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50話 遭遇


 ドライアドと話し終え、家に戻ろうとした時、

「タクマ!」

「あれ、マナさん!」

 家の前で鉢合わせになった。そしてこの暇そうな顔はー

「…。やる事ないんですね?」

「……うん。タクマは?」

「僕もやる事無くて家に戻ろうと思ってたところです。戻ってもやる事なさそうですけど……」


 趣味っぽい趣味がなく、ゲームやテレビも存在しなく、やる事が無くなったら本当になにもできない。


「そうだ!やる事ないならちょっと森に出ようよ!」

「まぁ、いいですよ?」

 という事でマナの言葉にのり、町の外へ出た。





 他愛無い会話をしながら木々をすり抜け進んで行く。町がギリギリ見えるところでマナの足が止まる。


「どうしました?」

「武器」

「ん?武器?忘れました?」

「違う、武器が落ちてる」

「!?」

 マナが指差す方を見つめると、剣や槍、斧といったありとあらゆる武器が捨てられていた。

「……ですね。僕が見つけた場所とは別っぽいですけど」

 また見つけてしまった。


 タクマは疫病神でも取り憑いているのか?

「そうじゃない」

 いや、武器が落ちてたのもマナにとっては驚きだが、それ以上に不可解な事。


 それは、

「この武器、ゲイルさんの、店主の店で扱ってる武器」

「そうなんですか?」

「ほらここ!」

 少し見えにくいが、剣身にGrと書いてある。


 武具店にはそれぞれ、その店で打たれた、売られた商品という証拠を残すために、武器や防具に絶対に何かしらエンブレムを残すらしい。


 ここに散乱されている武器の殆ど、いや、全てがゲイルさんの店で扱われていた武器だった。


「何これ?」

「僕にもわかんないですよ……キミ悪いですね?]

