閑話 夢見るツバメはとーさのこ 2
くふぅ。ぬのいちまいじゃないの。
おしりもキレイキレイ、あったかの。
おててをえいっ!っても、ぺらっ、とならない。ぽんぽんスースーしない、おててにくっついてくる、おそでがあるの。くふくふ!
やわらか〜い。
きもちい〜い。おぬのよ。
ふわぁう。あぷぷ。
ここにいると、みんなが、ツバメ〜。って。
ツバメくーん、って。
おかおのまえで、ふりふり、ってなんかしたり。
いろんなおいろの、おめめ(あんまりみえないけど、そのくらい、わかるんだよ!ぼく)が、ごきげん?ってのぞいたり。
へー。
いろんなこえ。いろんなひと。いろんな、おとな。いろんな、こ?
みーんな、みんな。
ツバメに、イライラ、とげとげ、しないの。
むふん。
うまうまも、ぽんぽんがクーってなると、ふえええぇん!ておしえてあげるの。
すると、おやおやおや。あらあら。
って、パタパタ、あちこちして、しばらくしたら、はいっ。
おくちに、あまいの、くるのよ。
ふかふかのおむねに、すんすん。
ちむちむ。ちゅく、ちゅく。
「あかちゃんて、すごく、いっしょうけんめいに、ミルクのむね!」
うふふ、ってふかふかのおむねも、わらう。
「そうだねぇニリヤ。見ていると、何でか、ししょうは、涙が出そうになってくるな。何て一生懸命なんだろうか!いのちの、かたまり、小ちゃな小ちゃな赤ちゃん、生きることに全力な、いのち。お手ても、あんよも、良くできてる。何ていうか、凄い感動しちゃう。」
ふふふ、くふふ。
ちょこっとひくい、あったかいおこえと、たかいキャキャってしたおこえが、わらうのよ。
「赤ちゃんて、鼻で息しながら口でミルク飲めるんだよ。ほら、鼻から息してるでしょ。」
「「「へ〜!!!」」」
ふす!ふん、ふん、ちゅむ。
「ぼくできるかな。ミルクください。ふむ、ふー、ぐふっ!ちふっ!」
ごぼ。
ゴボっていったよ。なんだろ。
「ゲホッゲホッ!難しいぜぇ!」
「できないー!」
ふくく。おもちろい。
あったかのひとのまわりのこ?たち?も、ツバメをよいよい、っておててさわったり、やさしんだよ。
ツバメにできる、はないきミルクのみ、まわりのこたちは、できないんだぁ。
くふっ!
あー、ぽんぽん、あったか。
けふっ。
なんか、うと•••。
「わらったあ!」
「笑ったわね〜。ふふふ。」
「新生児微笑だねぇ。」
「し、新生児微笑とは、な、なんですか?」
ねぇ。しんせいじみしょう、って、なんだろ?
すや、すやぁ。
「生まれたての赤ちゃんが、うとうとってしてる時や寝てる時に、にこーって笑うのを、新生児微笑って言うの。俺たちの話が分かって笑ってるんじゃないんだよ、チリ。生理的なもので•••良い夢をみてるんだよ、なんて言ったりもするね。」
「せ、生理的。」
「赤ちゃん、生まれてすぐは、誰かに面倒みてもらわなきゃ、生きていけないでしょう。可愛いな、守りたい、育てたい、って思ってもらわないと、死んじゃう、とっても弱くて、そして生命の自然の、生存戦略のある、そんな賢い本能の、生き物なのだね。新生児微笑が、その為のものでもあるよ、って言われているね。俺たちは笑顔で、怖くないよ、好きだよ、大丈夫、ってコミュニケーションするでしょ。それを、生まれたてで知っている、周りの人達と、愛情をもって関わるキッカケを持っている。•••不思議で、神秘的だね。そうして、俺たち、まんまとじゃない?バーニー君。」
「ええ、ええ。悔しいけれど、まんまと、可愛い!キュ!って心が鷲掴みになってしまいますね。」
「な、なるなる。まんまと。ふふふ。大きくなったら、魔法院にいらっしゃいね、賢いツバメくん。」
「その時まで、魔法院長でいなきゃですね、チリ院長。」
「バ、バーニー君も、活躍してなきゃ。お、大人がどんなか、み、みせてやらなきゃ!」
「貴方がそんな、大人の見栄っ張りするとは、思いませんでした。アハハ!」
くふ。
わかってない?わかってる?
