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お手作り

「王子達は、協力して一つの朝食を作るようですね。ニリヤ王子は、目玉焼きの練習をしてるので、結構上手ですよ。料理男子になるかもしれません。」竜樹が言えば。


「なるほど。オランネージュ王子は、ミルクあっためるのがだいぶ上手くなりましたよね。最初は、吹きこぼれちゃって、アワアワしてたんです。」

ミランが応える。


解説席と各調理台には、備え付けのカメラが何台かあって、全体の様子や音などを拾っている。放送本部では、幾つもモニターがあり、インカムで連絡を取り合っている。画面のちょうどいい切り替えは、全権メルラが指示を担っており、他にも入ったばかりの侍女出身編集女子が、キビキビと動いている。

音声には、まだ誰とも一言も喋らない、バラン王兄殿下推薦の、ふわふわの前髪で目を隠す、ムジカが入った。

黄緑髪がポップなのに、表情は暗いムジカだが、音声の仕事を始めて、ふわぁと微笑んだのを見て、竜樹は、ぽん、と肩を叩いて、小声で、頼むよ!と仲間に入れた。

音に敏感過ぎて、自分の声が気持ち悪いんだそうだ。

チリは、この編集システムを3徹で作って、「たのし、かった••• ♪ 」 と倒れて寝ていたが、今日は復活して、不測の事態に備えている。


「そうそう。ネクター王子は、イチゴのジャムが大好きで、この間3王子でジャムを煮たんですよ。イチゴのヘタを取るの、結構上手ですよ、3人とも。」

「今回は、そのジャムを使って朝食を作っているんですね。ちょっと聞いてみましょう、スーリールさん?」


ぱっ と画面が切り替わって、3王子の所でカメラを構えるプリュネルの撮る画像になった。

「はーい!スーリールです!今ネクター王子様に、イチゴジャムの事を聞いてみますね!ネクター王子様、イチゴジャムを作るの、難しくなかったですか?」


ネクターは、一生懸命硬いバターをクリクリと、バターナイフで掻き取りながら、応える。

「竜樹が、教えてくれたから、難しくなかった!お砂糖とレモン汁と、煮るだけ。でも、お料理は、ちょっとのコツが大事なんだって。丁寧に、ヘタとって、洗って、一個ずつよーくふくの。それで、すぐ、煮ないの、お砂糖とかをして、しばらく置いとくんだよ。」

つぶつぶの、デッカいジャムできたよ!

ネクターはニッカリ嬉しそうである。


「あじみ、してみて!じゃむ!おらんねーじゅにいさまと、ねくたーにいさまと、つくったんだよね!」

くふふ、たのしかったね!


ニリヤが、背が届かないので踏み台をして、フライパンにつきっきりで、声をかける。左手に皿、右手にフライ返し。ふんふん、鼻歌歌って、結構余裕である。

「そうそう、味見してみて!イチゴのヘタって、取ると指が赤くなるんだね。私は、お料理して、初めて知ったよ。」

もっといっぱい、初めてが知りたい!

オランネージュが、ミルクからジィッと目を離さずに、スーリールに勧めた。


「ではでは、有難くもお手作りのジャム、いただいてみますね。おお、粒が大きい。キラキラ光ってとろみがあります。これは、いいイチゴを使ってますね!」

匙でジャムを、とろ〜りと持ち上げ、アップで止め絵。


スーリール、プリュネル、クーリールのニュース隊、それから編集、カメラ部隊に、沢山日本のニュースや情報番組を見本で見せた成果が出ている。美味しく撮影するのも、コツがあるのだ。


パクん。

「んんん!甘酸っぱい!美味しい!」

スーリールが、肩をギュッと寄せ、目をみゅっとつむって、頬に手を寄せる。もむもむと口の中でまったり味わって、こくんと飲み込む。

実際、果実も砂糖も、贅沢でフレッシュなジャムだったので、スーリールはこれほど美味しいジャムを食べた事がなかった。


む〜ん。


無言だが、金の匙を片手に、うっとり頬染まるスーリール。


ごくん!

会場にも備え付けられている、大画面を見ていた観客も、喉を鳴らして目を釘付けだ。


カッ、と目をかっぴらいて。

「これは、朝食勝負、王子様達なかなか侮れませんよ!さて、では、恋焦がれる男達の様子は?エーグル副団長はどうかな?」


エーグル副団長にカメラがパンする。手慣れた様子で、サッサと手際よくホットサンドを作っている。ホットサンドメーカーを火にかけたまま、付け合わせのきゅうりの煮ピクルスを盛っては、時折りホットサンドの様子を見て。

これは、普段、やっておる。


「お、美味しそうですね、チーズとトマトソースのホットサンドですね。」

「出来立て、味見します?多めに作ってます。」

おおお、何という主夫力!

サクリ、と出来立てホットサンドに斜めにナイフを入れて、小皿に互い違いに盛る。この辺も、こなれている。ピクルスもちょちょいとつけて、フォークを添えて。


アップで、断面。

ホカホカ、湯気。

ゆっくり、あーんぐ、サクッ と噛み締めて、とろ〜り、チーズが伸びる。

モグ、モグ、モグ。

ごくん。

むむ〜ん。


そして、付け合わせのピクルスを、パクリ、コリコリ。


「美味しい。美味しすぎる。」

トマトの酸味、チーズのミルキーな脂っけ、サックサクの白いパン。

「私、白いパン初めて食べました。美味しい、いや美味しい。エーグル副団長の妻になる方は、幸福であると、確かに言えましょう!」

トマトソースもピクルスも、手作りの持ち込みだそうです。ピクルスも、絶妙な酸っぱさで、口がスッキリします!


「さすが、男やもめ生活が長いだけあります、エーグル副団長。マメなんですね、料理も趣味なんでしょうか。」

竜樹が、ツッコミ入れると、ミランが返す。

「これも趣味の読書の一環だそうですよ。料理本読むの、好きなんだそうです。騎士団でキリッと仕事していながら、家では穏やかに家事もできるとは、なかなか魅せますね、エーグル副団長。」

ううむ。実力派。


すてきー!

観客の中から、黄色い声が。

私もかっこいいダンナに朝ごはん作ってほし〜い!

女性たち、家事夫くんにおめめキラキラである。


「あっ、もう出来上がりなんですね。搾りたてのオレンジジュースを添えて。これは、出来上がった順に、姫達に食べてもらったので良いんでしょうか?」


「勿論、出来立てを!エーグル副団長、運んであげてください!」

竜樹がインカムに向かって喋ると、大画面から声が会場に響く。

ニコ!と笑顔で、トレイにホットサンドとオレンジジュースを載せて、白いクロスのかかったテーブルで待っている、パージュさんの元へ持っていく。


「どうぞ、パージュさん。」

ニコニコ!

「ありがとう、ございます。美味しそうです。」

ニッコリ!


うわあ、と色々な角度からホットサンドを見て、おしぼりで手を拭くと、素手でパンを持った。

うんうん、ここはフォークじゃないね、手で食べるのが美味しい。

竜樹がうんうんしていると、


パクリ!


ホットサンドにかぶりつく。

みにょーん。チーズとろとろ。

サク、もぐもぐ、サク。


「おいひい。嬉しい。」


コクン。

飲み込んで、にこぉ〜。

パージュさんの笑顔。



そして、バラン王兄殿下は、真っ青な顔をして、それを見ていた。

魔石コンロに、火さえつけられずに、オロオロしながら。





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