癒してみたよ
一足早く、竜樹と王子達、そしてハルサ王とブレイブ王は、王宮に帰ってきた。迎賓館の一室に集まり、それぞれソファに座って温かいお茶を飲んでいる。
戻る間、早速、魔法院長官である、チリに連絡がとられた。そして、主に何でも実現バーニー君が労を取って、癒やしと浄化の魔法が使える者、ルルーという魔法使いがやってきた。ピンクブラウンの長髪と目の、丸メガネ君。身体のガッシリした青年である。
普段は、魔法院から出向という形で、教会が開いた治療所で働いているそうだ。
「お喉の咳に、炎症を抑える魔法は気付きませんでしたね。いつも、病気に対して、治癒力を高める魔法を使っているんですが、時々それだと、調子が悪くなる方がいます。そんな時は、身体の中の過剰な反応を抑える、癒しの魔法を使って宥めるんですが、それが炎症を抑える魔法と一緒なんですよね。」
あれるぎー反応、って何ですか?
ルルーがスマホを見ている竜樹に問う。
「何かを異物として、過剰に反応するのがアレルギー反応、って事のようです。もしアルディ殿下が、喘息のような病気だとしたら、炎症が喉に起こって狭くなり、敏感になってるのかもしれない、って事で、ルルーさんを呼んだ訳です。」
「なるほど。それでは、原因が何かは分かってないし、根本的に治療するというよりは、対症療法になるから、日々炎症を抑える魔法が必要になるかも、ですかね。まぁ、やってみないとわからないけれど•••。」
「ルルー殿、何卒頼む。試しで構わないから、アルディに癒やしの魔法をかけてもらえないだろうか?」
ブレイブ王が、隣に座るアルディ王子の背中を撫でて、心配そうにお願いをする。親は子供の為に、何度だって頭を下げるのだ。
「はい、様子をみながらやってみましょう。では、アルディ殿下、失礼ながら、お喉のところに手を当てますよ•••。」
「はい。」
両手を重ねて、ルルーはアルディ王子の喉に手を当てる。その部分、じいっ、と弱く光りながら、魔法が発動する。
「あ、本当、炎症って感じなんですね。」
「手を当てて分かります?」
「何となく、魔法の反応で患部が分かるんです。では、炎症を癒してお喉を広くさせますよ。」
えい、とも何とも言わず、だが真剣な顔をして、ルルーは手から魔法を、程よく治るよう調整してかけた。ふんわり光が、アルディ王子の喉から胸まで広がる。
「あ。」
光は、強くなったり弱くなったりしながら、アルディ王子の喉に吸い込まれてゆく。
「まほう、すごい!」
「治るといいね!」
「治るというか、発作が起きないようにする、って事なのだよね。私も、一緒に遊べるかな?」
「何だか、なんか。」
息が、苦しくない。
「通った感じ、する!お喉が、開いてる!苦しくない!」