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5話 勧誘

 外に出ると暗くなっており、すっかり夜になっていた。

 かなり長居していたのも驚いたが、それ以上に驚かされたのは、

「おぉぉ……凄い!」

 それを見ながら呟く。


 そこには、空一面に都市を覆うほどのオーロラが出来ていた。


「ね!ね!夜になると凄いでしょ!昼間全然見えなかった膜が夜になるとこんなに綺麗になるんだよ!」

 嬉しそうに飛び跳ねるマナ。


 オーロラに見惚れていると、

「これが防御魔法の正体だよ!」

 ホープも空を見上げながら呟く。

「どうゆう事ですか?」


「実態を持たない魔物は日の光が苦手だから、夜になると森や洞窟を出て本格的な活動を始めるんだ」


 突然知らない魔物の知識が出てきた。どうやら実態のない魔物というのも存在する異世界らしい。


「でもそうすると夜の間は都市が危ないからね。だから夜の間でも都市を守る必要があるんだ。そのための防御魔法だよ!」

 ドヤ顔で説明してくれるホープだが、

「……どうゆう事、ですか?」

 そもそもたった今5属性がどうのという話しか受けていないのに。


「えっと、実態のない魔物は5属性以上の魔法の光に耐えきれずに硬直するんだ。それを利用して都市に来れなくしているんだ。そして、昼間でも行動できる実態を持つ魔物の対策としての防御魔法。それが、空の光の正体だよ!」

 めちゃめちゃ丁寧に教えてくれた。


「なるほど……」


 正直普通に見惚れていたかったが、いつか必要になる知識だろう。

 無理矢理防御魔法の存在を頭に捩じ込んだ。


 巨大な魔法陣都市にも驚きだが、実態を持たない魔物も存在することも驚きだ。


「でもどうやってこんな特大な魔法を?」

 と尋ねると、

「円形の都市と建物の配置で巨大な魔法陣を組んでいるから」

 コガネが答えた。


「そう!実はこの大都市ネオンは、円形に発展させて、建物の配列を使って魔法陣組んで、防御魔法を発動させてるの!詠唱はこの都市に住んでいる人達の会話や声を、魔力は空中に散布されているものを使った超巨大な魔法陣都市なんだよ!」

 そしてマナが非常に興奮している。


 きっと魔法が好きなんだろう。


「壮大過ぎる魔法陣、会話を詠唱にできて自分の魔力を使わない魔法。今となってはできない事だらけ。昔の人は本当に凄い」

 コガネも興奮気味に呟く。


「成る程」

 魔法陣の都市に魔物から身を守るための組織冒険家。

 今も昔も、元いた世界も今の世界も、人間は生存戦略に長けているな。


 ふと3人の顔を見ると、目が赤くなっている事に気づく。

「その目が赤く光るのってなんですか?」

 何気なく尋ねると、

「赤?魔力感知のこと?」

「魔力感知ですか、成る程!」


 今の言葉で全て理解出来た。異世界定番のチート特性かと思ったが、この世界では誰でも出来そうな雰囲気がある。


「さてぇぇ〜!そこの店で夕飯食って帰るか!」

 とホープが歩きながら正面の店に目を向け提案する。


「賛成、お腹すいた」

 続けてコガネ。

「えぇ……僕はどうすればー」

「え?一緒に来ないの?」

 マナが不思議そうに言う。

「あぁ!行きます行きます!!」


 慌てて返事するタクマ。どうやら一緒に来ていいらしい。

 なんかすごく嬉しい。





「んん〜!お腹いっぱい!」

「美味しかった、特にあの肉は最高だった」

 満足気なマナとコガネ。

「んじゃ、帰るか〜!」

 少し眠いのか、大きなあくびと伸びしながら歩くホープ。

「えぇ……僕はどうすればー」

 とタクマが言ったタイミングで、

「え?一緒に来ないのか?」

 ホープが不思議そうに言う。

 デジャブだ。


 というか、きていいのか?


