表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

596/692

閑話5 ちょっと未来のニリヤとエンリ


ニリヤとエンリの披露宴は。ほんっとう〜〜〜に、長丁場なのである。

まず招ばれた者が多い。


花婿ニリヤ側は、パシフィストの、親族である王族と、他国王族、外交官。貴族も出席したが、テレビの仕事で関係ある者達に、そう、忘れちゃならないししょう、ギフトの竜樹も。学園の同級生で親しかった者も招んだし、新聞寮から自立したジェム達、寮に遊びに来てくれた、歳の離れた貴族の友達たちだって。

また、ニリヤがテレビで旅した長いシリーズ番組で会った先の、この人は、と招待した者も、緊張しながらお祝いだからとここにいる。


花嫁エンリ側は、親族に加えて、ワイルドウルフのファング王太子とアルディ王子、その婚約者達、そしてエンリと一緒にファング王太子のご学友だった者達、ワイルドウルフの教会孤児院関係者、学園の時の女友達。


「灰に種の火」「灰に残り火」の修道士修道女たちは、2人に関わる者として、当然招ばれた。


身分がさまざま混ざって行われている披露宴でもあったが、多くの者は垣根を越えて、この場で等しく集い、祝う事に否やはなかった。むしろ身分差があるが、第3王子ニリヤと関わりがあり、またワイルドウルフの虎コミュニティの長の娘であるエンリと親しくできる、そんな、身分だけで計れない実力ーーー人柄も実力の内であるーーーを持った者と話がしてみたい、と身分が上の者ほど好機に思っていたのだ。


また身分が低く、知らぬ者が不敬をしてしまわないように、所属と花嫁花婿との関係、名前の書かれた生花付き名札リボンを、全員が、そう、ハルサ王様でさえ!していたから、高貴な方と知らず、お酒が入ってもはっちゃけて乱れすぎる者は、あまりいないだろうと思われた。

(いたとしてもお助け侍従侍女さんが、上手い事介入して助けてくれるから安心である。)


また余興に、クレピッピサーカスからオクトロ団長と、セージャンタイガーエスピリカ、パフォーマー達も来て盛り上げてくれるし、それだけでなくてテレビ、ラジオの人気者達も華々しく、ステージとして設えられ、大画面にも映る大広間で存分に祝してくれる。

そう、この披露宴、テレビ、ラジオのスペシャル番組になっているのだ。


パシフィストとワイルドウルフの国営だけでなく、各国から、取り扱う時間枠はそれぞれだが、取材にも来ている。新聞は言わずもがな。

テレビやラジオのチャンネルは、一国で幾つもの、という竜樹の元の世界の様式ではない。言語がソルセルリー大陸内で同じ事もあり、各国で一つずつ、国営であり、それぞれの国のテレビやラジオをチャンネルを回せば見られる、という形だ。それに、各国の調停者である、エルフのエルフチャンネルも加わっている。

竜樹は、国営と民放が出来るかな、と思っていたのだが、皆、どの国も国営チャンネルをとっても気に入っていて、育てようと意気込み、入れ込み投書したりするので、民放各局が出来るまで、まだ発展していない。


パシフィストとワイルドウルフ側のテレビ、ラジオでは、お互いの視点と2国間協力生放送で、力を合わせたりリレーしたりしながら、披露宴の中継を時間で区切って、切り替え切り替え。

幼い頃からの、2人の映像などをまとめて馴れ初め、懐かしいねーってやったり、兎に角スペシャルな2局なのだ。


「エンリちゃん、今がチャンス!馴れ初めストーリーの間に食べられるよ!」

「くふふ!そうね!お料理、どれも美味しそうで、さっきからお腹が鳴りそうだったの!」


お肉なんかは、一口でさりげなく食べられるように小さくカットしてある。どのお料理も、出すだけ見ただけで下げたりしないで、保温や保冷の状態維持魔道具のプレートや器を使って、いつ食べても良いようにベストの美味しさだ。

