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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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平民王子ニリヤへの試練


サーカスのバックヤード、魔道具の箱の前で、サーカス団員のふりをさりげなくして、見張りをしていた第二騎士団員。

彼は、箱の中に、エンリちゃんが飛び込んできた時も二度見して、ええ!?と驚いたが。

その後に、宵闇蛇を腕に巻きつけたニリヤ殿下が走り込んできて、箱に入って、パタン!と蓋を閉めたのを。目撃していた。


オイオイオイ!

殿下達!子供の遊びじゃねぇんですよ!攫われた子供達の行方を辿る為に、いつサーカスに箱を取り返しに来るか分からない悪者と、対峙しなけりゃなのだから!

と、思わず舌打ちをした。


第二騎士団の連中は、主に実働隊は下位貴族や、中には平民から選りすぐった力ある者を入団させているので、あんまり、お上品ではないのである。


勿論、箱の蓋を開けようと、そしてダメ!とお叱りの一言も、言っちゃろうと、蓋に手を掛けたのだが。

ガタガタ。

「あ、開かねぇ•••。」


やべぇじゃん!とオロオロしているとすぐに、ニリヤ殿下の護衛のルディが飛び込んできた。

「ニリヤ殿下は•••!?」


「•••ルディさん、良い所に!この中に、エンリ嬢と居ます!でも蓋が開かなくて!」


大人2人ががりで開けようとしても開かない。

どうした事だ、と顔色を変えていると、声が大きくなりながら、こちらに近づく。

デテ乗っ取り団長に扮した、第二騎士団員が、しきりに喋っている。


「本当に金は、半金貰えんだろうな!箱を運ばなくても!」

「ああそうだ、何しろ魔道具で荷物を見られるってんだろ。コッチとしちゃ、箱が王都だろうが王都から出てだろうが、とにかく渡すとこが決まってんだよ。危ない橋を渡らないで済むんだから、デテのおっさん、アンタもこれで収めてくれよな。」


デテ乗っ取り団長に、いかにも悪そうに喋っているのは、半分ごろつきの少年グループ、クロクに属している、はしっこい少年ソルである。

他にも、図体ばかり大きな、そして未熟な連中が、古い荷台を引いて6人ほど、バラバラと歩いてくる。


そして箱の側にやってくると。

ハタ、と箱の一つに取り付いて、開けようとしているルディ達と目が合い。

(オイオイオイ!何やってんだよ!箱を運ばせて、後を魔道具や何やら使って辿るって話だっただろ!)

デテ乗っ取り団長に扮した第二騎士団員は、やっぱりチッと舌打ちをして、ルディとサーカス団員に扮した同僚に、誤魔化す為に横柄な口をきいた。


「オイオイオイ!オメェら、何、俺の荷物を勝手に開けようとしてやがんだ!それはこの運び人に渡すもんだ!蓋から手を離しな!」


ソル達クロクの連中は、蓋が開けられでもしたら、と冷や汗、ダラリ。兎に角無事に荷物を運ばなけりゃならないのだから•••計画にない、イレギュラーな、そしていかにも騎士なルディを見て及び腰、何かあったら逃げられるように、サッと体勢を。


「この箱の中に、ニリヤ殿下が入ったらしい。運ぶのは待って貰おう。お前達には、第二騎士団で聞きたい事がある。」

「やべぇ!逃げ•••!」


ルディは護衛である。

ニリヤ殿下と、そしてワイルドウルフのお客様なエンリちゃんを、何があっても護らなければならない。

そしてその使命は、子供達を攫う事件と比べて、負けてしまうようなものでない。早々に第二騎士団に、計画を変更してもらわなければならないのだ。


例え、箱が行き着く先に、まだ見ぬ犠牲者の少年少女があったとしても。引き換えには出来ない。


逃げようとしたクロクの少年達だが、バックヤード周りに潜んでいた第二騎士団員が、サッと取り囲んだので。逃げ道塞がれ袋の鼠。

「•••っくそ!」

「大人しくしろ!キリキリ吐けよ、子供達を誘拐しやがって!言いたくなるように厳しく別の場所で•••。」


第二騎士団員達が、じわり、と包囲網を狭めた所で。

呑気な。


「あ、あれぇ。こ、こまるなぁ。俺、ロニーに、は、箱を持ってこい、て、言われたんだもの。」

「バカっ!ピッド!それどころじゃねえ!バレてんだよ!俺らの事が!」


図体が大きくて、そうしてどこか愚鈍で、だけど運の良いピッド。この悪巧みを、芯から理解しているかはちと疑問な彼は、悪気もなく、ニコニコとした。大概、誰にでも愛想の良い彼なのだ。打ったり虐めたりしなければ。


「バ、バレたのかぁ。じゃあ、お、お兄さん達、一緒にくる?お、俺は、ロニーに言われたんだから、箱は、も、持って行かなくちゃ、だしさー。」


は、はあ?


