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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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占い勝負の準備


「おじさん、シールみせてぇ!」


ロンが、色とりどり写真もイラストも、様々な美しい、カレンダーの屋台に突撃した。

エフォールとアルディ王子、そして占い少女ショワの弟エトも、たったかた、歩行車ガタンコカタン、後ろを飛ぶような気持ちで跳ねてくる。

白熊眷属レザン父ちゃんや、護衛の狐獣人クルーは、後ろでニコニコ、いやはや鋭く油断なく。

見守っている。


カレンダーの屋台は、竜樹が来てから大躍進を遂げた屋台である。

文字が読めない者も多い、このパシフィスト国では。日付の指定を長く先に約束する、というお仕事をするのは、庶民の中でも頭を使う商売系か、工事屋さんでも上の方か。

とにかく、下働きではない者が多くて、そんな人にだけ、シンプルな木版画のカレンダーが流通していたのだけれど。


印刷業が諸々発展すると、色刷りや写真印刷なども出来るようになり。

そして、テレビで、随分先の方の日付の、例えばフリーマーケットや、このお祭りもそうだし、祝祭日の面白い企画の情報などが発信されれば、民たちだって、いついつに遊ぶ約束を、ってなるのである。企画が仕事に直結する者達は、言わずもがな。


お金を数える都合上、数字を読める人は多くいるから、日付は数えられるとして。月の名前は、読めなくても、イラストで、大きく分かりやすいように記されている。


例えば、麦の月・5月ならば、ふくふくと実った麦の穂を、文字と共にデザインして。

文字が読めない者が、約束をして、麦の月5日に遊ぼうね、って決めたならば。5の欄に。

様々なシールから好みのものを選んで貼って、予定があるぞ、と楽しみに待つようになったのである。


代書屋に細かくその時の予定を書いてもらう人もいたりするし(勿論忘れないように、日が近づけば読んでもらう)絵が上手い人はチョコっと会う人の似顔絵を書いてみたり。

テレビの画面に、毎日、はよスタのブルーエ女子アナが指し示すカレンダー。描かれたその日の賑やかし、楽しいイラストにも誘われて。


カレンダーを楽しく文字や絵やシールで飾って、毎日を気分上げて過ごす、ってのを、始めたばかり。勿論、年が中途半端であるから、1年まとまりの来年カレンダーもあれば、今年のあと2月、1枚での販売も、少しだけれどしている。

来年からはバラでなく、と合わせてきているのだ。


この感謝祭で、来年のカレンダーやシールや、そして手帳も、買っておけば、来年の楽しいスケジュールは万全である。屋台の至る所に、見本を飾って、貼れる心浮き立つシールも、沢山ザラっと売っているのだ。


「おじさん、シールだけでも、買って平気?」

エフォールが、歩行車カタタン、真剣にシールの台紙を沢山持って1枚1枚見るロンの後ろに。

アルディ王子は、あ、お花のカレンダー、お母様に買っちゃおうかな、なんて気が逸れている。


「いらっしゃい、坊ちゃん達!シールだけでも、もちろん良いですよ。シート1枚から売っていますからね、銅貨2枚だよ。お好みのものを、選んでね。」

「ありがとう、おじさん。」


「あ、キレイなお姉さんのカレンダー。」

うぅ?男の子達の視線がピッと集まり、ポポ、とほっぺが赤くなる。いや、あれだ、着てるよ。ドレスだったり浴衣だったりだよ。

だけど、ぽってりとした唇も、乗り出したポーズも、ちょっとだけ見える肌も、何か色っぽいのだ。


ガハハ、とおじさんは笑って。

「女優のディシーだな。坊ちゃん達には、お色気女優は、ちと早いですなぁ。こっちの、剣と盾シリーズ、勇者カレンダーはいかがかな?」

男優さんがカッコよく戦っているイラスト。

おおぉ、と捲って、頭を寄せ合う。


ん?いやいや。ぷるる、と頭を振って、シールシール、目的を忘れないで。

弟エトが、ロンと、あれが良いこれが良い、と仲良く相談しながら選び始める。

「うらないのしるし、ってなんかあるの?」

「占いの印?何だろ、姉ちゃんは、占い石で占ってるなー。あとは、水晶だまとか、紐の束を投げて占う人もいるみたい。カードの人もいるし、色々すぎる。」


「貼りやすいシールはどうなの?この、赤い丸だけのやつとか。沢山ついてて、使うのに便利そうじゃない?」

エフォールが意見を出すと。

えーっ!?とロンとエトが、それぞれ、自分の思うこれ良いな、な1枚。星に黒猫のシールと、美味しそうな果物色々のシールを、はっと胸に抱いて、ダメ?ってエフォールお兄ちゃんを見た。

