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11話 焦り

 おはようございません。


 無理です。圧倒的に寝不足です。

 いや、たくさん寝た。けど悪夢のせいで寝た気がしない。


 夢の中で昨日の依頼で殺したオークが出てきてずっとうなされていた。よく目が覚めずに朝まで寝ていたもんだ。


「はぁ……」

 布団の上でため息を吐く。

 朝から幸せが逃げそうだ。


「おはよう。朝からため息とはな。悪い夢でも見たか?」

 声のする方をみると、パジャマ姿のホープが扉にもたれかかっていた。


「はい、ちょっと、昨日の依頼の夢を……」

「オークの夢か。昨日は頑張ったな。お疲れ様」


 初めての依頼にしては刺激が強すぎた。


 いや、あれで最も簡単な依頼のはずだ。覚悟が決まっていなかっただけだ。


「ホープさんこそ、コガネさんの相手お疲れ様です」

「あぁぁ……ありがとう」

 マナの説教が余程堪えたのか、頭痛が起きたように顔を顰めた。


 あの後総額を聞いたが、金貨百数枚と、10枚程度じゃ事足りない金額だったらしい。


 この世界のお金の仕組みはまだ知らないが、明らかにヤバイのはなんとなくわかる。


 コツコツ貯めて自分のお金で買ったとは言っていたが、一気に使うにしても限度がある。

 その後、暴走したコガネとそれを止められなかったホープは、マナに2時間くらいこっ酷く叱られ続けた。

 コガネに至っては、暫く買い物禁止にされた。


 まぁ当然だ。


 そして夕飯は、マナが叱っている間にタクマが作った。

 カレーの素的なやつがあったのでカレーを作った。


 おかげで夕飯なしコースは間逃れ、3人にはだいぶ感謝された。


 因みにこの世界に米は普通にあった。

 米探しに必死にならなくて済みそうだ。


「さて、下に降りて朝食にするか。タクマもさっさと降りてこいよ」

 部屋を後にして去っていく。


 布団から立ち上がり、1階に降りようとしたが、なんとなく引き出しを開け、学生服を取り出す。

「学生服、どうしよう……前世の記念として持っておくか?でも正直いらない」

 売ったら高いかな?


 なんて不謹慎な発想まで出てきた。


「暫くは放置でいいかな?」

 永遠に忘れそうだけど、まぁいいか。


 ものなんて、いつ需要が跳ね上がるか分からないのだから。


 部屋を出ると右の部屋あたりからうめき声が聞こえるが、怖いから無視。


 そして階段を降り、リビングに行く。

「おはよう!昨日は良く……眠れなかったみたいだね……すごい隈だよ?」

 料理しながら苦笑いで話すマナ。

「おはようございます。はい。昨日の依頼の夢を見てずっとうなされてました」

 苦笑いで返す。


「それは、嫌な夢だね……もう少し寝る?」

 とマナは言ってくれたが、

「大丈夫です。これ以上寝ても同じ夢見そうですし。それより、何か手伝いましょうか?」


 とにかく何かして少しでも昨日の出来事のインパクトを緩和しようとする。


「じゃあ、コガネ起こしてきて!コガネの部屋2階の左隅にあるから!」

 恐らく呻き声が聞こえた部屋だろうな。

「あとコガネ中々起きないから、最悪怒鳴り散らかして起こしていいよ!」


 悪意満載ニコニコ顔で付け加えるマナ。

「怒鳴る?」

 昨日会ったばかりの人に怒鳴るのか?


「うん!コガネ、朝だ!起きろ!って言えばいいよ!」

 怖い笑顔、というより少し悪戯っぽい笑顔だった。

「わかりました」

 気にせずリビングから去る。


 そして2階へ。


「って言うかホープ!なんでコガネ起こしに行かなかったの?」

 と頬を膨らますマナに対して

「いやぁぁ、ちょっと……流石に今のコガネを起こしに行くには、勇気が足りなかった」





 コガネの部屋に着いた。


 棚には大量のCDやDVD。その隣にギターやベースなどの楽器が飾ってある。楽器音楽好きにはたまらない部屋だ。

 そして、

「マナ……ごめんなさい……」

 と寝言を言うコガネ。

「うわぁ……うなされてんな」

 うめき声の正体はやはりコガネだった。

 目の下にはびっしりと隈が出来ている。


 可哀想に。


 自業自得だけど。


「コガネさん、起きましょう!朝ですよ!」

 と割とテンプレの起こし方で起こそうとする。

「ぅぅ……マナァァ……ごめんなさい」

 まだまだうなされている。


 これ無理じゃね?


 がここで折れたら終わりだ!もしもタクマが起こすの失敗したら多分マナが起こしにくる。


 そうすれば……?


