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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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本当に悪いやつ


箱の中の男の子と女の子。

胸も上下して、いない?街の治安を守る第二騎士団が、護衛として付いて来た人員だけであるけれど、キリッとお仕事。厳しい表情で、男の子の胸に手を置いて確かめようとした時。

驚きギャン!のお顔の取材っ子にサーカス団員達の間を、するり、と。


「あ、エスピリカ。邪魔しちゃダメだよ。」

オクトロが止めるが、ぬるりと掴めず。虎も液体であったろうか。

セージャンタイガー、エスピリカが、脇からぐいぐい箱の中を覗き込み、第二騎士団の騎士の腕をググとお顔で避けて。うわとと、と騎士が箱前にしゃがんでいたのを、押されて後ろに、よれっペタンとしたのを逃さず。

エスピリカ、男の子の顔を、ぺろり。ざーりざーり。その次に、女の子の顔を、ざーりざーり。


「こ、こらこら!遊びじゃないんだぞ!この虎、退かせてくれないか!もし生きて弱っていたら、急を要するかもしれん!」

「す、すみません。エスピリカ、気になるのは分かるけど!」

子供が心配な騎士に怒られて、オクトロが頭を下げてエスピリカの鬣をポフ、と叩いて促す。

「ほら、具合を見させてあげて!」

「ヴヴァルルル•••。」


何でよ、といった様子のエスピリカは、オクトロに向けた鼻面を、きゅ、とお目々瞑って、パチンとした後、もう一回ずつ子供達を舐めた。


「う、ぅ•••。」


はっ、と護衛、騎士団も取材っ子もサーカス団員達も、ピクピク、と震える睫毛、金髪の男の子に集中。銀髪の女の子も、は、はく、とお口が!

動いた!


•••パチリ。

ぱちん。


パチ、パチ。ゆっくり目を開けて、男の子。もぞ、と重そうに腕を上げて、クシュ、クシュ、と目を擦る女の子。


え、とした顔の男の子は、目をぐる、ぐるる、と覗き込んでいる皆に。ひっ、と息を吸って、恐れの顔、ぶるぶる、お口が開いて。

騎士団員が、大丈夫だぞ!と言おうとしたその瞬間に、ドン!とそれを押したのはエタニテ母ちゃん。

も一度お尻からペタンと後ろにズッコケ騎士である。

およよ、そりゃないよ。


母ちゃんは、ゆっくり、頭を撫でてやり、ほっぺを撫でてやり。箱の中に腕を差し入れて。

「•••ヨシヨシ、心配しないだワヨ。私、エタニテかあちゃよ。悪い奴らに、連れて来られちゃっただワネ?おウチがあるだワネ?」

抱き起こして、胸にギュッとして。温かい、かあちゃ、優しい眼差しに、ぶるぶるしていた男の子は、ふぅ、と涙ぐんだ。

こくん、と頷く。

女の子は、ボーっとして目をパチ、パチしている。


2人ともエタニテ母ちゃんが抱き起こして、身体の具合を聞いてみれば、手を振り足を振り。見たところまだぼーっと眠怠そうだけれど、痛いところなどはないという。


「名前は言えるかい?」

エタニテ母ちゃんの慈しみに負けず、仕事をする騎士さんが、精一杯厳つい顔を柔らかーくして聞けば。


「お、おれ、アノー。•••ここ、どこ?」

男の子、アノーが、サーカスのバックヤードをキョロキョロ見回して、不安そうに。

「リビィ。•••おかあちゃん。」

女の子、リビィが、ボーっとしつつも、顔を傾げて。まだ混乱しているのか。


「ここは、サーカスだワヨ。お祭りヨ。」

「アノー。リビィ。2人はどこの子だい?大丈夫、ちゃんとお家に返してやるからな。おじさん達は、第二騎士団の騎士だ。この、お母さんのエタニテ殿も、メール神様のお力ある人だから、助けになるしね。」


「私たちも、助けになるよ。私はパシフィストの第一王子、オランネージュ。」

「ワイルドウルフの第一王子、ファングだ。同じ子供の君たちが、困っているなら、私たちは力になるから。」

ぼくも、わたしも!

子供達の掛け声、続々と。


周りが大人やおじさんだらけだったら、子供のアノーとリビィも緊張したのだろうが。子供達も多くいる事もあって、戸惑いながらも2人は、ウン、と頷いた。


「おれ、おうとっコだよ。ウチは、しんぶんはんばいのおみせの、ちかく。」

アノーが言えば。

「リビィ、ワカンナイ。テレビのひろばが、みえるとこ?」

リビィも言う。大画面広場は、主な都市にあるが、ここまで運んでくる労を考えれば、リビィも王都の子だろうか。

箱から出してやり。保護して、治療師に見せてやるべき、となった所で護衛の第二騎士団員の纏め役、ヒョロ長い顔で顎が四角い、マシュ団員が、静かに宣言した。


「この子供達が助け出された事は、今日と明日、サーカスの公演中と、明後日の旅立ちへの3日間、秘密にするべきでしょう。治療師も秘密裏に呼び、探しているだろう親御さんにも、出来れば内緒にしておいた方が。」


ええ〜っ!?なんでぇ!?

取材っ子達、口々に文句。ワイルドウルフっ子は、お耳ピン!お尻尾ビビビ!

