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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 神々の宴は乙女神によりゴゴゴ 3


神々の宴は、吟遊詩人ドゥアーが、極度の緊張で失神の大画面に、ドドドドヨドヨ!と揺れた。

命に別状はないのは、流石神達、分かっているので、安心して驚いている。おやおや、ってなもんである。


『まぁ、緊張しちゃったのねぇ。初々しいわあ。やり直すの、益々ドキドキのヒヤヒヤだわねぇ。』

『きっと何とかやるわよ。失敗しても若さだわ。経験よ。』

『真面目な子なのだ。上手く出来ない事、あるあるだ。可愛いものよな、思い詰めないでくれると良いが。』

などと、愛の女神アムール神。

ウネウネと長いお髪に貝殻、しっとりお肌に所々桜色の鱗、海の女神オンデュ神。

復讐の女神ルヴァンシュ神。


女神達が目を釘付けに、かつ若き吟遊詩人ドゥアーを愛でつつ、ちょい心配しながら。

でっかい魔猪の角煮、そして、てりってりの素敵な飴色チャーシュー、はみ出し肉まんと肉肉肉なお皿たちを、はぷ、はむり、と、脂で艶々した唇に迎えている。


男神達はそれを受けて。

『竜樹が気にしてるようだよ。何か考えてるかな。』

『お手並み拝見だ。』

ふっふっふっ、と酒盃を重ねる。



掘り炬燵に刺さって、中でピカピカ金緑の尾鰭をピチッふるりん!とさせ。

『おうおう人の子よ、頑張れ頑張れ!』

と応援の海の男神、顎鬚にもみあげな雄々しさ、オラジュール神。赤ワイン『夜狐の王様』を頭上に掲げて、ほほっほ、と困難への挑戦にいつだって波濤、ダイナミックな運命を好むかの神に、とと、とっ、と密かに近づく足音。


『オラジュールのおじ様。ちょっとちょっと。私のお話、聞いて下さらない?』


ピュルテ神。純潔の乙女神は、白鈴花の香り、瑞々しいチリンチリンとした、花弁の端に生き生きとした緑の模様、スノーフレークを三つ編みハーフアップの髪に絡ませて。


『何だ何だ、ピュルテの。おじさんに何か用か。』

ガハハと笑う海の男神、オラジュール神は、ご機嫌である。


『舟神ボワヤージュにも言ったんだけど。あの大陸に落ちた、星蘭の所にぃ〜、航海の智を発展させて欲しいの。天のユニヴェール神にも言ったわ。ねえ、可哀想じゃない?星蘭、可憐の乙女、そりゃあおじさんと比べたら世慣れてないに決まってます!同じ条件、うぅん、もっと制限されているだなんて、酷すぎ!』


純潔、だけれどそれは、有毒で。

クッ、と聖なる笑みは、純潔だからこそ断ずる、おじさんの裏表合わせ飲む案を。

『竜樹は成人向けの、いやらしいカセットなんて発展させようとしたりするのだから、この私、乙女たるピュルテの敵とも言えます!•••でも我慢しているのよ!私だって未来の子供達が酷い目に遭う映像や写真を、無法図にしたくないわ!でも、でもね!』


元王女、シエルに、見本だからっていやらしい映像を見せて悩ませるだなんて、信じらんない!のだ。


『おじさんなんて、未来の布石よ!将来ある乙女に、最大の配慮をすべきなんだわ!あの辱めに、代償は大きくってよ!純なる乙女、星蘭を助けさせて欲しいの。ねぇ、良いでしょう?』


隣の、海で隔たって、まだ繋がってはいない、欲望まみれの成熟していない大陸。シェヌ大陸と。

パシフィストのあるソルセルリー大陸を、無理矢理、航海で繋ぎたいと。


元女子高生、星蘭を助けるはいいが、ギフト欲しい欲しいの厄介ごと含みまで持ち込む、竜樹が狙われるのではないか、それをまるっきり無視して乙女神、都合よく。


『星蘭が助かれば、私の溜飲も下がりますことよ。どう?海も、空の知識も、航海の発展も、隣の大陸に行くとなれば深まりますでしょう。神託、いっとく?』

ニッコリ。


えぇ〜!?

