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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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本気が伝わるなら


「そうなのよ!デュデュ、アタシの事、なんだかあんまり恋人として見てくれなくって……。幼馴染って、やっぱり恋愛対象に見られないもの?妹みたい?どうしたら本気になってもらえると思う?」


カルメンが、両の人差し指を、ほち、ほち、トホホに合わせて、唇尖らせて。

何でか緊張しいのデュデュの話をしていたはずが、カルメンの恋愛相談になっているのだ。


ふぅむ、とプレイヤードたちはそれぞれ腕組み、マジ顔で相談を受ける。チーム荒野はラジオの採用試験で、おしゃべりラジオ!の番組をお試し録音してトライしているが。

ここは一つ、変則的なメンバーなれど、アミューズ、プレイヤード、アガット、エクラ王子のおしゃべりラジオ!番組風に、相談にのって解決に導こうではないか。

ガーディアンウルフのハンナは、すっかり寛いで尻尾を振っている。彼女は人の会話を理解している利口なウルフなので。そして番もいて子狼を産み育てた事もある、この中で1番大人で恋愛経験者であるからして(ウルフだけど)、子供たちとカルメン、デュデュのモニョモニョ話には、きっと達観した所から、あらあら、という思いもあるであろう。


デュデュは、恋愛対象本人の隣で明け透けなカルメンを見れず、片手で顔を覆ってウオォと恥ずかしがっている。さっきまでの緊張しぃはどうしたヨ。


黄土色の髪を伸ばして、後ろに縛っているアミューズの頬には、纏めきれない房がサラリとかかっている。ほっぺは赤く、灰褐色の瞳が焦点を遠くに、だけど声のする方、カルメンへ向いて。

眉を片方、ぴくり。フス、と鼻息を吹いて。堂々、幼いのにギャップ、世慣れた顔。指をとんとん。


「街ではさぁ、やっぱりおねえさんたちが、近所の若いもんとすったもんだしてたんだけど、あれよ。」

「アレヨ?」

プレイヤードが合いの手を入れる。


「あんまり近くにいると、良さが分かんないんだって。大人になってくると、子供みたいに、わちゃわちゃ仲良く、くっつかったりしなくなるじゃん。男女になるからさあ。一旦距離ができて?それで、たまに見かけて、綺麗になったなぁとか、女性になったんだな、逞しくなったな、男になったんだな、ってすれ違ってハッとした時に?グッとくるような?事を言ってたかも。」

「そういうもの、なの?」とプレイヤード。

「一度離れないとワカンナイの?可愛い、好きなコは、近くでもずっと好きじゃない?」エクラ王子はハテナである。


口数少ないアガットが。

「コロッケを、毎日食べると、口が、だんだん、ふーん、って感じになる。だけど、時々にすると、コロッケって美味しいな!って、いつもシンセンに美味しく食べられる。慣れるって、飽きるかも。」

アガット、カルメンはコロッケじゃないよ。


「アガット、毎日コロッケ食べたことあるの?」

「ウン。王宮のちゅうぼうに、芋の皮むきの手伝いするから、毎日1つ、コロッケちょうだい、ってないしょで約束してたことあんだ。竜樹とーさにバレて、大笑いされた。おれ、コロッケ食べるとなんかシヤワセになるんだ。でも寮でぜいたくになったから、大好きなコロッケにも、慣れちゃうんだ。」


アガットは大人しいのだが、要領は良いのらしい。単独で、するんと厨房に入り込んで、オヤツをゲットしていた。食べ盛りである。

竜樹とーさは笑って、「無理はしないようにね。」なんて誰にもバラさなかったのだが、(皆が同じじゃないとダメ!なんて、個人の工夫や努力をとーさは無にしなかった)、自然とジェムたちに知られて、ズルいぞ、って事になって。


今は、新聞売りと勉強や遊びなんかをやって、それでも手が開けば、希望者が順繰りに厨房に手伝いがてら、オヤツを貰いに行っている。

ニリヤが芋洗いをしていた実績もあって、子供でも手伝える安全なお手伝いの仕事が、厨房には細かくあるのだ。


「デュデュ、アタシに飽きてんの!?うぇーん!でも、だからって離れられないわよぅ。デュデュって女の子たちに密かに人気なんだから!離れたらとられちゃうぅぅうぅ!」

カルメンはスカートに顔を伏せて、グニャングニャンだ。


そう、デュデュは人気なのだ。

顔は分かりやすく格好いいとは言えないけれど、無駄口を叩かない上、有言実行。チャラチャラしてない実力派。頼り甲斐のある、それでいて、少しこんな風に緊張しいな、女心もくすぐる魅力的個性派優良株なのである。


