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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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リルケ男爵家ファフニールの婚活 15

朝5時1〜2分頃に、この婚活15で後半沢山文を追加したので、もし5時ジャストくらいに読まれた方は後半もどうぞ改めて読んでいただけたら。次回更新時にも注意書きします。

すみません!


レッキスとファフニールは、パーティも主役に皆、挨拶が済み、盛り上がってきた会場内で。難しい息子や娘を持つご夫婦たち、またはそうではなくともいい夫婦のご老人や熟年たちと、歓談をしていた。


レッキスは、ファフニールのリルケ男爵家の領地で造られる、薬用酒について、先ほどから詳しく聞かれている。

生薬を漬けてあり、寝る前とお昼と起きた時にほんの少しだけ、一口しないくらい飲む。

濃くて、飲むとカッと温かくなり、薬効が確かにある。滋養強壮に肉体疲労の回復、冷え症や胃腸の不調の改善、病中病後の体力回復に、食欲不振に虚弱体質、血色不良の改善などなど。

冷え性のご夫人や、同じく歳を経て虚弱になりがちなご夫君に、何々!?と深く興味を持たれて、自分の体験談だから、話下手でも真面目な喋りっぷりが、ちょうど良く、こんな感じの不調に、じわじわと効いたよと、伝わるのだ。

また、肌着はこれが良いよね、着てると着てないで全然違う、こういう長い裾の形の……お腹が冷えなくて、キツイ下着は良くないけどフィットしないのは薄ら寒くて、オシャレに着るには、などの健康情報でも、しみじみオジオバ様たちと話が合い、何だかんだ人気であった。


ファフニールも薬用酒のお値段の事や、取り扱い店、昔から領地で飲まれて安全な事など、横から助言して。うんうん、ほうほう、やはり身体を労わらないとねぇ、この歳になると、いやいや貴方様はお若いですよ!などなど、盛り上がって。


若い娘さんと息子さんのパートナーたちは、レッキスとファフニール、その周りでしみじみしている高位貴族たち、または実力派な中堅、低位貴族たちに、チラリチラッと目線を。


きっとお話上手なのね、あの方たち。

私たちともお話してくれないかしら?素敵な王子様みたいな、レッキス様と、朗らかでお人柄の良さそうな、ファフニール様!


などと、ひそひそうふふ、と注目されていた。



「ちょっと!!ジェイ!だから私はこんな色のドレス、嫌だって言ったのよ!野暮ったいったらないわ!」


突然響き渡る叫び声に、ハッ、と皆が注目した。若いお嬢様、美しい、気の強そうな濃いピンクに、メッシュの銀髪。柔らかな布、落ち着いた茶金色のふわふわドレスは、鈍い銀鎖やパーツで所々をシメて、豪華でもあり、可愛らしさもあって、デザインはなかなか良い。色白の肌にも似合っている。

けれど彼女は気に入らないらしい。

それを、あわあわ、と周りで、茶金の髪に瞳の、頬のまだふっくらした優しげな若い青年が、どうにか宥めようと。

「カナリー様、贈ったドレスが気に入らないのは分かりましたから!ごめんなさい、謝りますから、この場では。」


カナリー様は苛々と、パートナーらしきジェイ青年に、ドレスのスカートをバンバン叩いて更にヒートアップする。

「誤魔化されないわよ!だからアンタなんて嫌だって言ったの!お父様も何を考えているのかしら!触らないで!私にもっと素敵なドレスを持ってくるか、あの女のドレスを脱がせるか、帰らせるかしなさい!じゃないと許さないわ!」


ありゃ〜、とファフニールはお口に指先を当てて、チラリと側のオバ様を見た。

ひそり。ひそそ。


「我儘薔薇姫、クイール伯爵家のカナリー様だわね。お家の領地も広くて裕福でらっしゃるし。あそこのお家はカナリー嬢しかお子さんがいないから、叶わない事はないくらいに甘やかしていてよ。」


