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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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ジジとババはお留守番


広いお庭に素敵な秋の花、背の高いピンクにオレンジ、黄色に白の花弁が風に揺れている。実の成る樹々も枯れ落ちる葉もそこかしこ、ワイルドウルフの白い大きなお屋敷、ここは虎少年おにーたアルノワと、虎幼女エンリちゃんの住んでいるお家、家名はモナームという。

今は2人、パシフィストの感謝祭へ行っていて、キャワキャ、と賑やかないつもとは違う、静けさ、夕暮れ、寂し切ない。そして美味しいごはんのあったかい匂い。


「マジエス大旦那様、夕食のお支度が出来ました。シュシュ大奥様にもお声がけしてございます。」

灰色兎獣人の、ひょろっとした老執事が、丸い眼鏡を、つ、と持ち上げた後、軽く礼をして告げた。


「うん•••。アルノワとエンリのいない夕飯も、あと2日か。やっぱり寂しいが、今頃、楽しくお友達とお祭りして、美味しいご馳走でも食べているんだろうね。」


マジエスは2人の孫大事な、肩も厳つく、ムキムキ大柄な虎獣人オジジである。虎柄のお耳とぶっとい尻尾が、お歳を召して、やんわり白っぽく毛が混じり光っている。

ピン!とカールした黒褐色の髪にも、白いもの。お目々は爛と、好奇心にいつでも輝いて。


ああ、アルノワ、エンリ。

縛らず広い世界で遊ばせてやり、帰ってきたら、ギュッとギュギュッと抱っこして、ほっぺをすりすりしてやるのだ。ジジの愛、思い知れ!


まだまだ赤ちゃんめいたエンリは、まじぇすジジすきでつぅ、と下から小ちゃなお手て、わっと広げて抱っこを強請る。ふわふわで柔らかい、女の子はどんなに小ちゃくても、何となく甘やかな香りがするように思う。

アルノワは、大分しっかりして、お勉強も頑張って、優しいお兄ちゃんだ。腕力を誇る性格ではないが、虎獣人のしっかりした手足だから、きっと逞しくもなる。この、モナーム家を継ぐのに、なかなか頼もしい男子である。そして嬉しいことに、アルノワもジジを慕ってくれている。


「早く帰ってこないかなぁ。ああ、でも、今夜もテレビが見られるねぇ。」

「エンリお嬢様は、何というか、物怖じしませんから、なかなか面白い事をおっしゃいますよね。」


マジエスジジが、ぶふ、と吹く。

むくくくく。

「おとーた、小鳥の鳴き声なオナラの話、ぶふ、発情期が終わったら、あのカッコつけのアジュールに見せてやろ。ハハハ!」

「ウフフ、素直で純真なエンリお嬢様に、そんな事おっしゃるからですよねぇ。」


笑われているおとーたのアジュールは、ただいま発情期で、おかーたのリュリュとラブラブの真っ最中である。ちなみにアジュールもリュリュも虎獣人である。同じ虎族のコミュニティの中で、出会って結婚したのだ。



ワイルドウルフ国では、王家はあるものの、貴族というものは公爵家他、ほんの少ししかいない。それぞれの獣人種族の中で、裕福に土地経営商才、栄えると共に同種族を纏められる力のある家々が、王家の下に付いてお国を回す手伝いをしている。

アルノワとエンリちゃんのお家、モナーム家は、長く続く虎獣人の親分な家柄で、代々腕っぷしと包容力のある当主、直系だったり婿だったりするが、とにかく頼れる旦那様が前に立ち。そしてその隣に、同等の立場で妻が立ち、協力してやってきた。


エンリちゃんがなかなか強い女子なのも、生来の肉食気質である事も、環境の夫婦で協力体制をもってお家を経営しているのを見て育っている事も、関係しているだろう。


食堂へ向かう。

テーブルには、マジエスじじの奥さん。細い猫っ毛を上手にくるりんくる、と纏めてお団子にし、美しい木目に紅石の簪で留めたのもキリッと、虎耳に沿って流れるよう、垂らした髪一筋は先が金に光る、まだ背中も曲がらない若いお祖母ちゃん、シュシュである。深い二重に眼鏡をしているのも知的で、思慮深そうでありつつ身体もしなやかである。ちなみにアルノワと同じタイプの鼻にチョンと乗った丸眼鏡が似合う。


「マジエス、早く席に。夕方のニュースが始まってしまうわ。今日はアルノワとエンリ、映るかしら?」

「ああ、待たせたね。映るんじゃないかい?楽しみだね!」


だが、マジエスジジと、シュシュお祖母ちゃんは、その日、なかなかテレビを見られなかったのである。


次回、寮に帰ってきたニリヤとエンリちゃんと、プリッカとクラフティです。やっとちびっ子が書ける!

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