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カシオン風

「あ」


カシオン文官は、ちょっと思いついたことがあった。これ、どうだろう。いきなり作って嫌がられないかな?


でも、ギフトの御方様に教えてもらわなければ卵しか茹でられなかったんだから、いいや、やってみよう。

カッコつけて、料理本とか調べて、でもできなくて。そんな他力のじゃなくて、私の事、知ってもらいたいから、美味しいなって思ってる、いつもやってる事やってみよう。

よし、とカシオン文官は勇気を出して、チャレンジし始めた。


バラン王兄殿下は竜樹を待って、ぐるぐるとオートミールをかき混ぜていた。

「こんなもので、いいのかな?」

「はい、いいですね。お砂糖少し入れて下さい。ティースプーン1杯くらい。はい、できました。卵、炒ってみます?」

「やってみる!」


コン、グシャ。


やると思った。


「竜樹君〜!」

「はいはい。卵を解く入れ物をまず、用意してください。小さくて良いですよ。卵を、平らな所で、優しく、コン、コンってして下さい。」


こん、こん、こん。

「あっあっ、ヒビが!」

「ヒビの所に、両手の親指をかけて、器の上でパカってしてください。はい、割れました〜。」

「わ、割れた!割れたよ竜樹君!」


混ぜて、バターをフライパンに溶かして、ジュワーと。

スクランブルじゃなくて、卵焼きになったけど、何とかできました。

「後はドライフルーツとお茶ですね。お茶淹れられます?」

「それはお湯さえあれば、やる事があるからできる。」

ドヤ顔してるけども。


「できました!」

カシオン文官が、トレイにお皿を乗せた。ゆで卵を半分にしたものを飾って、パンを1枚だけ焼いて。そして、小さな器に緑と赤の野菜が見える。


「えっ、生野菜!?」

竜樹が驚いている間に、とっとっと小走りでカシオン文官は、プティの前に辿り着く。トレイを置くと、オズオズと説明を口にした。


「パンと卵とハムと、チーズです。チーズに蜂蜜かけました。竜樹様に教えてもらった通りですが、お腹いっぱいかもしれないけど、良かったら食べてみてください。」

「私沢山食べるから大丈夫よ。ありがとう、いただきます。あの、この、野菜は?」


そう、野菜!生でもいけるの!?


「あの、私、たまに生で野菜食べる事があって。果物は生で食べるのに、野菜も生でも良いんじゃないかな、と思って始めたら、おいしくて。」

「へえ〜。そうなんだ。」


「さっぱりして口直しになるんです。あ、ちゃんと浄化の魔法かけてあるから、安心してください。オリーブ油と、グレープフルーツ果汁と、塩で和えてあります。後お水に、ちょっとだけ果汁入れて冷やしたのもつけました。最初は果汁が勿体無くて、ちょっとだけ入れてたんだけど、私、果汁100%だと濃すぎる気がして、薄い方が美味しく思えて。」


「美味しいよ!それは美味しいよカシオンさん!ちゃんとレタスとトマトだ、ふわぁ!浄化の魔法か!浄化かぁぁ!!」


え、なにそれそんなに美味しいの?

会場のみんなも、竜樹の盛り上がりに、不思議そうな顔で、プティとカシオンと竜樹を見比べた。


「では、食べてみます。」


シャクっ。パリパリ。


「あ、本当だ、美味しい。すごくフレッシュな感じする。」

プティがサラダをモリモリと食べる。パンにハム、チーズは、安定の旨さ。

そして果汁水は。

「まあ、スッキリ。カシオンさんは、スッキリした味のものが好きなのね。」

「そ、そうかな?•••そうかもしれないです。」

てへへ、と笑うカシオン文官に、プティ推し図書館男子が、くくぅー!と悔しがる。俺らだって!パン焼くくらいは!プティさんに認識してもらえて、良いなぁ〜!


後にこの放送を観ていた料理長が、生野菜サラダを作って食べてみて、むむん!と開眼。他にも生野菜を食べてみる人がポツポツ現れて、いつしか生野菜のサラダには、カシオン風、と名前がつき、好んで食べられるようになった。


「私も、出来た、出来たよ!」

トレイを、両手で持ち上げて、パージュさんのところへニコニコと持っていくバラン王兄殿下である。パージュさんは、くすくす笑ってそれを迎える。

「どうぞ。初めて作った、記念すべき朝食だよ。」

「ありがとうございます。」


パクリ。モグモグ。

「出来立てだし、とっても美味しいですよ。お茶も、美味しくはいってます。」

くすくす。くす。


パージュさんは、美味しいと言いながらも、くすくす笑いをやめない。

「何かおかしい所、あったかな?」

「いえ、その。」

チラチラ、見ている。さっきまで、作業していた台を。

「片付けが、大変そうだなあと思いまして。」くすくす。


確かに。ドライフルーツやお茶の袋は出しっぱなし、お鍋も洗ってない。卵を解いた器も、からりんと転がっている。

ふわぁ!?と、しまったの顔をしたバラン王兄殿下に、パージュさんが堪えきれずウフフフッと笑って慰めた。

「片付けを一緒にしなきゃですね。」

「ど、努力、するよ!?」


ワハハ!

会場も笑いに包まれ、朝食勝負は終わった。

この勝負、なかなか見応えのある勝負として、勝者1名は、姫君協議の結果、王子達に1ポイントが入った。


「うわぁい!おりょうり、ほめられた!」

「かたづけも、がんばろ!」

「次もポイント、狙っていくよ〜!」

かしゃかしゃ、洗い物をしながら、王子達が喜ぶ。

ネクターが石けん泡で洗って、オランネージュが濯ぐ。それをニリヤが、乾いた布で拭き拭きする。

片付けまでが朝食である!



そして次は、カシオン文官の見せ所。

ラブレター対決である。



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