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2話 魔法陣

 ネオンと呼ばれる都市の正面玄関までやって来ました。

 目の前には見上げないと見えないほど巨大な門。

 そして都市を取り囲むように張られた巨大な壁。


 門をくぐると、目の前にはまるで、正面の城に向かうためだけに造られたように、一直線に整えられた薄い赤色のレンガ通り。

 レンガ通りの両サイドには青い屋根に白い家、出店や雑貨店などの商店で多くの人で賑わう。


 まさに模範的な商店街、絵にしたような平和そのもの。

 頭の中でラッパのBGMが流れてきそうだ。


「凄ぃ……!」

 歩きながら辺りを見渡し、思わず声を漏らす。

「そうだろそうだろ!」

 何故か自慢げなホープ。


「この都市って熊のぬいぐるみがラッパ吹いて歩いてたりします?」

「……は?」

 タクマの冗談は突っ込まれることも流されることもなくホープに直撃してしまった。自分も相手も1番辛いやつだ。


「いろんな町や都市回ったけど、ここ以上に発達している都市も、賑わってる場所は中々ない。私はここより凄いのは王都しか知らない」

 コガネはタクマの冗談を気にもせずに淡々と、しかし愉快に話す。

「ここより凄いのか……圧巻ですね!」


 ここですら日本のテーマパークを彷彿とさせる賑わいなのにそれ以上とは。


「コガネ嘘つかないの!王都なんて行ったことも入った事も行ったこともない!」

 マナも愉快に嘘に突っ込む。


 というかコガネの嘘よりも、どのタイミングで買ったかわからない綿飴を頬張っているマナに突っ込みたい。


「でもまぁ絶対凄いですよね!王都、名前通りの王の都!一度でいいから行ってみたいですね!」

 テーマパークは前世であまり行ったことがない為、ここより凄い王都となると随分夢が膨らむ。


 いや別に王都が夢や希望や絶叫マシーンで溢れているわけではないのか。





 歩きながら話しているとふと、空に違和感を感じる。なんかすごい意味不明な言い回しになってしまったが、そのまんまの意味だ。


 雲でも日差しでもない何かがこの都市を覆うように光っている。


「なんだろう?」

 思わず立ち止まりボソッと呟いたタクマに、

「どうしたのタクマくん?何かあるの?」

 マナも同じ様に空を見上げて立ち止まる。

「あの都市を覆ってる光みたいなのって何ですか?」 

 その言葉に、

「ほほう、タクマくんはこの明るさで膜が見えるのか!これも莫大な魔力量のおかげなのかな?」

 わざとらしく大きなリアクションで返す。


「膜って何ですか?」

「簡単に言ってしまえば防御魔法の合わせ技だよ。それも都市を覆うことが出来る程特大の!」

 説明をくれたのはホープだ。

「へぇ〜……?」

 正直ピンとこなかったが、取り敢えず納得しておこう。魔法についてのお勉強はこれからしていけばいいだろう。


「夜になると凄い景色になるよ!今から楽しみだね!」

 ニコニコしながら語るマナ。凄い景色とは漠然とした言葉だが、まぁ楽しみにしておこう。


「……」

「どうしました?えっと……コガネさん?」

 タクマを凝視しているコガネの目は先程同様に、少し赤く光っていた。


 そして今度は空を見て、

「この明るさで膜が見えるなんて。私とマナは少し暗くならないと見えない。やっぱりおかしい」

 再びタクマに視線を戻し、熱い眼差しで見つめてくる。

「そんな事言われましても……」

 敵意ではないことは明白だが、詳しい理由も分からず睨め付けられるのは結構怖い。


「2人とも、ついたぞ!」

「あぁはい!」

 そんなこんな雑談をしている間に目的地であるギルドに到着。当然そこは聳え立っていた巨大な城。

「でけぇ……!」

 真下から見ると、城というより要塞の言葉の方が似合うんじゃないかと思う程、厚苦しい城壁。

 

 思わず立ち止まっていたが、

「ここはギルド以外にも、政治や訓練所、魔物の実験施設も兼ねているんだ!」

 そんなタクマを背中から押して前進させるホープ。

「はぇ……」


 まぁ、この城1つが全てギルドってのもおかしな話である。


 それと『魔物の実験施設』は聞かなかったことにしよう。あまりに物騒な言葉で聞き返す気になれない。


 扉が開き、中に入ると正面に受付所と思われるカウンターがある。その両サイドに上に続く階段。階段の更に外側には奥に続く通路。


 ゲームで連想させる酒場のようなギルドとは大分違い、まるでホテルのような造りになっている。


 こんなところに訓練所があるなんて想像出来ないし、なんなら外でドンぱちしてきた4人が場違いに思えてくるくらいだ。


 ホープが受付人と話していると、

「私達はこっち!」

 タクマの手を引っ張り、階段を駆け上がるマナ。そして後ろから付いて来るコガネ。

「ちょっ、いいんですか?ホープさん今受付人とー」

「私達は行かない、だからいい」

 まるで興味がないと言わんばかりにホープを置いて行く女子2人。





 連れ去られるままに階段を駆け上がっていったが途中、

「魔法紙買って来る、待ってて」


 コガネがどこか別の階で姿を消し、ようやく歩みを止めた。思い切り踊り場で足を止め、迷惑かけそうだ、まぁ人いないし。


「あの、ホープさんは?」

「大丈夫!多分色々終わったら直ぐ来るから!」

「いやそうゆう事じゃ……」

「よし」

 簡単な会話を交わす間もなくコガネが戻ってきた。

「はいこれ」

 と赤青黄白茶緑黒の7色の付箋のような物を渡された。


「何……これ?」

「魔法紙」

「魔法の紙で魔法紙ですか」

 成る程、いや全然成る程ってない、なんじゃこりゃ。

「で、これってなんですか?」

「使えばわかる」

「……」

 いやわかんないから聞いたんだが?