おもちろいこえの。
「「また、笑ったぁ!」」
くふふ。うふん。
ねんねしてて、ピカピカしてないとき。みんなが、しーんとしてるの、よるっていうね。なんか、ちがうの。ふかふかの、ぬので、ねんねして、たんだけど。
ふにゅ、ふにゅ。
なんか、うえぇん。
うま、うま。キレイキレイ。
だけど、ねむねむなのに、ねむ、ないの。
あったかいの、とんとん、ギュッとしてぇ。
「よし、よし。良い子、良い子。ねんね、ねんね。いいこよ、ねん、ねん。」
そーっと。
とん、とん、とん。
よい、よい、よい。
キュ、キュ、て。あるくの。
おせなと、おしりに、ぽん、ぽん。
ほっ。
ふに、ふに。
もっと。もっとなの。
なんかねんね、ぐずぐずなかなか。
ねむねむしたいのに、ねむねむなんないのぅ。
ふえぇ、ふにぃん。ふぁぁわぁん!
「よいよい。うんうん。大丈夫、大丈夫。よいよい、ツバメはよいこ。ねんね、ねんね。」
あったかいのひと、ゆらゆらあるく。
ぼく、ずっとぐずぐずだったのけど。
「竜樹様、代わりましょうか?お疲れでしょう?明日もありますし。」
ひそ。
ちいさなおこえ。
ふに、ふにぃ。ひく。ふ•••。
「大丈夫、ほら、ねむねむ、眠いね〜。もう少しで寝ちゃう。ありがとう、ラフィネさん。」
なんども、ねむねむ、とんとんしてよぅ、って。あったかいのひとに、ぐずぐずしても、イライラツンツンなかったの。
だから、いーっぱい、あーんしんで、ふえんふえんしたの。
すぅ•••。
「ほら、寝た、寝た。ねんねしたね、ツバメ。」
ひそそ、って、なんてってるか、もうわかんなかったの。
それから、なんかいもねんねして、ちむちむして、うまうま、キレイキレイして。あぶぶ!っておはなしできるように、なったの。
あったかのひとは、たつきとーさよ。
まだとーさ、っていえないけど、ツバメは、とーさも、ニリヤでんかも、サンにいちゃも、わかってるんだから。
ふかふかおむねは、シャンテおかあさん。
ズビ。
くるちい。おはなが、くるちいの。
ずび、ふこ、ふこ。ふが。ぴす。
「あぁ、苦しいねえ。ツバメ、お風邪だって。赤ちゃんだけど、風邪やなんかを、治癒魔法で治すとかはしないんだね。」
「あんまり治癒魔法を、頻繁に軽い病気なんかで、赤ちゃんの頃から使うと、病に弱い子になっちゃうんですって。」
ラフィネかーさが、ぼくのおでこのかみのけを、なでなでこ、してくれたの。はふ、くるし。
「あぁ、そっか。免疫がつかないのかもね。うーん、赤ちゃんが病気って、すごく心配なんだね•••。鼻詰まって苦しそう。鼻水吸い器とかないよな、多分。ストローあるっけ。あとガーゼ。」
たつきとーさが、ツバメのおはなに、すとろ?あてて、キュってすったの。がーぜってなに?うすいぬの、おくちにあててた。
ふが。ずび。
おはな、すこし、とれた。
すぴ、す、すぴ!
うま、うまうま、ふん!
ふす、ふす。すぴ。
「ミルク飲めた、飲めた、良かった。ツバメ、良かった•••。」
そーっと、なでてくれるの。
これ、しんぱいそうなおこえ、っていうの。
ラフィネかーさが、たつきとーさと、ツバメのおててをにぎってくれたの。
そうして、とーさと、かーさと、くるりくるり、ねんねやちむちむうまうま、いっしょだの。
「かーさ•••。」
「ごめんなさいね、サン。ツバメちゃんがご病気なの。シャンテさんがご用でお泊まり休暇の時に、ツバメちゃんも可哀想にねえ。風邪だから、治るのよ。でもね、かーさがちゃんとみてあげなきゃなの。少しだけ、我慢しててね。」
あ、サンにいちゃ、さみしのおむね、スースーのおかお、してる。
「ウン•••。」
しょんぼり、おかおをしたにむけた、サンにいちゃ。
あぶ、あぶぶ、ぶふ。すぴ。
サン、にいちゃ。あう〜。
ぐずっ。びえぇ!