うーぬぬぬぬ。

おしゃべりラジオ変則組は、何かいい案ないものか……と唸る。

プレイヤードは、淡く緑色に光がある、くしゃくしゃの金髪を揺らして、ゆーらゆーら、顔を振る。考えながら。


「あのさ。さっき、会った時、カルメンがデュデュを励ましていたじゃない。だけど、全然デュデュには、その言葉が伝わってなかった。自分の緊張でいっぱいな人に、勇気を出させて、言葉を聞いてもらうには、きっと、本気じゃないとダメなんだと思うんだ。カルメンが本気じゃなかった、ってゆうことじゃなくて、あ、本気なんだ、って。どうにかして、伝わらないとダメなんだよ。」


プレイヤードは、もう別れた母の事を思い出す。

自分の思い込みで、家族の中で自分だけはまともだと、他は皆、普通じゃないと見下して心を保っていた、弱い人。

それでいて、自分の、妻で母だという位置は守られていると。自分は愛さないのに、愛されなくなるなどと、疑いもしていなかった、迂闊な人。


「もと母様が、父様に離婚を突きつけられた時みたいに。カルメンがデュデュを愛してるなら、それを本気で伝えなきゃダメなんだよ。それは、私たちも、そうなのかも。おしゃべりラジオはさぁ、言葉で、おしゃべりで、人に、色んな事を伝えるんだよねえ?」


言葉が、伝わらない。


それは。

「おしゃべりラジオが、言葉が、伝わらなかったら、何のためにやってるのってなっちゃう。私たちの言葉が、通じる、伝わるには、私たちも、本気にならないとなんだ。」


伝わるように。

伝わるように。

「喋るばっかりじゃなくて、色んな事を、やってみて、こうだったよ、って。アミューズはさ、恋愛の歌とか、バラン王兄殿下に習っているだろ?ホントのとこ、私たち、まだ恋とかしたことないじゃん。愛とか、本当のホントに、分かる?」

分かるか、と言われれば。


「ワカンナイかも、しんないなー。」

アミューズ、うぬぬ、と眉を寄せる。

「こい、あい。」

アガット、ぬー、と呟くけれど、分かってるようでは全くない。

エクラ王子は、ポポッとなっているけど。

「私も恋愛したこと……ない。」


ベルジュお兄さんがニハーといい顔で笑っている。可愛い子たちである。

ハンナは、ぺろんと鼻を舐めて、前脚クロスしたとこに顎を乗せ、はふ、と吐息。


「バラン王兄殿下のレッスンでさ、愛の歌ってやったんだよ。まだ俺たちには早いけど、心の栄養、なんだって。『愛の讃歌』ってやつ。竜樹とーさの、すまほで新しく知った曲。聴いた時、ふぅ〜ん、って胸の中が、ぐるぐるってなった。何かある。何か、何かなんだよ。とっても素敵な歌なんだけど、歌詞が、え〜ってなるんだ。あのね、竜樹とーさのお国の翻訳の歌詞と、元のお国の歌詞が、けっこう違うんだけどさ。」


愛があるなら、貴方の愛があるなら。

原詞は、飛行機事故で亡くなった、歌手の恋人の死を予感させるような。運命的で激しく、それでも、永遠を思わせる、過激でありながら純粋な歌詞で。


翻訳した詞は、もう少しマイルドに、愛のありよう、その様を、肌触りも覚えるほど近い距離で、いっぱいに歌う。


「そのどっちも、胸が、グッとなるんだ。だけど、バラン王兄殿下は、まだまだアミューズには、愛の本当の所は分からないかもしれないね、って言った。俺も、分かってるとは思ってない。それでも、綺麗だと思う。綺麗じゃない所も、全部が、もう、良いんだ、って思う。人って綺麗じゃないんだ。綺麗だけど、綺麗じゃないんだ。プレイヤード様も聴いたよね。」

