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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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リルケ男爵家ファフニールの婚活 13


レッキスとファフニールは、楽しかったリルケ男爵家、家族での記念写真撮影を終えて、馬車でまったり揺られている。


時は夕方、空が茜色に輝き、キラキラと一角馬車の窓から2人の顔を照らしている。

空はオレンジなのに、薄らとラベンダーの闇の欠片が、雲に彩り、ふんわりと流れている。ああ、夕焼け。


空気が澄んで、これから夕飯の支度でもするのだろう、帰る人たちは足速だけれど、どこか楽しそうで、すれ違う馬車と共に照らされて、同じ色。


「……何だか、一仕事終えて、ホッとしましたねえ。」

「本当だね。これからパーティなのに、何だか終わった感じだね。」


はー。

ふー。

えへへ、と、少し緩んだ気持ちで笑い合う。


くつ、とレッキスが口の端を上げて、眉を下げ。

「ふふ、ファフニール、今日は人を笑わせても良いけれど、私以外の人を引っ掛けちゃダメだよ?」


君は優しいから、しょんぼりしている人がいたら、声を掛けてしまうでしょ?


「幾ら可哀想だからって、私以外を引っ掛けちゃ、ダメ。私だけだよ、ね?」

そんな事を言って、にぎにぎとファフニールの手指を握る。確かめるように、力を入れたり、抜いたりして、子供っぽくて不安がって敏感なレッキスの、その心の動きが、何だか可愛いくて。

自信満々じゃない、お願いするようなその様子に、大好きって言っても不安がる弱さに、ちょっとだけ愛されている悪い満足感が湧いたファフニールである。

仕方ないなぁ、と握り返す。


「今日はいい夫婦、いいパートナーのパーティですよ?しょんぼりしている方はいないでしょう。もし、いるとしたら、レッキス様、私はきっと笑わせたくなっちゃうから、その時は。」

「その時は?」

ニン、とファフニールは笑う。髪飾りのオレンジの花が、夕焼けに染まってぽっと光って揺れる。


「私にお手伝いして下さい。2人で、しょんぼりした雰囲気を何とかしましょう!」


! とびっくりした後、ふく、と笑ったレッキスは、目を細めて。

「できるかなぁ?私に、笑わせるお手伝い。」

「大丈夫です。一緒にいて、笑ってくれたら、きっとつられてしょんぼりした人も笑ってくれます。だから、一緒に笑いましょう。ね?」


「うん。君と一緒に。私も、笑って、笑わせて。……君と一緒に。」




パシオン侯爵家に着いた。

パシオン侯爵家当主夫妻結婚45年記念パーティ、招待状を2通貰っていたベルゼウス伯爵家である。当主セティーク夫妻と、子息レッキスとそのパートナーへということで、送り迎えの要もあるから2通に分けられて届いたのだ。参加証代わりである。


「父上とペルーシュお義母様は、多分先に来ているね。中に入ったら一度合流しよう。今日の主役のパシオン侯爵夫妻にご挨拶するのに、一緒にした方が良いのかな、って思うけど、もしかしたら先にご挨拶してしまっていたら、私たちもその場で別に行こう。」

「ええ。私、こういうパーティに来るのって本当に慣れていないので、レッキス様、頼りにさせて下さいね。」


私も慣れていないけれど、と思いつつ、レッキスは頼られて嬉しかったので。コックリ、と頷いて微笑んだ。

「私も経験豊富ではないけれど、ムエット兄様に良く教わってきたから、頑張ってエスコートするからね。」

「はい、お願いします。」


受付で招待状を出して、滞りなく案内され、賑わっている会場へ。

いい夫婦をテーマにしたパーティだけあって、招待された人々は老いも若きもそれぞれ、どこか落ち着き、誰もお相手探しにギラギラしていない。穏やかな雰囲気で歓談し始めている。

パシオン侯爵ご当主夫妻は、後からご登場するらしい。嫡男息子夫婦が、出入り口付近で招待客を出迎えてくれて、今日は父と母のパーティに来て下さって、とニコニコ。レッキスとファフニールも、お二人にあやかって私たちも……とポポッとした。セティーク様ペルーシュ様はもういらしていますよ、と教えてもらい。


こそり、嫡男息子夫婦の妻の方、パシオン侯爵家若夫人ポーレンが、囁き声で。

「お母様から聞いていますわ!……素敵ね、お見合いでも、情熱的なお2人!応援しておりますわ!今夜は存分に、仲良しなことをアピールしていらして!」

とウッフリ。


夫のジェルメも。

「私たちも、最初はなかなか、父に認めてもらえなくてね。婚約者に不貞をされて、残り物同士の恋愛だと言われたものだから、面白くなかったみたい。でも、私たちの気持ちが真剣だと、一度認めてもらえてからは、家の中で家族も夫婦も上手くいってるんだ。障害があって乗り越えた夫婦って、一層仲良くなれると思うんだよ。君たちも、きっとそうなる。頑張ってね。」

がっしり、両手で手を握られて激励され、やる気もありあり、気分はホームゲームである。


レッキスは爆誕した素敵王子なので、コナをかけられるまではいかないけれど、そこかしこ、パートナーの片割れの娘さんが、まぁ!と華やいで盛り上がり、中には目で挨拶をしてくる人も。まさかパートナーを蔑ろにしてまで、ではないので、ペアで寄ってきて、初めまして〜、素敵なお相手ね、と誰もが褒めてくれる。


