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水面のうさぎ使い  作者: 柿丸
第一章 夜の街編
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第10話 その2 魔術系教授の特別講義 第1回「魔力について」

直接ストーリーへの影響は少ない話ですので、読み飛ばしていただいても大丈夫です。

 アプリストについて気になった僕は、奴らが残して行った黒い跡をたどってイートアの住宅街の終わりまで行った。


 その跡は不意に途絶えており、その場所にはおじさんがいた。

 声は渋めで、紳士的な服や帽子を身に着けている。


 以前、ルアの薬屋であったことがある人だ。

 イェタン除けを買いに来ていた。


 そんな彼に、僕はアプリストに興味があること、どのようなことが考えられるのかを話してしまった。

 僕の考えを聞いた彼はすっかり興奮してしまい饒舌になった。


 彼は、この世界にある魔力を始めとして色々な説明をしてくれた。

 もはやそれは立派な講義だっただろう。


 まあ、僕はその話を最初から最後までしっかり聞いていたわけではない。


「改めて自己紹介させてくれ。私はデン・オルダ。クリシカ王国立大学園の魔術系の教授をしているものだ。この前、研究としてこのイートアの街に来てから、なかなか外に出してもらえずに困っていてね。フォルタート家の人は特に最近、住人を外に出したがらないとは聞いていたが、まさか私までその目に合うとはね。……ああ、決して彼らが悪い奴らだ、と言っているわけではないよ。彼らにはお世話になっている。実際にここに来たのも彼らの招待と研究費の支援があっての事なんだ。おかげでこのイートアの街特有の現象の研究もできていることも事実だ。だから、今はクシリカに無理に戻ろうと思っているわけではないよ」


「……そうなんですね」


 そう。

 彼は話し始めると止まらないタイプの人間だった。

 とりあえず、オルダさんが名乗ってくれたのだから僕も名乗る。


「僕はラテニア・ビーラトルです。オルダさん」


 すると彼は僕の肩を叩いて話してきた。


「気軽にデンで良いよ! ラテニア君。君、興味あったら、ぜひ私の大学に来てくれ。きっと実りある教育が受けられるだろう。まあ、我々がこの街を出られたらの話だがな。はっはっは! イートアの街でも、私がいる間だったら、私の教えられる範囲で終えることもできるよ。何か、尋ねたいことはないかね?」


 めんどくさそう。

 でも、ないって言うのはな……。

 この世界では少なくとも魔力については知っておかないといけないかな。


「……じゃあ、魔力についてちょっとだけ、教えてくれますか?」


 僕は、ちょっとだけ、と言う部分を特に強調して言ったつもりだった。


「おお。そうかそうか。いいだろう。まずは前提としての話からしようか」


 そして、彼はとても長い話を始めることになった。


「まず、魔力を説明するためには、魔エネルギーというものを知っておいた方がいいだろう」


 彼は木の棒を拾ってきて説明を始めた。


「魔エネルギーと言うのは、エネルギーの種類の一つのことだ。エネルギーとは、色々な形があるのだが、例えば物を動かしたり、火をつけたりするものと魔術を使う場合では二元的なものでまったく違うものとして捉える必要がある。魔エネルギーは実際に使われていない時にも存在しており、いわば可能性……ポテンシャルと言った方がいいか。まあ、元々はそれを指す言葉であった。しかし、魔エネルギーを活用している魔術によって生じたものの動きや変化は、他のエネルギーによって生じたそれとはまったく異なる性質になる。そのためにポテンシャルとしてのエネルギーだけでなく、実際に魔エネルギーが使用され発生している力についても他とは別に定義する必要ができた。それを魔運動エネルギーと言っているんだけれども、いきなりは難しいだろう。広義での魔エネルギーは狭義の魔エネルギーと魔運動エネルギーの総称とされているから、これからの話では広義の魔エネルギーとして説明しよう」


 この話を要約すると、魔エネルギーというエネルギーの種類があるということだ。

 つまり、最初の一言で十分だったということ。


「では、次に魔素について説明しよう。魔素とは、基本的に魔エネルギーを含んでいるとても微小な粒子のことを指すんだ。また、魔素には魔エネルギーを使い果たしたものも含まれる場合もある。魔エネルギーは魔術や魔法なんかに利用される。魔エネルギーを使い果たした魔素は利用、観測が不可能なものになるが、その存在は理論的に証明されている。同じような性質でそもそも魔エネルギーを保持していない魔素も存在しており、これらを総称して裏魔素とも言われるが、ここでその話はしない」