オジ様も、こそりと加わり、レッキスとファフニールに教えてくれる。

「あの青年は、クイール伯爵家近隣の領地のフィード子爵家の子息だね。カナリー嬢が何度も婚約目前のお相手を拒絶するものだから、結局幼馴染の彼が受け皿になってるんだ。」


で、何を怒っているのかな、と周り中でヒソヒソしながら見ていれば、どうやら。同じ茶金の色のドレスを着たご令嬢がいて、被ってるのが気に入らないらしい。

その、たまたま茶金ドレス被りのご令嬢は、パートナーと手をしっかり繋いで、理不尽な怒りを浴び、この場を騒がせている事を恥じて、震えて小さくなっている。


「カナリー様、このパーティはいい夫婦、いいパートナーがテーマの和やかな場なんだよ!ドレスのお色だって、誰もわざと同じにした訳じゃないし、パシオン侯爵家のお祝いを、ぶち壊さないで、頼むから!」


ジェイ青年が、罵られている茶金ドレスの令嬢の様子にチラリと目を向けて、苦しそうにカナリー嬢に頼む。身の置き所がなさそうな、ジェイ青年、そして茶金ドレス被りの令嬢。そのパートナーの青年(やっぱり金茶の瞳で、彼が令嬢に贈ったドレスなのだろう)は眉をビビビッと怒らせて。


「カナリー嬢。貴女に、この柔らかなお色の茶金のドレスは、確かに似合いませんね。そちらが脱いでらしたらどうですか。ああ、お相手も気に入らないようですし、いいパートナーというテーマにもそぐわないのでしょうから、お帰りになっては?」


ビシ!と返して、ムカーッと真っ赤になったカナリー嬢をそのまま。

自分のお相手の、可哀想な令嬢を精一杯優しくエスコートして、ファフニールたちの方へやって来た。


「ご災難でしたわね。」

「大丈夫よ、ドレスのお色が被る事なんて、良くある事ですのにね。」

オバ様たちは、涙ぐむ令嬢の背中に手を当てて、大丈夫大丈夫、と囲んで庇い、慰めた。それを見てホッとしたパートナーの青年は胸に手、どうか若輩者をお助け下さい、お仲間に入れて下さいませ、とオジオバ様たちに眉を下げて頼んだ。

良いとも良いとも、である。


ほえー、と呆気にとられていたファフニールは、ほとっ、と言葉を落とす。


「茶色っぽい髪や瞳の方なんて、沢山いらっしゃるわよねぇ。私も茶色系ですし。あちらの方もそうだし、ほら、あちらの方も。いい夫婦のパーティだから、皆さん特に今日は、お相手のお色を入れていますし。誰とも被りたくないなら、誰も着ないドレスのお色と形にすれば良いのにねぇ。肌のお色と同じやつとか。あ、それだと裸みたいかしら。七色でケバケバしてるのだとか?絵を描いちゃうとか!あー、絵を描いちゃうのは、素敵になるかも。でも、そーだわー、ウチのジャバウォック兄様みたいに、猫を描いてもゲジゲジみたいになっちゃう人もいるんですのよねー。ゲジゲジドレス、確かに誰も被らないわ。カナリー嬢、着て下さるかしら?」


………。

しーん、としていた所に、ファフニールの言葉は大きく響いた。

ゲジゲジドレス。

誰もが、ホワホワほわわわ〜ん、と、ついゲジゲジドレスを着たカナリー嬢を想像、した。


ぷっ。くすす!くくく。

クスクス笑いがそこかしこ。

涙ぐんでいたご令嬢も、ふ、と笑って。ファフニールも、ニン!と笑ってウンウンした。

「茶金って素敵なお色ですわよね。光輝く大地の色、なのに優しく受け止めてくれる色。貴女に、とってもお似合いよ。理不尽に怯まず守ってくれる、素敵なパートナーでらっしゃるし、今日のテーマにぴったりのお2人ですわ。」

「あ、ありがとうございます。」


本当、素敵なパートナーよ!うんうん、だよね、とオジオバ様たちにも慰められて、令嬢と青年は気を取り直して。ふふ、と顔を見合わせて恥じらった。


さて、それで腹がおさまらないのはカナリー嬢である。

ゲジゲジ!?ですって!?