「面白い展開になりそう!」

 なんかもう起こしたくなくなってしまったが、

「いや、ダメだ」

「タクマが、壊した……」

「僕がサイレント壊した夢かな?」

 なんて考えてたら、

「タクマ……が壊れた……」


「いや起きてるだろ……」

「……」


 寝たふりはさせん、よし、起こそう。


「すぅぅ……」

 肺がパンクするくらい息を吸う。

 そして、


「コガネェェェ!!朝だぁぁ!!起きろぉぉぉォォ!!!???」

 家中に響く怒号で叫ぶタクマ。

「はわぁ!?」

 布団から飛び上がるコガネ。


「おはようございます。コガネさん。みんな下で待ってますよ。」

 超ニコニコ顔で立ち去り、リビングに戻る。


 いやマナから言質とったから問題ないでしょ?





 リビングに戻ると唖然とするホープと大爆笑しているマナがいた。


「聞こえました……よね?」

「うんうん!バッチリ聞こえてたよ!コガネ!朝だ!起きろ!ってね!いつも皆んなに丁寧口調だったのに突然!すごい面白いね!本当にやるとは思わなかったよ!」

 と未だに大爆笑するマナ。


 対してホープは開いた口が塞がらない様子だ。

「ホープさん?顔文字みたいな顔してどうしました?」

「かおもじが何か知らんがうるさいわ!」


 そしてヨロヨロとリビングまで来るコガネ。


「なんか……タクマに……殴られた」

「いや、殴ってません。しれっと嘘つかないでください」

「ううん、殴られた。タクマの声に殴られた」

「それは……すみません……」


「おはよう、コガネ。コガネもあんまり眠れなかったっぽいね?」

 とフラフラのコガネにを見つめるマナ。

「うん……夢の中で、ずっと叱られてた」

 超細い声で言うコガネ。

「それはコガネが悪い!しっかり反省しなさい!」

 頬を膨らませるマナは、まるで母親だ。


 というより、お姉さんかな?


「そんなことより、朝食食べましょう!」

「だな。コガネも早く座りな?」

「うん……」

 フラフラしながら今にも泣きそうなコガネがホープの隣の席に着く。


「では!」


「「「いただきます!」」」





「ちょっといいですか?」

「ん?」

「今日も依頼受けますよね?その時お願いがあるんですけど、」討伐の依頼で相手が複数だった場合、1匹だけ完全に僕に譲ってください。」

 3人に訴えるタクマ。

「「「……」」」

 と、沈黙を続ける3人。


 そして、


「本当はダメって言いたいところだけど、何か考えがあるのか?」

 見るからに心配そうなホープをよそ目に、

「はい。昨日の討伐で思い知りました。魔物相手でも怖くて、手が震えて、殆ど任せっきりでしたし。意識のない子供のオーク1匹殺すので精一杯で。かなり甘い覚悟で冒険家になったんだなって、思い知りました」


 言ってしまえば、かっこいいから冒険家になったようなモノ、小学生並みの動機だ。


「なので、今度はちゃんと覚悟して、目を瞑らないよう、ちゃんと皆さんの役に立てるようになりたいです。無理はしません。でも、少しくらい、無理しないと、これから冒険家をやれそうにないんです。なので、お願いします」


 しばらく黙りが続き、恐る恐る顔を上げると、

「はぁ……わかった。依頼が討伐かつ相手が“弱い敵”だったら1匹は任せる。ただし、やばくなったら横槍は入れさせてもらうよ」

 相当渋ったのか、眉間に皺がよっていた。

「ありがとうございます!」

 再び頭を下げる。


「あともうそろそろ丁寧口調やめろ!ちょっとこそばゆいんだよ!」

「それは……いずれで」

そして、再び依頼を受けにギルドへ向かう4人。





「ねぇタクマ君、なんというか、焦ってる?」

「……えっと、ん?どうゆう事ですか?」

 漠然とし過ぎた質問に尋ね返す。


「タクマ君まだ冒険家になって1日なんだし、そんなに焦っても空回りしちゃうよ?」

「えっと……へ?」

「俺はタクマの考えを出来る限り尊重してやるつもりだが、そんなに焦って頑張る仕事じゃないよ。あと、慣れていい仕事でもない」

 ホープもどうやらタクマが何かしら焦りを感じているように見えたみたいだ。


 別に何か焦って頑張っている訳ではないのだが?


 マナの言う通り冒険家になってまだ1日しかたっていないのだから。


 が、周りからは切羽詰まりの状態に見えたらしい。

「そんなつもりなかったんですけど、気をつけます……」

 意識してない気持ちに対して気をつけるというのもおかしな話だ。


 とは言っても魔法やら無双やら、思い当たる節がめっちゃあるが、落ち込んでるだけで焦っている訳ではないから大丈夫だろう。

「大丈夫、どんなに暴れても、私達がサポートするから」

 任せて!みたいなドヤ顔かましてくるコガネ。

 タクマが焦っている話をしていたのに、暴れ出したら情緒不安定すぎだろ。


 てかコガネだけなんの話してんだよ。


 そんなこんな話している内にギルドに到着する4人。次の依頼を受ける為にギルドに入っていった。

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