名コンビが産声をあげる
◎前回の更新、
リルケ男爵家ファフニールの婚活15
を朝5時に予約更新したあと、5時1〜2分くらいに、後半、文を沢山追加して更新しなおしております。
前回5時ジャストくらいに読まれた方は、良かったらもう一度、〜婚活15 を読み直してやって下さい。
すみません。
「……と、いう訳で、私ファフニールの婚活は、素敵なレッキス様と婚約をすることになって、終わったのです。めでたしめでたし!なのでした。」
ファフニールが、占い勝負の結果発表含みの、この不思議なメンバーの昼食会にて、長い長い婚活話を話し終えたとき。
皆は、ふぉ〜う、と大体食べ終わっていて、お茶を片手に、ペシペシポフ、と間抜けな音の拍手。
狼耳尻尾アルディ王子と、ペタンと足を曲げているのがちょっとしんどいエフォールは三角座り、肩をくっつけ合ってふにゃんと緩み、おおお〜と感嘆。
小ちゃい子組のロンは、ニコニコして、「メデタシ!おうじさまと、おひめさまは、けっこん、だんだよね〜。」と、教会孤児院のおねえちゃんたちが好きで強請る、お姫様のお話ってやつの大体はそうなる、オチに納得した。
占い少女ショワの弟エトは、隣のロンにウンウンして、「良かったねー、ファフニール様!今日はレッキス様と来なかったの?」と聞いた。
「レッキス様はね、午後に待ち合わせをしているのよ。人混みが苦手なのですって、一日中は厳しいから、午後から夕方くらいなら、って。喫茶店予約して約束してるの。」
喋っていてあまり食べていなかったファフニール、手に持ったサンドパンを、パックン!と美味しそうに。
もぐもぐ、もぐ。
従者も付けず、単独で占い通りにくり出すなど、レッキスが知ったら、め!するのだろうが。
ファフニールはキリの良い所まで喋れて機嫌良く、呑気だ。
占い少女ショワと、占い勝負をしたトラジェとが、ウットリ、恋物語にハマっている。話し手がファフニールなので、爆笑恋物語ではあったが、少女は夢をみるものだ。勝負の事なんかどっかいっちゃっている。
「ファフニール様、ステキね……。」
「ウン、物語みたい!みすぼらしい青年が、乙女の愛で王子様になるのよ!」
トラジェは実の父母ではなく、養われ子として虐げられていた経緯の、厳しい過去があるのに。シビアにそんな甘いお話なんて!フン!などと言わず、どちらかといえばショワよりウットリしている。
捻くれて、酸っぱい葡萄はいらないよと言うほど皮肉っぽくないのは、ファフニールの話がやっぱり身振り手振りで表現豊かに酔わせてくれ、面白かったからだ。
そして、心の底では、愛を育み結ばれる恋人同士に、そこから生まれる家庭の物語に、憧れがあるのだろう。
ショワの母、ハピは、ニハ、と笑って娘と、そして馴染みのトラジェ少女を見ている。普通の恋愛も、なかなか何だかんだ、物語とおんなじに素敵よ、と夫ティザンと目配せをした。2人だって恋人同士だった事があったのである!うふふ、だ。
ショワとトラジェの占いのお師匠、モントレお師匠は、ふふふ、とまだまだ未熟な少女弟子たちの様子を、にこやかに見ていた。ファフニール嬢の話の中には、沢山、少女たち、特に過去受けた傷によって敏感な、トラジェにとって、参考になる事があったように思う。
勇気を出してファフニール嬢と結ばれるため、人と繋がる道を選んだレッキス様。
そして、家族であっても、嫌な事をする人は嫌な人だったり。
誰であれ、どんな思惑があったとしたって。
それに、良かれと思ってショワに不幸を味合わせ、成長させようとする手段は、ファフニール嬢の丸っとうまく収まったお話からすれば、なんと。
拙い、角ばったやり方なことか。
それをどう伝えよう?
人と関係を都度切る、傷つけて押し出すやり方ではなく、緩く繋がり続けて、一緒に育っていくやり方を覚えてゆくことも?