と、ジェイ青年が腕を掴んで引き止めるのを、ずりずり引き摺って湯気を立てる勢いの怒り、ファフニールへ向いて。


く、くひ、くくくく、と大笑いするのを堪えているレッキスに、ギロリと視線を。

あー、ふー、と笑いをやっと鎮めて、レッキスは、滲む笑い涙を指先で拭いて、ふりふり、と振った。

その仕草はいかにも王子然としていて、ゆったり優雅であって、怒りを振りまいていたカナリー嬢が、違う意味でポッと顔を赤らめた。


(な、何!?このお方、素敵じゃない!?地味なジェイなんかより、よっぽど私に似合っていますわ!)


心の中で呟いたはずのその言葉は、思ったままに口から漏れて、ジェイ青年はそれを聞いてサッと顔色を悪くさせた。

またカナリー嬢の悪い癖が出た、と思ったのである。


「ねえ、貴方。そこの、そこの貴方よ。」

う、うん!と咳払いをし、止めようと前に回り込んで腕を広げたジェイ青年を、ペイッと横にさばき。気持ち悪い位の猫撫で声で、カナリー嬢は。


ん?こちら?

とレッキスが隣の、ちょっとだけふくよかなオジ様に手を促して、ん?とする。オジ様が、んん?とレッキスを見て、カナリー嬢に、私?と自分を指さし、ハテナ?する。


「何でそんな小太りオジジを呼ぶんですのよ!違いますわ!白金の髪の王子様、貴方、貴方に決まってますでしょ!」

「逃げてぇ!カナリー様は婚約者の2人を壊して男性を奪っちゃうくせに、すぐ飽きてポイするんだ!何度泣くお嬢さんを見てきたか!何度青褪める男を見てきたか!もう嫌だ!やめてぇ!」


ジェイ青年に叫ばれなくても、レッキスは、カナリー嬢、ないなーと思っていた。

猫撫で声の彼女は、確かに誰もが振り返るほど、女性として咲き始めた、鮮烈で芳香漂う蕾の色香があった。嫋やかに腕に手でもかけられれば、ポッと顔を赤らめる男性もいるだろう。分かりやすい、そして圧の強い魅力である。

けれど。


チラッとファフニールを見る。

うん?とニコニコしている。

また、面白いなぁ、真似したいなぁ、なんて思っているのだろう。カナリー嬢に纏う毒気までユーモラスに変えた、誇張しているのにどこか上品な仕草で。

真似っこの様子を想像して、クツン、と鼻にかかった笑いを溢すと、その優しい王子スマイルに、カナリー嬢の方が、うっ、うぅ、と。

うっとりした。


「す、素敵な方。貴方のような方は、私にこそ似合っていますわ。隣のブサイクな女なんて捨てておしまいなさいな。悪い事は言わないわ。さあ、今すぐ私をエスコートして!」

うっとりしたまま、強引に、自分の胸に抱き込むようにレッキスの腕を取る。柔らかな膨らみたてのそれを押しつけられて、レッキスは。


ニッコリ、とカナリー嬢に笑って見せた。

「貴女は咲き始めた薔薇の花のように、麗しく瑞々しく、美しい方ですね。カナリー嬢。」


「まあ!私、薔薇姫と呼ばれていますのよ!分かって下さるのね!」

下からねっとりした視線で見上げ、腕に頬を寄せたカナリー嬢。

ジェイ青年は、あぁ、毒牙にまた!と頭を抱えている。


ぐっ、と抱え込まれた腕、その絡みつく手に手を乗せて。

グイッ ズボ。

とと、と腕を抜き、一歩下がりカナリー嬢から距離を取るレッキス。

カナリー嬢は、えっ、と引き剥がされた手を、わわ、と広げたまま、目を見開いていた。


「薔薇の花は、咲き始めたばかりでも、これと見たお相手を、その人だけを見させて、愛の牢獄に入れるのでしょう。」

「当然ですわ。私だけを見て欲しいの。貴方も私の愛で一杯になって?」


首を傾げて一歩前へ。

レッキスは、それを受けて一歩また下がる。


「薔薇の花は美しいけれど。」

チラリ、と今でもワクワク面白そうな顔で見ているファフニールに視線を。

髪飾りが、夜の、パーティ会場の賑やかな灯りで、柔らかく爽やかに咲いている。嫉妬してほしい気持ちもあるけれど、少し悔しいけれど、こんな時でさえ面白がっている、女性の黒い所があまりない、楽しみ屋のファフニールが、君らしくて。


