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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 夢見るツバメはとーさのこ 3


トゲトゲの、ちのつながったおとーさと、ツバメが会う事になった。


寒くて霜柱が立ったその日の朝、ご飯を食べ終わって、皆がわちゃわちゃしている交流室で。竜樹とーさは、ジィっ、とツバメのお顔を見て、カサついてクリームを塗ったばかりの両方のほっぺに、でっかいお手てを当ててくれて。


「大丈夫かい?ツバメ。」

と心配の声をした。


「だいじょっぶ。たつきとーさも、いっしょだから!」

ニン!とツバメは満々の笑い、まぁ〜かせといて!なのだ。

「うん、一緒だな。」

うふふ、と見つめ合っていたら、ニリヤ王子が、ふぉ!と抱きついてきて。

「僕も一緒だから!ツバメは僕の、弟分だ!王子様は子供の代表なんだからね!僕が、ツバメを、まもる!」


10歳のニリヤは、テレビのお仕事をしながらも、今も寮に入り浸って、皆の兄貴分。頼れる王子様なのだ。

それを見ていた、小ちゃい子達をほれほれして片付けのお手伝いをしていた、13歳のネクター王子は。


「私も!•••と言いたいとこだけど、サンセール先生と、レトルのカード販売の課外授業があるから。今年のカード、色々あって楽しそうだから、ニリヤもツバメも、皆が好きなの選べるように、沢山買ってきてあげるね。」

「ありがと、ネクターでんか!」

「わぁ!嬉しいな、ネクター兄様!ネクター兄様にも、書きます!」


12月25日は、クリスマスの日。イエスキリストの降誕祭だって事だ。竜樹とーさの元の世界では。

でも今は、竜樹とーさは、ランセ神様の信徒だ。


「でもね、冬に、ジッと我慢して春を待つだけじゃなくて、ほこほこワクワクするお祭りがあっても良いと思うんだ。」


と、新聞寮の最初の冬越しの年に、竜樹とーさは言い出したそうだ。

あったかくなる、ランセ神様、情報神のお祭り。雪灯の月25日、レトルの日。

美しく、工夫した、手作りの、様々、各々、思い思いのカードにメッセージを書いて、親しい人にお届けする。

子供達には、大人から何かちょっとしたプレゼントを付けて。冬を温かく過ごせるものを中心にだけれど、郵便屋さんの肩掛けカバンに見立てたお菓子缶だったり、玩具や勉強道具、本だったり。5年目となりバリエーションも出てきた。


「オランネージュ兄様も、レトルの日のカード欲しいって言ってたよ。学園に行く準備で忙しそうだけど、絶対に皆とカード選びして、書きたいって。」

ニコニコしているネクター殿下は、もう竜樹とーさと、頭一つ分くらいしか、身長が違わないのだ。


じゃあね、じゃあ。

サンにいちゃ達は新聞売り場へ行くし、ネクター王子は課外授業へ、そして。


ツバメと、竜樹とーさと、ニリヤ殿下は、トゲトゲおとーさと会いに、王宮の一室へ。


「マルサ、会うの王宮にさせてもらっちゃって、悪かったねえ。でも、あちらの指定のお店やなんかに出掛けるより、ツバメもニリヤも、安心なんじゃないかな、って思ってさ。」

竜樹とーさ護衛筆頭のマルサ王弟殿下が、とーさの言葉に、ニカカカ!と笑った。

「良いさ良いさ。俺たちも竜樹や子供らを守りやすいって。あちらは、あれだろ、成人向けカセットの商会に勤めてる、いわゆる裏稼業絡みの奴らだってんだし、安全に警戒できる場所にしとくにこしたことないぜ。王宮なら、どんなに小さな応接室でも、入り口の門で魔道具も使って身体検査や、武装解除だし、入れる人員も許可制だしな。」


ツバメのトゲトゲおとーさは、成人向けカセットに出演する花たちの、いわゆるスカウトと管理をやってるのだそうである。

「うさんくさいね!ツバメ!」

ニリヤ王子が、ムニムニとお口を引き結ぶ。

「うさんくさ!•••くさい、って、どんなによい?」

トゲトゲおとーさは、赤ちゃんのツバメを一度も抱っこしてくれなかったからーーー夢だけどあれは夢じゃない、本当の話だって、ツバメは分かってたーーーによいは分からない。ツバメは、ハテナ。



小さな、王宮の応接室で、お茶を飲みながらまったり待った。ツバメとニリヤが、出されているお菓子の中からキャラメルを仲良く一個食べて、コロコロほっぺの中、食べ終わってお茶で濯ぐ。