ピッドは、多分そういう感じの子なんだな、と第二騎士団の取り囲んだ連中と、そしてルディは気付いていた。ソルがふぉ!仲間を売るのかよ!とイキリたったが、ピッドは、えー?違うヨォ?と困り顔である。


慎重に話をする。ちょっと優しげに。


「ピッド、ロニーに頼まれて、箱を運ぶんだな?そこに、案内してくれると?」

「う、うん。お、俺、それが良いような、気がするんだぁ。お、お兄さん達、俺たち、虐めるかい?」


第二騎士団員達は、警戒したまま、話を続ける。

「大人しくしていれば、虐めないよ、ピッド。」

「ウソだ!いつだってオメェらは•••!」

ソルがギャンギャン言うけれど。

グワシ、とその顔を掴んで、ピッドは、困った顔のまま。

「そ、ソルよぅ。ロニーが、何かあったら、お、俺に従えって、い、言っただろ?お、俺は、箱を持って行かなくちゃ。それが仕事、だもの。仕事をすると、な、なんかうまいもんが、た、食べられたりするだろ?は、働かないとだーよ。」


ムグッとなったソルは、観念したのだろう。何しろ逃げ道はない。

ふー、とため息を吐いて。

「わ、分かったよ、ピッド。くそ!大人しくしてやるから、乱暴すんなよな!」


ピッドに任せろ、とロニーは言った。

ソルは、ピッドはノロマで信じちゃいないのだが、ロニーを尊敬している。だから、多分、最適解は、ロニーが言う通り、ピッドに従う事なのだろう。

クロクの少年達は、戸惑い悪態を吐きながらも、ソルの決定に従った。ロニーの統率は、なかなか下まで染み込んでいて、こういう時にカッとなってしまうと後々面倒になる、と彼らは知っていたのである。


「じゃ、じゃあ、箱、はこぶー!」

「ピッド、それなんだが。」

ルディが、箱の蓋に手を掛けたまま、話が甘く通じるピッドに。ニッコリ笑い掛けた。


「この中に、この国の第三王子、ニリヤ殿下が、入ってしまっているんだ。蓋が開かなくなってしまってね。助け出したくて、だから、この箱は置いて行ってくれないかな?」


ピッドは、それを聞いて、ニコニコと肩を揺らした。

「お、王子様だなんて、スゲェなあ!お、お貴族様の、ぼ、坊ちゃん、きっとよろこぶよ!は、箱は、なんか、し、閉めたら開かなくなる、って。こ、この箱作った、や、やつがいるって、坊ちゃんとこに。あけて、くれるよ!だ、だから、王子様も、箱、はこぼうよ!」


お、王子様、運ぶんだな。

スゲェスゲェ!

ピッドが無邪気に喜ぶのを、ルディは、あー、とどうしたもんか、悩んで、そして。

第二騎士団長と携帯で話をした。


ニリヤ殿下を、危ない所へ連れて行くのは嫌だが。この箱にいつまでも入れていて、無事でいられるものか、保証はない。何しろ裏で造られた魔道具だ。なるべく早く助け出すのが良いだろう。

チリ魔法院長を再び呼んでも良いが•••。そして、エタニテ母ちゃんにまた、破壊してもらうか。


しかし、第二騎士団長は言った。

『ニリヤ殿下は、この事件で、自分のやった事の責任をとらねばなるまいね。平民達に、彼のために子供達を攫う輩の本拠地が叩けなかった、と謗りを受ける羽目になってはいけない。ニリヤ殿下は、平民王子の殿下は、平民から支持が得られないとなっては、この先やってゆけないだろう。•••ピッドは、箱を運ばせてもらえば、案内すると言っているんだろう?』