「ウン。愛、難しいなー、って思ったけど。でも、歌は、すごく、グッときた。」


「そんなに凄い歌なの?」


カルメンが、ハテナの顔になっている。


「大人の愛なんだ。例えばさ、おねえさんたちは、良く、顔が良くなきゃ、だとか、甲斐性が、とか、タイプだから、とか色々条件言うだろ?俺、街にいて、女の人はさ、どうしても男に力負けするし、人生変わっちゃうから、そういうのあるの普通に当たり前に、悪い事じゃないって思ってるよ。男の方だって、可愛い子がいいとか、料理が上手いコが良いとか、なんかさ、勝手な事色々言うじゃん。でもさ、やっぱりそれも、暮らしていくのに、必要な、愛の条件だと思うんだよ。だけど、だけど。そういう、打算とか条件とか、一つも含まない、本気の。本気の愛。それがあれば、何でもできる、っていう、愛の真ん中を歌ってるんだよ。バッカじゃねえ、って思うのに、綺麗なんだよ。」


アミューズは街の浮浪児であったから、綺麗な愛など戯言に思える。

だけど、歌は綺麗だと思う。

心が揺さぶられるのが、不思議に嫌じゃない。


プレイヤードは、母の、理想の結婚生活に振り回されて、男女の愛にはマイナスの出発点な生育環境だったと思う。

だけれど、光の中を歩くプレイヤードは、祖父と祖母の男女の愛、ルフレ公爵家の使用人たち、その中での円満な男女の、伸びやかな関係を見逃さずに生きてきたから。

愛の讃歌にグッとくる気持ちは、人の本能として、幼くても、少年でも、伝わってくるところがある、そんな強く激しく求める恋愛がしたいな、と期待している。未来に。


アガットは多くを語らないが、やはり街の浮浪児であったから、愛、愛か。竜樹とーさとラフィネかーさみたいなのかな、とぼんやり思ったし。

エクラ王子は、辱められても父を愛し信じたエルフの母妃、そんな母を諦めずに大きく抱擁するエルフの父王を尊敬しているので。

愛があれば全て何とでもなる、複雑な全てを含んだ綺麗な気持ち、というのは、身近に触れて、少しだけど、分かる気がしている。


プレイヤードは、更に言う。

「デュデュはさ。緊張しいな、本番の事を、上手くやろうなんて考えてる場合じゃないんだよ。上手くやりたいから緊張するんだ。それどころじゃないんだよ。愛はさ、上手いとか、下手とかじゃないじゃん。私たちの本気がさ、カルメンの本気がさ、デュデュの緊張を、バーン!と、こう、胸を熱くさせたら、良いんじゃない!伝わるって、そういうことだろ!」


そういう事だろ?ん?


とプレイヤードは顔を斜にして、ん?ん?と聞く。


「それって、歌え、ってことだね?」

アミューズが笑う。


「本番を、やってみせてみろ!って事だね。」

アガットが、グーを突き出して、フンス!


「そう。私だって、本気なんだって。アミューズ、歌ってよ。私、踊るから。」

プレイヤードは、ふふっと笑うのである。


「ちょっと待ってよ!あの、あの、失礼かもしれないけど、その。プレイヤード様って、目が。」

カルメンだって分かってる。ハンナが引っ張って、白杖をついていたのだもの。そして視線が一切合わないのだもの。アミューズの歌は良いけれど、踊れる、ものなの?

ここで?

この川べりの道で!?



「そうだよ。ここで踊るんだ。私たちはね、上手にやるだとか下手だとか。そんなのの前に、危ないからやめなさい、出来ないでしょ、みっともない、って。舞台に立たせてもらえない事の方が、緊張なんかより凄く嫌な事なんだ。やりたいのにやらせてもらえない。デュデュは、やりたい事をやるんだろ。私たちの本気、カルメンの本気、伝わらなかったら、困るから、ここでやるんだ。」


アミューズ、最初は竜樹様のお国の歌詞で。

プレイヤードは、それを踊る。


「次は、元の歌詞のやつで歌って。カルメンはそれを踊って。」




デュデュは、トントンと整う本気のパフォーマンスの始まりに。

デュデュのためだけに、伝える、気持ち、何で、と。

はふ、はふ。

緊張とは違う、息が上がるのを感じていた。






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