しばらくすると、コンコン、とドアにノック。


「はい。」

「イノセンス商会のディニュー様、ルナール様がお越しでいらっしゃいます。」

「どうぞ。」


マルサ王弟が立って竜樹とーさのすぐ斜め後ろに。護衛のルディもニリヤ王子の近くへ。

竜樹とーさも立ったから、ツバメとニリヤも何となく椅子から立って、テーブルに着いたまま、お客様を迎えた。


お助け侍従さんが案内してきた、イノセンス商会のディニューって人と、ルナールトゲトゲおとーさは、ムッとした顔で入ってくると、胸に手を当てて、ゆっくりガニ股で頭を下げた。多分、頭を下げるのは慣れていないのだろう。特にディニューの方は、盛り上がった肩からの筋肉が、モリモリと凄くて窮屈そうだ。ルナールトゲトゲおとーさは、それよりちょっと細かったが、やっぱり窮屈そうで、上着を着崩している。

2人とも、竜樹とーさより、断然大きいし、なんか偉そう。ディニューは特に、眉間に傷跡もあって、ツバメはコワワだった。


「お直り下さい。」

お助け侍従のタカラおにーちゃが、お澄まし顔で言うと、ディニューとルナールは、姿勢を直して向き合った。

ぎょろ、と鋭い視線が、ツバメに注がれる。


「初めまして、こんにちは、ディニューさん。そして二度目ましてだね、ルナールさん。今日はツバメの為にいらして下さって、ありがとう。特にルナールさん、貴方は今日を最後に、ツバメと二度と会えないという誓約魔法がかかっているのを、覚えてらっしゃいますか?どうか心残りのないよう、しっかりとツバメと会ってやって下さいね。」


竜樹とーさの、人懐こい微笑と共にの挨拶に、えっ、という顔をしたのは、ディニューである。

「は、初めまして、皆様方におかれましては、ご尊顔に預かりまして、有り難く。イノセンス商会の商会長をしております、ディニューと申します。これ、ルナールの雇い主をしております。そ、その•••本当なんですかい?今日を最後に、ですと?そうなのか?ルナール?」

竜樹とーさと、ルナールトゲトゲおとーさの両方を見て。


「あぁ。確か、そんな事を言われたような•••あんまり覚えてねぇです。その、こんにちは。お久しぶりでございます。ルナールと申しますケチな野郎でございます。」

ムス、とした顔は、言葉の内容と声と、あんまり合ってなかった。ムス顔が無意識で基本のお顔なのだろうか。


「オメェ何やってやがんだ!何がどうしてそうなった!事と次第によっちゃ•••!」

モリモリモリッ、とディニュー商会長の肩に力が入って、今にも殴りそうに盛り上がったので、ぴええ!とツバメは、竜樹とーさのズボンを握った。ニリヤ殿下も、ツバメのおせなを、とん、と触ってくれる。


「まぁまぁ、ディニュー商会長さん、ルナールさんも、落ち着いて、座って話をしましょうよ。おかけになって。今日は、どうあっても、ツバメに良いように。私たち大人は、子供がすくすく成長するように、何とか都合をつけてやらなけりゃならない側です。こうでなければ、という先入観をとっぱらって、腹を割って、今後がツバメにとって、良いように、お話し合いましょうよ。」


不思議と竜樹とーさの、落ち着いた、何でもない声は、この場で力を持って響くのだ。


「あ、あぁ。これは失礼致しました。そうおっしゃるなら、座らせていただいて、お話致しましょう。ええ、じっくりと。」


コワワのディニュー商会長は、竜樹とーさに恩があるそうである。

「名も無いチンピラだった俺が、成人向けカセットの商会長として、曲がりなりにも裏稼業、だけれど表世界のお墨付きもいただいて、一端いっぱしにやってられるのも、俺ら悪達にも居場所を作って下すった、ギフトの竜樹様のお陰に、他なりません。」


悪いこの連中でも、認められたお仕事があることで、街でハブられずに、何となく居場所を持って、悪達だけど悪すぎる事をせずに、何とかやってけてるのだそうである。

ヘェ〜、とツバメとニリヤは、ディニュー商会長のお話を聞いて、やっぱり竜樹とーさって、すごいなぁ、と思った。


「今回、ルナールが、その、私ごとでございますが、ウチの妹と結婚することになりやしてね。コイツは悪だが、女遊びをしねぇ、一本気な所のある奴だ。まぁ、悪ズレの俺たちの仲間ですから、過去になんやかや、あってもおかしくねえな、ってね。何かあったら今のウチに、それなり身綺麗にしておけよ、と。兄バカ兄貴分バカなりに、妹と、義理の弟にもなるルナールを、問い詰めましたらねぇ。」


