愛のいいね
ぱっ ひらり はらはら。
竜樹の顔の横で、紅色の薔薇の花が、きらりと咲いて、ふわふわ落ちた。
え、いいね?
ぶるるるる。
メッセージ、神々の庭を開いてみれば。
ランセ
『恋人達の 成立 おめでとう!
新聞事業 とても楽しみ
新しい ぱんも いいね。
情報 どんどん 広がるね。』
アムール
『こんがらがって絡んだ
恋人達の運命の糸が
ほどけて ぴたりと
あるべき場所にハマったわね。
私は愛の女神 アムール。
素敵な結果の催しに
5000いいね 贈ったわ。』
竜樹
「ありがとうございます。
みんな、いい人達で、
収まる所に収まって良かったです。
まぁ、カシオンさんと
ブランシュ図書館長は、
大人の対応をしてくれたのかも。
と、思いますが。」
アムール
『あら。竜樹も分かってないのね。
ブランシュは とっても本気よ。
男達は分かってないようだけど
好きでもない男に
可哀想とかキュートだなんて
女は言わないわよ。
女の本気を これから男達は
知るでしょう。
怒涛の勢いに流される。
それもまた愛。
幸せという事よ。』
竜樹
「愛のご教授、ありがたく。
恋人達を、変に囃し立てずに、
見守っていきたいと思います。
でもちょっとつついちゃうかも?
インタビュー、お楽しみに。」
アムール
『インタビュー、楽しみ!
この大会を行った事で
テレビを観ていた人たちが
みんな、恋っていいなと
思ったの。
これから愛のやりとりが
増えていくわよ!
ラブレターも、いっぱい
書かれるわ。
うふふ とっても、いい感じ!』
ランセ
『郵便も ますます盛んになるね。
楽しみに 見守っているよ。
では またね。』
くすくす、竜樹は笑ってスマホから視線を外し、出来上がったばかりの恋人達を見た。
そうか。ブランシュ図書館長は、カシオン文官に本気なんだ。どうりでニコニコ、肩に顔寄せて、自分より背の低いカシオン文官の腕に絡まってる訳だ。
「可哀想とは、惚れたって事、って誰が言ったんだっけ。」
竜樹は呟く。
「言い得て妙ですね。」
ミランは、ふむふむと頷き、薔薇の花を拾った。
「スーリール、出来上がった恋人達に、この結果の感想と、いつから相手が好きだったかの、インタビューをお願いします!」
「はいはーい!ではお伺いします!まずは、パージュさん、おめでとうございます•••。」
この1年後。パージュは図書館を辞め、王兄のお嫁さんになる教育を受けながら、バラン王兄と事実婚状態で、結婚式を待つ事になる。
プティは、今までのエーグル副団長の好きになる大人しいタイプではなかったが。
元気で明るく勇ましい、日の光を浴びる性格が、女性を守る方にばかり気を取られて、自分を蔑ろにする傾向のエーグル副団長の影を照らして。
相性が良かったようで、婚約成立。何だかんだ押せ押せされて幸せに過ごしているエーグル副団長なのであった。
ブランシュ図書館長とカシオン文官はというと、付き合い始めて、1年後には。ブランシュ図書館長妊娠。高齢出産になるため、念の為に休職して急いで結婚した。
カシオン文官は、最初可哀想だからと、場を取り持つ為だけにブランシュ図書館長に申し込まれたのだ、と思っていたのに。思いの外、可愛く恋人関係をねだられ、美人の本気に呆気なく落ちた。ふくふくのほっぺが、幸せそうだと、図書館男子達に大層羨ましがられた。
クロシェット侍女長とミネ侍従長は、初めて二人揃ってお休みを貰い。『求婚♡大作戦』が終わってすぐ、家族と友人のみの、こぢんまりとした結婚式を挙げた。王妃様もご満悦で、お祝いを奮発して届けた。
さて、時間は『求婚♡大作戦』の放送も終わった頃に戻る。
吟遊詩人のロペラは、竜樹から解説席に呼ばれ、助かりました、ありがとうと労われた。そして、タカラという侍従から、出演料として、小袋に入った金貨をもらった。
お金を貰わなくてもいいくらいに思っていたけれど、竜樹が、「出演料の相場がまだ分からないから、もし少なかったら言って下さい、検討します。」などと言うので、いえいえ!と有り難く貰った。金貨5枚で、懐が暖かくなった。
そうして場を辞してからが、ロペラの本当の幸運の始まりだった。
テレビの効果は凄まじく、声をかけられる、かけられる。歌もねだられ、歌の依頼がひっきりなしにあった。
そうして、会場で歌ったギフトの歌が、みんなに浸透し。持ち歌を持っている事で、正直、出演料どころでなく、安定して稼げた。
ギフトの歌の通り、竜樹に何か一言、言いたい人は、一輪の花を差し出す暗黙の了解ができていった。
そして、ギフトの御方が助けの手が必要ならば、と、花を持って問いかける人が増えて、竜樹は花に囲まれるようになる。
その花を、勿体無く思った竜樹が。押し花の栞にして、年末縁起物に、いくばくかの寄付を募り、配り返す。という仕事の作業部分を、浮浪児だった子の中で、まだ小さく新聞の販売ができない者が、大人と一緒に受け持った。
ロペラは、それを聞いて、花を、自分がもらったような、一番の幸福を感じた。
「ししょう、まるあらいね。おてつだいします。」
「みんなでお風呂、入ろう。」
「私も、自分で洗えるようになったから、洗ってあげられるかもしれない。」
撮影隊の寮で。王子達に、お風呂の世話をされて。
ジェム達は、目を白黒させていた。
大きな浴場に、いっぺんに入った子供達は、まずは浴槽で温まり、その後でゴシゴシ洗われた。綺麗になって、乾いた気持ちのいい布で、一人一人拭かれて、新しい寝巻きを着せられ、かいた汗の分、飲み物をもらった。
お昼に一杯食べて、お腹もいい具合だし、眠くなった子供達は、交流室、と呼ばれる広い部屋に、沢山の敷布団を広げられて、そこでみんなで昼寝した。
王子達も、竜樹も、一緒に昼寝した。
何故か竜樹のそばに、みんなが集まり、団子になって眠っていた。
屋根のある、家の中で、頼れる人がいて眠る眠りは、いつになく深く、夕飯の時間まで、みんな、疲れ切って眠っていた。