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かいぎする

「かいぎ、するの。おはなしあいだよ。」

「新聞の販売どうするか、考えよう。」

「国の政の練習になるかも?私も会議に参加するよ。」


ジェム達は、竜樹や王子達と昼寝して、夕飯も貰って、一緒に遊んで、また安心する屋内で眠って、翌る日。

一旦、王子の勉強時間のため、離れたものの、また午後になると竜樹達は撮影隊の寮にやってきた。

子供達は、まだこの寮に馴染んでいなくて、朝起きて侍女さん達に着替えさせてもらったり食事をもらった後、敷布団をあげた交流室で、不安が拭いきれず、一つ所に集まっていた。昨日までと打って変わって、この心地よい家で、お腹いっぱい食べれる生活が、また奪われるのではないか?夢なんじゃないか?と、恐れているのだ。それに、続いてきた外での生活で、傷んだ身体が休息を求めていたこともある。


「まだ新聞の印刷機械できてないけど。活版印刷とシルクスクリーン、チリさんに説明したから、今頃作っているだろ。」

王子達も、会議のお話し合いで、思った事を言ってね、役立つかもね、と竜樹に持ち上げられて、3人はふんふんと興奮し、やる気に満ちている。

「あんぱんも、うるのね。おいしいよーって、みんなにいうのがいいとおもう。」

「うんうん。本当は、ミルクも売れると良いけど、水物は重いからなぁ。」


恐る恐るジェムが口を出す。

「あんぱん、売るなら、ミルクも売ったら良いと思う。朝忙しい人が、朝食代わりに買ってくれるかも。軽い木のコップとかに注ぐ感じで。暑い日とかは、難しいけど•••。」

「何で暑い日はだめなの?」

ネクターが問いかける。

王子達は、いつも、出来上がった新鮮な食べ物しかもらってないから、分からないのだ。

「暑いと、腐っちゃうだろ。飲めなくなるんだ。」

へー!

感心されて、ジェムは、ポッと頬を赤くした。


「飲み物を冷たくしておける、ポットとか開発するかね。冬は、温かいコンソメスープとかね。まぁ、パンは、朝のいっとき、一定数売れればいい感じにして。パン屋さんとの競合もあるからね。競い合ってどっちかが損するより、相手がやってない隙間に入って商売する方がいいんじゃない。」


「•••パン屋は、家庭で食べる、でっかいパンしか売ってないから、大丈夫だと思う。屋台とはぶつかるけど、量が多くなくて、客いっぱい取っちゃう訳じゃないなら、みんな屋台の連中は分かってるから。それに屋台は、場所が朝市でもなければ、昼からが多いと思う。」


ジェムの仲間、アガットが、恐る恐る発言する。自分達の事を話しているのだから、言われるがままにやるより、口を出したくもなる。

「じゃあ、竜樹が作る、チーズとハムや、たまご焼きをはさんだパンとかも、売ると良いんじゃない?美味しいよ、あれは。」

オランネージュが、ふむふむと頷いて発案する。

「何だか駅の販売所みたいだな。ちょこっと物を売ってる、小さなお店だよ。」

「ちいさなおみせ!それがいいよ!」

「まあ、お店に並べたら、重たくないしな。じゃあ、競合がない、朝食を狙って売り出そう。新聞も、朝売って、売り切れたら午後はここに帰ってこられるくらいにして。一日中働くと、休んだり、遊んだり、勉強したりする時間がなくなっちゃう。」

「それって•••。」

竜樹の得になるの?


ジェムは不思議だった。

何でそんな事までしてくれるのか。

読み書きなんて、両親が揃っていて、お金に少し余裕がある家の者が、習うくらいだ、平民ならば。身体を使う仕事の者は、分からなかったりする事が結構ある。


「得になるよ。」

ニカカ、と竜樹は笑う。


「子供が読み書きできる世界は、大人も読み書きできる世界だろ。みんなが、それぞれ読み書き計算できて、少しでも暮らしやすい世界になったら、俺も嬉しいし、楽しいこといっぱいできる。俺、本が好きなんだ。ジェムが読み書きできるようになったら、俺の得に絶対なる。」

それに、パンと新聞売るなら、おつりの計算は必須だぞ。


撫でられて、ジェムは、ポポッとまた赤くなった。

暮らしやすい世界。楽しいことができる世界。

もし、そんな世界があるなら。助けてくれた竜樹が、それを望むなら。


「おみせ、いっぱいつくる?」

「うん?そうだなあ。まずは、2軒くらいだな。栄えてる、街の真ん中、朝、人が通る所に、交番、兵士の詰め所と隣り合わせで建てよう。」

「場所、いいところ、俺たちわかる。」

何せ、一日中街を駆けずり回って稼いでいたのだ。街は自分達の庭だ。


「おお、じゃあ後で案内してもらおう。街に詳しい大人に、意見も聞いたりしてさ。ジェム達が、石投げて捕まった時、庇ってくれた男衆がいたろ?」

あの人たちなら、街中で新しくお店を始める事についても、教えてくれそう?

「ビッシュ親父たち?」

ビッシュさんって言うのか?