「そのためにニリヤ殿下とエンリ嬢を、危険に晒すというのですか!そんな事、あってはならない!」


ルディは抵抗した。

けれども。

第二騎士団長は、低位貴族の出身だ。だからこそ、貴族の間で話される事、そして平民の間で話される事、噂の怖さを知っている。


『ルディ。ニリヤ殿下は、王族としての責任を取らなきゃならない。遊びで事件の解決を邪魔した、と噂がたったら、彼の今後はどうなるんだ。ただでさえ、ギフトの御方様が、ニリヤ殿下をやっとこテレビで人気者にしたってのに。勿論、エンリ嬢も危ない目に遭わせる訳にはいかないが、だから護りきらなきゃならんが、この場合、パフォーマンスとしたって、勇敢に囮となったニリヤ殿下、ってしなきゃなんだよ。テレビで子供達の行方不明を放送しちまった。皆、この先を気にしている。』


そうして、どう誤魔化しても、事件の解決を邪魔したってとこで、平民の団員もいる第二騎士団から、ニリヤ殿下に不満は出るだろう。


『王族は護らにゃならん。お客様のエンリ嬢もな。だから第二騎士団員を出来るだけ連れて行け。•••俺は辞職を掛けてこの件を王様に報告せねば。首が飛ぶかもしれんが、まあ良い。ニリヤ殿下とエンリ嬢、そして子供達が無事ならな。』


王族とは、何かあった時に、責任を取る者たち。

これが、第一王子オランネージュだったら、即座に箱は開けられて、第二騎士団だけじゃなく、第一騎士団が出張ってきて、彼を保護するのだろう。

ルディは、ぎりり、と歯軋りをした。


こんな所でも、軽んじられたニリヤ殿下の、平民王子として生きていかねばならない彼の、まだ本当は守られていなければならない彼の。


「エンリ嬢に何かあったら、国際問題ですよ!」

『分かってるさ。そして、エンリ嬢が、ニリヤ殿下のお嫁さんになりたいと言ってるのも、テレビで流れた。子供の約束でも、彼女はニリヤ殿下に属する者だ。ニリヤ殿下は、エンリ嬢を護りきらなきゃならない。俺たちは失敗を許されないんだ、ルディ。』


エタニテ母ちゃんに開けてもらえば、直ぐなのに!


ルディの葛藤を他所に、その頃、箱の中では、ニリヤが。

エンリちゃんを慰めて、ほっぺと瞼に、チュッチュ!していた。


第二騎士団長からの話を、そのままギフトの御方様のいる、マルサ王弟殿下に伝える事は出来ない。彼らは直ぐに乗り込んでくるだろう。ニリヤ殿下を危険に晒すまいと。そうしたい欲望と戦いながら、ぼんやりとした事しか言わずにしまったルディも、ニリヤ殿下が、まだ、平民王子として、確固たる位置を獲得してはいないことを、しみじみ悔しく思った。

マルサ王弟から携帯に電話が掛かってきて、話した後、ルディはもどかしく、ニリヤに電話する。

携帯を持ってらして、良かった!


「もしもし、ニリヤ殿下ですか?」

『もしもし?ルディ?ぼく、はこのなかなの。まっくらよ。』


「ルディはニリヤ殿下の箱の側に居ますよ。直ぐに出して差し上げますからね。子供達を攫った者達の、王都の貴族邸に、運ばれている所です。悪い奴らから、子供達を解放しましょう。ニリヤ殿下、お手伝いに、箱で子供達がいる所まで、ご一緒してくれませんか?」

『おてつだい?うん、いいよー!』

『エンリもいいでつよ!』


ああ、殿下。


「ニリヤ殿下。エンリ嬢を、とにかく護って差し上げて下さいね。そうしたら、ルディがどんなにでもして、助け出しますから、落ち着いてね。」


『うん!ルディいっしょ、よかった!はしってごめんね、ルディ。エンリちゃんも、なかないになったんだよ。なかよしだもの。』

『なかよし、でつー!』


ああ、殿下!


荷台に乗せた箱の蓋を、そっと摩って寄り添いながら、電話しながら歩く。クロクの少年達が囲まれながら、荷台を引く。

ピッドだけが、鼻歌歌って、ご機嫌である。


「このルディ、命に代えましても、ニリヤ殿下とエンリ嬢を、お護り致しますから。安心なさって。ね。」


『ウン!ルディがいれば、だいじょうぶだ!』

『エンリ、チッチしちゃったでつ。ヒヤヒヤでつー。パンツありまつか?』


「パンツもご用意しましょうね。」


ニリヤ殿下、ルディはきっときっと、貴方様の評判ごと、殿下を護ってみせます。

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