 Yah○○もG○○gleもないから調べられないんだが?


「これはね、赤が火、青が水、黄が雷、白が風、茶が砂、緑が癒、黒はオリジナルの適正を検査するんだ!」

 懇切丁寧に説明してくれるマナ。


 こうゆう子が1人いるだけで死ぬほど有難い。


「待って、黒以外はわかりました。けど黒のオリジナルって何です?」

「自分特有の魔力の事!まぁ、今言った6属性以外の、自分だけの固有魔力とでも思ってくれればいいよ!」

「……なんとなくわかりました。で、どうすればいいですか?」

「魔法陣を出せば勝手に吸い付くから!ほら、早く早く!」

 ウッキウキに話すマナだが、

「魔法陣?魔法陣ってあの魔法陣ですよね?どうやって出すんですか?」

「……は?」

 タクマの疑問にまるで何か強烈な物を見たようなしかめっ面になるコガネ。


 こいつ今、絶対心の中で「何言ってんだお前?」って言ったよな。

「……」

 どうやらマナも固まったらしい。


 果たしてこの空気、どうするのでしょうか。恐らく時間としては1秒も経ってないだろうが。体感では5〜6秒時間が止まった感覚だ。


「ありゃりゃ、魔法陣出せないか〜!」

 微妙に気まずい空気を蹴っ飛ばしてくれるマナ。やっぱこの子凄いわ。


「まぁ、しょうがないよ!辺境の地から出てきた人って意外と多いからね、魔法陣出せない人!」

 フォローしてくれるマナだが、マナの中でいつの間にかタクマは辺境の地出身ってことになっている。


 まぁ、そういう設定にしとこう。どうせ日本と言っても通じない。


「でも魔法陣出さないと魔法撃てないよ?」

「まじかよ」

 自分で顔が真っ青になったのがよくわかった。


 魔法適正最大にしてもらって、魔力もヤバイ量持ってるらしいのに、完っ全に宝の持ち腐れ状態である。


「そうだ!せっかくだし教えてあげるよ!魔法陣の出し方、あと魔法も!」

「本当に!いいの!」

 途端に元気になるタクマの姿に、

「全然いいよそれくらい!時間かかるけど、私の知識と魔法を全部叩きつけてあげる!まずはー」

 少し調子付いたのか、まるで太陽みたいな笑顔で長期計画を立てようとし始めた。

「いやそこまでは……」

「えぇぇ?」


「魔法陣の生成自体は簡単だから、早く済ませて、魔法の適正検査しよう」

 そんな2人をよそ目にスタスタ階段を駆け上がるコガネ。


「はい、お願いします!」

 魔法という単語1つで簡単にテンションが上がってしまうタクマである。


 高校生にもなって無邪気すぎないか?


 いや大丈夫だ、こういう時ははしゃいだ者勝ちだ。それにもう高校生じゃなくて自称次期最強の魔法使いだし。


「待って、先に着替えてシャワー浴びたい、軽装にもなりたいし!」

「わかった、タクマはここで待ってて。戻って来たら案内する」


 マナとコガネが一気に駆け上がり、階段の踊り場で1人置き去りにされてしまった。

「更衣室でもあるのかな?」





 再び2人と合流して訓練所に案内された。

 なんかバッティングセンターを連想させる見た目だ。

 1つの部屋に3人で入るが、意外と広さには余裕がある。

 部屋の中にあった丸机の上に魔導紙を置き、明らかにここに立ってくださいと言わんばかりの印に立ち、正面の的を直視する。


「じゃあ、まずは魔法陣の生成から!さっきも言ったけどこれはかなり簡単!手を前の的を指すように出して、片手でも両手でもどっちでもいいよ!で、手のひらに魔力を流すイメージでー」


 結構親切に教えてくれている様子だったが、

「すみません、魔力を流すイメージってのがちょっとよくわからないです」

 異世界人にそこを理解しろってのは酷な話よ。


「えっと、手のひらに力を込めるイメージかな?」

「成る程……?」

 マナの言った通り両手を的に向け、手のひらに力を込める。すると両手の間から『フォ〜ン』と音を立て、魔法陣が生成された。


「うおぉ!?」

 かなり……というかめちゃくちゃ簡単に出来るものだった。確かに簡単と言ってたものの一瞬過ぎて少し拍子抜けだ。


 それでも最初にしくじった時と違い、この世界で初めて、自分の手で魔法の一端に触れることが出来たのだ。感動しないはずがない。


 そしてタクマの魔法陣に反応したように、魔法紙が魔法陣に吸い付き、魔法陣の内側で、均等に円を描きながら回り出した。


「そうだった、適正を確認している最中だった」

 暫く周り続け、やがて黒以外の魔導紙が強い光を放ち出した。


「嘘でしょ、全属性適正なんて!凄い凄い!」

「こんな事って本当にあるんだ」

 コガネの手を握って跳ねるマナと、驚きながらも跳ねずに冷静に話すコガネ。


「光を放つと適正がわかるんですね!」

 しかし妙な事に『魔法の適正最大』で転生したはずなのに黒が光らない。


「黒が光らないんですが…」

「大丈夫、もうすぐ」

 

そして、ようやく黒の魔導紙も……!

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