表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

613/692

子供の日 閑話1

子供の日なので突発的に閑話書きました。

書ききれず続きますが、良かったらお付き合いくださいな。


「竜樹様ぁ〜、良かったらこれ、貰ってくれませんか?」


時は5月、こちらの月では麦の月。

爽やかな風、薄らと汗ばむけれどそれもすぐにさらりとなる。

道に木々を植えてはないけれど、市場付近の通り民家は、植木鉢で少しでも緑を身近に。

萌え始めた緑は、空気を浄化して、それだけでなく、ゆらりと春のエネルギーを発散しているかのようだ。


街中けむる。陽気にけむる。生気にけむる。なにもかも生まれ育つ。


そんな季節の中、竜樹が街をぶらりと歩いている。


視察といえば視察、散歩といえば散歩。子供達を温水プールに連れて行く時もあるし、街中で、これは、という人をスカウトして働いてもらう時もあるし。自分のいた世界とこちらの世界の違いを、肌で感じて、その差のある所でいろんな事ができないか、と。

結構、竜樹は時を盗んで、街歩きをするのである。


となると、街の人たちも、ギフトの竜樹に慣れてくる。

街の事を、詳しく耳を傾けて聞いてくれるギフトの御方様のおかげで、儲かる人もあったりするけれど、しつこくしちゃダメ、と大体の人は自制して。けれどそうもなれば、歩いていて店の者は、これあげる、と何かをくれたりする事も多いのだ。


差し出す手は、傷もある作り手の手だ。

小さな指先程度の木の筒に、中程穴が開いていて、紐がかかっている、色とりどりな幾つもの。

青年である。

頭に粗末な布を巻いて、額の上に髪を上げて、多分邪魔なのだ前髪が。

ニコニコ、とした彼は、笑い皺のある、福々しい顔だけれど、まだまだ年期が足りなくて頼りない。


「これ、何だい?」


市場の、簡易な販売屋台で売っている。精一杯丁寧に。だけれど、貧しさを感じさせる店は、臨時のものなのだろう。商品、その指先程度の筒が、くるりと紐を丸めて、幾つも幾つもある上に、差し出した手は、これなんだろ?と、たまたま見に来た竜樹に、まず真っ先に貰ってと言った。


「クズ魔石を使った笛なんだぁ。タダ同然の石で作ったモンだけど、作りは簡単でもちゃんと工夫したものだよ。竜樹様んとこは、子供が沢山いるだろう?遊んでもらったら、嬉しいなと思って。」

「笛かー。吹くのかな?」


赤いのを、一つ取って、まじまじと見る。

確かに笛のように、筒の途中に切り欠きで穴がある。そこに音の出る弁のようなものがあるのだろうし、クズ魔石も入っているらしい。


「紐を持ってね、ひゅん、て回したり揺らしたりするんだ。かなり、すこーしの空気の揺れで鳴るよ。」

「へー。やってみて良い?」


もちろん。青年はニコリと頷いた。


紐を垂らした先に笛。

竜樹が手に、ゆら〜、と揺らせば、本当だ。微かな動きなのに、小さくもう、ュユン、と鳴っている。段々と激しく回す、ユンユンヒュヒュヒュヒューイン!と高く美しく鳴く。


「えー面白い。子供達、好きそうだね。大事な商品じゃん、手作りでしょ。買うよ買うよ。」

竜樹は目をショボ、とさせて、ギフトの御方様印マントの中、内ポケットに手を入れて、お財布を。


うぅ〜んイヤイヤイヤ、と青年は笛を差し出したのと逆の手を、開いて出して遠慮した。

「竜樹様、貰ってほしいんだ。っていうのも、ちゃんと下心があるから。損じゃないから。」


うん?と口をつむんで、けれど、ああ、と竜樹も分かる。

「子供達が遊べば、今週の王子様のテレビに出るからかい?」


あるある良くある、皆、商魂逞しくって事もあるんだろうけど、根本としては何か自分達の商品が出たら、儲からなくても嬉しいんだよね。竜樹もそんなに滅多やたらと貰わないのだが、時にはいただいて、子供達と楽しんで、CMの代わりをしたりする。

一応倫理としては、自分がちゃんと気に入って、良いなと思ったものにしている。だから、断ったりもする。


「あ〜、もしかしたらで良いんだよ、もしテレビに出なくても、構わないさ。子供が遊んでくれたら、作った甲斐があるな、って。これ、作ったばかりで、まだ誰も遊んでくれないんだ。キッカケが欲しくて•••遊んでくれるって、実感も•••。」


ふんふん?と話聞きモードの竜樹である。おじさんは、恥ずかしそうにして頭を掻いている初々しい青年、そして少し必死に、駆け引きが上手くないとこなんかも、何だか好ましいって思うモンなのだ。名前は?そう、ウディって言うんだ。


