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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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622/692

審査員長はモントレお師匠


占い通りカンペキ!紹介図の、占い勝負するショワとトラジェ、2人はそれぞれこんな風に記載されていた。


水盤占い:トラジェ・リーブル

駆け出し少女占い師。

水盤に指を浸し、その波紋が描く運命の姿を読み取り占います。

悩み、苦しんでいる人に、共感して寄り添って良く聞いてくれるので、話をするだけでスッキリすることも。占いの結果云々より、まずは誰にも言えない思いを、秘密厳守のトラジェに打ち明けてみては。

話が長いから待たされるのは覚悟で。時に占いを忘れるほど感情移入してくれます。

修行中だからこそ、占い結果が良くなるかどうかは、あなたの正直な打ち明け具合、心掛け次第です。


・・・・・・


輝石占い:ショワ・リーブル

占い師トラジェの妹分、まだまだ発展途上中な駆け出し占い少女。

手の温度で色が変わる輝石を放って、位置や色味から運命を読み解きます。

元気になりたいなら、初恋の相談がしたいなら、ちょっと勇気を出したいなら。

少し耳に痛い事も、良き未来を見据えての観点から、正直に言ってくれます。まだまだ人生経験が足りないので、大人で繊細な事情を占うのは勉強中。誰の中にもある少年や少女の気持ちを奮い立たせるなら、きっとお眼鏡に叶います。

割とさっくり観てくれます。お香を焚いて時間を限って観てくれるので、待ち時間の見通しが立ちます。


・・・・・


チラシには、占い通りのどこに、どの占い師がいるか、そして各占い師の説明が細かく載っている。

あの屋台、占い通り案内所では、チラシを配るだけではなく、来たお客さんに、どんな占い師がいい?目当ての人はいる?と聞いたり、恋愛占いなら、この占い師かしら?なんて、初見では分からない事を親切に案内しているものだとか。


占い師の商売に直結するので、あの案内所にいるのは、この占い通りで長く住み、占い師達にも慕われている、おせっかいおばさま。贔屓はしないし、占い師達はどんな占いを受けるのも商売としてちゃんとやるけれども、得意なものをちゃんと受けられて、苦手な占いを避けられるので、委ねてとても信用がある人らしい。

また、お客さんの人となりをパッと観て、合う占い師をオススメするのが、とても上手なのだとか。



「••••••これってさあ。」

アルディ王子が、眉をへにゅ、とさせてチラシに目を落としたまま。


「うん、ですよね、アルディ殿下。」

エフォールも、ふにゅ、と困り眉だ。


なに、なーに?とロンは読みあげてもらったけど、ワカンナイ。ショワの弟エトは、こっくり口をムニムニさせて、ロンに頷く。


「お客さんにシール貼ってもらったとして、数で勝負は、もう、ショワが勝つって決まったようなものじゃない?」


トラジェ、まるで近所の困り事をふむふむ聞いてくれる、親切だけど解決はしてくれない、おばさんおばあちゃんのような扱い。うんうん同調して気が済むまでお喋りできる。いつまでもお話が長いのだ。ほんとのおばさんなら、あらご飯作らなきゃ、なんてサッと切り上げたりもするのだけど、トラジェにその技術はないようである。


「幾らトラジェのお客さんが満足して、枚数いっぱい貼ってくれたとしても、占いするお客さんの数が、きっと差がある、だよね?」

「数で勝負じゃないなら、何で勝ち負けを決めたらいいの?」

「たくさん、ダメなの?」


弟エトが、ムニュ、とお口を引き締めて、友達になり始めた男の子達に。

「だからさぁ。ショワ姉ちゃん、負けないだろうけど、あの2人は占い、ってなると、本気すぎるから、勝った負けた難しいんだよ。多分、数で負けた、ってトラジェがなっても、内容で勝負よ!とか言うんだぜ。姉ちゃんは姉ちゃんで、きっとあんまし深く考えてないしさあ。」


自分の占いをすれば良いんだ!なーんて。

「きっと、どっちも思ってるんだぜ。」


えーっ?

「しょうぶ、つかなかったら、どうなるの?」

ロンはハテナである。勝った!やったー!負けた!しょんぼり。ごめんね。だとばかり思っていたんだのに。


「負けたらごめんね、ってのも•••でも、トラジェは悪いの分かってるんだしね。謝らないよね、きっと。」

「私達、どういうとこが良かったのか、悪かったのか、お客さんにアンケートみたいにして、メモして良く聞かないと、勝負がつかないんじゃない?」


シールだけじゃ、ダメだ。


「でもね、アルディ殿下、エフォール様、ロン、エト。」

モントレお師匠様が、男の子達のどうしよう、を覗き込むように腰を折って微笑んだ。

「トラジェの占いも、ショワの占いも、きっと皆が選んだ色々なシールをボードに貼って形にする事で、報われた絵をその目に見る事が出来ると思うんだ。」

占いの結果をどう活かすかは、お客さんに委ねられた自由。だけれど、満足度は、一つの占いの指標になる。


「お客さんが満足するから、といって、耳に気持ちの良い事ばかりを言っていても、いけないんだけれどね。•••そうして、これは、生業でもあるけれど、商売でもある。この2つ、私がどう違うと捉えているか、分かるかい?」


生業?

商売?