竜樹様の所に、結婚しないで遊びでできた子供を、預けたと。

「俺としては、出来れば引き取って面倒みるなりなんなり、その。妹を笑って下さいますな。」


ディニュー商会長の妹さんは、子宮の奇形で、妊娠はできるが、その確率は少し奇形でない人よりも、少な目だ。とても心配してるのだとか。

身体スキャナで体を見ると、本当に人の身体は千差万別なのだなぁ、と思わせられる、と前に、黒狼獣人の、ワイルドウルフ第二王子、アルディ殿下付きの。ルルー治療師が言っていたっけ。


「今回の話があって、妹は喜びまして。ルナールと血が繋がった子供がいてくれたら、産まなきゃいけない、そんな、せっつかれるような気持ちが、救われると。俺は、竜樹様の所にいる、真っ当な子だから、引き取るのは難しいぜ、とは言ったんですがね。」


今日も、本当は一緒に来たがったのだそうである。

だけど。

「そういう理由で引き取られた子が、後々、ウチの妹とルナールの間に子が産まれた場合に、どうなるか、俺も妹の、ちょっと焦った様子に、こりゃどうかな、って思いましてですね。まずは俺が会ってくるから、と。」


「ツバメは、たつきとーさのこよ!どこにもいかないの。」


ここで言わなきゃ、いつ言う!

とツバメは思った。


「ルナールおとーさ?ツバメがうまれたとき、いつもトゲトゲ、しかたねぇな、おんななら、はなまちに、うれたのによ!ぎふとにおっつけちまえ!っていった!」


ギョ、とした顔の大人達。

「ツバメ、赤ちゃんだったのに、覚えてるの?」

竜樹とーさが、びっくりだけど優しい顔で、ツバメのほっぺを撫でこした。


「ツバメは、しってるのよ。ギュッとしてほしかったのに、だれもしてくんなかった。おさんばさん、だけよ。それで、たつきとーさに、ルナールトゲトゲおとーさと、エリァルおかーさが、おっつけにきたとき。」


『あぁ〜俺、すっごくこの赤ちゃん欲しいな〜。よしよし、竜樹が抱っこしてあげよ、泣くんじゃないよ〜。』


「って、とーさが、だっこのギュして、よいよい、ポンポンて。あったかだったの。あったかのほうに、ぼく、いくの!このひとのとこに、ぼく、いく!って、きめたの!」

ツバメは決然と、だけど、ニンと笑って、言ったのだ。あったかの方に、手を伸ばした、あの時みたいに、心から。



「•••本当に覚えてるんだなぁ。不思議なこともあるもんだね。」

ツバメは賢い、賢い。

竜樹とーさは微笑んで、ツバメをしきりに撫でこして、そうして。


「ねえ、ルナールさん。ディニュー商会長さんと、その妹さんのお気持ちは、分かりましたよ。でも、貴方はどうなの?俺は、ツバメを手放さないって決めてるし、あの時の魔法誓約も生きているから、ルナールさん達はどうしようもないんだけど、それでも。ルナールさんには、今、父としての気持ちは、あるの?」


ルナールトゲトゲおとーさは、顔を俯けて、ポツポツ、と喋った。

応接室に入ってきた時の、コワワはどっかにいっちゃった。


「俺は、いまさら•••。」


ふぅ、とため息を吐いたのは、竜樹とーさだったのか、ディニュー商会長だったのか。

とにかくツバメは言ってやった。

だから会ったのだ、トゲトゲおとーさに。


ツバメは竜樹とーさのこ。

トゲトゲイライラルナールおとーさと、エリァルおかーさのとこには、行かないよ、って。


それからは、ディニュー商会長が、ツバメが引き取れないにしろ、養育費を払わせるって言い出して、いやいや関わらないって誓約があって、ってしまいにはチリ魔法院長を呼んで、一言一句違いなく、あの時の誓約を聞かされて。

ディニュー商会長とトゲトゲルナールおとーさは、何だか、ガックリして帰っていったのだった。


「言ってやったな、ツバメ!僕助けようと思ったけど、ツバメのせんとう力が、抜群だった!」

ニカカカ!でるまくなし、って奴。とニリヤ殿下が、ツバメをギュッとして笑うので。


「いってやった!うふ。」

ツバメも、嬉しくなって笑った。

少しだけ、ガックリした、ルナールおとーさの後ろ姿が、目に焼きついたんだけども。

忘れない。

けど、そっち行かない。


ツバメは、竜樹とーさのこ、なのだから。





あと1話くらい続きますよ。

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