赤い丸だけじゃ、ツマンナイ、なのだ。


「色々買ってみよっか。お客さんに、好きなやつ選んでもらえば、いいもんね。」

「だねだね!私も選びたいな!」

エフォールがニコニコとロンと弟エトに、アルディ王子もピッピと狼お耳を左右に振って、男の子達は何だか楽しそうなのだ。


だってそうだよ。お祭りなんだから。

占い勝負って言ったって、楽しんじゃダメなんてこと、ないさ。

小ちゃい子は、良い子で神経が細やかさんのロンであっても、面白くなかったら、えーう、とダレちゃうし。


お小遣いを貰っていたロンだったけれど、払わせるような事はしないアルディ王子とエフォールである。

ピティエ様のお茶屋で、お小遣いを使おうね、占い勝負してからでも行けるでしょ、と。良いお兄ちゃんやってるのだ。


シール買って、パタパタとショワの家に帰ったら、占い少女2人のモントレお師匠様が、ご苦労様、とシール代を聞いてお金を出してくれた。お兄ちゃんよりもっと大人が、そりゃあね。


占い少女ショワと、姉貴分占い少女トラジェは、お互いに目を合わせないようにして。それぞれ占い通りに設置された、自分の出店テントへ入った。

ショワのテントは朝焼け色。

トラジェのテントは黄昏色。

隣り合って。


お客さんは、もう並んでいる。

半分は少女達で、くすくす、ヒソヒソ、キャキャ!と賑やか。混ざって少し歳上の、女性になりかけの娘達や、男性も少しだけ。小さな幼児に、孫娘の手を引いたお爺ちゃんの組み合わせもある。

ショワが圧倒的に少女に人気で、トラジェの占いテントの客層は、どちらかといえばもう少し大人で、落ち着いている。並んでいる少女達も、ウキウキしていなくて、じ、と心に何か塊を持つような、静かな子が多い。


「何だか、もう、お客さんに違いがあるんだねぇ。」

「みんな、ショワの占いテントだー、とか、トラジェのだー、とか、分かって並んでるの?」


モントレお師匠様に案内されて、ショワの家の斜め前、2人のテントにやって来た男の子達は、不思議のハテナ?である。


「ロン、あそこに占い通り案内所、っていうのがあるのだよ。ほんの小さな屋台だけれど、分かるかな?」

モントレお師匠様が、腰を曲げて目を見ながら、ロンに指さして教える。

「エトは知っているだろう?あそこに置いてあるチラシ。」


ふくよかなおばさまが、のんびりと店番をしている、本当に小さな屋台は、占い通りの始まりの角にあって、なるほど、チラシが置いてある。

今も通りかかった少女達が、おばさまに声をかけられて、チラシを貰い説明を受けている。


「モントレお師匠様、ロンとチラシもらってくるよ。見れば分かるだろ。ロン、行ってこよ!」

「うん!」

弟エトとロン、お手て繋いで、タタッとチラシを、少女達の脇から貰ってきた。


◇◆占い通りカンペキ!紹介図◆◇

水晶占い:占い師ポポーリナ

ベテランの占い師。水晶に映る運命を読み取り、貴方の行き先を厳し目に指し示します。ハッキリと、時には叱ってでも良き道に導いて欲しい人に向いています。

悪い事も良い事も等しく教えてくれるので、耳を傾けて、冷静に。

話はよく聞いてくれます。


・・・・・


「あ、これ見れば、どんな感じか分かるんだぁ。」

アルディ王子が、チラシを覗き込んでふむふむと。

ロンはまだ読めないけれど、ふむふむ?と真似をして頷いている。


「ショワとトラジェは、何て書いてあるの?」




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