39話 蛇
「ごめん、なんでそうなるか説明欲しい」
「あの子たちなんで都市の外に出られたんですかね?子供が遊べそうな公園やレジャーはあります?」
「それだけで決めつけてるの?」
コガネも若干顔を顰めている。
「もちろんそれだけじゃないです。3人は気付いてるかわかんないですけど、実はあの子供たち全員怪物ですよ?」
「タクマ失礼、それは笑えない」
コガネは今の発言が気に食わないのか、一気に眉間に皺を寄せる
「依頼受ける前、ホープさんに聞きましたよね、あの3人がどう見えるかって」
「あぁ、聞いてきたな」
3人共良い子で可愛いと答えた先ほどのやりとりだ。
「僕には、あの3人が蛇の魔物に見えてました」
「「「え?」」」
3人の声が見事に揃う。
そりゃそうだ。見る限り小さくて可愛い子供3人を、蛇の魔物と言っているんだ。不思議に思うのが当然だ。
「でも見た目も、背丈とか喋り方とか子供だったよ!」
「喋り方は僕でも真似出来ますし、見た目を変えるのは3人の内の誰かの固有魔法って線で納得出来ます。例えば、存在を誤認させる魔法とか?」
「防御魔法にある」
コガネはピンときたらしい。
「固有じゃなくてもあるんですね!?」
「姿を偽るのも、自分を守る手段だから」
「成る程、防御ってそうゆう考え方もあるんですね」
正直ゴルゴーン三姉妹について知ってる知識なんて、目を合わせたら石化するということだけ。
しかし、いざ現実問題として直視することになると、どれだけ厄介な相手かわからされる。
「いやー、これ勝てるんですかね!」
「おいまだ解決してないよ、何故あの時俺を遮ったんだ!」
「さっき言った通りですよ、今日戦うべきじゃないって事。ホープさんは防具だけど、僕とマナさんとコガネさんは私服ですよ?それに氷の上で石化させられて落ちたら壊れて死んじゃいます!」
簡潔に説明する。
「………すまん、俺が悪かった。ちょっと焦ったのかもしれん」
大人しく身を引いて謝罪する。
「いえ、僕こそすみません、行きの途中にでも話しておくべきでした」
「……やっぱり、あの時から気付いてたのか?」
「まぁなんとなくですけどね?正直依頼受けてる最中に石化されたらどうしようかと」
「どうするつもりだったの?」
「そりゃもうね!皆んなでおじゃんしましょう!」
「急に雑になったね?」
いつもボケ役のコガネが突っ込みに回りだした。
「3人共ずっと蛇に見えてたからドキドキでした!で、現地着いて石化したユニコーン見て僕らもここに並ぶのかな〜って!」
「お前……すごいな……」
ケタケタ笑いながら話すタクマを見て呆れるような目を向けるホープ。
「てなわけで、鏡買いましょ!」
「なんでいきなり……」
コガネがまた顔を顰める。
「メドゥーサの目を反射するためです!」
対策の鉄板と言えばこれでしょ。
「本当にそんなので上手くいくのか?」
ホープも顔を顰める。
「上手くいくでしょ!見られる前に反射だね!」
「マナもタクマもメドゥーサってのに詳しいんだな?魔法って鏡で反射するものなのか?」
「何言ってるんですか、目を合わせたら石化するんですよ!」
「なんだそれ、聞いた事ないぞ?」
ホープがますます顔を顰める。
意外と有名なことかと思ったが、そうでもないのか。
それとも某四次元ポケットアニメのお陰で知名度が上がっただけなのか?