モントレお師匠は、人と関わる、同じく皆、それぞれに思う事が違い、それぞれにこうしたいという行動原理が違う人の流れる中で、どう自分が人と関わってゆくのか、強引なやり方を責めるでなく。
気付いてもらいたいな、と物語の憧れに寄せて、少女が心に栄養をもらう事を今一時、喜んだ。
そして。
トラジェに占いで唆されて、ショワの母ハピと無理やりゴニョゴニョをして不能を治そうとしていた、子爵家の若様、トロットサンダッツは。
ふー、と眉を下げて、いかにも残念そうに。
へにゃってため息を吐いた。
ガシガシ、グシャと前髪をかき上げる。
「なんで、トロトロサンダルわかさま、しょんぼりしてるの?」
ロン、良いとこ突っついた。
「うっ、なっ!?トロトロサンダルではない!私はトロットサンダッツだ!」
ビクン!と肩を上げて、ムムッと応え口したが、そんなの、不思議ハテナ?な、アルディ王子やエフォール、エトにロンたちはお構いないのである。
占い少女ショワとトラジェも、ん?と視線を投げるし、モントレお師匠、ショワの母ハピに父ティザン、白熊眷属レザン父ちゃんも、のんのんとした顔のまま、なんで?って感じでジッとトロットサンダッツを見る。ファフニールは、サンドパンのお尻を、はふんとお口に上品に入れて、もぐもぐ?と食べつつ視線で問う。
何か面白そうだから。
「がっかりなの?」
「しょんぼりなの?」
「どうしてなの?」
どーしてどーして、どーしてなのー♪
街歩きチームの合唱に、うううぅ!と唸っていたけれど、トロットサンダッツは観念した。どうせこの場で、恥はかきつくしたのである。上にまた一つ乗っても、どーってことない、ような、気も、しないでもない。ヤケクソである。
「だーかーらー。何だ、その。母や妹みたいに、ツンツンしてなくて、上から目線じゃないし、男を小馬鹿にしないし、ファフニール嬢、ちょっとイイな、なんて……いいだろ!思ったくらい!別に婚約者のいる女性に横恋慕したい訳じゃない!ちょっとイイなくらいだ!」
真っ赤になって言い訳である。
へー。へー。
「ファフニールさま、おもしろいもんねぇ。」
「可愛いしね。」
「私も、すきー!」
おれもー!わたしもー!わぁわあわぁ。
「俺も、かわいいって、思う!すき、かも!」
弟エト、ポッと恋の目覚め?
無邪気な少年たちの、すきー、は、ニッコリ受け入れられた。
「ありがとうございます、ロン君、アルディ殿下。エフォール様、エト君。それからー、トロットサンダッツ様も、うふふ、好ましく思って下さって、ありがとうございます。」
「ちょっとだ、ちょっと!」
ガァ!と叫ぶトロットサンダッツ。
「こい、やぶれた。」
「失恋だね。」
「レッキス様がいるもんねぇ。」
だーかーらー!
「トロットサンダッツ様は、お相手がいらっしゃらないのよね。私が占い師の真似をしたかった、レッキス様との婚約お披露目の夜会って、若いご招待のお客様は婚活も目的でらっしゃるのよ?だからこそ、何か面白そうな事をして、盛り上げたかったのだけど。」
え、とお口が開いちゃうトロットサンダッツである。
「どうかしら。夜会、ご招待しましょうか。素敵なお嬢様、お招びするわよ?」
ファフニール、でもね、トロットサンダッツは。
「たたな……むぐっ!」
ばん!と飛びついてロンのお口を塞ぐトロットサンダッツ。必死である。そうだよ、アルディ王子たちや占い少女ショワたちには、トロットサンダッツの不能と、どうしようもない治し方の乱暴がバレているけれど。この中で、若い女性で、その事を知らないのが、ファフニール嬢ではないか!
知られたくない、ぶるぶるる、そしてなのである。
「是非招待状を頂きたい、ぜひ、ぜひ!あやかりたい!素敵な女性と出逢いたい!!頼みます、ファフニール嬢!」
チローン、と少年たちも、少女たちも、そして彼の狼藉を知っている大人たちも。
都合の良い、そして精神的なダメージは大丈夫だったらしい、ちゃっかりしているトロットサンダッツに、じろ目で何となくフフ〜ンと笑った。
「治療にも良い影響がありそうですがね。どんなに素敵な女性と出逢えても、羽目を外してはダメですよ?」
治療師ルルーが、その観点から、念押しするのだ。
「わ、分かっている!!反省しているし!その、その、反省している!その、その……ご、ごめんなさい。」
しょぼ〜ん。
ファフニールは何を謝っているのかは知らなかったが、後でショワに聞こうと思いつつ。元々難がある方たちの婚活に、上手く破れ鍋に綴じ蓋、組み合わせによって満足するお相手を見つけられたら、が彼女たちのやりたい事なので。
トロットサンダッツを拒否はしなかった。
「色々と失敗してこられた方も、これから気持ちを変えていかれたらね。トロットサンダッツ様も、招かせていただきますわね。」
ニッコリした。
ガリガリがりり。
鉛筆で手帳を引っ掻く音が響く。
トールである。
トラジェの占い客、脚本家になりたいと悩みすぎてぶっ倒れて、先ほどまでファフニールの話をキラキラした目で聞いていたのに。
猛然とメモをし出したのだ。
「トール、何を書いているの?」
アルディ王子が、お耳をワッピと開いて、ハテナ?する。
応えるのも勿体無い時間とでも言うように、ぶっきらぼうに。
「脚本です。」
「きゃくほん?おはなし?」
「何か思いついたの?」
少年たち、立って頭を寄せて、トールの手帳を覗き込む。
ざっと荒く走り書き、何とか読める、タイトルがカッコで大きく書かれている。
『リルケ男爵家ファフニールの婚活』
「さっきのお話、舞台にするの!?」
エフォールが、ふわぁ!と声を上げる。
「いーねいーね!面白かったもんねぇ!」
アルディ王子も、わっと喜ぶ。
「なんてかいてあるの?」
ロン、それはね。ショワの弟エトが読んでくれる。
「りるけだんしゃくけ、ファフニールのこんかつ、だよ!」
きゃあああ!