セティーク父とペルーシュ義母を探しながら、途中途中で呼び止められて、遅々とした進み。レッキスとファフニールは俄かに知人を増やしつつ、会場のやや真ん中外れで楽しそうに話をしている一団へ向かった。


ペルーシュ夫人と、婿に出た息子夫婦、コンフィズリー伯爵家ムエットとグレースの2人を含む、他にもにこやかな老夫婦、熟年夫婦との一団である。


「ペルーシュお義母様。」

「グレースお姉様!」

ニッコリ、と笑う2人の夫人、ムエットは(お兄様は!?レッキス!?)と思ったけれど顔には出なかった。笑顔に少しむぎゅりと口の端が噛み締められたが。


「まぁまぁ、レッキス、ファフニール嬢、2人とも。遅かったわね。リルケ男爵家で、楽しく写真撮影したのね。さあさ、ご挨拶させていただきなさい?こちらも、このいい夫婦のパーティに招ばれるに相応しいご夫婦よ。クルスティアン子爵ご夫妻、それからユアン伯爵家夫妻よ。」


挨拶をして、レッキスは話がそれほど上手くないながらも頑張って世間話をして。意地の悪い人はいなくて、誰もがレッキスとファフニールを、仲の良い婚約直前の2人だと好意的に受け入れて。またファフニールが楽しく、クスリとさせながら、会話を皆に回し上手に盛り上げたので、柔らかな空気で。


そうこうしている内に、パシオン侯爵家当主夫妻が入場、とアナウンスされ、皆、まぁ!と注目して誂えられた一段高い舞台へ身体を向ける。


パシオン侯爵家当主にエスコートされた夫人、パシオン侯爵家夫人ローディアは、皆を前にした、まずはの挨拶の際、うふ♪とレッキス、ファフニールの方を、面白そうに見たような。



それぞれ個別での挨拶をしに行く、となって、レッキスは、あれ?と見回した。自分たちは楽しく談笑していたけれど、そういえばセティーク父がいないのである。

ツンツン、とファフニールがレッキスの袖を引っ張り、あっち、と見えないように指差すのは会場の隅っこ。

壁の花ならぬ、壁のおっさんである。


ペルーシュ夫人が。

「あの人、いい夫婦には程遠い男だから、話に乗れずにどんどん端っこに行っちゃって。私の事も、お仲間に入れて下さって、楽しくお話して下さる心根の良い方ばかりなのに、きっと、何を聞いても皮肉や棘に聞こえるのね。自分に後ろめたい事があるからだわ。」

ふくん、とスパイシーに笑う夫人の、このくらいの仕返しはむしろ可愛いくらいだと言って良いだろうか。何しろ長年、お茶会で辛い目に遭ってきた夫人である。


セティークは、つまらなさそうに酒のグラスを舐めて、そっぽを向いている。


「セティーク様、そんな所に!」

そこをどんどん行くのがファフニールである。


レッキスと腕を組んだまま、ニコニコと寄ってくる笑顔の彼女に、セティークは、ギョッとして。

あわ、あわわ、と打ち消すように手をぶんぶん押しやりへしやりしたが、ズンズンズ、と。いやいや、セティークにはズンズン見えているが実際はお淑やかにトトトトト、とファフニールという名の停滞を破る笑いの女神が近づく。


「く、くるな!」

「セティーク様!1人でしょんぼりしてないで、パシオン侯爵家ご夫妻にご挨拶に連れて行って下さいましな?」

「誰が!しょんぼりしてるんだ!!お前たち勝手に行けば良いだろう!おい、こら、触るな!離せ!」


ファフニール、セティークの腕を取ってレッキスと両手に父子、レッキスも面白くなって黙って見ている。


「挨拶に連れて行ってくれたら、離しますよ〜!さあさあ、セティーク様ともあろうお方が、この男爵家次女なんて何の押し出しもないファフニールに弱々しく連れられるなんて、らしくありませんわよ?堂々と先導して下さいませ!ご不満はおありでしょうけど、招待状でパートナーとしてレッキス様と来た私です、この場は、ね、ね?」


「父上、騒ぎになっても、ベルゼウス伯爵家のためになりませんよ?」

くつくつ、と笑うレッキスに苦い顔をして見せたセティークは、ムカーッとする腹を。


「貴方。挨拶は、どちらにしろ、しなければいけないでしょう。子供みたいに嫌がってないで、私にここでも恥をかかせるつもり?いい夫婦のパーティなんですのよ?妻の私と、息子とそのパートナー、ファフニール嬢と、仲良くご挨拶、ベルゼウス伯爵家当主として、腹に多少のナニかがあろうとも、ちゃんとできますわよね?」


大人なんですものね?


ペルーシュ夫人、妻にニッコリ怖い笑顔で言われてしまえば。セティークが勝てるわけはなかった。


今まで何も言われなかった、という事は、言われ慣れてないので、打たれ弱いのである。そして、ここで逃げたら、何かきっと、取り返しがつかない、と薄々気づいてもいるセティークであった。何しろ囲っていた女性たちは、セティーク的には誰もが自分を大事に思ってくれていると信じていたのに、あっさり去っていく道を選ばれて捨てられたのだ。

妻ペルーシュが最後の1人。

だが、その1人は、最近夫に、ビシビシと手厳しい。

逃げられないのに、手厳しい。

ただ、これで再び何も言わなくなったら、今度こそ。


だからこんな、アウェイでしかない、いい夫婦がテーマのパーティなどに来たのだ。針のむしろになるのは分かりきっていたのに。






婚活13で、終わりませんでした。

パーティ続くけど、よろしくなのです。

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