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事件の後始末

『なかよし、ね!』

王子達3人のおててぎゅ、ぎゅと、竜樹に託し、その手も加えたぎゅう。


小さな光が、くるりと王子達と竜樹、そして王様の元で光り。

リュビ妃が王との最後の抱擁をして、王妃に礼をする。

そして。


『ッグエ、何を平民風情が!ヒッ、は、離しなさい!!!私はただ、堕胎薬を手配しただけよ!あなたが勝手に死んだんじゃない!平民の穢らわしい血など、これ以上増えない方が、キャナリ様にも、グエエ!』


オッターの自白と、そしてリュビ妃の昇天。



昼休み過ぎの、広場大画面。


みんなが、オッターの「平民風情が、平民の穢らわしい」の言葉に、ふおっ、と口々に怒り、「酷い女だ!」「リュビ妃様とお子が可哀想だ」「酷い、酷すぎる」と語り合った。

オッターが捕まったところで、ナレーションが続いて。


『キャナリ側妃は、自分に仕える、ネクター王子の乳母が、暴走してリュビ妃に堕胎薬を手配し死亡させた事を重く受け止め、ご自分から東の離宮に蟄居されることを決められました。』


『今後、公の場には出ない考えで、リュビ妃とお子様の冥福を祈りながら、慎ましく暮らしていかれるとの事です。』


ホッと息を吐いた広場大画面前のみんなは、そうして、また心配を始める。

「ネクター王子様は、どうなるのだろう?」

「ねくたーさま、だいじょぶ?」

「あの、音痴なの可愛いかったわよね。王様似で喜んでたのも、良かったわ。」

「乳母に、1人ぼっちにさせられてたんだよな。」

「ギフトの御方様が、面倒見て下さるだろう?」


王様の、竜樹へのネクター保護の願いに、わぁ、と歓声があがる。

良かった、良かった。リュビ妃様も、ネクター王子様を、恨んではいらっしゃらなかった。3人で仲良くねって願っていた。


『直接リュビ妃様に、堕胎薬を飲ませた実行犯などの検挙も行われました。これから王宮の治安改革などに王様、王妃様が直接、厳しく心を配られます。調べは着々と進んでおり、違法の堕胎薬を販売している業者も、今後取り締まりの対象となり、捜査の手が入ります。』


「そうだよな、堕胎薬、結構怪しい薬が出回ってるらしいぜ。」

ざわざわ、話し合う大画面前のみんなに、ナレーションは続ける。

『ソレイユ、エトワール、リュンヌの3王家は、この凶事に負けず、これからもこの国、国民全てが穏やかに平和に、豊かに暮らしてゆけるよう、力を合わせて努力していきます。みなさん、今はどうか、リュビ妃様とお子様のご冥福をお祈りください。広場前大画面放送、第3回でした。それでは。』


ふつ、と画面が暗くなる。

放送時間が、10分毎だと忙しいということで、今は午前1回、午後2回。大体朝出勤後、昼休み後と夕方夕食前の3回、同じ放送を1週間繰り返すこととなった。

その時間になると、自然と王都の老若男女が集まってきて、放送を楽しみに見ている。1週間同じ放送を繰り返すのも良かったようで、その回の放送を休日や都合のいい日に見る、見たい人は何度でも、と臨機応変にのんびりテレビライフを過ごしているようだ。


リュビ妃に堕胎薬を飲ませた実行犯は、オッターの自白で明らかになった。白状石、という石がある。真実と嘘に反応して、光を変えるトンデモアイテムが使われ、虚偽の供述は見破られる。

実行犯は、元キャナリ側妃の侍女だった女性で、リュビ妃の侍女になりすまし、飲料に薬を混入させたのだった。王妃様から元々ドレス横領の件で処分され、解雇されていたが、醜聞で他家に侍女として働きにも行けず、燻っていたところを、易々と捕まった。