とショワとトラジェが歓声を上げる。
「観たいわ!」
「観に行きたいわ!」
「舞台に〜。そうしたら、占い師の真似じゃなくて、婚約お披露目の夜会で舞台をしようかしら。私が私の役ね!あぁ、でも、当日はご挨拶やお披露目や婚活のお手助けで、舞台の本番なんて、そんなことやれるかしら?」
ファフニールが首を傾げて考え出す。
イイねイイね!
婚約お披露目夜会で舞台!
竜樹のテレビのお仕事の準備を、ぶつぶつと良く聞いている少年たちは、こんな時どうしたら良いか思いつくのである。アルディ王子が。
「カメラで撮ればイイじゃないねぇ。」
そうしたら、事前に撮影ができて、当日は流すだけではないか。と。
エフォールも、考え考え。
「コリエお母様と、ジャンドルお父様の結婚式のおはなしで、なれ初めドラマってやるのどうか、って竜樹様言ってたなぁ。本人が、役者をやって、演じて、やるんだよ!」
盛り上がるらしいよ!
そーだそーだ、と、どんどん思い出す。お尻尾をブンブンしながら。
「そーいえば、テレビでドラマっていうのも、やりたいんだって。物語の、CMでお話みたいになってるのの、もっとずーっと長いやつだよ。竜樹様が言ってた!新しく入るはずの社員たちに、勉強として記念ドラマをやらせたい、って!」
ロンは思うのである。
「なれそめどらま、テレビでもやったらダメ?そうしたら、おしごとなるだよねぇ。」
ふむふむ。
ファフニール、少年たちの話をジッと聞いて頷いて。
「私の婚活話、テレビでドラマとして流す物語にできたら、ウチの夜会でまずは流すことで、宣伝になったりしないかしら。ご予算も、少しは協力できたりしますわよ。取材も、撮影場所の協力も、出演も。ウチも、テレビで流すようなドラマを先に観れるとなったら、なかなかの話題になりますわねえ!」
「何でもいい!私はこのお話が、書きたい!観たい!ファフニール様、貴女の演じる貴女の物語を、笑える婚活話を、描きたいんだ!」
ガリガリがり、と。話をする間も、ポロポロ溢れていくから惜しいんだ、というように書き続けながら。
トールの目は熱く、目指す所をはったと見据えて、燃えているのだ。
「みたーい!」
「トール、竜樹様に今日帰ったら、トールがこんな話を書いてるよ、って私たち、伝えるね!」
「竜樹様お仕事だから、ぜったいは言えないけど、トールの書くお話が面白かったら、きっとテレビにしてくれるよ!」
子供たちだけでは伝わるか不安だろうと、白熊眷属レザン父ちゃんも。
「俺も、アルディ殿下とエフォール様と、ロンと一緒に、竜樹様に、ちゃんと伝えるよ。こんな面白い話がありますよ、って。テレビは人材不足だから、少しくらい未熟でも、熱意ある脚本家も、面白い女優さんも、きっと募集中だよ。」
近い未来。
『リルケ男爵家ファフニールの婚活』はパシフィスト国営テレビ開局記念初ドラマ事業として、ドーンと2時間、笑いと温かさとファニーな魅力を充分に放映され、大人気話題作となって巷を駆け巡る。
ベルゼウス伯爵家の嫁でありつつ、喜劇女優として、多岐な活動を始めるファフニールの、そして名コンビとなったトール脚本家の、2人の初のお仕事は。
ダイジェスト版の、婚約お披露目夜会での、なれ初めドラマ。全てご本人出演の、手作り感溢れるものだったが。産声に喝采を、将来の成功を予感させる熱量を観た人に与える良作であったという。
レッキスがテレビドラマで、ファフニールのお相手役を他の男優にさせたくなくて、近く触れさせたくなくて。
演技力を磨きに磨いて、婚活話限定の男優としてデビューしたのも、また良い話題となったとかなんとか。




