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水面のうさぎ使い  作者: 柿丸
第二章 黄金の都編
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第28話 新しい仲間

 オルダから換金してもらったクシリカ通貨を受け取った僕は、助けてくれたお礼にオリトスとアフティをご飯に誘った。

 旅の途中にオルダからグラシィは料理がおいしくて有名だと聞いていたから。

 その提案には三人とも賛成してくれた。


 さっそくどこの店にするか歩き回っていると、行列ができているレストランを発見した。

 そのレストランは運河のそばに位置しており、その運河には観光客らしき人々をのせた船や荷物を運ぶ船が通っていた。

 イートアの街よりは人の交流がたくさんあるからなのか、店のつくりや石畳の道が発展していて美しかった。


 その店で昼食をとることになった。

 四人で行列に並ぶ。

 すでに先には十組ほどが並んでいた。

 ニータはリュックの中で少し寝ると言い、四人で話をして時間をつぶす。


「オリトスとアフティはどこまで行くんですか?」


「俺たちは、王都まで行く」


「そうか。ラビィ、どうやら私たちと行先は同じのようだ」


「黄金の都……クリュスって王都だったんですね」


「ああ、エイゾルの書では確か黄金の都の王が出てきただろ? あの話が作られたころからクリュスは王制だったようだ」


「そもそもエイゾルの書ってどれくらい前に作られたんですか?」


「うーん、私は専門外だからな……」


「俺も詳しくはないが、五百年くらい前って説を聞いたことがあるな」


「千年前くらいじゃない? まあ、私も子供の頃に親に聞かされたくらいだけど」


 そんな話をしていると、順番が回ってきてレストランに入れるようになった。

 中の装飾も凝っているようで、手持ちのお金で足りるか不安になるくらいだった。


「オルダさんこれ、お金足りる?」


「ああ、安い方じゃないか?」


 僕はやっと文字が読めるようになった程度で、値段の間隔はまだ身についていなかった。


「あと、さん付けとか丁寧な話し方はやめなさい。フォルタート家の人に対してとか会合とかならまだいいが、これからも旅をするのにその話し方をされるとなんだか……」


「そうだな、俺たちと話すときもその方がいい」


 オリトスもそう言ってくれた。


「はーい」


「対応力がすごいな」


「アフティを参考にしました」


「アフティは初対面の時に変なおじさんって言われていたな」


 オリトスが苦笑いをしながら言っている。

 それまでメニューを見ていたアフティは不思議な顔をしてこっちを見ていた。

 あれ、何か変だ。

 アフティの耳が垂れている。


「あれ、アフティの耳が垂れてるね」


「あぁ、私はいつもはこうなんだよね。興奮している時とか、驚いている時とかには立つんだけどね」


 アフティは垂れた耳をさすっている。

 耳の長さは顔よりも長い。


 それを考えると、あの耳って結構重そう。

 首とか疲れやすそうだな。

 僕がアフティの耳を不思議そうな目で見ていると、オリトスが聞いてきた。


「ラビィは獣人を見るのが初めてなのか?」


「うん。初めて。これまで、見たことない」


「そうか……そういえば、二人はどこから来たんだ?」


「私とラビィはイートアから来たんだよ」


「え?! イートアって夜の街って言われている所だよね? 私行ってみたいんだよねー!」


「イートアか、最近は出入りが特に厳しくなっていると聞いたことがあるが、出れたのか」


「だいぶ特例という感じだ。私たちがドラゴンの件についてイカノスティア・フォルタートから会議に出席するように依頼されてね」


「ということは、俺たちと目指すところは同じようだな」


「ああ」


「じゃあ、ラビィとニータとしばらく一緒にいられるってこと?!」


「どうだ、オリトス。私は構わない。ラビィもいいだろ?」


 僕はうなずいた。

 それを見て、オリトスは「よし」と大きくうなずいた。


「では、この四人で王都を目指そう!」


「ニータもいるからね!」