「大丈夫、ツバメちゃん、大丈夫よ。お熱下がったからね、もう少しよ。」
「大丈夫だよ、サン。竜樹とーさは、サンを愛する。サンはとーさの可愛い息子だ。ほら、撫でこ、撫でこしてやろ。ラフィネかーさは、今はツバメがお風邪だけど、治ったら、ちゃーんとサンを撫でこしてくれるからね。」
「ウン!とーさぁ!!」
たつきとーさ。
サンにいちゃ。
あぁ。
あぶぶぅ〜。
はっ、びくん!
てして、お目々をぱちぱちしたら。
竜樹とーさのお腹にくっつかって、いつもの交流室で、ツバメは寝ていた。むくっ、と起きて、くるりとお部屋を見回す。
シャンテお母さんはお泊まりで、ゆうべは、交流室と別の、新聞寮のお部屋で。ご病気の赤ちゃんの面倒を見ていたっけな、ってツバメは思い出した。
オレンジの灯が、朝日と混じって、眩しいなぁ。ツバメはムニムニとお目々をこすって、お水をのみに、調理室へ。
とことこ、とっとこ。ペタペタ。
調理室はドアがない。お盆や、配膳のワゴンを運びやすく、事故を起こさないようにするためだ、って竜樹とーさが言っていた。
廊下から、調理室へってツバメが裸足で、歩いていたら。ふぃ、ふぃ、泣き声きこえる。
ふっ、と。赤ちゃんを抱っこした、シャンテお母さんが。ミルクのびんを持って出てきた。
廊下は寒いもの。あったかいお部屋で、だけど、赤ちゃん置いてミルクつくれなくて、調理室だのだな。ツバメは、良い子、がまんのこ。
ムグッ、とお口を閉じて、お手てを後ろに回して、だけど。
「シャンテおかーさ、ツバメは、よいこでまってるから、ね。あとで、なでこ、してね。おかーさ。」
だいすき、だからね。
おかーさ、えらい、えらい。
シャンテお母さんは、何だか、はふぅ、ってねむねむそうだった。だけど、だから、ツバメは、今、大好きって言わなきゃって、思ったんだ。
シャンテお母さんは、ねむねむの顔を、ちょっとだけ、ふわ、と笑顔に変えて。ゆらら、じわ、と揺れる眼で、ぱち、ぱち、と瞬いて。
「ツバメちゃん、お母さんもツバメちゃんが大好きよ。なでこしてあげたくなっちゃうわ。」
赤ちゃん抱っこしたまま、ちょっとだけ、ギュッとスカートに、ツバメを抱き込んで頭を撫でこしてくれたのだった。
ツバメは、ツバメの夢をみた。
不思議なゆめ。
赤ちゃんになってた。赤ちゃんの時のだった。
赤ちゃんだったら、ツバメをツバメだよ、って分かんなかったと思うのに、夢の中では、あぶあぶだけど、分かってた。
「ツバメ、みんなに、よいよい、いいこね、されてた•••。」
赤ちゃん、だものね。
順番、だものね。
みんな、竜樹とーさに、愛するされてるんだ。可愛いツバメ。可愛いサン。ニッコリ笑ったお顔、あの、お胸がジーンとして、熱くなって、お目々がじわじわとしてきた気持ち、ツバメは、覚えている。
サンにいちゃも、ツバメに、だった。
踏み台に上って、お水を汲んで一度沸かしてあった魔道具ポットから、湯冷ましを、とぽぽ、と出す。
置いたまま、ボタン押して出るから、いつでもお喉が乾いたら、飲んでいいやつだ。コップも洗ったのが、すぐ側に伏せてある。
こくん、こくん。飲んで、プハぁ。
使ったよ、の方にコップを置いて、お口をグイッと腕で拭く。
(イライラトゲトゲの、ちのつながったおとーさんに、あおう)
ツバメは、決めて、とことこ竜樹とーさの所に戻った。
お布団めくって、竜樹とーさのお腹に潜り込んだら、あったかほかほか。
「ひゃっけ!ひえぇ!」
って言いながら、ツバメのお手てをでっかい手ですりすり、あんよをほかほかの腿に、キツくなく挟んで、あっためてくれた。




