ホラー
竜樹達がニヤニヤして黙っていると、オッター乳母は、話が通じないと悟ったのか、怒り声を上げながら仕方なく帰って行った。
「映画会が終われば返していただきますから!」などと言っていたが、竜樹達は、誰も、『映画会が終わって、オッターが怖くならなかったら、ネクターを返す』などとは言ってない。どうでも返す気はないのだが、綿密に計画はせねばならない。
竜樹に取り付いて、ぎゅうぎゅうしてきたネクターと、眠たくってぽやぽやしているニリヤをベッドに連れて行って、添い寝し、寝かしつけてやる。
オランネージュはまだ眠くないようで、ミランやマルサとお茶を飲んでいた。夜ふかし大丈夫か。
しばらくネクターとニリヤの背中をトントンしてやる。
「私、帰らない。竜樹、帰らなくていいよね?」
ネクターが呟く。
「帰っちゃダメだ。ネクターは、もう俺達の仲間だからな。」
うん。
ふーっ、息を吐くと、トントンに身を委ねて瞼が下りてきた。
程なくして寝入った2人に、首まで毛布と布団を掛けてやる。目が覚めたら真っ暗だと可哀想なので、しばらくオレンジの灯にしておく。
「チームニリヤ、恐怖の映画会を開催せねばならないよ!」
それについて、みんなの意見を聞きたい!
竜樹は、この世界で怖がられるホラーの傾向を知らない。ゾンビぐちゃぐちゃは、激し過ぎるか。竜樹が怖いと思うのは、日本ならではのホラーだが、貞っぽいやつは、この世界にない概念が沢山ありすぎてどうかな。
「試しにちょっとずつ、ホラー映画観てみて?」
「ほ、ホラーとは、怖い映像で?わ、私、遠慮、する訳には、いかないですね、はい。」
チリは怖がりさんみたいだ。
「ひいいいいぃ!無理!も、もう、無理!」
「ホラー、すごい•••!」
チリが叫んで、ミランは固まり、マルサがお茶飲みつつゆったりと観る。オランネージュは目を爛々とさせていた。タカラは、もう最初から、目と耳を塞いでいる。
「オランネージュ、怖くて、寝る前のおしっこ行けなくなっても、知らないぞ。寝なくて大丈夫か?」
「だって、計画するのでしょ。私も仲間だもの、意見出したい。」
じゃあ、あと30分だけな。
スマホの時計を見せて、オランネージュも加えて会議である。
ジャパニーズホラーでいこう。
あの湿っぽい感じが、たまらなく怖い。
ということになった。
「部屋の灯は消して上映しよう。」
うんうん、雰囲気出るよね。
「ダメ押しに、一回灯をつけた後、ふっと消えて、幽霊がうわーっと本当に出てきたら、いいのじゃない?」
くふふ。笑うオランネージュ。
お前、悪い奴だな。
「よし、その幽霊の役を、タカラに任せよう!」
「え!?」
だって、竜樹は映画会主催でいなきゃだし、チリは上映の技術担当だし、ミランはカメラで証拠抑えだし。
マルサとルディは護衛を外せない。
暗くなるので、守るのも大変なのだ。
「ゆ、幽霊なんて怖くてできません〜〜〜!」
頼むよぉタカラ。
竜樹に頼まれて、タカラはがっくり、膝を落とした。
映画会は、諸々の都合を繰り合わせて、明後日開催となった。