 なにせ、全てが武器。防具が一切ないのだ。


 どこかのチームがここでやられたとしても、鎧やローブなどの防具が一切ないのも不可解だし、散乱されている武器が多すぎるので、その線は消える。


 フォレストに荷物を運ぶ際に襲われたという線も、馬車の木片は落ちておらず、そもそもの前提として、こんな獣道にも分類されないような道は通らない。


 何もかもが不思議でしょうがない。

「取り敢えず報告しなー」

 報告しないとと言いかけた時、


「「!?」」


「何、この鳴き声……」

 その一声だけで鳥は飛び交い、森からは不穏な風が吹き荒れる。

「どうします、全力で逃げます?」

 鳴き声のする方から視点をずらさず、後ずさるが、

「流石にこんな殺気放つやつを放っておけないでしょ?」

「……ですね」

 殺意剥き出しの圧が直ぐ近くまで迫ってきている。

 タクマが剣を抜き、マナが杖を構え、いつ来てもいいように準備する。


 正直呼びに行きたいのは山々だが、マナが呼びに行くと、恐らくタクマ1人では荷が重過ぎる敵の為、生きてはいられないだろう。


 タクマが呼びに行っても、上位の魔物は魔法耐性を持っていることが多いため、防戦一方でいつやられてもおかしくない。


 2人で呼びに言ってもこの得体の知れない魔物ごと町に連れて行くことになる。


「!!!!!」

 凄まじい足音と殺意と共に呻き声が近づいてくる。

「くるよ!」

 敵の姿が見える前に詠唱を始める。


【風の魔力よ、その鋭さを持って敵を切り裂け、カマイタチ】


 マナのカマイタチが、未だ目視出来ない敵めがけて放たれる。

「せぃ!」

 タクマも所詮気休めだが、同じところにカマイタチを撃つ。


「!!!!!」


「効いてる!」

 マナがカマイタチを撃ち続ける。


 しかし何かがおかしい。


 確かに呻き声は聞こえるが、悶えて苦しんでるような声じゃない。


 急いで魔力感知を使う。

「な!?やばい!!」

 確認出来たのは、巨大な魔力の塊がどんどん大きくなっているところ。

 本体自身の魔力が大きすぎて、魔力の塊が大きくなっている事にマナは気づいていない。


「タクマ!どうし……きゃ!?」

 急いでマナの手を引き射線から外す。


 まさに次の瞬間、ドス黒いオーラの、光線の文字が似合わない、闇線が放たれた。

「きゃあああぁぁぁぁ!!?」

「うわあああぁぁぁぁ!!!」


 直撃はしなかったが、風圧だけで2人を吹き飛ばした。


「……嘘」

 唖然とするマナ。


 光線とその風圧で木々がなぎ倒されている。

 町を背にしていなくて本当に良かった。

 そんな事してたら的が吹っ飛んでたかもしれない。


「これは……正しく破壊光線だな」

 唖然だ。この世界に来て1ヶ月ちょい、こんな光線を撃つ生物と遭遇したことがない。


「僕の知ってる破壊光線は、当たれば次のターン動けないけど、どう考えても“しかしこうげきがはずれた”だよな……?」

 まだ冗談を言う余裕はありそうだ。


 いや、もう冗談を言う余裕がなくなりそうだ。


 正直恐ろし過ぎる。怖すぎる。


 なにせ今から相手にするのはコガネが最強の生物と訴う、

「ドラゴン……!」

 思わず声を漏らした。


 赤い目、巨大な牙と口、黒い鱗、体の全長くらいありそうな巨大な翼に強靭な尾。


 誰がどう見てもドラゴンだ。


 しかし、マナ曰く、

「小型なのがまだ救いだね。もしかしたら2人でなんとかなるかもしれない!」

 らしい。


 とは言っても間違いなく虚勢だ。言葉に反して声が異常に震えている。


「この大きさで小型……」

 小型とは思えない巨体。そこら辺に生えている木より遥かに高さはある。


「因みに弱点とかって知ってたりします?」

「知らない……」

 まぁそうだよね。

 ゲームでもめぼしい弱点が……。


「あるぅ!?」

「弱点あるの!?」

 マナも知らない前世の知識、某ゲットだぜゲームのドラゴンの弱点!


「ドラゴンは無理、フェアリーは、妖精?町にはいるけど今は無理、却下、となると……」

「ぶつぶつ言ってないで早く教えて!」


「マナさん、氷の魔法って使えますか?」

「私、水魔法無適性だから氷も使えない!」

「……フェアリーとか?」

「フェアリー……妖精?何言ってんの?」

「いえ、なんでも……」

 はは、弱点なんてありません。


「!!!!!」

 ドラゴンが咆哮を上げた途端、

「ちょまっー!?」

「ー!?」

 どれだけ2つ名を持っていても、転生者でも至近距離の叫び声1つで簡単に吹き飛ばしてしまう。

 まるで、タクマとマナがとるに足らない相手と嘲笑うように。


「ってて」

「いったいなぁ!」

 急いで立ち上がりドラゴンを見据えると、

「!!!!!」


 口元にドス黒い魔力を込めている。

「さっきのまた飛んできますよ!」

「タクマ、左右に分かれて!」

 両者左右に分かれて光線の射線から外れる。

次の瞬間、

「「「!!!!」」」


 マナめがけて光線が放たれる。


【風よ、我を飛ばせ、フライ!】


 急いで詠唱し、すれすれで破壊光線を回避する。

「マナさんに気が向いてる、今!」

 ドラゴンに向かって走りだし、風の力を込め一突き。

 しかし、キンと鈍い音を立てて剣が弾かれた。

「嘘!刺さんない!」

 なんて呑気に言ってる場合じゃない。


【灼熱の魔力よ、その煮えたぎる炎で敵を焼き尽くせ、ファイアボール】


 ファイアボールがドラゴンとタクマめがけて飛んでくる。

 巻き込まれないよう急いで後ろに飛び、ファイアボールがドラゴンに直撃する。

「……ダメか!」

 焼けているが、効いてる様子はない。

「!!!!」

 ドラゴンが体を旋回させ、火を振り払う。

 おまけと言わんばかりに巨大な尾が2人めがけて飛んでくる。


【風よ、我を飛ばせ、フライ】


 マナが軽く飛んで尾をかわす。

「せぃ!」

 風の力を込め、下から上に剣を振り、勢いに任せて飛んでくる尾を浮かせて直撃を回避する。


【灼熱の炎よ、我が炎の魔力と共に、眼前の敵に紅の矛を穿ち、命を貫け、紅蓮の矛】


 ドラゴンの上から赤い矛が落ちてくる。

「タクマ!!」

「はい!!」

 その間にすかさずドラゴンに接近し、固有魔力を撃ち込む。


 どうせ魔法耐性を持ってる、だから!


「壊れろぉぉぉ!!!」

 ドラゴンに一突き。

 そして


 バリン!!と、

 先程の鈍い音とは違い、何かが割れる音が聞こえた。そして

「!?!?!?」

 魔法に耐性を持っているドラゴンに、紅蓮の矛が突き刺さる。

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