「うん。ビッシュ親父は、酒屋なんだ。街のまとめ役とかしてる。仕事とかも、結構くれたりしたんだ。」

そうか、そうか。

ジェムにとっては何故か、竜樹は、嬉しそうにした。


「後は、大事な、新聞の中身だなー。」

「なかみ?おうたのけいこのこととか?」

「テレビでもやってるね。」

「同じこと載せて、売れるかな?」


うーんそれも良いんだけど。

「例えば、昨日あったばかりの、街の中の出来事や、事件の詳しい情報。国や商会なんかの、みんなに関わる動きとか。地方の、見過ごせない情報。生活の、便利情報。ホッとする、4コママンガも載せたいし。芸能情報も、外せないね。これは、大人の、向いてる人を、事件や情報を取材する記者や、紙面を作る編集、責任者の編集長なんかも募集したいね。」

スーリール達、ニュース隊とも、連携したら良いかなあ。映像と記事。それぞれのいい所を活かしてやれたらいい。

「オランネージュ、ネクター、ニリヤ、それからジェム達。なんともの新聞を作る大人達を、募集する映像を、テレビで流そうか。やってみたいよ、っていう人が、もし集まったら、みんなで面接や、試験を行って、見極めよう。」

「ぼしゅう、する!」

「どんな人が、良いかな?」

「まずは、読み書きできる人じゃないとだね。それに、記者は、街の出来事に詳しい、すばしっこい人がいいよ!」

「そうだね。ジェム達は、どんな人がいい?」


読み書き、できたら、新聞作れるんだ。


「俺、俺たち、街のこと、詳しいよ。」


ん? 竜樹が、覗き込んでくる。


「俺、大きくなったら、新聞を作る人になりたい!それで、みんなに事件とか情報を伝えるんだ!知ってるか知らないかで、得するかどうか決まる!みんな、出来事知りたいんだ!俺たち良く聞かれてた!それで、それで、そしたら、小さいやつ達に、売る仕事は譲ってやれる。また新しく、親も家もない奴が、これから出てくると思う。」

「お、俺も、ジェムがなるなら、やってみる。」

「ぼくも。」


俺たち、これで、やっていけると思う?


「やっていけるさ。」

竜樹と王子達は、ニパッと笑った。


じゃあ、募集要項作らなきゃ。

みんなで、募集の映像も作ろう。


「そうしたら、ジェム達は、まずは販売の準備のために、お金の計算とか、読み書き習ってな。それから、ご飯を1日3食よく食べて、ゆっくり休んで、それから遊んだりもして、身体を健康にしとくんだぞ。販売って、結構疲れるんだよ。色んな人がいるしな。その間に、色々準備するからな。」

「わ、わかった。」


「じゃあ、みんなであそぼうよ!」

ニリヤがニコニコと笑顔を振りまいて言った。

「遊んでこーい。その間に、募集要項、詰めとくよ。」

竜樹が許可すると、ネクターとニリヤは遊びに外の庭へ、ジェム達も連れられて、オランネージュは竜樹と残った。

カメラを持ち、付いてきていたミランは、遊びに出た子供達に付いて行くか残るか、迷った。タカラに予備のもう一台のカメラを託して、動かない映像だからとにかく撮っておいて!と残して、子供達を追った。


「オランネージュは、遊びに行かなくていいのか?」

「私は、こっちが面白そうだから!テレビで募集したら、いっぱい人が集まるんじゃない?」

「7都市には、募集放送しなくていいかもな。まずは王都から。応募したい人には、何か身の回りの記事を書いてきて応募してもらうか。」

「実力みれるね!」



外の、庭では。

「なにしてあそぶ?」

「俺たち、石蹴りとかぐらいしか、遊んでないんだ。それどころじゃなかったから。」

「石蹴りって何するの?」

こう、石を蹴って運んで•••。


「こんにちは。」


だれ?


片足を引きずった、優しげな青年が、ふんわりした笑顔で、ひょこひょこ近づいてくる。

ミランが、はっ、として慄き、そして目線で跪くのを止められて、目礼し恐れながらそのまま撮影していた。


「助けて欲しいんだ。」

青年は、ニリヤとジェムに、腰を屈めて言った。

腰につけていた袋に、手を突っ込み、中から、そうっと取り出したのは。


ピヨ。


「ひよこだ!」

「うわぁ〜。ふわふわだ。」


ピヨ、ピヨ。

鳴きながら、よた、よた、足踏みする。


「あれぇ。ひよこ、かたっぽ、足が折れてる!」


ひよこを、持ってない方の指先で撫でながら、青年は言った。

「この子、片足をやられてしまったんだ。だから、よく見てあげないと、弱ってしまうかも。僕は仕事があって、育てられないから、誰か育ててくれる人を探してるんだ。」

君たち、育ててくれないかな?


「うん!そだてる!」

すぐに頷くニリヤに、大丈夫かよ、と、ジェムが口を閉じる。


「良かった。大きくなったら、たまご産むと思うから、増やすのもいいし、たまごを食べてもいいからね。任せたよ。」

「うん!」


「おみずとかのむかなぁ。」

「エサが何か、俺知らないぜ。」

ひよこを、ニリヤの小さな両手の真ん中に、そっと乗せて。

ランセ神は、ふと遠ざかって消えた。

子供達は、ひよこに集まってワイワイしていたので、それを見ていなかったが、「あれ、おにいさんいない。」ふと気づいて、キョロキョロと見回した。


「ニリヤ様。竜樹様に、ひよこの飼い方を聞いたらいかがでしょうか?」

ミランが、神から託されたひよこを、万が一でも死なせてしまっては、と口を出した。

「そうだ!ししょうにきいたら、いいよ!」

「知ってるかな?」


ピヨ。


ひよこを、ゆっくりそーっと運びながら、子供達は庭から寮に戻っていった。

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