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水面のうさぎ使い  作者: 柿丸
第二章 黄金の都編
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第29話その2 クシリカ王国立大学魔術系教授の特別講義第2回「人間と魔力」

 オルダは話し始めた。


「改めて、私はクシリカ王国立大学大学園で魔術系の教授をしているオルダだ。今回は人間が魔力を行使するにあたって直接関係してくる魔術、魔法、イトについて解説する。外部講師として、アスト大学園で魔力系の教授をしているオリトスにも解説していただく」


「よろしく頼む」


「は、はぁ……」


 なぜか僕とアフティが急に椅子に座らされて、オルダとオリトスがピシッとしたスーツのようなものを着て立っている。

 彼らの背後には暗めの石でできた壁があり、手には白く細長い石を持っている。

 見覚えのある形。

 あれはチョーク?


「え? 何? 何が始まるの?」


 アフティはわかっていない様だったが、僕にはわかる。

 彼らは授業を始めようとしているのである。


「アフティ、こうなったら僕らはあきらめて話を聞くしかないよ?」


「え? どういうこと? ラビィ」


 僕らが騒いでいるにもかかわらず、彼らは話し出した。


「君たちはすでに魔力そのものについては理解し始めているだろう。今回はその魔力は人間にどのような影響を及ぼすものなのかを始め、魔力総量、魔力密度などについての説明をする。では初めに、魔力総量と魔力密度についてオリトスから解説してもらう」


 アフティも察しがついたようで、死んだ顔をしていた。


「……ラビィ、もうダメだこりゃ」


「ごほん。紹介に預かったオリトスだ。ではさっそく人間における魔力総量を説明する。魔力総量とは、その文字通り個人の中にどれほどの魔力が存在しているのかということだ。これは数値化されており単位はmpである。この単位については1kmp=1000mp、1mp=1000mmpである。成人の平均的な魔力総量は100mpである。大体一歳児は50~60mpで、成人にかけて増加していく。特別な訓練をしていなければ、大人はほぼ90~110の間で安定する。これが人間における一般的な魔力総量というものだ。ここで一歳児を例として挙げたのは、生まれたばかりの子は魔力総量が300前後になるためだ。これは人間に限られず多くの生き物にあてはまる」


 アフティは耳をパタパタして遊びだした。

 しかしオルダとオリトスは変わらない口調で話し続ける。


「大人が魔力量をあげることは難しい。魔力量が平均値の二倍である200mpを超えたら国の近衛兵や特別部隊として十分抜擢される人材だ。ここまで魔力量を上げられる人はめったにいない。一国に数人程度の割合だろう。これが人間における魔力総量についての大雑把な中身だ」


 オリトスは具体的な数値を石の壁に白い石をチョークの要領で書きだした。


「次に魔力密度について説明する。魔力密度とは生き物における個体の物質的な重さと体積と魔力総量を計算することで出る数値のことだ。その過程の説明は省くとして、生き物の大きさと魔力総量の関係とでも思ってくれ。これにはみんなも知っているであろう重要な法則がある。それは体が大きな生物ほど魔力密度が小さく、体が小さい生き物ほど魔力密度が大きいということである。そして人間の大きさを超えると魔力密度は極端に小さくなる。人間が「十分な魔力を使える最も大きな生物」と呼ばれることもこれが所以となっている。そして魔力は生物の体を構成している小部屋のようなもの、細胞で生成される。体が大きな生物ほど体を維持するために魔力は生物的な化学エネルギーとして即時に変換される。これが法則の要因の一つである。まあ、こうして全身に魔力は存在しているわけなのだが、それを自由自在に使えるわけではない。魔力のある生き物には魔力を意図的に出力できるようにする臓器と器官が存在する。そこから始めて魔力を使うと表現できるわけだ」


 オリトスは深呼吸をした。


「どうだ、オリトスの説明はわかりやすいだろう」


「は、はい……」


「わかりやすいです……」


 僕とアフティは内容をちゃんと聞くことをあきらめた。


「これで、先ほど私から話したアイク様のすごさを理解できただろう。魔力効率より、一般的な大人の魔力量である100mpのうち、実際に活用できるのは30mpだ。アイク様のイトなら90mpまで上げられる。さらにアイク様の魔力量が高ければ高いほどさらに増加する。フォルタート家を始めとして、貴族は魔力総量を上げる技術があると言われている。150-180mpあったとしてもおかしくはないだろう」


「だと、ドラゴンの魔力総量はどのくらい?」


 アフティは急に真面目な顔をして質問した。


「これは実際に調査できたわけでなく魔力痕からの推測だが、アプリストが放出していた魔力量は500mpほどだ。あくまで放出され、時間経過も含まれるものだから、実際の魔力総量は1600mpだと考えられる。それとあの瞬間感じた魔力を考えると直接出力していた魔力は2000mpくらい。魔力総量はざっと6000mpだろうか」


「それじゃあアイク様とは圧倒的な差が……。これじゃあ絶望的ではないですか––」


「まだその結論に至るには早い。アイク様の魔力総量が170mpだったとして、放出できる魔力量はその9割で153mp、記録上ではあるがアイク様のイトのうちの一つである魔素消滅を最大限に活用できればその十倍で1530mpだ」


「1530mp……」


 その、僕を含め一般人を圧倒的に切り離すほどの魔力について言葉を失った。


「そしてアイク様はルア君にイェタン除けを作るように言っていただろう。あれは恐らくイェタンを意図的に呼び込むことでドラゴンの魔力を吸収してもらうつもりなのだろう。そして、ここで言ったことはすべて想定であり、数字上である。この世の中、数値通りに結果がいかないことの方が多い。特に魔力が関わっているならなおさらだ。それにアイク様を始め貴族は策にも長けている」


「なるほど……」


 もう頭がパンパンだが、これらも含めオルダはアイク様を信じているのだろう。

 今回の授業を受けてうなだれた僕とアフティを見て授業は終了した。

 静寂のなか突然拍手が聞こえてきた。


「すばらしいよオリトス! ラビィたちにもわかりやすいように噛み砕いた説明。さすがだな」


「ありがとうオルダ」


 おじさん二人は満足しているようだった。


「ラビィー……もう、寝よう」


「……うん」


 僕たちは急いで部屋に戻って行った。

 部屋に入るとすぐにアフティはベッドに倒れこんでうつ伏せのまますぐに寝てしまった。

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