緊張しいのデュデュ
更新1日お待たせしてすみませんでした。
デュデュをディディって間違えてました!直しました!
なかなか上手く纏まらなくて、少しずつでも更新する事にしてみました。短いですが、できれば頻繁に続けていけたら。
カルメンとデュデュは、同じくラプタの作陶地プリエ地方から、このお祭り出張で出てきた者同士である。
いわゆる幼馴染だ。
「プリエ地方はいい土があるからって、ラプタだけじゃなくて、色々な陶器の生産地なの。デュデュも職人なのよ。ラプタも吹くけどね。」
カルメンが、デュデュの長い腕に、細くて柔らかな腕を絡めて、ウフッと自慢するようにプレイヤードたちに言った。
川べり、座ってちんまりと、アミューズ、プレイヤード、アガット、エクラ王子に、1人ちんまりしてないけれど、ベルジュお兄さん。ハンナはプレイヤードの側で、伏せてクワァと欠伸した。オンオフのコントロールが巧みなウルフである。
「デュデュは、何かお祭りで、ラプタを吹かなきゃなの?練習してたっぽいけど。」
アミューズ、ツッコむ。
「か、型抜き、っていう出店の、賑やかし舞台で。景品、商品のラプタはとっても素敵だよ、欲しいでしょう、って、すごい演奏をしなくちゃいけなくて……。」
しなきゃいけない、とは言うが。
それは、デュデュが自分でそういうふうに持ってきた仕事なのである。
「デュデュが?自分で?」
「そうよ、デュデュは、凄いんだから!」
プリエ地方の作陶事業は、男女の別はつけない。大体が親代々の工房を継いだ者が職人となるのだが、デュデュの住まうサララ工房は、ちょっと特殊だった。
プリエ地方の作陶工房の纏め役をしているじいちゃんが、身寄りのない孤児を迎えて、職人として育て上げる。近隣の孤児たちが、皆集まってくるから、サララ工房はプリエ地方で一番大きな工房で、しかもつくるものの種類がとにかく多いのだった。一人前になった孤児の職人たちは、自分の得意とする技術を主に使う、周りの工房へと散らばってゆく。
「デュデュは、サララ工房の中に居候しながら、1人で、ラプタを専門につくるデュデュ工房を立ち上げたの。」
ラプタが好きで。
つくるのも、吹くのも。
だけど、普通ならラプタをそんなに1人が、幾つも買う事はない。だとするなら、買ってくれる人の範囲を広げるしかない。
じいちゃんは、やりたいようにやってみな、とデュデュに笑うばかりである。
「デュデュはじいちゃんから、ラプタのつくり方を習って、ハマっちゃったんだ。演奏も上手なんだよ。じいちゃんは、神事のラプタをつくるほど、ラプタ職人として腕があるから、デュデュは見込まれた弟子って事よ。」
先ほどは、息もきれぎれヒーコロいっていたが、実力は、なかなかのものなのだとか。
「竜樹様からのお達し、って事で、ネクター殿下がラプタを、じいちゃんのつくるラプタを、吹いてくれる、ってなって。デュデュはチャンスだ、竜樹様からのお遣いの人に交渉して、プリエ地方の陶器をひっくるめて、お祭りで売り込む許可を取ろう、って皆を説得したんだ。色々、小さなラプタをつくったり、工夫してさ。」
「ダメもとだったんだ。でも、竜樹様が、のってくれて。」
しまいには竜樹が、転移魔法ステーションを乗り継いでプリエ地方のデュデュの工房まで。
「日帰りで、忙しいだろうに、来てくれてね。それでワイワイ話をしてさ。工房の連中も、竜樹様の沢山売り方の案を聞いて、盛り上がってきちゃって。」
型抜き出店を。
その景品として、ラプタを。
残念賞に、見習いたちに小さなラプタと土鈴を。
ベテランたちには、1つランクが上のラプタや鈴を。
「言い出しっぺだから、デュデュはラプタを型抜き出店で吹く事になったんだけど……。」
カルメンが心配そうに窺うデュデュは、むぐ、と口をつぐんで。さあっと顔を赤く?青く?とにかく、強張らせて、ふるふると。
「緊張しいなんだね。」
「緊張、しぃなんだね。」
「だね。」
「あー、分かるぅその気持ち。」
子供たち4人が、ツッコミうむうむである。デュデュが、うううぅ、と唸った。
デュデュは行き倒れの親父がプリエ地方で亡くなって、サララ工房に来た孤児であった。カルメンも同じように、踊り子だった母が死に病で、工房に居着いて看取られ亡くなったので、自動的にサララ工房にやっかいになった。2人は幼馴染で、兄妹のような……。
「恋人よ!」
「いや、その、俺はその。」
デュデュの前髪ふわふわに隠れがちな小さな目を、カルメンはニ、と流し見る。
「カルメンは、サララ工房で育ったのに、職人じゃないの?」
アミューズが不思議に思って聞けば。クシャ、とほほ、な顔をして、彼女は手を伏せてフリフリした。ダメダメ、てんでダメ、って感じ。
「アタシは何度やっても、陶器が上手くつくれなかったんだ。グニャってなっちゃう。母さんから踊りは一通り習ったから、小ちゃな頃から踊って稼いでたし、そっちは自信あるんだけどね。」
サララ工房で全く作陶できない子供は、カルメンだけだった。何となく疎外感を持って、下働きをしてはいたけれど、誰に頼まれないでも踊るカルメンは、踊り子に適性があるのは、誰が見てもはっきりしていた。
デュデュは、そんなカルメンのために。
齢13。まだ少年だった時。
「いきなり木材を切って組み立て始めて、小さな舞台をつくってくれたの。器用なのよね。それで、お昼に、カルメンの踊り場、って。ちょっとしたお茶や果実水を飲みながら、アタシの踊りが観られるようにって。」
デュデュの上手いのは、その踊り場を、他の同年代の若い娘たちにも声を掛けて、開放したところである。
「小ちゃな子とかも来て、ほんの少しおしるしのお小遣いをもらえたり、舞台に立てたり、アタシに踊りを教えさせたり。皆の交流場、やらしくないやつね、そうしたから、アタシも踊り子なんてやってても、同じ年頃の子に仲間外れにされなかったし、奥さん連中にも受け入れてもらえた。」
そんな気が回るデュデュなのに。
大胆に行動できる、デュデュなのに。
「本番、もう、子供相手に楽しくラプタを賑やかせば、ってだけの舞台で、いきなり緊張しいが出ちゃったの。」




