表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/92

7話 模擬戦

 1度深呼吸して、ホープに向かって走り出す。


 勢いに任せて突いてみたが、見事に避けられ、避けられた方に剣を思い切り振るが、平気な顔で弾かれる。


 何度も前後上下左右に振り、攻撃を繰り返すが一向に当たらない。


 それどころか全て避けられ、片手で捌かれている。反撃してくることも無くただただ受けるだけ。


 しかし不意に左から首筋目掛けて剣が飛んでくる。


「やばっ!?」

 咄嗟に身を屈ませ、ミラクル回避。


 間合いを取るべく後ろに飛ぶ。


「やばいめちゃ飛ぶ怖い怖い!?」

 空中で勝手に混乱するが、案外簡単に着地できた。


 流石異世界。身体能力は格段に向上している。


「おぉ今の避けるのか、やるねぇ!」

 嬉しそうに笑っているが、

「はぁ……はぁ……そうでも、ないですよ」

 避けれたのは偶然だ。


 自分の意思で動いていない、反射ってやつだ。


 正直死ぬかと思った。ってか実戦だったら硬直して実際に死んでたかもしれない。


 呼吸を整え、再び相手に向かって走り出そうとした瞬間、

「これならどうする?」

 突然ホープが目の前に現れ、突きをかましてくる。

「!?」

 反射的に首を傾げ体を屈め、急いで距離を取るため後ろに飛ぶ。


「やばい強すぎる怖すぎる……!」

 木の剣が迫ってくる恐怖がやばい。


 めちゃくちゃ痛そう。


 ホープとの戦いというより、恐怖との戦いになってきている。

「不意打ちするしかないよな……」


 幸い相手はタクマの実力を見極めるためもあってか、手を抜いてくれている。


 悪どい手口だが、その油断に付け込ませてもらう。


「よし!」

 高くジャンプし、剣を叩きつけるように振る。が、剣身に手を添えて防がれる。


 それと同時に剣から手を離し、思い切りタックルをかまし突き飛ばす。

「なっ!?」

 思わず声を上げるホープ。


 体制を崩した瞬間に、手放した剣を再び持ち、突きを狙う。

 当然そのまま突こうとしても防がれる。なので、目一杯手を伸ばした直後、握り手から手を離し、剣を押し出し、とにかく当てる。当てれば勝ちなんだ。


 2回不意を突いた意地の一矢。


 頼む、当たってくれ!





「降参……です」

 負けた。完敗だ。結局剣は打ち払われ、タクマは勢いのまま倒れ伏し、もう続ける元気が無くなった。

「戦意喪失しました」


「いやぁ〜!見事だよ!」

 笑いながら拍手を贈るホープに対して、

「あぃがとぅごだぃまふ……」


 うつ伏せに倒れ伏したままの状態でお礼を言う。2回不意を突いても勝てませんでした。


「いやぁ!健闘してたね!タクマ君!」

「こんなに出来るなんて思ってなかった」

 いつのまにか訓練所にいるコガネとマナも拍手を贈ってくれている。


「俺も驚いたよ、剣は力任せ勢い任せに振ってるだけだけど、攻撃は避けられるし、最後のやつなんて特に!本当に見事だったよ!」

 なんかすげーベタ褒めされているんだが?


「それでも、ホープには遠く及ばない。それに体力も全然ない」

「……」

 持ち上げた癖に突き落としてきやがった。


 というか冒険家なりたてのド新人とベテランを比べるのは酷な話じゃないか?


「でも、まぁ悪くない。期待の新人」

 コガネはあいもかわらず高揚はないが、褒めてはくれているっぽい。


「よし!ちょっと休憩したら依頼見に行くか!」

「だね!タクマ君は最初だし、出来る限り易しいもの選ばないとね!」

「別に……無理に……僕に合わせなくてもー」

 仰向けに寝転がったタクマが言いかけたところで、

「ダメだよ!最初から無理させるわけにはいかないよ!」

 頬を膨らませて怒るマナ。


「だな。いきなり危険な依頼を受けさせる訳にはいかない。本当は依頼も辞めておきたいところだけどね?」

 ホープは心配そうにタクマを見ている。

「でも、それはいけない。私達も仕事で冒険家をやっている」

 さらに続けるコガネ。

「ありがとう……ございます!」


 疲れはあまり取れていないが、ゆっくりと立ち上がり、身体をほぐす。


「そうだな……確かタクマが登録してる時、良さげな依頼を見た気がしたんだ」


 何かしてるとは思っていたが、隙間時間を活用する、出来る仕事人じゃないか。


「本当!じゃあ今日はそれでいいね!」

 即決するマナ。

「ダメ。依頼の内容見てないのに簡単に決めちゃダメ」

 即否定するコガネ。


「まぁ、とりあえず見に行くか。タクマの息も整ってきたし」

「うん!」

「うん」

「はい!」





 受付所に戻り、依頼を見にきた4人。


 依頼と言ったら四角く茶色い紙が掲示板に貼られているイメージだったが、当然裏切られた。


 タブレットにスライド式で内容が見える依頼書。めちゃ近未来。


 その依頼タブレットを開いて画面上に出てきた以来内容が、



《洞窟にオークが入っていくのが見えた。確かめてほしい》



 と書いてある。


 なんて漠然とした依頼内容なんだ!しかも洞窟にオークって。


「確かめて欲しい、って本当にいるんですか?」

 と受付人に聞くと、

「はい、いますよ」

 確信している様に答える受付人。


「ここに表示されている依頼は、皆様にお見せする前に1度、探査魔法で真偽を確かめます。偽りだった場合は破棄、真実だった場合は表示させて頂いています」

 丁寧に教えてくれる受付人。


 探査魔法がなんなのか気になるが、一旦スルーだ。


「この依頼の、“洞窟の中にオークがいる事”が確認出来ましたので、この依頼の主な目的は、討伐となっております」

 とさらに続ける受付人。


 納得した。まぁ、確かにそうか。タダでさえ貴重な冒険家に無駄足なんてさせたく無いか。


「オークって洞窟にいるイメージ無いんですけど……」

 受付人の女性に尋ねてみると、

「はい、本来なら洞窟にオークがいる事はありません。しかし、今洞窟内にはオークの子供がいます。子供を守る為に洞窟を利用していると思われます」

 とのことだ。


「他のも見てみたけど、この依頼が1番簡単かも」

 今見ているオークの依頼を指差して言うコガネ。

「だね!他のはタクマにはちょっときついかもだし?まぁ、これでも怪しいけどね」

 マナが続ける。


 オークの依頼を見ている間に他の依頼と比べてくれたらしい。他を見てみたい感は否めないけど有難い。


 でもこれでも怪しいって……。

 そんなにやばい依頼の雰囲気ないけど。


「よし、じゃあ、この依頼でお願いします!」

 ホープが受付人にタブレットを渡すと

「はい、かしこまりました。少々お待ちください。」

 タブレットを操作しだす受付人。


 いよいよこの世界で初クエスト、いや、仕事と言うべきか、初仕事をすることになる。


 これでも怪しいって言われたけど、それ以上にかなり楽しみだ。冒険に心が燻られるのもそうだが、昨日貰った剣が早速使えるのが何よりだ。


 場所は都市を出て右側に位置する崖のすぐ近くにあった洞窟だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