半笑いの海の男神、オラジュール神。背中に柔らかい手を置かれて、ムフムフんと、考える。

そこに、帆をイメージさせる布をハタハタと首元はためかせた、熟年な舟神ボワヤージュ神。ホワホワとゆったりな空色のグラデーション、衣が藍の髪が風に、天のユニヴェール神。

頼まれちゃったしなぁ、と何だか嬉しそうなオヤジ神達が、それじゃあ、と諾を出すそのタイミングで。


『純潔の乙女、ピュルテ神!何を企んでるんだって!?』


ムン!と掘り炬燵から出てランセ神。

ピェ!と肩を揺らすピュルテ神だが、途端にムッと唇を尖らせる。ランセ神は、とんとん、と組んだ腕、右の人差し指で叩いて、咎め立て。


『情報の神ランセに黙って、秘密が通るなんて思ってやしまいね?ーーー自分の良いように、竜樹をシェヌ大陸の揉め事に巻き込むなんて、ダメに決まっているだろ!星蘭は星蘭で、ちゃんと自分で失敗から学ぶことがあるんだから!』


ムムゥぅ!と胸を突き出してランセに顔突きつけて、ピュルテ神はデモデモダッテ!

『ランセ神、竜樹に優遇しすぎ!もっと星蘭にも優しくしてよ!スマホ繋げてあげれば良いじゃない!』


いーや。ふるふる。

目を閉じて、断固と頷かない。

他の神達は、あれぇ〜、って感じに2柱(とその周りでシュンとしているオヤジ神達)を、ご馳走食べながら見守っている。宴会にはちょっとしたゴタゴタもありますやね。


美倉神が、ランセ神の抜けた掘り炬燵の布団の丸く抜け穴があるのの横で。

(こっちの乙女神も、扱いが難しい感じなんだねぇ)

とばかりに、清酒・月まどかを手酌で継ぎ足して、舐めている。天ぷら、フリッターの抹茶塩をアテに。呑助のみすけだ。


『星蘭のスマホを生かしておいたら、シェヌ大陸で沢山の人らが困る事になるだろうよ!本来繋がってはいないスマホなんだ。星蘭の場合、学びで許される過失とはならない!•••ピュルテ神!神なれば、1人に思い入れて、他の者の命を、それも沢山の人生を、世界の流れを、大きく軽んじる事があっては、ならないだろう!ーーーこのランセ神、1人の少女への憐憫で、切るべきを見誤る神だと思うなら、そりゃあ心外だね!』


『ケチ!ランセ神だって、竜樹には優遇しているじゃない!何よあんなおじさん!』


ゴゴゴゴゴ。


神と神が争えば、悲惨。

宴のご馳走を、やんや観戦の神々が皿ごと避けて、荒れるかなーっと。ランセ神とピュルテ神の周りから避難し始める。


『もう!うるさい!今、地上では、歌の競演会会場みんなで、歌作ってんだからね!私の邪魔しないで!』

音楽を司るミュジーク神、大画面にかぶりつきで揉め事に興味なし。



『まあまあ。ランセ神、ピュルテ神、ちょっと喧嘩はおやめなさい。』


ピュルテ神が手に手にスノーフレークを散らして光の玉、ビビビとランセ神にぶつけようとしている。ランセ神は睨み腕組み、動かない。

そこに、母性を司る神、メール神が、やんわり仲裁に入る。

うん、ふくよかな寛大な母が、こんな時には必要である。


『ピュルテ神。あなたは星蘭に思い入れて、助けたいだけで。大陸間で諍いを起こしたい訳では、ないのでしょう?』

『勿論です。私とて神ですもの。』


じゃあ勝手に航海させようと神託、唆すんじゃないよ、ケッ!とランセ神は半目である。


『ランセ神。私はね、竜樹や、ソルセルリー大陸の国々を、なかなか見込んでいますのよ。もし、星蘭のシェヌ大陸の暴れん坊が、神託に従って航海の智を得て、星蘭と一緒に、竜樹の元にやってきたとして。きっと、悪い事に、しなさそうに思うの。ーーー力がある者には、試練がままあるものです。それによって、また得るものも、ありましょうね。•••まあ、万が一には、ランセ神や私、メール神が、見守ってもいますから、神風吹かす事も出来ましょうしねえ。』


