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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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かあさまがいないからわかること


ニリヤとエンリちゃんの婚約式をやる事に決まって、大人達が関係を構築する為に、まず会話、交流をしている間。


当の本人達、エンリちゃんはすやすやで、虎侍女スープルに抱っこ、ようようお口にお茶を含ませられて清め、コクンと飲んだら本気で寝てしまった。

お手てを握って安心させてあげながら、サラダを食べていたニリヤは。やっぱり疲れたのか、くぁ、と欠伸、もぐごっくんして、フォークを握ってお目々をこしこししていた。


「ニ、ニリヤ殿下、君のお父様は、その、奥さんが3人いらしただろう?お父様みたいに、奥さん3人欲しいなー、なんて思っていたりするのではないかね!?」


(もしそうなら、エンリはお嫁にあげられない!!)

アジュールおとーたは、まだ、可愛いエンリが番定め、ニリヤに決めた!しちゃったなんて思いたくなくて、何とか振るい落とすきっかけを探している。そして、ペシィ!とリュリュおかーたに叩かれている。


ニリヤは疲れて眠くて、むに?となっていたが。エンリちゃんが、きゅわあああ!とお喉を締まらせて衝撃を受けていた時と、同じに似ているアジュールおとーたを、お目々パシパシ瞬きながら見て。


あ、エンリちゃんのおとうさま、なんか、きもちがギャンって、こわれたお顔している、と分かった。

ふゅ〜ん、とニリヤも、おんなじ気持ちに。

眉が寄って、真面目顔になっちゃう。


『エンリちゃんのおとうさま。ぼく、およめちゃんは、エンリちゃんだけでよいの。ししょうは、すきなひと、ひとりだよ。あのね、あのね。ないしょだけど。』


「内緒だけど?」

リュリュおかーたが、うん?と優しく促す。


すーやすーやのエンリちゃんの、虎お耳を撫で撫でして、ニリヤは、そっと言った。

『ぼくの、かあさま、ときのき、とうさまにあいたいな、っていったの。およめちゃんが3にん、じゅんばんこだから、おしごともいそがしいで、ずっとまってたのです。ぼくと、いっしょに、ながーく、まってたの。おてがみかいたり、おかしつくって、あげたり。たのしかったけど、ときのき、さみしいの?かおだった。』

誰を責めるでもなく、ただ、正直に、あった事を。


『ぼく、エンリちゃんが、ニコッてするの、すきなの。さみしいのかおは、かなしいのかおは、あんまりいやなの。おむねが、こーに、こーに、なるの。』

こーに、こーに、の所で、胸の前、お手てをギュムッと握って訴える。

母様の寂しそうな顔を見て、ニリヤなりに思う所があったのだ。


ハルサ王様が、聞いていて、ふ、と寂しかったリュビ母様と同じような、切ない顔をしたから。マルグリット王妃様は、ハルサ王様の背中に手を当てて、同じく時を分かち合った家族として、痛みを共有した。


リュリュおかーたと、シュシュお祖母ちゃんが、そうなのぉ、と慈しみの顔をした。勿論、リュビ母様が亡くなった事は知っている。

誰か近しい人を亡くした者は、例え幼かろうと。なくしたことで得た気持ちを、ひだを深く漣、心に秘めている。


アジュールおとーたは、むぐぐ、と唇を噛んだ。そうさ、エンリは笑顔が可愛い。おとーただって大好きだ。•••難癖、つけられないじゃないか。


「ニリヤ殿下は、エンリを、大事に思って下さっているのね。」

ふ、と笑いかけたリュリュおかーたに、ニリヤは、真面目顔のまま、コックリ、ふかーく、頷いた。

『ぼく、エンリちゃん、だいじだの。』

フォークを置いて、スープルが抱っこしたエンリちゃんに、頭をくっつけて、ん、とお目々を瞑った。


んんん、ん。

幼く、将来は分からないながら。

お婿さんとして、なんかよくない?ニリヤ殿下は、お母様の苦労を身近で見た事もあって、人の気持ちが分かる、優しいこじゃないかしら!

結婚式もする、って自分から言ってくれたし、王子様だと言って傲慢だったりしないし。

女性陣の評価は、なかなかによし!である。


「優しい男って、側に傷持ちの悲しそうな女が出てきたら、つい構って優しくしちゃって彼女には俺がいなきゃだから、とか奥さん蔑ろにして浮気しちゃったりとか•••!」

ペシィ!とまたアジュールおとーたは、リュリュおかーたとシュシュお祖母ちゃんに叩かれた。


マジエスジジは、アジュールおとーたが言ったような事って、まあ男も女もホントにあるけど、ニリヤ殿下が「本当に優しい」か「優しい顔をしたがりで身近な人を傷つける、身勝手で甘い奴」なのかは、これから見ていけば分かるじゃろなー、と思っていた。まあ、家族として近しく居て、ビシ!と育てればよかろ。


それには、取り乱しているアジュールおとーたのやり方じゃ、ダメなのである。


『本当の優しさって、難しいですよね。』

ギフトの竜樹が、はは、とアジュールおとーたにフォローをする。

誰にでも優しいように見える竜樹は、その辺、実は分かっているのかもしれない。どんなに悲しい境遇の女性がいたとしても、ラフィネかーさ以外に、自分からデレデレしたりはしない。助けるにしろ公に、他者の力を借りて大きな仕事にする。

だからラフィネかーさも安心していられるのだろう。


『番定めをして、その相手を伴侶に得られなかった方達は、どんな風に暮らしてらっしゃるんですか?』

未来に確実などないのだから、それは実際にあるだろう。苦しみ、悲しみ、それでも生きて、どう生活しているのか。


マジエスジジが、うーん、と唸りながら。

「苦しんで苦しんで、と聞いていますから。確か女性も男性も、神の家で受け入れて、癒し共同生活を送る場所がある、と。」


『ニリヤとエンリちゃんに、脅すような事になっては嫌なんだけど。段々と育っていく間に、2人とも、あるかもしれない可能性の未来の形、を見せてあげるのも、良いかもしれませんね。その、神の家?修道院みたいなとこかな、訪問させてもらって、落ち着いた状態の方に、話を聞かせてもらう事ができたらな、なんて思います。•••勿論、傷深く、子供達を受け入れて話などできる状態にない方に、無理にという事では、なくてね。嵐の中の方には、刺激は、傷が血を噴くようでしょうから。そういうのも、調べて、まずは大人達だけでも、知っておきましょう?』


竜樹は、本当のところ、あまり心配をしていなかった。心配して暴走しそうな周りの大人のために、色々考えているだけである。

ニリヤもご飯の途中で、眠ってしまった。寄り添って眠る、仲良しの2人が、このまま仲良し幸せなままなら、何も心配する事はない。家族として成長して、くっついたり距離をとってみたり、それも成長に必要だろうから、多少揉めても良いと思っている。

不幸にならないように、注意心配しながら生きるのか。

目指す幸せを心に、生きるのか。

やり方は人それぞれだが、少しの悲しみをもう知って滲ませているニリヤには、幸せを目指して欲しいと思うし。

選択肢をガッチリ決められてしまったように見えるエンリちゃんにも。情報を知る事で、白か黒かだけじゃない、そして覚悟の、強いイイ女になるべく、良いところを伸ばしてあげられるように。


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