「流石に家にお邪魔する訳には行かないですよ、貰った銀貨もありますし今日は宿にー」

 泊まります。と言おうとしたところで、

「あれ、誰も話してないのか?いいからついて来な!」

「そうだよ!来なよ来なよ!」

 タクマを両手を引っ張るホープとマナ。

「え!話?何がですか!」

「着けばわかる」

 コガネはタクマの背中を押しながら進む。


 身動きが取れないため、流れに身を任せて連れ去られていった。


 そして数分も経たないうちに、

「はい到着!」

 両手をあげて声を上げるホープ。


 青屋根白壁のこの都市にいくつもある家とほぼ同じ構造。

 唯一違うであろう点は、その大きさだ。


 でかい!他の家の2倍はありそうだ。


「でかい……ですね。ここ、ホープさんの家ですか?」

 とホープに尋ねると、

「ううん、違うよ!」

 マナが答える。

「じゃあ、マナさんの?」

「それも不正解!ここは、みんなの家!」

「ね。着いたらわかったでしょ」

 微妙にドヤ顔のコガネ。

「いや、わかんないですよ……」


 思わず声が漏れる。この家を見ただけで一体何を解れと言うのだろうか。


「コガネは説明しなさ過ぎ!」

 口を膨らませるマナ

「だって、説明苦手なんだもん」

 口を尖らせるコガネ。


 説明も何も察しろみたいな雰囲気だったような。

 となるとタクマが悪いのか?


 いや、ちゃんと説明しないコガネが悪い。


「まぁ、取り敢えず入ってよ!諸々説明するからさ!」

 家のドアを開け、中に入るホープ。


 続けてタクマがコガネに背中を押されて入った。


「さ!こっちこっち!はい!ここがリビングです!」

「……綺麗ですね!」

 白いフローリングに茶色のカーペット、そして縦長で紺色の机に、カフェにありそうな薄黄色の椅子が六つ。奥には白を基調とした白黒のキッチン。そして白い光を放つ電気。


 落ち着いた雰囲気で、凄く安心感があるリビングだ。


 いつかこんなところに住みたいな。


「ホープ、私は冷たいお茶」

 タクマの後ろから声を上げるコガネ。

「あっ!私はバナナジュースで!」

「はぃよ!タクマは何飲みたい?」

「どうも……じゃあ、水で。」


 ここでがめつくいく気にはなれない。


 椅子に腰を掛け、ホープがそれぞれ飲み物を持って来てくれた。


 冷たいお茶、冷たい水、バナナジュース、温かいコーヒー。ここはカフェかな?


 ってそんなことはいいんだよ!


「あの、ちょっといいですか?」

 一言発しただけで、3人が一気にタクマに注目する。

「どうして初対面の、数時間前に出会ったばかりの僕にこんなに優しくしてくれるんですか?凄く嬉しいんですが、迷惑とかかけてないですか?」


「だって、お礼がしたかったし!」

 笑顔を1つ咲かせ、バナナジュースを頬張るマナ。

「それにタクマは冒険家になるのだろう?」

「そりゃ、生きるために必要ですし……」


 前世を高校1年生で終えたタクマにとって、大きな取り柄は若いという一点だけ。


 両親という逃げ道がない以上、1人でどうにかするしかないが、全てにおいて経験値が足りていない。


「冒険家になるには、最低でも前2人魔導師1人の3人必要。でも、3人でなきゃいけない必要はないだろ?」

 少しイタズラっぽい笑みで話すホープに、

「へ!?」

 本気で「あ、察し」を感じたのは初めてかもしれない。


「……邪魔になりませんか?」

「全く」

 コガネがボソッと呟いた声はちゃんと聞こえた。

「明日、申請出しに行こうね!」

 最初からこうする予定だったのか、策士な奴らめ。


「ゔぅ……!」

「ちょ、どうした!?」

 突然泣き出したタクマを見て、漫画にありそうな汗汗感を出すホープ。


 この世界に来て半日しか経ってないが、思い通りがなさすぎて、特に魔法で思い通りに進まなくて、転生特典を無駄にした。


 転生前の、友人や家族と別れた傷も癒え切らないまま飛ばされた未知の土地でずっと優しくされてきた。


 色々考えたら感極まっていた。


 ハーレムではない。人数も自分含めて4人と決して多くない。

 でもかなり刺激的な半日を過ごし、3人の優しさに触れられた。


 そりゃ泣くよ。


 結局タクマが泣き止むまで1時間ちょいかかったらしい。正直あまり覚えてない。


 意識が戻った時には、どこかの部屋のベットの上で寝ていた。

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