それにしてもマナは知っているような反応だし、一定数知ってる人はいそうだが。
「自分で自分の目を合わせるために鏡を使うんですよ!」
まさかメドゥーサでこんな説明するとは。
「戦った事あるの?」
「あるわけないじゃないですか。」
「じゃあなんで知ってるの」
コガネはかなりタクマを疑っている。
「……なんか知ってました?」
長々と説明したわりに最後の一言で一気に疑わしくなった。
「でも私も同じ情報持ってるわけだし、信用できないことはないと思うよ!」
「……ならいいけど」
マナの言葉にコガネは疑いの目を逸らす。
歯切れが悪い返事を聞くに、若干不安が残るのだろう。
とはいえタクマも知り尽くしているわけでもない。
「それじゃ、常備できる鏡を買いに行こう!」
そして4人はギルドを後にした。
◯
「タクマ、今日何かしたい事ある?」
「特にないですが、なんですか?」
ハンドミラーを買った後の自由時間、真剣な表情でマナがタクマを止める。
「ちょっと付き合って欲しい。」
「わかりました……?」
マナに連れられた先は、ギルドの第3訓練所。剣も魔法も使っていい戦うための場所だ。
「ここになんのようですか?」
「ちょっと私の特訓に付き合って欲しいの!」
「これ以上強くなってどうするんですか……」
多分もうカンストしてるでしょ。
「やるのは魔法じゃないよ、でなきゃ私服でこんなところ来ないよ!私を斬って欲しいの!」
「……もう少し説明欲しいです」
そんな事真剣な表情で言われても自殺志願者にしか聞こえない。
「そのまんまだよ、タクマが攻撃して私がひたすら避ける!」
「なんでまたそんな事?」
「多分近いうちにあの子たちと戦うでしょ?その練習だよ!」
「いや鏡あるから大丈夫でしょ?」
「タクマ、慢心は良くないよ?万が一鏡が効かなかったらどうするのさ!」
「……」
たしかに鏡で石化反射効かなかったらまずいけど、メドゥーサをどうにかする鉄板の方法が効かないとなると果たして誰が勝てるのだろうか。
「というわけで、私は目を瞑って避けるから、タクマも目を瞑って剣振るってね!」
「……は!?」
「ん?」
「いやいや無理でしょ!」
「メドゥーサ相手に目開けたまま戦う方が無理だよ!だから、頑張って!」
マナは既に目を閉じていた。
「わかりました、でも最初から目閉じてもなにも出来ないので、今日はそのままいきますね」
持っていた剣を鞘から抜かずに構える。
格上とはいえ、相手は目を瞑っている。
見聞色がどうとかっていう世界線ではない。
「……!」
歩いて近寄り、頭目掛けて剣を振るう。
「……は?」
避けられた。
ちょっと雑にやりすぎたか。
「はっ!」
今度は力を入れ、突きをするが、これもなんなく避けられる。
「……目瞑ったままだよな?」
「不思議そうだね!」
マナが目を瞑ったままニヤニヤする。
「不思議ですよ、なんでですか!?」
「目を瞑った状態で魔力感知使うとわかるよ!」
とのことらしい。
「……わかりました」
タクマも目を閉じる。
「凝視するイメージで魔力感知は使えるから、えっと?」
目を瞑って凝視ってどうゆう事だ?
「目を瞑ったまま相手を見るって事でいいのか?何言ってんだ僕は?」
イメージ的にはあっているはずだが、どうだろうか。
「……」
「どう?」
「……なんか、見えてきました。赤い靄が」
人型をした赤い靄が目の奥に見える。
しかし、真っ暗闇の空間に、ポツリと動く人形の靄があるだけで、背景や奥行きが一切ない為、全く距離感がない。
「よく避けれましたね、距離感全然わかんないですよ?」
「それはタクマが魔力感知でしか判断してないから!気配で察知しろなんて出来過ぎたことは言わない。でも、相手を見ずに剣を当てる方法ならあるよ!」
「考えろ、どうすれば当てられる……!」
足音で聞き分けるのは無理、空気が擦れる音……が聞き分けれるなら足音で充分。
やばい全く分からん。
「ヒントは魔力だよ!タクマも1回使ったことあると思うんだけどな!」
「いや魔力を使ったことないのですが……」
「タクマ以前私服で森に入った事あるじゃん?その時どうやって帰ってきたか思い出してみて!」
「……?」
以前私服で森に入った時。確か迷って魔力感知使って帰ってきたけど、それは魔法じゃないし。
「……もしかして?」
都市に戻ってくる時に使ったやつか。
「……」
しかし怖いな。あの時は生きることに精一杯だったが、身体中が焼けるように痺れるあの感覚をもう1度味わうのは絶対に嫌だ。
しかし、多分それが正解なんだろうな。
「力を抜いて、出来る限り抑えて」
体の中に小さな雷の魔法陣を生成するイメージで。
「……どう?出来そう?」
マナはタクマが何しようとしているのか察したようで、少し心配そうに声をかけてくる。
「はい、多分?」
体が少し痒い程度の痺れに抑まっている。
「取り敢えず、目開けたまま続けますね!」
これで正しいのかわからないが、これ以上時間を喰うのも気が引ける。
再び剣を構え、マナを見据える。
ホープと同様、どれだけ本気でやっても擦りもしないのがわかっているので、遠慮なく本気でやれる。
「はぁ……っよし!」
一呼吸おき、駆け出す。
「ってうわっ!!?」
一瞬でマナの目の前まで移動し、思わず声を上げ足を止める。
「何!どうした!?」
マナも避けようともせずに目を開ける。
「マナさんが目の前にいる……!?」
「……何言ってんの?」
「さっきまで距離あったのに、一瞬で目の前に!?」
「本当に何言ってんの?」
「……マナさんって、そこから1歩も動いてないですよね?」
「当たり前じゃん?」
どうやらタクマが目の前まで一瞬で移動したらしい。
今まで必死に走って距離詰めてたのに突然どうした。本当にアニメでよくある瞬間移動じゃないか。
「もしかして、これのせいか?」
確かに森で駆けた時はこの速度出てたけど、その時は身体中痺れたし、絶対実用的じゃないと思ったんだが。
「いちいち反応が大きい!続けるよ!」
完全に痺れを切らしたマナが怒鳴る。
「す、すみません」
再び目を閉じ、剣を構える。