 アフティが割り込んできた。


「なら、四人と一羽だな」


 こうして、僕たちは一緒に黄金の都を目指して旅をすることになった。

 だんだんと話が盛り上がってきたところで頼んでいた料理が届いた。


 僕が頼んだのは肉料理。

 オーニという鳥類の魔物らしい。

 その皿はガラス製で、とても綺麗な色を透明感だったが、イートアでよく見るガラスとは異なっていた。


 その上に手のひらほどの大きさの肉の塊があり、香草や果実の輪切りと少しの野菜がのっている。

 ルアが作る料理に比べると香草の選び方が不思議だと感じたが、効果よりも味を重視した結果なのかも。

 その肉は鳥型と言っていたが豚肉のような旨味があった。


「これ、おいしい」


「確かにイートアでは肉の流通量は少ないからな。一方でここグラシィはクシリカ王国と他の国々との交流者がよく訪れる土地だから色々なものが入ってきやすいんだ。だから安くておいしいものを食べることができる」


「私にもお肉ちょっと分けて」


 アフティはうさぎの獣人だけれども肉を食べるようだった。

 頼んだ料理も肉料理だったし。


「んー、おいひぃー」


 アフティの耳が少しピクピクしていた。

 オルダとオリトスは同じ料理を頼んでいた。


 この二人は僕から見ればずっと年上だけれど、まるでずっと一緒に育った兄弟のようだ。

 恐らく四十代前後と言ったところだろうか。


 それでも日本人の同年代とは全く違う感じだ。

 なんというか、力強さというか生き生きしているというか。

 まさにイケオジ。


 みんなで料理を食べている間もお互いのことを知るようになった。


「私はかつてアスト大学園で教師をしていたから、オリトスとはその頃の同期という関係なのだよ。魔力系と魔術系で近いところがあったから特に仲が良かったよ」


「あの頃はよく失敗もしていたな、懐かしい」


「最初にオリトスと会った時は、ドラゴンの件の直後だったんだ。私は破壊された街のがれきの中から人を救助する作業をしていたの。すると、おじさんが走ってきて、そこら中のがれきから人を引っ張り出すなりすぐに瓦礫をルーペでじっと見だして、何がしたいのかさっぱりわからなかった。それがオリトスに初めて会った時!」


「あの時は、街のがれきから魔力痕を探そうとしていたからな。まだ救助されるべき人がいるのに観察をするなんてさすがにひどいから、救助をさっさと済ませて研究しようとしていたんだ」


「まったく、オリトスらしい」


 オルダは笑いながら話を聞いている。


「その後にストラの上司から聞いたんだ、大学園の先生が研究のために視察に来ているって。今後同じことにならないように対策会議を行う必要があって、参考人として現地の人を探しているって。それで私が一緒に行きたいって言ったの」


「そうだな。だがな、お前は声が大きいからな、上司にあの変なおじさんは誰って聞いていたのがハッキリと聞こえていたよ」


「えー?! ごめんね」


 なんだかこの人たちの会話は面白い。

 ずっと絶えることなく話している。


「今回みたいに国を超えた会議ってよく行われるんですか?」


「よく、はないかな。移動するだけでも相当時間がとられるからね。今回みたいに重大な事例なら各国素早く対応しているみたいだけれども」


「そうだな。私とラビィはアルケジア王国フォルタート領の代表として。オリトスとアフティはアルケジア王国カジア領の代表としてということかな?」


「カジア領の代表は私のほかに三組ほどいるはずだ。ドラゴン被害の四つの街から一組ずつ出るという話だった」


「そうなのか。なら、その他の人々は?」


「一緒には出発しなかったよ。各々寄っていきたいところがあったらしくてな。使者として選任された者たちは私を含めて旅慣れしていたから、無理に予定を合わせる必要もなかった。それどころか各々のペースで旅をした方が良いという始末だったからな」


「なるほどなぁ。なんとなく誰が選任されたのか予測できるよ」


「ラビィたちの旅はどんなのだったの?」


「僕たちの旅の始まりはとても大変だったよ。フォルタート領は魔術の霧で囲まれていることはみんな知っていると思うけれども、その霧を抜ける瞬間にドラゴンが侵入してきたんだ」


