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40話 特異な魔力

「行きます」

 目を瞑り、神速で駆け、

「ぐへっ!?」

 勢いよく壁にぶつかった。


 クッソ痛い。


「タクマ、無理せず普通に来な?」

 普通と言われても、この状態で駆けると自然とこうなってしまうんだ。


「……待ってむずい」

「無理矢理駆けるからそうなるだけで普通に走ろうと思えばそうはならないよ!」


 目を瞑ってるからわからないが、多分ニコニコしながらアドバイスしているんだろう。


「わかりました!今度こそ!」

 剣を構え、ごく普通に走る。


 マナに近づくにつれて、身体がほんのり痺れてくる。

「……ここ!」

 思い切り剣を振るうが、靄が左へ移動する。


 同時に体の痺れも左へ移動する。


「なるほどね、こうして見分けてるのか!」

 すごい、目を瞑っているのに身体が教えてくれる。


 剣を振るっては避けられるが、避けられたと明確にわかる。その上どこに避けたのかもわかる。


「いいね、慣れてきたね!」

「なんなら攻撃してきてもいいんですよ!」

 少し調子に乗るタクマ。

「じゃあ遠慮なく!」

 一気に後退され、詠唱を1つ。


【火の魔力よ、その赤き魔球を放ち、敵を焼き尽くせ、ファイアボール】


 真っ赤な靄の塊が飛来してくる。同時に身体が痺れてくる。

「はっ!」

 身体が隠れる魔法陣を生成し、ファイアボールを受け止め、消滅する。

「……やっぱり!」

「嘘、何したの!?」

「今は内緒です!続けましょう!」

 それだけ言い、再び剣を振るう。





「参り……ました」

 あの後何度も剣を振るい魔法を避けたが、先に体力が底をつき、倒れ込んでしまった。

「お疲れ様!私も結構疲れた!」

 という割には汗1つかいてないし、呼吸も荒くない。


「僕ってこんな体力ないのか……」

 一応毎日部活やってたはずなのだが、それでもこんなものなのか。


「強引な魔力の使いっぱなしと、身体が痺れっぱなしだったから、思ったより早く疲れたっぽいね?初めてにしては長く保った方だよ!」

 との事らしい。


 庇ってくれてるのだろうが、それなりの部活人間が少し戦っただけで地面に背をつけるほど疲れるのは、意外と精神的にきつい。


「……こんなことでいちいち折れてたら何も出来ないか」

「大丈夫、何があっても私達が助けてあげるから、安心して絶望していいよ!」

 たった数日で何度も絶望してきたが、3人がいたからなんとかなっているんだろうな。

「あはは、ありがとうございます。」


 だとしても、安心して絶望していいってのも違くないか?


「さて、明日もお願いね!」

「……明日もやるんですか!?」

「当たり前じゃん!用事あるならいいけど、用事ない日は毎日付き合って貰うよ!」

「それはいいですけど、僕なんかでいいんですか?ホープさんやコガネさんの方が不足なしだと思いますよ?」

「……」

「マナさん?」


 なんだこの沈黙、また何かいけないこと言ったか?


