あんけーと、とる
焼き鳥を思う存分に食べた子供達は、手や口まわりが脂まみれになっている。
こうなると思った。
用意していた濡れおしぼりで、竜樹とタカラが、順ぐりに拭いてやる。オランネージュやジェム達大きい子は、自分で拭き拭きし、はふーと満足のため息をつき、竜樹の指示を待った。
串のゴミを、焚き付けにすると言う事で、まとめて屋台のオヤジの後ろにある、串入れに入れ、竜樹も手を拭いた。ちゃんとした屋台は、ゴミも散らかさないのだ。
「さあ、腹がくちくなったら、今度はアンケートだぞ。2チームに分かれて、同じ事を手分けして聞きます。聞く事考えてきたよねー。」
はーい!といいお返事。
「字が書けない人もいるから、みんなで、聞きながら紙に集計していくんだったね。ミランとタカラが、カメラで撮影もしてるから、細かい話は、後で映像見ながら考えられるからね。答えてもらったら、お礼に、きなこ飴3こだよ。お豆がダメな人もいるかもだから、お豆の飴だよ、って説明するんだよー。」
「「「はーい!」」」
じゃあ、やってみましょう。
班わけして、ボードに紙、聞く事を書いてある、そして集計用の空白をあけた紙と、作ってもらった鉛筆を片手に、子供達が並ぶ。
書く係に、聞く係。列の最後には、きなこ飴の箱があり、小さい子が渡す係で、飴の注意をするのが組になった大きい子だ。
みんな、ドキドキしている。
ジェムが、先陣を切った。
「こんにちは!急ぎでなければ、最後にお菓子を渡すから、ちょっとだけお話聞かせてください!」
「僕たち、新聞売りです。子供新聞を作るのに、協力してください!」
何だ何だ、と人が集まってくる。
最初に話しかけられた青年は、お使いの途中だから、少しならいいよ、と言ってくれた。
「まず、年齢とお仕事を簡単に、教えて下さい!」
「21才、商店に勤めてるよー。」
「この間、獣人の国、ワイルドウルフの王様と王子様が来ましたが、ワイルドウルフを、どう思いますか?好き・嫌い・どちらでもない、どれ?」
「どちらでもない、かな。」
「何でどちらでもないか、聞いてもいいですか?」
「まだ良く知らないから、ワイルドウルフ。」
「獣人について、どう思いますか?好き・嫌い・どちらでもない、どれ?」
「どちらでもない、かな?」
「何でどちらでもないか、教えて下さい。」
「お店にいると、お客さんに獣人の人もくるけど、いい人もいるし、面倒くさい人もいるから。」
「今後、獣人と仲良くしていきたいですか?」
「仲良くしたいです。獣人の友達もいるよ。」
「話は変わるけど、テレビを見た事ありますか?」
「あります。休みの日は、広場に友達と見にくるよ。」
「テレビが毎日違う放送をするようになって、お家でテレビが見られるようになるかもしれません。そしたらテレビ買いたいですか?」
「う〜ん、値段による!それと、番組、楽しいのやってれば、買いたくなるかも。」
「最後に、おすすめの屋台があったら、教えてください!理由もよかったら!」
地図を開いて、どの辺にあるかも聞く。
「この辺にある、腸詰パンのお店が美味しいよ。お姉さんがやってて、接客が、気持ちいいんだ。」
そこに、腸詰パンおいしい、お姉さん、せっきゃくきもちいい、と書いて付箋にした紙を貼っていく。
「ありがとうございました!」
「これ、お礼のきなこあめです!」
「お豆の飴なんだよ。食べてみてください!手作りだから、早めに食べてね!」
「おー。一個ここで食べてみていい?」
いいよ! とみんなで。
パクッと口に放り込み。
むぐむぐ。もぐもぐ。
「•••へー。初めて食べたけど、香ばしいんだね。おいしい。ありがとうね!」
「「「ありがとうございましたー!」」」
フコッ!と鼻息荒く、初めての客?を捌いた子供達は、興奮して頬を真っ赤にしていた。
オランネージュは書く係、ネクターは聞く係、ニリヤは地図に貼る紙に糊をつける係。アルディ王子は、身バレしない方が意見が聞けるだろうと、借りたキャスケット帽に耳を入れ込んで、飴の説明をする係になっている。二手に分かれて、お菓子が貰えるらしいぞ、と集まってきた人たちに、順に聞いていく。
大人の竜樹や騎士団のマルサが、混雑を整理して。
お菓子もらえるの?と聞いてくる人に、質問に答えた人だけ3こ飴がもらえまーす、一人一回だけでーす、と答えたりした。
「•••意見、色々だね。」
「ワイルドウルフ、好きな人もいれば、獣人が嫌いでいやな人もいる。いやな理由も、力任せが多いとか、力でどうにかされそう、とかが多い。本当は、大人しい系の獣人もいるけど、あんまり目立たないから、意見には出てこないんだね。」
「てれびは、おかねがたかいと、かえないってみんなが。あと、はたらいてると、よるしかみられない、とか。おもしろいばんぐみ、やってほしいとか。」
「屋台の情報は、結構集まったぜ。あとはこれをもとに、取材だ!」
瞬く間に、きなこ飴も少なくなってきて、そろそろ終わりかなあと思った時。
「あのう。獣人について聞いてる、って、お菓子くれるっていうから、来てみたんだけど。」
ケモ耳を、ピン、とさせた、獣人の皆さんだ。猫耳男子、獅子耳男子、熊耳女子。3人とも、20代くらいか。
「あ、もしよかったら、この国で獣人が住みやすいかとか、困ってる事なんか、聞かせて下さい。」
アルディ王子が言うと。
「えっ!?アルディ王子様?!」
「何でこんなとこに!?」
「マジか•••!」
呆けた後、ハッとして、ザッ、と跪く。