんこそなんか用事あるんでしょ?こっちはそこまで時間のかかる用事じゃないから、お先にどうぞ」
時間のかかる用事じゃないならそっちでも良くない?……とも思ったけど、多分先に言わせてくれるのも楓斗の優しさなのかな?知らんけど。
楓斗の優しさに甘えて先に言わせてもらうことにする。
「…いい?じゃあ先言わせてもらうね?」
……なんか緊張してきた。
なんかここまで勢いで来れたけど、いざ言うとなると、「許してくれるかな?」とか、「元の関係に戻れるかな?」とか、「久しぶりに近くにいるけどなんかいい匂いする……」とか色々考えちゃって、喉まで来ている『ごめんなさい』の一言が声に出せない。
「えっと、じゃあ…言うね?」
「う、うん」
躊躇ってフリを入れるじゃないよ!
なんか楓斗が身構えちゃったじゃん!別に謝るだけなのにさ……
「えっと…その……」
モゴモゴしてる場合じゃない、そこまで一世一代の何かを言うってわけじゃないんだ!
そうだよ!謝るだけなんだ!楓斗に今から告白するわけじゃないんだから!
今こんなことでいえなくなってたら、告白する時なんてもっと無理になっちゃうから!
よし、いける!言うぞ!
「その、ごめんなさい!」
「……へ?」
よし、言えた!ちゃんと言えたよ!お母さん!私できた、やったよ…………って、なんか楓斗がすっごい驚いた顔してる……。
え、なに?私、酷いことして謝ることすらしないような女だと思われてた……?
泣くよ?
高校生にもなって赤ちゃんの夜泣きで慣れてる育児中のお母さんが逃げ出すレベルで泣くよ?
それから、驚いた顔のまま固まっている楓斗がだんだん焦った顔に変わり始めた。
なんだ、今日の楓斗はやけに百面相してるな……大丈夫かな?
それはそれとして、早くなんか言ってくれないかな……?怖いんだけど――
――と、考えていた時、楓斗が口を開いた。
「いやいやいや!謝るのはこっちだよ!ごめんなさい!」
……え?なんで?
「……え?なんで?謝るのはこっちだよ!」
あれ、なんか楓斗にされたっけ?
最近嫌だったことと言えば、学校の校門入ったとこで、よく分からんチャラそうな金髪の先輩?同級生?に絡まれて、執拗に連絡先かイン〇タ聞かれたことぐらいだけど……。
……あればくっっっっそウザかった。
なんか妙に必死だったし、話し方が取ってつけたようなチャラ系の話し方だったし。
私が入学式で金髪に染めてたから、仲間だと思われたのかな?嫌だなぁ。
あーゆーのがあるんだったら金髪に染めるんじゃなかったかな……?めんどくさいし、いつか髪がプリンみたいになるし、髪傷むしさ。
まぁ、楓斗がめちゃくちゃ褒めてくれたから戻さないけどね!
いや、そんなことより、楓斗だよ。
え〜なんか謝られることされたっけ?
いや、覚えてないな。
「いやいや!」
『マジかよ』みたいな顔されても、覚えてない物は覚えてないのよ。
「いやいやいや?」
とりあえず否定しておく。
「いやいやいやいや?」
……なんか面白くなってきたなw。
「いやいやいや…フフフ、アハハハ」
「だから、僕がwわるかったwからァァハハハ」
「何w言ってるのかw分からないぃぃァアハハ…」
………………
…………
……
長くなってしまったので、分けます