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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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閑話 神々の宴はわあわあ盛り上がって 2


感謝祭の天界の宴。

神達は盛り上がり、そこかしこ、地上の映る大画面の様子を見ながら、あら、あんな事言っているよ、ほほほ、うふふ、なんて微笑んでいる。


竜樹がキャリコの神乞いを中断し、人ならではの裁判の方法をもって、弁護人として立候補した。幼き子を、罪被せ見逃す事もせず、また同情で庇うだけでなく、罪をそのままにする事もせず。よきよき。

『赤羅川弁護士の事件ファイル』なるテレビドラマ、物語の存在を示す。楽しみながら、人の中に時折起こる裁判について、親しみをもって知識を得る仕組みなどについて。裁きの天秤を持つ、エキリーブル神が頬にかかり垂れる長い白髪を手に取って、口元でくしゃりとさせながら、興味津々に顔を前に出し、竜樹とキャリコを覗き込むように寛ぐのが映る。


神々達は、自分らの力に関係ある管理範囲の事柄を、こんなふうに、もっと人主導で、知って深めていくテレビやラジオ、新聞書籍に。それを作っていく立場の竜樹に、並々ならぬ興味をもって大画面を見る。


ああ、指示できないのがもどかしい。

タイミングが、丁度やってきた時に、その学びは、神の力をお助けに求めて、縋るだけ、知識を引っ張るだけでないやり方で、面白くやってくる。

私の番、早く来ないかな。可愛い人の子の面倒をみて、私の司る大事な事を、もっと人の世にかませてやりたい。

それまでに、どんな事やってるか、竜樹のとこ、よく見とこ。なのだ。



ランセ神は、竜樹のいた世界の美倉神とまずは交流、お話始め、打ち解けて。白ワインをちみちみと味わっている。

竜樹が来た頃、来る前の事に思いを至らせる。

若い青年のお姿の神ではあるけれども、その目の周りには、ツッと一筋、深く思慮を思わせる苦労の、笑い皺でもあり悩み皺でもある跡がうっすら、あるのであった。

掘り炬燵に入れた足を、ふら、と揺らす。いつも引き摺る片足も、温かく、酔いもあってふわふわ気持ちが良い。炬燵布団をふかふか、と胸元に寄せる。

ああ、まったり〜。


美倉神は急かさず、赤ワインを、しみじみと味わって、ランセ神と顔見合わせて、薄ら微笑んでいる。


『竜樹がこちらの世界に落ちてきて、まずは面白い魂だと思ってねえ。言うなれば、生まれながらに、おじさんの魂。渋い光でねぇ。ーーー落ち着いて、人として熟して、話を聞いて話せて、できる事できない事が分かっていて、その上で挑戦できる。そんな可能性を秘めた魂。そしてね、雫としてギフトに生かそう、この地に迎えようと思うくらいに、善なる所もあったし、それだけでなくて、なんか、なんか、地味に地道にいい手触り、感触の魂でねえ。それでも、きっと最初はすