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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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型抜きとヨーヨー


「うわはぁ!きゃぁ!」

「いっぱい!すごいでちゅ!」

「あ!あそこにほん、ある!」


3人セリュー、ジゥ、ドレ。ラフィネかーさとマレお姉さんとアマンおばあちゃま看護師とお手て繋いで、お祭りの屋台と人の賑わい、一本道を表通りに途端に。

タタタとトコト!


「待って待って待って!走らなーい!落ち着いて下さ〜い!皆で別々の場所に行かな〜い!」

ラフィネかーさ、あまりのちょっぱやで放射線状に引っ張る3人それぞれの小ちゃな手、あちこちそちこち、待って〜と悲鳴。マレお姉さんもタハッと中腰でおっとと、アマンおばあちゃま看護師はハッシとドレの肩に手を、トコトコしたくて前のめり。


ぶく、くっくっく、とフレーズおじいちゃん先生、ゆったりと大きな歩調で、後ろから付いて行きながら。笑いごっちゃないのである。

3人が子犬だったら、きっと紐は、こんがらがってるに違いない。


笑いを収めて、フレーズおじいちゃん先生が3人の頭をポンポンポン、とリズム良く。

「ほら、近い所から行こう。アレなんだろうね?面白そうじゃないかな?くるる〜ん、って紐で回るやつ?」


指し示された先には、ニコッ!手にピタッと戻ってくる、回るのは木の彫刻も美しいヨーヨー、赤いベストにスカーフ、若い八重歯のお兄ちゃんが、くるる〜ん、びよよ〜ん。

簡易な木の台、舞台に立って、呼び込みしながら技を披露する。あちこちビュンビュン飛んで、紐の途中を持って間でブランコ、投げて回りながら背面でビュン、そして床を散歩。最後は正面でピッと取ってバチ!とポーズを決める。


決まった!じ〜ん、とするヨーヨーお兄ちゃんである。練習に練習の日々。夢にまで出てきたくらい。


ここで、スケバンほにゃらら!と技を教えてくれた竜樹が嬉しそうに言っていたのだが、恥ずかしそうに決して真似しないでください、とも。何故だろう。スケバンて、何?


うぉおおお!と舞台の周りで立ち見の子供たちがキラキラの目である。


「さあいらっしゃい!これなるものはヨーヨーと言います〜。コルヌ地方に昔からあったオモチャなんだよ。竜樹様が、進化させて、技を教えて下さって、こんなに楽しく遊べるようになりました〜!皆も練習したら、カッコいい技が出来るようになるかも!お値段はピンからキリまで、銅貨5枚から金貨1枚、色々ありますよ。」


舞台の脇に屋台、木のヨーヨーはそれぞれ、素朴な丸から寄木細工の美しさ、彫刻の繊細さ。大きさも子供の手サイズのちんまりしたもの、しっかりと大きいもの。ニス塗りの艶々。


「おれ、ヨーヨーほしい!」

「ジゥもあそびたいでちゅ!」

「ほん……ヨーヨー……、ううぅん?」


3人とも1つ目のお店で早々とお小遣いの使い道決めちゃうの?ヨーヨーに心奪われ、はわぁとお口が開いちゃっている。

セリューなど、「おれと、ロンと、サンのと、3こかう!」フンス!と鼻息も荒い。

ラフィネたちは、タハハと笑いながら、本当に大丈夫?って聞くしかない。大人にしてみれば、色々回って、やっぱり欲しければ戻ってくればいいし、他の選択肢は?もっといいものは?後で他のものが欲しいよ〜って、ならない?って言いたくなるのだ。


そこで商売上手なヨーヨーお兄ちゃんは、お試し用の貸し出しヨーヨー、勿論素朴なやつ、を子供たちの中で反応が良さそうな子に持たせる。買ってから、遊び方が分からなくて死蔵されたら悲しくなる。最低でも、くる〜んと投げて、戻ってくるまでは教えたいのだ。

セリューもどうぞされて、ニコニコ指に糸の輪っかを嵌めた。


「ヨーヨーを、下にぽーんと落とします。くるくるくる〜、ってなるね。ここで、ちょん、ってちょっとだけ手を上げます。ほら、戻ってきたね!出来るかな?」


粗末な継ぎをあてた服を着た、けれど身綺麗にしたお母さんと、同じく一緒の男の子が、おずおずと借りて、ぽわぽわに嬉しそうにヨーヨーを上下する。

お母さんは、眉を困ったに笑っている。大人にしてみれば、食べられもしないものをとも思うけれど、ここは一つ、買ってやるべきか。

富める者、貧しい者、それぞれにお祭り模様。


そこに太った親父が現れた。

「さあさあ皆さん、ヨーヨーも素敵、だけどそれをお安く手に入れられたらもっと素敵!銅貨1枚で、お得な挑戦!ヨーヨーだけじゃありません、沢山の景品の中からお好きなものを、この、型抜きで!提供はヴィヴィエン雑貨店のこの私、ホーンオジさんだよ!」


ピロリッポピ、ポロポロ〜♪


横から舞台に、ハイッと入ってきたのは、モサモサの綿毛みたいなアフロの、手足が長い青年。ネクター王子が歌の競演会冒頭で吹いた、国歌の時の笛、ラプタをホロホロ、ピッポロ♪オカリナめいた土の、可愛い音。


ホーンオジさんが合いの手を入れる。

「ラプタも景品に入ってるよ!ちっちゃな太鼓はいかがですか?鈴もリンリン、お隣のリーニュ楽器店も一緒に提供していま〜す!型抜きって知ってる人〜!」


しらなーい、と首を振るお客さんの子供たち。素直なのである。セリューも貸し出しのヨーヨーを握ったまま、ふるふる。


長くなりそうだなぁ、とラフィネたちは、アマンおばあちゃま看護師とフレーズおじいちゃん先生と、型抜きとやらの舞台の周り、木箱の椅子を持ってきて座った。人だかり、それぞれしゃがんだり、適当にそこらへんの空き箱を持ってきたり。

だからか。この簡単な小さな舞台と横の出店の周りには、広めに余白が取られていたのは。

道に少しはみ出ているけど、今日は馬車も通らないから、皆避けて歩いている。何やってるの?と気にしながら、その中でポツポツと、立ち止まる人もいたり。


ラフィネはセリューの肩に両手を乗せて、後ろから覗き込みつつ、型抜き何だろね?ってした。

いや実は竜樹とーさが企画に携わったから、チョコっと知ってるけど。

ジゥの後ろはマレお姉さん、ドレの後ろにはフレーズおじいちゃん先生とアマンおばあちゃま看護師が隣り合って良い雰囲気である。


「型抜きには〜、この、ラクガン、っていう美味しいお菓子を使います。これね。」

パクん、もぐもぐ。

長方形で4.5センチ×3センチほどの板の落雁を、ホーンオジさんがパクんと食べた。

「美味しい!これ、栗の味がするんだよ。ほらほら、見てごらん。このラクガンに、何か線が書いてあるでしょう。そこで必要になるのが、この釘。そして、お皿ですねぇ。」


お皿に落雁をのっけて。

釘で、線を削って、形を抜き出す。


「出た欠片は食べられますよ。型抜きが、完璧に、キレイにできた方には、景品を!ところで〜、ほらほら、ラクガンの線の絵、色々あるでしょう?難しい絵柄に挑戦して、お目の高い素晴らしい景品を目指すもよし、やりやすい絵柄で確実に景品を貰うもよし。こ、れ、は、戦略が必要になってきますねぇ〜?」


ピロリッポポロポロ〜♪

ヨーヨー、両手でビューンビューン。

綿毛のお兄ちゃんも、八重歯のお兄ちゃんも、後ろでワワワと盛り上げる。


竜樹の世界の型抜きは、澱粉などでできたピンクの板をぬく訳なのだが。皆で、より美味しい方が良いだろうと話し合い、落雁に。大きさもやりやすく大きく。削る針も小ちゃい子がやれるように釘にした。


「こちら景品は、女の子にも嬉しい、パッチンとな、ほら、可愛いでしょう?髪留めですよ〜。飾りも色々あります、飾りのあるパッチン留めは、前髪に。黒いシンプルなものは、纏めた髪を後ろでほつれ補助に。大きいのも小さいのもあります。」

ホーンオジさんが留めても可愛い、布のお花のヒラヒラがついたパッチンである。ジゥ、お目々がピキュン!となった。周りの少女たちも。


「あー、あれは小ちゃな女の子につけたら、とっても可愛いわねぇ!」

「ですねぇラフィネさん、私も欲しいなー。ちょっと作業する時とか、簡単に留められそう!」

「シンプルなの、良さそうねぇ。」


「ふふふ、そうしたら、私がパッチンをとって、3人のお嬢さんたちにあげましょうかね。」

フレーズおじいちゃん先生、パッチンの型抜きは難しくなさそう、と景品と型抜き種類の布看板、綿毛くんと八重歯くんがよっこいしょ、と高い位置に貼り付けて。いや、買えるんだよ?おじいちゃん先生は。それくらいのお金は持っている。大人だし。