 つまり、観測できる魔素と魔エネルギーは比例しているということ。

 魔素が多いとわかる場合は、その対象は大きな魔エネルギーを持っているということだ。

 オルダさんは地面に棒で、小さな実線の丸と小さな点線の丸を描いた。


「実線で描いた丸が魔エネルギーが含まれた魔素、点線の方が魔エネルギーを失った魔素だ。点線の方は目には見えなく、反応もしないから観測するすべがないわけだが、この二つを合わせて魔素と呼ぶ」


 そして、さらに実線の丸を増やしていった。


「これでやっと魔力についての説明ができる。魔力とは、利用可能な魔素そのものを指すこともあれば、魔素に含まれる魔エネルギーの大きさを指すこともあるし、魔エネルギーの移動手段を指すこともある。細かく分ければそれぞれに対応した専門用語があるのだが、一般的には総称して魔力だ」


 遠回りをしてきた気がするが、結局は魔力が大きければその分エネルギーが大きいという直感的な理解につながるのだろう。

 地面に描かれた複数の実線の丸を大きな四角で囲んだ。

 そして、その四角の右側に右方向への矢印を描いた。


「この矢印の大きさも魔力であり、この四角の大きさも魔力と呼ぶことができるわけだ」


「なるほど」


 僕がうなずくと、オルダさんは嬉しそうに話を続けていった。


「この魔力が、魔術や魔法なんかに使われる燃料のようなものになる。あ、魔術とは魔力を用いて対象物を反応させることで、魔法とは魔力を直接反応させることとされている。魔術は対象物を反応させるためその技量や知識が必要とされることが多い。数学などに当てはまるものだ。いかに技術を緻密にできるかどうかでその効果は左右される。一方で魔法はセンスだ。例えば100人に同じ粘土を渡し、同じモデルを作らせたとする。環境は同じだったとしても、誰一人として同じ作品はできないだろう。それには、本人の技量とセンスが反映される。まだ粘土は目で見ることができるが、魔力は目に見えない。だからこそ、よりセンスが反映されるのだ。ここで勘違いされやすいのが、魔術は技量が百パーセント、魔法はセンスが百パーセントというわけではない。程度の問題なのだ。私はセンスがないからとか、俺はセンスがあるとか、そんなものでとてつもない差ができることはほんの一部だ。技量とセンスは掛け算だから、まあ、何かのせいにする前に努力はしろということだな。まあ、努力をする才能というのも存在はしているが」


「はぁ……」


 そして、オルダさんは二つの炎の絵を描いた。

 右の方の絵は、小さな複数の丸から炎に向かって矢印を描いている。

 左の方の絵は、炎の下に棒がたくさん描かれている。

 焚火のような絵だ。


「右の絵は、魔力が直接炎になっていることを示している。左の絵は、薪木に魔力を使って炎を生み出している」


 オルダさんは一通り話し終わると、すっきりした様子で胸を張っていた。


「どうだね、私はクシリカ王国立大学でもこのように授業をしている。他にも、今回は省略した魔力の細かい分布なんかも教えたり、魔術系が専門だから実線も踏まえたこともしているんだ。ぜひ来てくれ!」


 ここは住宅街の終わりで何もないだだっ広い空間なのに、しっかりと話を聞かされた。


「その機会があれば、よろしくお願いします」


 そう答えると、彼は微笑みながらうなずいた。


「私はまだここに残って、アプリストの痕跡の回収なんかをしているが、君はどうするんだね」


「……では、もう帰りますね」


「そうかい、では、またの機会に」


 やっと解放された―。

 それからはオルダさんを残し、ルアの家に帰ることとなった。

 さっさと帰ろう。

あくまでこの作品内での魔力等についての定義をしたものなので、他の作品や一般的な定義と異なっている場合はご了承ください。

他にもエネルギーとかをノリで書きましたが、有識者から見ると大分変なことになっているかもしれません。


フィクション上の話ではありますが、腑に落ちない部分や、こういう定義の方が良いなんてご指摘があれば、ぜひ送っていただきたいです。

よろしくお願いします。

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