「私は薔薇より、オレンジがいい。」


ファフニールは、ふ?とレッキスを見て、ふふ!と恥ずかし嬉しそうにした。

それだけで心高鳴る。


「まあ!薔薇は花の女王ですわよ!?私ほど美しい者はいないわ!」

カッ、と拒絶に顔を強張らせた、確かに小さな女王は、美しいのだろうけれど。


「薔薇の花は、私は私は、って人を囲う主張する、1輪でも見応えのある花ですね。……オレンジの花は違う。可愛らしくて、爽やかな純な乙女の香りがする。その白さは柔らかく包んでくれて、そして沢山小さな花が咲いて、実がなって。その木には、人が集ってワイワイと美味しく楽しく、リラックスして気持ちよく、開かれて風を感じられる。私は。」


人を虜にして振り返させる薔薇よりも。


「愛を沢山の人に、そして私にくれる。オレンジの花が好きです。」


ああ、ファフニール。

この気持ちを、素直に伝えよう。


「私はオレンジの花の下で生きて、笑っていたい。ファフニール、私は君というオレンジの花の下で、人を自然と綻ばせる君の木に寄り添って、一生笑って過ごしたい。……私は君に、先に勇気をもらうばかりで、求婚もなし崩しで、不甲斐ない男だけれど、今、私から。この場ではっきり、私の気持ちを伝えさせて。」


くるり、ファフニールをこちらに向けて、翻って。カナリー嬢から距離を取り、オレンジの花に跪く。

そうだ。レッキスから、ちゃんと言っていなかった。


「君が好きです。君と、君を育んだ全てを丸ごと、愛しく思っています。私と一生、一緒にいて下さい。結婚して下さい。どうか。」


ポッ、とまた一つ、オレンジの花が綻んで咲いて、ふにゃあ!とファフニールは満面、笑った。

跪く、手を差し伸べるレッキスに、両手を。にぎにぎ。


「喜んで!……楽しいおうちを、2人で、つくってゆきましょうね!私の話で、いつでも沢山笑ってくれる貴方のこと、周りの人を大切にし過ぎて、自分は後回しにしがちな貴方のこと、私も愛しく思います!誰かの後回しに貴方がなった時、私は貴方を見ているわ。そして、楽しいね、こっちにいらっしゃいな!って、一緒に場所をつくって、そして一生、私の一番近くで、笑っていて欲しいの。笑ってくれる人がいなかったら、寂しくて悲しくて、困っちゃうの。私、貴方と一緒なら、すごく嬉しくなって、ずっと面白く生きていけるわ。」


