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20話 貴女は一体

「ここは……?」

 ゆっくりと目を覚ますと、

「やっと目を覚ました」

 コガネの顔が綻ぶ。

「あれ、確か……?」


 必死に記憶を探る。


「あぁ、そうか……そうだ!ワームは!」

 急いで辺りを見渡す。


 既にワームの魔力の反応はなく、討伐は終わっていた。


「タクマ、すまない。俺らの油断で….…」


 本当にホープの声か疑うような暗い声。


「いえ!そんな事ないです。僕も倒したと思ってましたし」

「そんな事ある。私達が甘かった。ただでさえ異例の強さだったのに、油断してた」


 コガネも悲痛に顔を歪める。


「……」

 返す言葉が見つからない。

「ごめんね」

 泣きそうに謝るマナ。


 皆んな相当気が滅入っている。


「確かに、油断してました。死にかけました。でも、皆さんのおかげで死なずに済みました!回復もしてくれました!ワームを倒してくれました!」


 ここは空元気でも、タクマが元気でいるのが役目だ。


「だから大丈夫です、元気出してください!油断したのも甘かったのも3人だけじゃないです。僕もです。なので……みんなで反省して、次に繋げましょう!」

「あぁ、ありがとう、タクマ」

 少し無理して笑うホープ


 まだ悲痛に歪んだ顔をしているが、さっきよりはマシになっていた。





「さて!これだけ大きな獲物を倒したんだ!何か採取できるでしょ!」

「え?ワームから何か取れるの?」


 不思議そうに返すマナ。


「いや、なんでもないです」

 残念そうに返す。


 モン○ン要素もなしですか、そうですか。


「ってかこれ、どうするんですか?こんな大きなもの……」


 このまま残して肥やしにでもするのだろうか。


「燃やす」

 簡単に返すコガネ。

「燃やす……燃やす!?燃やすんですか!?ってか燃やせるんですか!?魔法に耐性があるんじゃ?」

 さっきと話が違うような……。


「もう死んでるから、燃やす」

「あぁぁ……そうですか」


 やけに声に怨嗟が混じっているのは気のせいだろうか。


「じゃあ、マナ、お願い」

 コガネが杖をしまって岩に腰掛ける。

「え?コガネさんやらないんですか?」

「私、火魔法使えない」

「……左様で」


 さっきなんか私がやるみたいな雰囲気出してたのは気のせいだったのか。


「じゃあ、燃やすよ!」

 とマナがワームの下に魔法陣を生成し、詠唱を唱え出す。


【灼熱の魔力よ、魔法の耐性をも壊す炎で、敵を焼き尽くせ、バーン】


 詠唱を唱え、魔法陣から強烈な熱気と炎が溢れ出す。


 森に被害が行かないか心配だが、コガネが大丈夫って言っているから大丈夫なのだろう。

 その辺の詳しい話もいつか聞きたいが、今日は流石にいいかな。





 駄弁りながら待っていたが、焼き尽くされるまで結構長かった。


 やっと燃え尽きたのか、炎が消えた。


「依頼達成だな」

 ホープは燃え尽きたワームを遠い目で見ながら呟いた。

「……まだ気にしてるんですか?」

「え!?いや、そうゆう訳じゃ……!いや、そうだな。すまない」

「まぁ、そうだよね、気にするよ。私達の甘さが起こした事だから特にね」

 マナも少ししんみりしている。


「……」

コガネもどこか遠い目をしている。

「帰りましょう。で、さっき言った通り反省会して、次に繋げましょ!」


 空元気の混じった元気な声。


「あぁ」

 ホープが答え、全員で来た方向へと引き返そうとした瞬間、

 タクマの動きだげがピタリと止まる。

「ん?どうした?」


 本当にどうしたのかわからない様子の3人。


 タクマが1番魔力を持っているからなのか、タクマが転生者だからなのかは知らないがタクマだけが感じ取ったもの。

「誰!?」


 タクマが振り返り木々を見つめる。


「……!」

 マナがタクマの声に応じたように杖を構える。

 やがて、

「私の気配に気付く人間がいるなんてね」


 木陰に隠れていた女性が姿を現わす。


「え、えっと、誰……?」

 どこかで会ったような顔立ち、な、気がする。

 多分、転生前の、

「……思い出せないな」


 何故かポッカリ抜けたような記憶を、必死に思い出そうとしていたところに、

「そんな怖い顔しないでよ、別に何もしないよ」

 女性は手を挙げ首を振り無抵抗をアピールする。


 何かするしないに顰めっ面していたわけではないのだが。


「タクマ、この人誰?」

 緊張に満ちた声で尋ねるコガネ。

「わからない。でも、多分やばい」

 コガネを見て言葉を返す余裕が無い。


 今更だが、目を逸らしたら殺されるんじゃないかと思うくらいの威圧を感じる。


「だから何もしないって、今日は。私のペットを倒した人間を見て起きたくてね。それだけ」

 と笑いながら言う謎の女性。

「ペットって!」

 何かを察したマナ。


 そして連鎖的に察したタクマ以外の3人。

 その瞬間、強烈な殺気を放ちながら武器を手に取り構える3人。


「そんな怒らないで。私もペット殺されたんだし。むしろ怒りたいのは私だよ」


 それでも笑いながら、余裕のある謎の女性。


「でも今日はいい。やる気がないから帰る。じゃあね」

 それだけ言って不意に消える女性。


「「……」」

 殺伐とした沈黙が続く。

「……全然気配気づかなかった。あいつ何者?」


 コガネが場の空気を払うように柔らかい声でタクマに尋ねる。


「わからない。でも、ペットって言ってたのって、ワーム、ですよね?」

「敵って考えるのが妥当だろう。これほどのワームをペットって呼ぶほど強い敵」

「多分、魔法でワームを感知出来なくしてたのも、あの人?」

「とにかくギルドに戻って報告いこ!ワーム討伐と、今起きた事」

 若干緊張感のある声で再び場を引き締めるマナ。


 普段少しおちゃらけてる人が真面目になると何処となく怖いものがある。





 ギルドに戻り、報告に向かうホープ。今回はギルドマスターにも掛け合うらしい。


 もちろんマナもコガネも同行しない。流れでタクマも行かなかった。


 初回から行かないのは問題児な気もしたけど気にしたら負けだ。

 その間3人は最初に言った訓練所に身を置いた。


「……」


 着いたはいいが、ホープが戻ってくるまで誰も何もしなかった。

 ワーム戦による油断とその後出てきた謎の女性の圧にやられていた。


「やけにしんみりしてるな」

 報告を終えたホープが訓練所に来る。

「……うん」

 コガネが重い口を開け一言返す。

「今日は帰るか」

「ですね」

 重た足を必死に動かして、ようやく家に着いた。

 帰り道、全員1人で帰っている様に、誰1人言葉を発しなかった。


 家に帰っても重っ苦しい空気は無くならなかった。

 生きて帰ってこられたし、落ち込みすぎではないかとも思ったが、結局そんな強がりもいえなかった。


 反省会をする元気もなく、高難易度の依頼は成功で幕を閉じた。

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