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2話 王歴2025年春の季節1月目第1週1日目


 「主人マスター主人マスター。起きてください。」


 「んん、、」


 誰かの声が聞こえる。

 聞き覚えのない、抑揚のない機械的な声だ。


 うっすらと目を開ければ、視界には土と石の砂利の道が広がっている。


 ここは、どこだ。グラウンドか?

 あれ、でも確か、さっきまで俺は渋谷にいて、それで、トラックが、、


 どうやら地面の上にうつぶせに倒れているらしい。

 視界の先には、土の上に投げ出されているらしい自分の右腕が見える。


 「な、んだ、これ」


 地面に置かれた自分の右手の中には、きらきらと光る何かが握られている。

 ガラス、、?しかし、バリバリに割れてしまっているようだ。



 「主人マスター起きてください。ここは安全ではありません」


 少しずつ、意識がはっきりとしてくる。

 確かに、さっき、トラックにねられたはずだ。


 トラックがぶつかるときの、大きな音が耳に鮮明に残っている。


 「いてて、」


 頭が痛いような気がする。それに、膝もじんじんするような。

 痛む頭を抱えながら、うつぶせの体制からゆっくりと起き上がる。


 「なんだこれ」


 部活の濃紺のジャージを履いていたはずの自分の脚は、茶色い柔らかなリネンのような素材のパンツをはいているようだ。

 そして、年中真っ黒に焼けていたはずの肌も、いつもより白いような。


 よく見たら上の服も違う。腰まである、ひらひらとしたくすんだクリーム色の服を着ているようだ。よく見えないが、首元には紐のようなものがついている。



 手に持っていたバリバリのガラスのようなものをとりあえずポケットに入れ、自分の身体を一つ一つ確認しながら、立ち上がる。

 膝が痛いのは、ちょうど膝の下に大きめの石があったからのようだ。


 なんだこの場所、うちのグラウンドは人工芝のはずだし。近所にこんなごつごつした砂のグラウンドなんてなかったような気がする。


 「主人マスター


 

 先ほどから何度も聞こえてきていた、機械のような声が響く。

 マスター?なんだそれ


 周りをきょろきょろと見回すと、少し離れたところに黒いヘッドホンが落ちていた。

 これは、スクランブル交差点にいたお兄さんがつけていた、ハイエンドモデルのヘッドホンだ。


 どうやらこれから音が漏れているらしい。Bluetoothが切れてないのかな。

 どこかに本体のスマホが落ちていないか、周囲を見渡して探す。


 「主人マスター。私を装着してください」


 ヘッドホンから再び声が聞こえてくる。初期設定モードなのだろうか。

 とりあえずうるさいから電源を切ろう。


 起き上がった場所から数歩歩き、地面に落ちていたヘッドホンを拾い上げる。

 他人のヘッドホンってちょっと抵抗あるけど、電源が切れたかを確認するためにはとりあえずつけるしかないよなぁ。


 いくら憧れていたハイエンドモデルのヘッドホンとはいえ、他人が先ほどまでつけていたものを装着するのは微妙な気持ちだ。心ばかり、自分の袖で耳の部分を拭ってから装着する。


 「電源ボタンはどこだ。側面か?」


 「主人マスター。私は電子機器ではありませんので電源はありません」


 「うぉ、今時のヘッドホンってOFFにするときに抵抗するのか。ユーモアだな」


 「私はヘッドホンではありません。あなたのポケットに入っている、そのガラスのモノクルに宿る思念体です」


 ん、、?何かおかしい。

 一度ヘッドホンを外し、くるくると回して周囲の状態を確認する。


 本来であれば、充電コードを差し込む場所や、電源ボタンがあるはずにもかかわらず。このヘッドホンの表面はつるつるしている。


 俺の知ってるヘッドホンと違うのか?側面をタップしてみたり、なぞってみたり、どこか操作パネルはないかくるくると探して見る。

 そして、顔を下に傾けてヘッドホンの様子を確認していると、ふと、視界の中に水たまりのようなものがあるのが見えた。


 地面は乾いていて、雨が降ったような形跡はないにもかかわらず、この一か所だけに水たまりができている。


 「主人マスター。その水たまりには魔力の名残を感じます。おそらく主人が憑依したその青年が、水の魔法を練習していたことによりできたものだと思われます。」


 装着していないヘッドホンから、再び声が聞こえてくる。

 水の魔法、?憑依した、?どういうことだ?


 ヘッドホンから聞こえてくる音がどういう意味なのかは不明だが、一歩一歩、水たまりの方へ身体を進めていく。


 

 「うぉ、誰だこれ!」


 水たまりに映っていたのは、自分とは別人の顔だった。

 もともとは典型的日本人の黒髪黒目だったにも関わらず、水の中に映るヘッドホンを持つ青年はブラウンの髪に青い瞳をしている。アジア人っぽくない見た目の青年だ。


 「それは、主人マスターが憑依した青年の姿です。申し訳ありません。咄嗟のことだったので座標が大きく狂ってしまいました」


 おいおい、いくら俺が転生ものを読み漁ってるからと言って、まさか、これって。。。


 「え、もしかして転生してる系?」

 

 「いいえ、これは転生ではありません。主人は生まれ変わったのではなく、精神のみがこちらの世界にやってきたのです。主人がいらっしゃった世界の言葉で表すのであれば、異世界肉体に、人格だけが憑依してきた。と言うのが正しい表現でしょう」


 「異世界、、、、、、マジか」




 小林こばやし 慶一けいいち 高校1年生。

 どうやら、流行りの異世界転生とやらをしてしまったようです。




どっかに書いたと思いますが、ローワンの誕生日が王歴2025年春の季節2月目第1週1日目です

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