「……やっぱり君はカッコいいよ。」

「レッキスの方がカッコ良いわ!」


ふふふ、えへへ、と手を取り合い。

そして、立ち上がってぎゅっとハグし合った2人に。

しん、としていたパーティ会場が、ドッ!と沸いた。

素敵、すてきね!あんな風に求婚されてみたい!と娘さんたち大盛り上がり。青年たちは、自分もちゃんと、と腹に力を入れて、頬を上気させるパートナーをチラッと見たり。

オジオバ様方は、ふふふ、ほほほ、若いって良いわねぇ〜、私たちもあの頃はね……なんて微笑ましく。


ムキーッ!と梯子を外されたカナリー嬢が何かを言う前に。

ジェイ青年が、ポツリと。


「私も、ちゃんと私と私の周りを見てくれる、私が好きになれる素敵な花を見つけたいな……。」

「ちょっとそれどういうこと!ジェイ!アンタごときが私に……!」


今日の主役、いい夫婦パシオン侯爵家夫妻が、ニコニコとファフニールとレッキスの所へやってきた。

まあまあ!このパーティで素敵なお2人の求婚の誓いが見られて、なんて嬉しいこと!とローディア夫人がコロコロ笑っている。

そしてカナリー嬢とジェイ青年に、ピタッと固まった笑顔で向き直ると。


「フィード子爵家ご子息ジェイ様。貴方のパートナーは、このパーティの趣旨を把握しておられないようね。そもそも、そちらのお嬢さんのお家から、是非にこのパーティへ招待してやって欲しい、そうすればジェイ様との仲も深まるだろうから、とお父様たってのお願いであったのよ。でも……カナリー嬢はご不満のようね。」


可哀想にジェイ青年は、キュと首を竦めて目を落とし、謝るばかりである。

「せっかくのお祝いに、申し訳ありません。ローディア様、ヴァンター様。私たちは、このパーティに相応しくありませんでした。場を汚して帰るのは心苦しいですが、これ以上お見苦しい所をお見せできません。カナリー嬢を連れて帰ります。申し訳、ございません。」

「ちょっと!何で私が!帰らなきゃならないのよ!アンタだけ帰りなさいよ!」


「そうね。ジェイ様だけ帰りなさい。カナリー嬢は、1人で放っておけば良いわ。この、良いパートナーがテーマのパーティで、1人。うふっ、惨めねえ。」

「なっ……!」


「ローディア様。」


求婚され、今一番に輝くファフニールが、横から見かねて口を出す。緊張した場面は全然大丈夫だけれど、しょんぼりしたジェイ青年が、可哀想すぎるからだ。

「私たちの、楽しい初めての婚活のお茶会に、ジェイ様もお呼びしましょうよ。彼、ずっと周りの方に気を遣っておられて、きっとちゃんとした誠実な方ね。我儘なカナリー嬢も、打ち捨てて知らない!なんてこの場でしないだけの、責任感もあるわ。優しい人、報われても良いと思いませんこと?」


ファフニールの言葉に、ジェイ青年は、ふに、と泣きそうな顔をした。

ローディア夫人は、そうねそうね!と手を打ち合わせて。

「ジェイ様。フィード子爵家に、後でお手紙差し上げますわ。このファフニール嬢にかかれば、貴方も素敵なお相手が見つかること請け合いよ!この場はパートナーとして、カナリー嬢を捨てても置けないでしょうが、一生を共にするお相手が暴君ではね。パシオン侯爵家から正式に抗議しておきますから。お家のご事情もあるでしょうが、お家を腐らせるお相手を入れるのは考えものよ。パシオン侯爵家と、ベルゼウス伯爵家セティーク様が、お家のご相談に乗りますからね。」


「ありがとう存じます。お心遣い、感謝致します。」

ホッとした風のジェイ青年に、周りから、お心強くもってね、大丈夫よ、と声が掛かった。見捨てられないと知って、ジェイ青年は、顔つきを変え、毅然と。叫びまくり場を汚すカナリー嬢を、引き摺って帰った。


レッキスの父、セティークが、何で私がジェイ青年の家の相談に、とポツリと言ったが。

ローディア夫人は、それを聞き逃さず、ベルゼウス伯爵家ご家族でのご親切、婚活お茶会のお手伝い、貴方もなさるでしょう?ご家族ですものね?とつっこんで、セティークをモゴモゴさせた。


セティークの妻、ペルーシュ夫人は。家族の中で、今底辺のセティークに、役割と居場所をちゃんと作ってくれるだなんて、ローディア夫人は厳しいだけではないんだなぁ、と。まだ、その幸運に分かっていないセティークを突っついて、ありがとう存じます、と一応妻なので頭を下げた。厳しいだけではダメ。優しいだけではダメ。

これからも学ぶ事は、沢山あるのだなぁ、と。

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ファフニールの良いところを知ってるからこその、レッキスのプロポーズですね。 カナリー嬢はかなりの困ったちゃんですが、その性格改めないと幸せな結婚は出来ませんよと。 ジェイはいいパートナーが見つかると良…
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