男子で内なる女子の会
トラムは、くふふふっ!と笑って。
「そうだよね。プランがドレスに興味あるなんて、おかしいなって思ったんだ!」
肩を揺らした。
「ウチの店で手伝いしてる時も、そんなふうじゃなかったからさぁ。そっか、そっか。クリニエ様、着てみたいんだね。」
「う、う。バレたか。」
プラン、頭をぽりぽり。
きゅ〜っ、と目を瞑ったクリニエは、さっき女子達の前ではサクッとドレス着たいな、なんて無警戒、軽ーく言ってたのに。トラムには、ドキドキのバクバクだ。
いけない事なの?が育ってしまった。
女子達に最初、柔らかく、できないんじゃない?って感じがあった事で、抵抗感ができた。そして、プランが庇ってくれた事で、ワイルドウルフの実家まわりの獅子獣人達だけじゃなく、パシフィストでも言いにくい事なんだ、って感じた。
クリニエは、馴染みの仲間と育ってきたから、新しい友達をつくるのに慣れていなかった。パシフィストで初めてだった。学友の皆に混じってなんとなく、じゃなく、自分から。
エフォールもそうだし、レース見本帳を見せてくれる、と言ったトラムにも、嫌われたくなかった。
クリニエの心の中の少女は、キュキュキュ、と拳を握りしめて丸くなり、不安にうずくまっている。
オリヴィエは。ふふふ、と温かく笑う。
キュ、と目を瞑ってトラムの言葉を待っているクリニエに、昔の自分を見た。
布が好きで、お母様の装いが大好きで、キラキラした小物が好きで。そういうものについてキャワキャワ女子達と喋るのも好きな、人懐こい子だ、と言われていた。人形の服を縫っては、拙いながらもコーディネートして、楽しんでいた。
家が繊維業で領地を栄えさせているものだから、家族によその家の男子と違う、なんて指摘される事はなかったけれど。(それどころか、将来長男である兄の補佐としても、有望だぞ!と喜ばれていた。)
一歩家を出れば、中には女みたいな奴だ、とくさす者もいたものだ。家と対立している貴族家の者達はあからさまに馬鹿にしたし、その声につられて、少年にも少女にも、無邪気に、オリヴィエさまって、おかしいよねーって言う者がいたのだ。
クリニエの怯えがよく分かる。
相手がどうでもいい子じゃないから。世界を広げる一歩なのだ。
「クリニエ様、そんなに顔をくしゃくしゃにしなくても、大丈夫だよ。俺も布好きだから、ドレス着たいくらいで、バカにしたりしないよ。」
トラムはニコニコしている。
「う、うん。トラムは、バカにしない、ね。」
クリニエが、ホッとしてやわやわと目を開け始めた。ムーンと糸目になったので、その顔がおかしかったのか、プランが笑いを堪えて、むくく、と肩を揺らした。笑っちゃ悪い。
「あのね、俺も、ひみつ、バラしちゃう。ウチの店の布見本で、カーテンみたいになってるやつがあるんだけどね。よく、ちっちゃい頃から、からまって、ふわふわして遊んでね?女の子って、スカートって、こんなふうかなあ、って楽しく思ってたんだ。俺、俺は女の子じゃないけど、でも。」
俺の中には、キレイなものが好きな、女の子みたいなのがいるみたい。
「!」
尻尾をピーン!と立てて、耳をポワポワにして、クリニエは目をまん丸にした。
「わ、私の中にも、い、いるよ!小ちゃな女の子。かわいいもの、大好きで•••。」
「私の中にもいますよ。ドレスを作るのが大好きで、美しいものに触れていると、とても嬉しく癒される、優しくて時に審美に厳しい、女性がね。」
オリヴィエも、ニ、ニ、とテーブルに肘をついて少年達に親しく視線を投げた。
プランは、自分の中の女の子、ってやつは見当たらなかった。だから、男子で女子を内包している3人に囲まれて、ヘェ〜、となった。
「そうなんだ。トラムも、クリニエ様も、オリヴィエ様まであるの。俺だけなくって、なんか、さびしいぜー。」
プランにはいないのだろうか。内なる女性が。トラムは、そんな事なさそうだけどな、と思っている。気遣いさんな所とか、まあ男子も女子も気遣いはするけど、それを心の中でイメージすれば、プランの場合、どんな形になるだろうか?
オリヴィエも、んん〜?と顔を振って。
「きっとプラン君にも、内なる女性は少しあるんじゃないかな。ほんの少しだから、分からないだけで。竜樹様が、男性の身体の中にも女性が、女性の身体の中にも男性が少しずついる、とおっしゃっていたのでね。」
男性ホルモンと女性ホルモンの話をした竜樹であったが、それだけでなく、両性のイメージの欠片は、その時々で心に反映されるものであろう。
4人は心の中の女の子(または女性)について、自分の中の子はこんな子、と話を始めた。
トラムのとっておきのレースの見本帳を、資料棚から持ってきて4人で開いて見ながらである。
「私の中の女性は、髪が長くて後ろを纏めてサイドを垂らしていて、いつもふんわりした軽い布地の服を着てそう。23歳くらいかな。とにかく綺麗なものが大好きで、ドレスを作る時には、もっと、もっと綺麗にできる!って情熱的なんだ。ストイックな時もあるけど、それよりは、これも良いね、あれも良いね、って、豊かなふくよかな感じがしているかな。あー、このレースは手が込んでるねぇ。」
オリヴィエが言えば。
「でしょう、オリヴィエ様。俺もこのレース好きです!•••俺の中の女の子は、俺と同じとしくらいかなー。まだ子どもだよ。落ち着いてて、あんまり大声じゃない、だけどほやほやしてるかも。いつも布があればご機嫌で、花が飛んでるみたいな気持ち。」
トラムも応える。
少し更新お休みいただきすみませんでした。
ぐるぐる悩んでいたのですが、『王子様〜』、ほのぼのハッピーエンドだけど、今後は少しお話が盛り上がって波立つようにもしていけたらなぁと思います。まあ、無理なく。
それとは関係なく、この春まで前年秋から飲んでいたビタミンの普通のサプリが、多分身体に合わなかったらしくて。ずっと胃と食道の不快感があったので、持病の逆流性食道炎なのかなーと思っていたんだけどその薬飲んでも治らず、おっかしいなーと思ってました。
サプリ飲むのやめたら胃、食道の不快感なくなる。
この冬、指のアカギレがほとんどなかったので、効果もあったんですけどね。お祭りのエステの話を書く前に、こういうことも知れて良かったなぁ。
元気になって、無理なく頑張って参ります。