あとねえ。

『ギフトをめぐって戦を起こさせない、誓約の魔法をかけたエルフの大魔術師、カルムはね。本当に失われた親友、ギフトのフィノメノンの事を、後悔していたのね。別の大陸からの横やり、そんな事すら考えに入れていたようでも、あるわよ。』


ピクん、とランセは片眉を上げて。

じっ、と気配を探る。


『カルムの魔法ね。ん、んー。確かに、待機している魔法の気配が、しますね。揉め事が起こったとして、神が介入すれば、それもまた人の小さな運命を、大きく左右致しますよ?』

『ちょっとした助言で、きっと丸く収まりますよ。竜樹、何でもマルっとさせちゃうんだものね。うふふっ!心配せずに、ちょいちょいとした位で、見守りましょ?•••それに、星蘭達の周りが本当に、ソルセルリー大陸に来れるほど航海できる船を造り、やって来るには、時間がたっぷりあるわ。神託するなら、竜樹にもよ。準備できるわ。そして、星蘭にとって、シェヌ大陸にとって、それらが、たとえ得るものがなかったとしても、学びにならなければならないの。』


良いわね?ピュルテ神。


チロん、と流し目で見たメール神は、流石の母神。母とは厳しくも優しく温かいもの、大きく包むもの。お力はピュルテ神、敵わないのだ。


『ようございますよ。星蘭が助かるなら。』

むぷ、とほっぺたを膨らませてはいるが、納得した。


『竜樹と会わせる、その後は人らに任せるのだからね。』

ランセ神のツッコミに。

『分かってます!分かりました!それで良いわよ!星蘭、きっと竜樹のスマホで家族と話せるから、それで。』


星蘭が家族の電話番号を覚えていたとしても、竜樹のスマホからだと、迷惑電話かと思われて繋がらない可能性も。なきにしもあらずだが、なぁ。

知らない番号からかかってきたら、出ないで、検索して、怪しくなければ折り返し、とかやるじゃんね。今の子達って。

と美倉神は、ふっくらほこほこのお豆の炒り砂糖まぶしを、片手にちまっと山盛って、もう片方の指で摘んで。ポイ。かりりと噛んだが、思っただけでスルーした。

なるようになるであろう。


そして、竜樹には、苦労が舞い込む運命でもあるのだろうなぁ。

お茶をすすす、と啜るのである。



『あ〜美倉神、中断してすみません。』

ランセ神が掘り炬燵に戻って、神同士の争いは避けられ、しょも、となって謝る。

『いえいえ。なかなかご苦労されていらっしゃる。情報を担うと、なんせいつも一番先にいい事も悪い事も入ってくるから、コントロールする役になりがちですよね。話が通じる神なら良いんだけど、まぁ、神にも色々いますからねぇ。』

美倉神は、タハーと笑う。眉が下がっている。


『そちらでも?』

ランセ神、上目遣い。


『ええ、こちらでも。』

美倉神、コックリ、ふー。お茶を飲み、ため息。

身につまされるなぁ。


『ねー。』

『大変ですよねー。』


ぽりぽり、と2柱、背を丸めてお豆を食べつつ。

『竜樹のやってきた事のお話、続きしましょうか。』


『ええ、ええ。もう大分、竜樹とその周りの人々なら、ちゃんとフィルターかまして情報やり取りできそうだから、ほぼOKなんですけどね。一応聞いておきましょう。そして、竜樹には、スマホ以外に一台、ネットに繋がった、発信もできる端末をあげましょうよ。本気で小さく始めるにあたって。』


『良いですね。』


そこからどう発展するかは、竜樹達の腕の見せ所であろう。


大画面では、午前中緊張で失神した、吟遊詩人ドゥアーが、いよいよ本番、歌うところだ。


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