「俺、魔道具作り、才能があって子供の頃から勉強してる訳じゃなくて。」


始めるのが遅かったんだ。

魔法院になんか入れなくて、下請けの下請けの魔道具部品屋に勤めたんだよ。でも、魔道具作り面白くって、自分でも部品だけじゃなくて、作ってみたくなって。


「それで、金も技術も足りないけど、何か出来ないかな、って作った笛なんだ。儲けもそんなにない値付けだけど、その代わり誰でも簡単に遊べないかな、ってさ。」


へー、へー、へー。

おじさん、そういうの、嫌いじゃないよ。

そして、竜樹は思い付いたのだ。

ああ、あんな感じにしてみよっかな?


「ウディ、これ、一応特許取っておこう。ちょっと考えてる事があるから。せっかくだから、すぐ行こう、今日は一日ここでお店の予定?」


えっ、あっ、おっ?

慌てるウディは、何の話かと。

けれど、竜樹にくっ付いて色々やってくれる、お助け侍従のタカラが、控えていたのをソソソとやって来て。

「竜樹様が、何か考えついたようですよ。きっと、貴方の悪い事にはなりませんから、どうしてもの先約でもなければ、竜樹様がおっしゃるように、これから特許を取りに商人組合と魔法院へ行きましょう。」


魔道具として、中身の作り、一応、一応ね、登録しておきましょう。

ウディは、目を白黒させていたけれど。今日は魔道具部品屋が休みで、それを利用して自作の笛魔道具を売っていたのだそうで、自分次第、自由はきくと。


「簡単な作りなんだけど、良いのかなぁ。」

「どんなに簡単だって、ウディの案だろ?登録料はこちらが払うからさ、ちょっと改造というか、使わせてもらいたい事があって、それも良かったら見てってよ。これから子供達のとこへも行こうよ。」


あー、竜樹様に見出された幸運な奴が、また出たな。

周りの民達は、ふふ、と笑って見送る。縋るようなものではないのだ、幸運は。竜樹が気に入っても、儲からない事だって勿論ある。けれど、次に繋がったり、それはやはり幸運だ。

この王都の街の連中は、竜樹が巡りそうな市場や街中で張ったりなど、普通に息を長く売る事と合わせて努力、工夫もしながら、選ばれたら恨みっこなしよ、とルール、お行儀良くしている。しつこくしたら、竜樹がイヤになってしまったら。

幸運の可能性を下げる奴は、密かに袋叩きなんである。




「みんな〜、面白いもの見る人〜!」


新聞寮に帰ってきた竜樹を、子供達が、おかえりおかえり〜!と迎える。

「面白いの、みる!」

「みる、みるー!」

「たつきとーさ、おしごと、おわた?」

「あそぶ?」

ワワワ、とブドウのように子供達をひっつり下げて、タハッと竜樹は笑う。


「ししょう、おもしろいのなーに?」

「なにでつか?」

リュンヌな平民王子ニリヤと小虎幼女エンリちゃんも、とことこやってきて足に抱きっとした。相変わらず仲良しである。

午後だからジェム達も、新聞売り場から帰ってきているし、ニリヤのお兄ちゃん、ネクター王子も、オランネージュ王子もいれば、ワイルドウルフのファング王太子とご学友達もいる。弟の喘息アルディ王子は、お兄ちゃんのファングの服の裾を握って、一緒に寄ってきた。

「竜樹さまがおもしろいって言うなら、すごくすごいのだろうな!」

「ですよね、ファング殿下!」

「なんだろ、なんだろ?」


視覚障がいで晴れ晴れな性格の少年プレイヤード、同じく障がいもちで、お茶屋さんも順調なピティエ、長距離は無理だけれど、歩くのに大分慣れてきたエフォールも、揃い踏みで遊びに来ている。

「私たちでも面白いかな?」

「ね、どんなことだろ?」


ラフィネ母さんは、それをニコニコ見ていて。


笛の魔道具を作って、特許を取って、そして王宮の新聞寮まで連れて来られた魔道具作りの駆け出し職人、ウディは、アワワワ、と竜樹の後ろで慌てている。


「バーニー君もいたよね。」

竜樹の問いに。小ちゃい子組のサンが応える。

「おひるねちゅうー。」

同じくロンも、セリューも。

「ねてるー。」「すやすや!」


何でも実現バーニー君。彼はまた、魔法院の仕事の合間、寮に泊まって美味しいご飯をもらい、休みを猫みたいに日向ぼっこしながら、まったり昼寝しているのだった。昨夜は徹夜じゃないよ、ほんとだよ。