「2人は望んでこの仕事やってるわけじゃないから私のエゴでこうゆうのに付き合わせたくないんだ」

「その言い方だとマナさんは望んで冒険家やってるように聞こえますが、合ってますか?」

「ううん、私も望んでやってるわけじゃない。ホープが好きでもないのにこの仕事続けてるから私も続けてるだけ」


 どこか遠い目をしながら呟く。まるでホープに縛られているような。


「すごい失礼なこと聞きますけど、いいですか?」

「何?」

「マナさんは、なんでホープさんと一緒に冒険家続けてるんですか?ずっと一緒にいるからってだけじゃないですよね?」

「私1人だったらとっくに辞めてたかもね。でも、ホープが続けるって言ってる以上、私も続けなきゃいけない。それが、私がホープに出来る、罪滅ぼしだから」

「……」

 何か深い事情があるとは思っていたが、想像以上にやばそうだ。


「ごめんね、こんな重い話しちゃって!」

 空元気で無理矢理笑顔を作るマナ。


「僕の方こそすみません、こんなこと聞いてしまって」

苦笑いで返すタクマ。

「「……」」

 沈黙がやけに辛く感じる。


「さっきのですが」

「…?」

「僕の破壊の魔法陣があれば、魔法専用の盾になるんじゃないかって思って試したやつです。結果大成功でした!」

「あぁ!成る程ね!そんなこと出来るんだね!」

 自然と驚くマナ。


 少し素に戻ってくれた。


「多分、固有魔力が魔力なので僕しか出来ない芸当ですね?」

「それ魔導士相手に無敵じゃん!」

「残念ながらそうはいかないんですよ。結構圧されるので威力が凄ければ競り負けます」

 実際さっきの魔法でも少し圧された。


 とはいえ、陽動の魔法が殆ど効かなくなるのは非常に嬉しい。


 魔物は陽動なんてしてこないが、魔物の放つ簡単な魔法程度なら割となんでも防げるだろう。


「あれ、もしかして意外と万能か?」

「万能だよ!小細工が効かなくなるって魔導士にとっては致命傷だよ!大きい魔法使う時の陽動が一切効かないとか反則だよ!」


 あれ、もしかしてこれ、チートか?チートなのか?ついに無双入るか?


「でも小細工や小さな魔法が効かないってだけで、大きい魔法は無理なので……ただの弱い者いじめには使えそうですね……」


 急に規模感小さくなった。


 それでも魔法が効かなくなるだけで、相手の戦いの幅は大きく減らせる。

 チートかどうかはともかく、特異である事は間違いない。


「で、本当に毎日続けるんですか?」

 さっき答え出たが、聞き間違いを期待してもう1度尋ねる。


「そうだよ?正確には私たちがネオンを出るまでの1ヶ月だけどね!」

 聞き間違えてなかった。やりたいことがある日と休みの日はやらないらしいが、それ以外の依頼が終わった後は毎日やるらしい。


「なんでそんなに強くなりたがるんですか?もうカンストしてません?」


 いやステータス表示なんてものはないからカンストはしていないだろうが、それでも、この若さで世界屈指の実力者であることは間違いない。


「別に強くなりたいわけじゃないよ!さっきも言った通り、もし鏡で石化しなかったらのために、念の為目を瞑ったまま戦う練習をしてるだけ!」


 無駄な用心だとは思うが、全員石化して死亡という展開よりも、2人残って倒して石化解除の方がハッピーエンドであることは確かだ。


「という事で、明日からよろしくね!」

「別にいいですけど、僕たちが残っている間に事件が起こるとは限りませんよ?」

「いや、絶対起きるよ!」

「なんでわかるんですか?」

「もし何か計画してるなら、私だったら近いうちに実行するから」


 確信しきった声で言い放つ。


「僕はむしろ厄介な連中を遠ざけてから計画実行しそうなイメージありますが……?」

「あれ、タクマのあの時のトンチンカンな演技って、それ見越してじゃなかったの?」

「何にも見越してないです、あの時戦うのはまずいと思っただけで」

「あー、たしかにそれもあるか!私はてっきり、私たちは馬鹿です、決して脅威ではないって悟らせるためかと?」


 そんな事全然考えてなかった。


 しかし幸運な事にその先入観は成功している。全く何企んでいるか知らないが、もし本当にそうだとしたら間違いなくいい方向に転がった。


「じゃあ2人にもー」

「あーごめん、先にここ出よっか!」

 話を遮り時計を見る。


 いつのまにか4時半を指している。

「ありゃ、結構時間経ってる」

 急いで着替え、ギルドを後にする。





「で、さっきなんて言おうとしてたの?」

帰り道、マナが先程の話題を突いてくる。

「えっと、なんでしたっけ?」


 必死になって考えて捻り出す。


「そう!2人にも目を瞑って戦う訓練って必要なんじゃって思って」

「あはは、確かにそうかもだけど、残念ながら2人共出来るんだ、それ!」

「嘘!?」

「本当!」

 2人共目を閉じて戦うことは出来るらしい。


 いやタクマでも出来るのだ。ベテランが出来ない訳がない。

 

 そして毎日依頼や休みを続け、気づけば1ヶ月経ち、引っ越しが前日まで迫ったいた。

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