でも、カッコつけつけ、うっふっふ、と笑った。ラフィネとマレお姉さんと、アマンおばあちゃま看護師は、まあ!いいんですかぁ?うふふ、無理はしないで下さいね、とほころんだ。大人のお嬢さんたちも自分で買えるけれど、おじいちゃんでも男性が、しかも下心なくとってくれる、というのは何か嬉しい。お金の問題じゃないのである。


「セリューはどうするの?」

ラフィネが聞けば。

「お、おれ、ヨーヨーほしい。あれ。」


指し示すヨーヨーは、なかなか美しい星模様、寄木細工のものである。銀貨1枚、竜樹とーさから貰ったお小遣いは、銀貨2枚。セリューと、サンと、ロンの分、3つは買えない。


「3つは買えないよ?」

うーん、と考えて、セリュー、ハッ!と良いこと考えた。

「かたぬき、やすい?」

「型抜きは安いけど、ヨーヨーとれるかは、分かんないわよ?」

「がんばれば、いっじゃんね!」


そんなに上手くいくかなぁ?セリュー。

ラフィネは、せめて1つは持って帰って欲しいなー、と、折衷案を提示する。

「1こは、買ったらどうかな?そうしたら、もし取れなくても、ロンとサンと、かわりばんこに遊べるじゃない?もし、型抜きでとれたら、3こになるかも、2こかもだし。それは、それで、皆で遊んだら、どーう?」


うーん?うー。う〜うーんとねー。


「じゃあ、そうする!」


ホッとするラフィネである。

別にお祭りで損しても思い出だけど、全部型抜きに突っ込んで上手くいかない、なんていう、悲しい顔を見たくないのだ。


ジゥは何と型抜き一本でまずは。パッチンのお花が欲しいのだと。

ドレは、景品の、物語の本が欲しいと挑戦。


お皿とラクガンと釘をもらって、子供たち(一部大人)が膝の上、カリカリし出して。綿毛くんは舞台を周りながらピーポロリ、八重歯くんはヨーヨーびゅんびゅん。

この型抜きの屋台は、実は薄利なのである。販売の方はお手に取りやすくも価値に見合う値段になっていて、お手軽な型抜きで(努力は必要だが)お高い品も手に取ってもらえる。目的はヨーヨーやパッチン、ラプタや太鼓などの、細かな地方依頼の手仕事を応援するため、宣伝含みでお安くお得に。

そしてお祭りを盛り上げてと、今後の販売の発展を見込んで、損しない程度にホーンオジさんのヴィヴィエン雑貨店も、リーニュ楽器店も、竜樹たちのアイデアに乗ってくれたのだ。


まったりとお祭り、こんなのも良いわねぇ、と大人たちは真剣なちびっ子たちを温かい目で見守る。3人あちこち走り出した当初は、どうなっちゃうか、と思ったけれど。

ラクガンの欠片を、削るのに夢中で食べないセリューたちから貰って、甘味を味わいながら、のんびりこ。


「ああっ!……欠けてしまった……。」


フレーズおじいちゃん先生も真剣です。



そのフレーズおじいちゃん先生を、遠くから見、気付き。眉を顰めた人がいた。どこかフレーズおじいちゃん先生に似た、若き父親と抱っこされた息子、護衛に守られた、貴族の親子。


フレーズおじいちゃん先生は、治療師の、白衣に似た、合わせのシンプルな上着を着ているので、とても目立つのである。白衣と違う所は、襟元の飾り刺繍であろうか。

そう、この季節、秋色、ダークカラーがひしめく人だかりの中、オフホワイトの上着は、そこだけポッと浮いて見えた。


若き父親に抱かれた男の子も、父親が気付いたその人に、あっと目を止めて。



「おじいちゃま!」


ぼくとおまちゅり、おちごとでダメよって、ゆったのに!






一瞬だけ、注目度ランキングの78位になりました。

もう違っちゃってるけど、ほんのり嬉しかったです。

どういう基準でのるのかしら?

分からないけど、新しく読んで下さる方も、ずっと続けて読んで下さる方も、ありがたく。

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