「面白いのやるから手助けしてー、って起こしてみてー。」

ブドウの房の竜樹が子供達に言えば、中でも活発な子らがタタッと走ってバーニー君のお腹にダイブしていた。

グブって音なんかしてないよ、ほんとだよ。

「おきてー!」

「おもしろいのやろー!」


「ウゴゴゴゴ。昼寝以上に面白い事などぉ〜。」

髪もあちこっちなバーニー君に。

「バーニー君、魔道具で力借りたいんだって。遊ぼうよ、お昼寝も良いけどさ。」


んーむむ。頭をぽりぽり。クワァ。

「••••••仕方ないですねぇ。」



古い新聞紙を用意しまして。

三角に折って、色々折って、兜にします。


ここまでで、背中に寄っかかったり側近くでだまだまに、竜樹の手元を見ていた子供達は、ふわ?となった。

折り紙ってそういえば、やった事ないのだ。


「はい、兜、かぶって下さい〜。」


「わぁ!ほんとにかぶれる!」

「私もかぶりたい!」

「新聞紙なのに、すごーい!」

きゃわ、きゃわ、取り合いまではいかないけれど、手を出して集まって、ふわわわ、となる。


「はーい、兜はみんなの分作るけど、ちょっと待ってね。まずは1セットで。これから刀を作ります。」

新聞紙をぐるぐると巻いて、出来上がり。

じゃないよ。

刀の一番テッペンに、ウディの笛魔道具をキュキュ、と結ぶ。


竜樹、子供達に折った兜をヒョイと取ってかぶり、刀を構えて。

ゆる〜。ゆるり〜ら。振る。

? と目がまん丸な子供達だ。


ユユイイン、ヒュ。


「秘技、つばくろ鳴り!」

ヒュヒューイン!キュキャ!

「セイヤッ!」

バヒュン!バチっ!

「いて!」


被害者、護衛のマルサ王弟、と思ったら新聞紙の刀がテイッと頭に振り下ろされる前に弾かれた。いて!と言ったのは竜樹である。弾かれてよろけ、机にぶつかったりして。


「本職〜手加減してよ〜。遊びじゃないかよ。」

「ナハハハハ!本職なんだから、遊びだから、負けられないじゃんか。余計に。おもしれーな、その剣。すごい鳴るなー!」

音がすると、まるで風を切っているようなのだ。どんなにゆっくりでも、空気を音で感じる。


「かっ」


ニリヤ、お口がくわと開いている。

お目々がキラキラに。

手が拳、ぎゅむ、と握られて。


「かあっこいいいいいい!」


やりたいやりたいやりたい!

合唱、手が伸びて、竜樹はもっと子供まみれになった。


「それで、私は何をやれば?」

バーニー君も、ちょっと面白そうな顔をしている。

ウディと名乗りあって、魔道具魔法技術の差はあるが、作り手同士、楽しく話したり緊張したりしてたのだが、刀となった笛魔道具を見て、いや、ギミックのある刀に、バーニー君も力を望んだ事もあったのか、英雄譚に剣劇、勇者に剣聖、雄々しいなんかにワクワクか。


「ちょ、みんなちょと待って待って、ちゃんと作ってあげるからね!えーと、いきなりマルサを、攻撃しといてなんだけど、バシバシ無秩序に人を打ったりするのって教育としてどうなの、って思いまして。」


バーニー君、人の身体に刀が触れたら、ピーッと音が出るとか、身体が光るとか、なんか合図を出す事って出来る?


「フェンシングとか、スポーツチャンバラみたいに、触れたら点数が入る、とか、負ける、ってルールがないと、遊びとして面白くないし、乱暴なだけになっちゃうな、ってさ。」


ふむ、と一つ頷いたバーニー君は、ウディとあれこれ、何やかや。新聞丸めてその先に、笛魔道具をツール持ち出し弄って。

その間、竜樹は、子供達に兜の折り方を教えてあげていた。新聞紙は、先月分がまだ回収されてなかったから、いくらでもある。

チーム荒野達、障がいに負けてない彼らも、ゆっくり教えてもらって、精密な折り紙ではないから、なんとか出来た。


大分調子が良くなってきました、5月になってから、体調。

寒暖差にやられたのかも?ホルモンバランス?

分からないけど、体調も崩しやすい季節柄かもしれません、皆様もお身体ご自愛ください。


調子良くなってきたとはいえ、無理をせず、一応週に2〜3回の目安で更新って事にしといて、もっといけたら書くし、無理しない方がよければ目安通りのんびりと更新しますね。m(_ _)m

どうぞ良かったら広いお心で、のんびり見てやって下さいませ。

不定期、って一言で言えばそうなのかもだけど、もう少し、書くから読んでね!って細かく言いたい。いつも読みにきてくださってる方々、本当にありがとうございます。(o^^o)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