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3話 この世界の魔法

 ようやく黒の魔導紙も光り出す!と思いきや、全然光出さない。それどころか亀裂が入って破れ去ったのだが。


「なに……これ?」

 散り散りに破れ散った紙を拾い上げてコガネに差し出す。

「「……」」

 マナは口をぽかんと開けたまま固まっている。コガネは破れ去った紙を神妙に見つめている。

「えっと、もしもし?」

 何かすごい魔法なのだろうか?


「知らない」

 さっきの神妙な顔つきが嘘みたいに冷静に言うコガネ。

「え!知らないの!?」


 勝手に2人は魔法に関してはなんでも知っているイメージがこびりついていたが、

「そりゃ知らないよ!黒はオリジナル魔法なんだから、自分で何度も試してどんな力を持ってるか見つけていくしかないんだよ!まさか破れるとは思わなかったけど!」

 とのことだ。


 確かにそうだ。自分特有の魔力って言っていた。たった今見つけたばっかりの自分専用の物が誰かにわかる筈がない。


「まぁそうだよね!それより早く魔法を撃ちたいです!」

 待ちに待った魔法!願いに願った魔法が遂に撃てる!


「そうだね!魔法陣はもう出せるし、適正もわかったし、いよいよ魔法だよ!」

「私も、手伝う」

 ソワソワし始めるマナとコガネ。


 表情崩さないが、コガネは相当ワクワクしている。


 都市外での事や、膜の事や、魔法紙や、なんだかんだで一番タクマの魔力に興味を持ってくれている。


「まずは魔法の説明ね!難しいけどこれをなくして魔法なんて使えないから、心して聞くように!」

「分かりました!」


「魔法って言うのは、頭の中で描いたイメージを魔力を使って具現化する手段として使われるの」

 ダメだいきなり引っかかった、それだと何でゴブリンと出会った時、タクマが魔法を使えなかったのかわからない。


「先生!質問です!」

 マナ先生に挙手して優等生ぶるタクマと、

「はいどうぞ、タクマくん!」

 調子を合わせてくれるマナ。

「頭の中で描いたイメージを魔力を使って具現化するのが魔法なら、魔法陣って必要なくないですか?」

 とタクマが言うと、

「うん、いい質問ですね!」

 マナ先生が笑顔でポンと手を叩く。ノリノリだ。


「実はイメージを具現化するには条件があるのだよタクマくん!」

 マナ先生が説明を始めようとした時、

「……」

 隣でコガネが水魔法を連打している。ばちゃばちゃ聞こえてクソうるさいんだが?


「こら!集中しなさい!」

「あぁすみません、先生」

 ってかコガネの私も手伝う宣言どこいった。言ったこともう忘れたのか?


「もう一度言うけど、イメージを具現化するには条件があるんだよ!“詠唱”と“魔力”を“魔法陣”に通す。じゃないと魔法が発動しないのです!」

「……?」

 結構意味がわからないが、理解力がないだけなのか。

「どういう事、ですか先生?」

「まぁ、わかんないよね?説明が難しいんだよね…?」

 言葉に迷い唸るマナ先生。まぁ非科学的なことを説明しろってのは無理な話だ。


「ええっとね、魔法を発動させるには、頭で描いたイメージを言葉に乗せる必要があるの!それが今「詠唱」って呼んだもの!そして、詠唱の内容を実現させるために必要なのが「魔力」と「魔法陣」!詠唱はそのままだと意味をなさない、普通の言葉と変わらない。でも「魔法陣」を通して意味のある「詠唱」に変換して、「魔力」を使って実現可能になった「詠唱」を具現化する。これで魔法が撃てる!そして、頭で描いたイメージが強い魔法であるほど、「詠唱」も「魔力」も多く使うことになる。場合によっては魔法陣の数も……」





「?」

「って事で合ってる?」

「マナさんが聞いてどうするんですか」

 結構考えて必死に絞り出した説明もよくわからないし、本人もこんがらがっている。


 首が折れるんじゃないかと思うくらいに首を傾げたい。


「要するに、イメージだけじゃ魔法は出せないって事!魔力と詠唱と、魔法陣全部揃ってやっと魔法が使えるって事!」

 思い切りざっくり説明してくれた。


「はぇー成る程」

 一応理解は出来た。納得出来ないけど。

「よし!」

 右手を出し、魔法陣を生成するタクマ。

「想像するんだ僕、イメージするんだ僕」

 1つ魔法陣を生成する。

 そして、


「ファイアボール!!」


 しかし何も起こらない。

 やばい、嫌な予感がする。


「タクマくん聞いてた?詠唱が必要ー」

「うわぁァァァァ!!!」

「うわぁ!?びっくりした!どうしたの!タクマくん!?」

 マナの話の途中で急に頭を抱え声を荒げる。


 説明聞いている時からなんとなく察しはついていた。これは、

「黒歴史の再来だ!?」


 そう、僕の前世、まさに厨二病炸裂だった中学二年の春、厨二病全開の自己紹介を決め、完全に孤立した春。


 そしてその孤立をいい事に、1人で悪の組織と戦っている設定で、部活がない日でも常に“エクスカリバー!”とか言って剣道場で竹刀を振り回したり「喰らえ、終焉の炎に焼かれ、貴様の悔いを改めよ!」と誰もいない空虚な空間に向けて言い放った事、そしてそれをクラスの人に見られた事。


 上げればきりがないほどの黒歴史を中学3年中頃まで繰り返した僕。


 高校に入って厨二病が完治し、中学2、3年の出来事が究極の黒歴史に変わった今!

 僕は、また、今度は異世界で似たような台詞を言い放たなければならないのか。


「いや、まだそうと決まったわけじゃない!もしかしたら、僕の思っているものと違うかもしれない!!」


「あのタクマ君、大丈夫?」


 折角、魔法適正最大で転生したのに、こんなところで、終われない!!!絶対に!!!


「もしもーし、タクマ君、大丈夫?」

「マナさん、どんなものでもいいのでちょっと魔法撃ってもらって良いですか?やっぱり見本って見ておきたくて」

 無理矢理正気に戻って声を絞り出す。

「へ……?いいけど、大丈夫?」

 心配そうに声をかけてくれるが、

「だいじょうぶですよはい全然」

 全っ然大丈夫じゃない。

「うーん、ならいいけど」

 的の方を向き、一呼吸置くマナ。


 そして、


【火の魔力よ、その赤き魔球を放ち、敵を焼き尽くせ、ファイアボール】


 次の瞬間、魔法陣から放たれた炎の球が的に衝突し爆発。的はジリジリと燃え、やがて焼き尽くされた。


「ふぅ、こんな感じかな!」

 満足気なマナと拍手を贈るコガネ。

「こんな感じで撃ってみたけどどうだった?参考になった?」

「ヤベーすごいですね」

 今の精一杯で答える。


 完全に撃ち砕かれた。これはダメな奴だ。過去の黒歴史の羞恥心で死にそう。


 魔法自体は間違いなく憧れていたものそのものだ。しかし、羞恥心で詠唱が最後まで言えそうにない。


そして、焼かれた的に目掛けて、叫ぶ。


「なんでこの世界の魔法は詠唱が必須なんだよぉぉぉォォォォ!!!!」


「ちょっ!タクマくん!どうした!?」

「……?」

 タクマを心配するマナと何に動揺してるのか分からず首を傾げるコガネ。

 この心の底から湧き上がる無限の羞恥心は、2人には伝わるまい。


「おぉやっぱここにいた、たまには報告ついて来いよ、ってどうしたタクマ?」


 魔法適正最大で転生した僕はこの日

 魔法は使わないと心に誓った。


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