オッターも元侍女も、殺すつもりはなく、捕まった仕入れ元にも確認して、薬も怪しげだが本当に堕胎薬だったが、リュビ妃の体質に合わなかったのだろう、と王宮医師は判断した。

リュビ妃とお子様の命は奪われ、王族に薬を盛ったのだから、極刑は免れ得ない。


キャナリ側妃は、実際は、後日、王様直々に離宮への蟄居の沙汰を言い渡され、かなりごねたようだが、王様は一切の泣き言を許さなかった。


キャナリ側妃自身は、何をどうしろ、とか、直接的な指示は出さないものの。邪魔ね、とか、面白くないわ、とか、ふと溢す不満に、周囲がとり立てられたい欲で勝手に動き、実際にリュビ妃に意地悪をした侍女に褒美を渡すなどしていたので、欲望の渦巻く中心に、無自覚で君臨していた点が、王様の逆鱗に触れてしまった。


キャナリ側妃の実家も、父親は入婿で恐縮しきっていたが、母親が貴族尊重主義で、自らの出自に高すぎる誇りをもっていたため、母親が厳重な抗議と社交界での圧力をかけてきた。父親は必死にそれを火消しする。そして王様と王妃様は屈せず、母親と父親を呼び出し、そこまで言うなら王家とまた国民と全面戦争するか、と一喝され、覚悟を見せられて、キャナリ側妃の母親は、渋々引き下がった。


大体において、キャナリ側妃の実家の評判も、国民達には、あまり良い風には伝わっておらず(下働きが大事にされてるか不遇に扱われるか、なんて民達の耳と口は塞げないのだ)、テレビと郵便という情報の革命事業に乗りたい貴族達も味方から外れ、キャナリ側妃の実家の力も、前時代の遺物となりかけている。


キャナリ側妃が蟄居した事で、貴族尊重主義の派閥も揺らぐ。

ネクター王子はギフトの御方預かりとなって、自分たちのいいようには使えなくなった。

貴族達の力バランスも、整いはじめた、と竜樹は王様に感謝された。


また、リュビ妃とお子と、最後のお別れができたことも、王様は感謝した。

最後に、可愛いらしいリュビらしい微笑みでお別れができた、と。


王様と王妃様は、リュビ妃のお墓に寄り添って、お子の分も、白い小さな墓碑をたてた。

男女も分からず、名前もつけられず逝ってしまった小さな命に、王様は、アンジュと名をつけ、王家の歴史編纂室に命じて名を残させた。




民達の間では、吟遊詩人達が、復讐の女神ルヴァンシュを讃え、リュビ妃の顕現の顛末を歌い、大いに盛り上がった。



「うむ、ナレーションをもうちょい何とかしたい•••。」


王宮でも、広場前大画面と同じ映像を、誰もが通る何ヶ所かに設置して、放送している。

お仕え部隊は、度重なるお沙汰に、ビシッと喝を入れられ、また、神の目にも、竜樹、ギフトの御方の目にも仕事が認められるとの認識を持って、誇りある仕事をやるようになってきた。

胸を張って、毎日の仕事に臨む。


しかし、たまたまそばに居た侍女さん達に、女性の声が必要だからと頼んだナレーションは、たどたどしく、初々しくはあるが、もうちょっとクオリティを上げたかった。照れながら務めてくれた侍女さんには、悪いが、次回は別の方に•••と断られてもしまったので、いい人を探したい。

ちなみに、メルラにちょこっと言ってみたら、「私は編集ですので、表には出ませんよ。」とにっこりされた。


「あ〜どこかにいい声の女の人、居ないかなあ。」

竜樹がテーブルに突っ伏すと、勉強していた3王子が、反応した。


「いいおこえ?いるよ!」

「あ、ニリヤも知ってる?図書館のあの人だよね?すっごく、素敵な、落ち着いた声なんだ。」

「あー確かにそうだ!いつも、優しく声かけてくれるんだ!」


図書館に。行かねばなるまい!




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