花嫁と花婿にも、お料理を楽しんでもらいたい、長丁場を乗り切り、それだけでなく祝膳、記憶に残してもらいたい、料理長の気配りである。


2次会などがない代わりに、テーブルから離れて招待客同士、話をラフにできる雰囲気でもあり、写真もそこここで撮影されている。

招ばれた若い花嫁花婿の友人達は、婚活としても華やぎを加えて、キャキャ、と楽しそうだ。そう、人柄は良いんだけど、なかなか控えめなので、といったお互いの友人達に、こんな良い人が来るから話をしてみたら?ってニリヤもエンリもちょっとつついてみたりもしている。

そもそも招待客は、こんな人達ですよ!って花嫁花婿のユニークで親愛なるコメント付きで記念のパンフレットまで事前に作られているので、皆、読んできているのだ。


ししょうの竜樹が、お祝いとして、第一回歌の競演会で入賞した吟遊詩人達と、そして教会孤児院の子供達も、結婚披露宴に相応しい歌のイメージムービーを撮影して流したので、ニリヤとエンリは食べながら、むぐふふ、とニコニコになったりもした。


昼から始まり、夕飯が終わる頃まで続く、お祝い、お祝い。途中で帰る者はいない。休憩したい者は、別室が用意もされている。

テーブルを回って、1人1人に声を掛けるテーブルラウンドも、フルーツやケーキを選んだりしながらやって、誰もかれも特別に今日綺麗なエンリと、ホコホコ嬉しそうなニリヤと、おめでとう、あの時ね、なんてゆっくり話が出来た。


披露宴はクライマックス、ニリヤとエンリは、花嫁がもらわれていく、という形ではなくて、お互いの国に半分半分で住もうと決めたので、お互いもらい合おう、と花嫁の花束贈呈と手紙もあるが、花婿の花束贈呈と手紙もあるのである。

まずはニリヤから、大広間の誰もが注目する中、手紙を読み始めた。

花婿の手紙。

ストレートに両親に感謝、となるところだろうが、ニリヤはちょっと違っていた。


「本日、私、ニリヤ・リュンヌと、モナーム・エンリは、ここに来て下さった、また、テレビラジオを見て下さっている全ての皆様に、色々なところで助けられて、結婚する事ができました。皆様、本当にありがとうございます。」


コホン、と咳払いをして、ニリヤは、フニャ、と笑った。少し面白そうな顔をしている。

「とはいえ、私の男友達や、ご先輩方の中には、早くから番定めの相手として、婚約し、エンリという相手が決まっている事に、なぁんて可哀想なやつなんだ!と思われる方もいらっしゃいまして•••中には女性の方も、そう思われる方がおりまして。そういう方は、決まった相手1人とだけが、何だか窮屈に思えるんでしょうか、ちょっとくらい、結婚前くらい、自由にしても良いだろう?と、こちらからお願いした事はなかったんですけど、それぞれ魅力的な娘さんと私を、その、友達同士にさせようとした方、ちょっと反省していただきたいな、と思い、ここでバラして飲んで騒いでチャラにしたいな、って思いました。」


ニリヤ、ニヒ、と笑った先に、ええ?とタラり冷や汗な男達が僅か。

(流石にコナをかけた女性は招待してはいない。テレビを見て、くくく、とハンカチ噛み締めになっている者は、多少存在する。)


「バラすといっても個人名はやめておきましょう。私の気持ちをお伝えするに留めますね。その•••自由って、選択だと思うのです。私は、番定めで、5歳の時、エンリに選ばれました。そして、その方達は、私側からは、自由なく選べなかった、と思っていたのじゃないかと思うのです。」