「おウチでつ!おかーた、おとーたでつ!」

「はやく帰してあげようよ!お祭りなのに、心配して探してるんだろうよ!きっと。」

「なんでひみつ?!」

「かえちゅでちゅ!」


エタニテ母ちゃんが、キュッと眉を下げた心配そうなアノーとリビィを抱きしめて、ポンポンと背中、肩を叩いてやる。エタニテ母ちゃんには分かっているのだ。困った顔をしているが、怒ってはいない。

そうして、言いにくそうに。

「••••••オランネージュ。ファング。2人なら、分かるダワね?小ちゃい子達に、イジメじゃない、教えるダワヨ。」


確かにその2人も、難しい顔をして黙っていたのだ。

大人から説明をされるより、仲良しのお兄ちゃん達に説明された方が良いだろう。


「うん。アノーとリビィを帰してあげたい、その通りなんだけど、悪い奴が、まだ捕まってないだろう?」


オランネージュがワッフルクッキーを2つ、アノーとリビィそれぞれに渡す。ファングがお茶を、サーカス団員に注いでもらい、差し出す。

王子様からのおやつとお茶に、アノーとリビィは、躊躇いながらもそれを手に。


「アノーとリビィが見つかった、ってまだ、運び屋させたい悪い奴にはバレてないんだ。だから、そのうち、悪い奴らが、この箱を取りにくるじゃない?」

しゃがんで撫でこ、とアノーの頭、オランネージュ。


「このまま、秘密にしたとするだろう?•••そして、箱にはニセモノの重たいものとか入れて運べば、取りに来た悪い奴を捕まえられるのだ。神の目とか、位置がわかる魔道具、あったのだよな。」


アノー、リビィを攫った奴が悪い。

デテ団長も悪い。

2人を運び込んだり、取りに来る奴も悪い。

だけど。

売ったり買ったりしたい、手先に命令した、ほんとに悪い奴がいるのだ。


「この子供達は、きっと、今はもうパシフィストでは幼い子供達を売ったり買ったり出来ないからこそ、非合法に、酷いところに売り買いさせられる所だったのでしょうね。働き手、というには幼いですから、見目が良い子を•••。」

第二騎士団員マシュが、その先は濁す。見目が良い子を非合法に買ってどうするか、なんて、子供達は知らなくて良いのだ。


ニリヤは黙っていた。

思い出す。かあさまのこと。王宮で迷子になってしまった時に。

(かあさま、ぼくいなくて、ないてた。)

(きっと、アノーとリビィのかあさま、ないてるかも?)


ニリヤ、ニリヤ、どこ?

かあさまここよ!ニーリヤー!どこー!


かあさま、みつけたとき、おててがぷるぷるして、つめたかった、の。


むーん。こんな時、ししょう、どうするっけ。どうにかしたい、とき。

こまったことが、あったとき。

あいであ、いいかんがえ、なにか?


(うーん。うん、うん。)

なかないでぇ、まいご、ごめんね、かあさま!と言ったニリヤに、無理して笑って。泣き真似よ。泣いてなんかいないんだから、母様は。ってオデコとオデコくっつけて、にヒヒと抱きしめて。

そう言った、リュビ母様の、泣き真似•••なきまね?


「オランネージュにいさま。あのね。」


ん?と皆がニリヤを見た。


「ひみつ、アノーとリビィのとうさまと、かあさまにも、ひみつしてもらえば?」

宵闇蛇少年のプリッカを縋り付かせながら、ぽつぽつ、考え考え。

「あのさぁ、あれ、げきだんごっこの、ときみたく、テレビで、アノーみつからないの、え〜ん!ってないてもらったら?さがしてるよ、ってしたら、うその、だませるんじゃない?」


げきだんごっこ。

本の読み聞かせをすれば、段々と子供達が、物語の世界の役にはまって、自然と起こってくるのが、なりきりっこのごっこ遊び、演じるお遊びである。

んむむむ!?

オランネージュ、ニヤ、と笑って。ファングと顔を見合わせる。小ちゃい子達も、げきだんごっこ?ひみつのなかま?とお顔を傾げて見守る。


「演技してもらえばいいっか!第二騎士団がアノーとリビィのお父様とお母様を呼んでさ、一緒に探すって事にして、テレビも出演してもらっちゃおう!子供が見つからない事に比べたら、演技するのなんて何でもない事じゃないかな、きっと!」

「もし難しそうなら、テレビで呼びかけてもらった後、会わせてあげて、ひみつ!ってすればいいのだ!どうだ、第二騎士団も、それならば、アノーとリビィに、悲しい待っててさせないですむだろう?」


うーん。

第二騎士団のマシュが、その四角い顎に手を当てて考えている。

「私1人の判断では決められませんが•••どちらにしろ、サーカスは公演があるから、人の出入りがあって、治療師を呼んだり、親御さんを呼んだりの誤魔化しはききそうですよね。本当なら、子供達はここから移動させた方が良いでしょうが•••あのですね。」


ピ、ピッ、とマシュは、片手を顔の前に、手のひらを広げた。

「箱は、あと4つ、古いのも含めると、5つあるんですよね。」


ガリガリ。

エスピリカが、残りの箱に、ぶっとい前足爪たてガリリ、あぐっと牙見せガブガブと。

まさか。


「残り全部に、子供たちがいたり•••する、とか?」

オランネージュが、ニハーの顔のまま、たらりと冷や汗。


ガリリ、ガリガリ。

活動報告にも書いたのですが、頑張った後の少しヘニョりがあって、お休みいただきました。すみません。

いっぱいだらけて、小説読んで、ヘニョりから復活してきたのですが、やっぱり時々休むと新鮮な気持ちで書けますね。休み、大事。

2月は休みを多めに入れながらも、より良く続けていけるように、調整しながら書きたいと、今のところ思っております。

どうぞ、よろしかったら、のんびりとお付き合い下さいませ。

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