「侵入?! それってやばくない?」


「うん、未だにあのままフォルタート領を出発してよかったのかわからないんだ」


「だが、私たちではあの場ではドラゴンに焼かれる一択だったろう。私たちにできることは会議を実りのあるものにする事、その成果を確実に持って帰ること、アイク様を信じることだな」


「待って待って! ドラゴンが来てフォルタート領はどうなったの?」


「ドラゴンが来て、すぐに僕たちは霧の外に出たんだ。あれからどうなったのかはわからない。ただ、アイク様は魔力でできた巨大な手でドラゴンに対抗していたよ」


「ヒェリテオスか……確かイカノスティアのイトだな」


「私もあの時初めて見たよ」


「ん……? 何それ、どんなの?」


「フォルタート領の現領主はエクセート・フォルタートということは知っているよな?」


「う、うーん……なんとなく?」


「まあ、そういう領主がいるわけなんだが、その息子で次期領主とされているのがイカノスティア・フォルタートというものなんだ。そして、そのイカノスティア・フォルタートのイトがヒェリテオスというものなんだ。魔力を高密度で手の形に具現化する力だ。知っての通り、一般的に魔力を直接的な形として作用させることはできない。あくまで魔術や魔法のように魔力はエネルギーや特別な反応を促進させるもの、もしくはそれ自体の性質を他の現象に当てはめることで初めて形を持って作用できるようになる。しかし、イカノスティアのイトは魔力を極めて高い効率で、さらに実体として出現させることができるのだ」


「つまり、魔力でできた手ってこと? それってすごいの?」


「あぁ、ヒェリテオスの魔力効率は平均六十パーセント、極めれば九十パーセントまで極めることができると考えられている」


「んー、イマイチよく分からないなぁ」


「……簡単に言うと、一般的な人の魔力効率はよくて三十から四十パーセントだから、普通の人と同じ魔力量で二、三倍の能力を発揮できるということだ」


「あー、なるほどなるほど」


「そして、厳しい努力によって本人の魔力量も増やすことができる。大学では基本は教えないが魔力量も増やすことが可能なのだ。常人であれば魔力を二倍にするだけでもかなりの負担がかかる。三倍にできる人なんて百年に一人いるかいないかだ。魔力量を同じく百と仮定する。常人の魔力効率が三十パーセントだとすると、実際に魔術に使われる魔力は三十だ。一方アイク様は魔力効率が九十パーセントなら魔術に使える魔力は九十。ここから魔力量を二倍に、二百に増やすことに成功したとする。常人は魔力が六十使用可能で、アイク様は魔力が百八十使用可能だ」


「なるほど、確かに強いかも」


「さらに、魔力を使用した後にもほぼすべての魔素は再び魔力を宿すことができるものとして存在するが、極めてまれに魔力を宿すことのできない、利用不可能な魔素となることが計算されている。それを意図的に起こすことで、魔素のエネルギーを極限的に引き出すことで、記録上では十倍まで魔力効率を上げることができると言われている。この現象は魔素消滅ともいわれている。もっとも、これは人間にとって負担が大きすぎるが」


 これはバフみたいなものだろうか。


「そして、魔力を実体化した手は、フォルタート領の霧と同じだ。高密度の魔力でできているから、触れるだけでも相手に損害を与えることができる」


「おおー! なんかすごそう!!」


 アフティは関心しているが、僕もこの話を聞いて感心した。

 あの時、アイク様から感じ取った魔力量はすさまじかった。

 あれはアイク様が保持している魔力から漏れ出した程度のものだったと考えると、相当な実力を持っていたことになる。


 アイク様はどれだけ努力を重ねた人なのだろうか。


 これなら、オルダがアイク様に任せるという判断を下したことにも根拠があることを理解した。

 けれどもドラゴンから感じた魔力の方が大きかったことに変わりはない。


 事態が急を要するという事実に変わりはないのだ。

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