だけど、4歳の、可愛くて勇ましい虎の女の子、エンリちゃんに、「けこん、してください〜。」とブドウの粒を捧げられて言われた時。


「私はとっても、嬉しかったんです。」


ふふ、と花嫁の顔を見るニリヤ。エンリは、目をキュ、と大きくして、その後、ぷは!と笑った。


「私の亡くなった母、リュビ妃は、とっても悪戯好きな女性でして、今では当たり前の、クッキーに黒胡椒とか、作ってはハルサの父上に甘いクッキーと混ぜて、ヒョイっと食べさせたりしていました。父上は気に入って、また作ってね、なんて言って、あれぇ?なんて私と顔を合わせて笑ったりね。平民妃として虐げられていたような話ばかり残っていますけれど、なかなか仲睦まじい、幸せな夫婦でした。ーーーそして、母が亡くなった後に、我が子として可愛がって下さった、マルグリット王妃、マルグリット母上も、父上と仕事上も通じる所が多くあり、信頼し合って、今も仲良しな夫婦です。」


「エンリちゃんに申し込まれた時、あ、この女の子と一緒なら、楽しく、嬉しく、父上と母上達のように、家族として、信じて、仲良くやっていける。この女の子は、ぼくの、一番近い家族になってくれるんだ!って、言葉としてはっきり思った訳ではないけれど、もう、他の選択肢はないくらいに、私の方からも、嬉しくそれを、選ぶことが出来たのです。」


「その気持ちは、少年から青年になり、成人しても変わらず、この人となら、と思った通りに、何があっても楽しく、悩んだ事もお互いを知るきっかけとなって、願ったように、一番近い家族として、今日を迎える事が出来ました。自由を尊ぶ男友達や、先輩方に言っておきましょう。その方達は、決して悪い人達ではないんですけど、ちょっとだけ誤解している、って。1人の、とても、愛する女性を、幼い頃から見つけられた私は、とても幸せな男なのだって。どうか、様々な魅力的な女性達と仲良くするよりも、もっと幸せなのだと、羨んで下さって構いません。真似しても良いですよ。そして、エンリ以外の女性と、そういう意味で仲良くする事は、一生ないと確信しているので、皆様どうぞ、幸せな男に嫉妬したからって、横入りさせて引き裂こうとしないでくださいね。ーーーとはいえ、皆様ここにお祝いに来て下さって、テレビラジオを見て聞いて下さっているのですから、私達を認めてくれたのだと、信じても良いでしょう?」


認めてるぜ〜ッ!とジェムが大声で合いの手を入れた。

アハハハ、と招待客達が拍手して笑った。

ニリヤも、エンリも、ニパッとした。


「ハルサ父上、マルグリット母上。お仕事は重責で、今まで、お忙しかったと思います。楽しい事ばかりではないと言っても良いけれど、そんな中でも、私に、仲の良い、幸せな、やり甲斐のある仕事を分け合ってやってきた、こうありたいという夫婦の形を。長く見せてくれて、本当にありがとうございます。私は未来を悲観する事なく、大人になれました。責任がある事は、重い石なのじゃなく、その分育つものがある。お互い仲良く、育ててゆける。これから得られるかもしれない、子供も、仕事も、生活も。そう希望に輝いて、エンリと手を取って、これからは、もっと、成長して、私達を頼りにしていただけるように、歩き続けてゆきます。どうぞ見守っていて下さい。今までありがとうございます。エンリ共々、これからも、よろしくお願い致します。」


侍従さんが、そっとニリヤの側にスタンバッて用意した、花束。片手に収まる、エルフの花店が手配した花束を、ニリヤは手に取った。

色は白を基調に黄緑、ピンクと明るい優しいカラーで、瑞々しい。

ハルサ王から、ニリヤに渡されて、うるりときても泣かない王は、ニヒ!と笑って受け取り、息子の腕をポンポン!と叩いた。

なかなか言うようになった、やるなぁ、である。

マルグリット王妃は、ボロッボロに泣いて、ニリヤの胸に抱きついて感激して。その後、夫の腕に寄って花束持ったまま、泣き泣き背中を撫でられて、しゃくり上げた。

こんな日の涙は慈雨である。



3月終わり、頑張り月間も終了。なかなか頑張れなかったので、申し訳なく。週休1日は•••無理だった!

4月からは週休2日を基本にのんびりと。無理なくだけれど長く完結まで頑張れるように、やっていく所存です。


修正報告

→サーカスの名前、パラディとクレピッピで混ざってました。クレピッピに統一しております。すみませぬ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