「たつきとーさは、おしごとするけどー。おしごとは、なりわい?しょうばい?どっちもおしごとっぽくない?」

「生業の方が、なんか生活!って感じです。」

「商売の方が、もうけたり、赤字がダメとか、お金だよねぇ。」

「姉ちゃんは、占い師で食べていくから、1人1人長く占うより、分かってる事はできればパッと言う、ってゆってたなー。自分にも良いし、お客さんもまどろっこしくなくって、結局は良い、ってさ。それって、商売?たくさん占えるとたくさんもうかるから?」


うんうん、とモントレお師匠様は頷いて、男の子達それぞれに、ダヨネ、だ。


「生業は、生活を立てる、っていう職業だよね。生活、っていえば、ご飯が食べられるか、家を買ったり借りて住めるか、とかって思うかもしれないけれど。」


占い師は、占いをする事が、生活、生きて活動する事の、一部になるんだ。

それは、儲かるか儲からないかと、生きていく上で関係はしているけれど、それだけじゃない。


自分がこの世にいて、誰かの役に立って、存在している確かな手応え。

人の世界に占いで関わっていける。

時に失敗して、いつでも新しい人との出会いに挑戦して、また頑張ってっていう、やり甲斐、生き甲斐、占う側の心の満足感を得る事も、生活には欠かせない事であるだろう?


「それは、どんな仕事をする人でも、少なからずあるものだと、あって欲しいものだと思う。嫌々だけどやっていたって、適当にやっていたら仕事を外されてしまう。頑張っているならそれなりに、仕事に工夫はしているし、ちゃんとやるんだ、って誇りがあって、戦って、得るものがあり、学び、生きていくものなんだ。」


それが、生業ってものだと、私は思っているんだ。

あの2人は、占いに誇りがあって、ちゃんと生業には、しているね。


(満足感も、難しい指標の一つではあるんだけれどね。)

とモントレお師匠様は、陥りがちな、偏った自己満足について、男の子達には説明しなかった。それはこれから、形としてアンケートに出てくるだろう。


そして、商売。


「商売を生業にしている人もいるから、紛らわしいけれど、純粋に商売って考えると、まるきり損じゃダメなんだよ。そう、アルディ殿下が言ったように、赤字じゃ商売にならないんだ。何か良いものを売って、占いならば、占いの結果込みで、お話する事も、売って。満足感のその分、お金を貰って、儲からなきゃならない。ちょうどよく。」


貰いすぎでも、お金が少なすぎるのもダメ。

生業、商売、そのどちらの見方も必要で。

「ショワとトラジェは、やり方が違うから、生業と商売のバランスも、どっちをその時々で大切にするかも、そうして、占いの仕方仕事の仕方そのものも、勉強中なんだ。」


だからね。


「皆に、良かった所、悪かった所を聞いてもらって、それを伝えてもらうのは、とっても勉強になるって思ったから、勝負のお手伝いを頼んだんだ。まだまだ修行中の2人だから、足りない所は沢山あるのだもの。勝負を何のためにするか。それは、トラジェをショワに謝らせるのが、目的なんじゃない。仲良くすれば良いってもんじゃないんだ、姉妹弟子の修行は。」


仲良くする、それが目的じゃないのぉ!?

とびっくりな男の子達である。


「ライバルってこと?」

「らいばる!」


「そうだねぇ。」

同じ年頃で、まだ幼いけれど、生きてきた環境も違って。

「姉妹で、友達で、ライバルなんだろうね。皆は、友達と喧嘩した事はあるかい?」


勿論アルディ王子も、エフォールも、ロンもエトも、喧嘩した事はあるのだ。

こっくん、と頷く男の子達に、モントレお師匠様は、優しく、苦笑めいて。

「嫌いで喧嘩は、友達と、なかなかしないだろう?好きなんだ。好きで思い通りにいかなくて、だからこそ気に食わない。それをね、勝負で、自分達の中にこそ原因がある、って。納得させなきゃダメなんだ。」



それを見届けて、総合的に、私が勝敗を決めようね。


モントレお師匠様は、占い師のお師匠様。人生経験も豊富で、どこまで見通せているのだか。


「皆は、そのお手伝いをしてくれたら良いんだよ。大事なお手伝いなんだ。どっちが勝ったと思うかどうか、そうして、何故そう思ったのかを、素直な考えを参考に、聞かせておくれね。」


いわば、審査員が男の子達で、審査員長がモントレお師匠様なのだ。


男の子達はアルディ王子、エフォール組。トラジェのお客さん担当。

弟エトとロン組。ショワのお客さん担当。に分かれた。

ボードは、指物師のティザンお父さん提供の、そこそこ素晴らしい滑らかな板である。


モントレお師匠様と男の子達が、話をしていた時間に勝負は開始、ショワとトラジェの占いは始まっていて。男の子組が分かれた直後に、最初のショワのお客さんが、テントから出てきた。少女の2人組である。

ホワッと嬉しそうな顔で、笑い合って楽しそうだ。


「すみません、ちょっと良いですか?」

「ですかー?」


ん?とこちらを笑顔の残る途中の顔で振り向く少女達に、ロンとエトは、エトがメモとシールを、ロンがよっこいしょと大きなボードを手に、まずは一声。


「ちょっとご協力をお願いします。」

「ごきょうりょく、ねがいまーす!」


占いの満足度を教えて下さい!

シールを満足度に合わせて、好きなやつ、好きなだけ貼ってみてね。

そうして。

「どんな所が良かったか、悪かった所があったらどんな所か、教えて下さい!」


面白い事やってるわよ!

シール、貼りたい!

と、待っている少女達が注目して、ふんふん良かった所悪かった所を、耳そばだてて聞いているのも、またお祭りらしくて楽しいひと時であろうか。


モントレお師匠様は、その様子を、近く寄ったり離れたりしながら見守っている。

モントレお師匠様の、お祭りでの商売は、といえば。彼女はもっとお金を持っている人らから、個人的にお呼ばれしてもっと高度な占いをやって普段から稼いでいるので、お祭り出店は勉強のため。お祭り2日目の午前中くらい、自分の裁量で、やってもやらなくても良いのである。




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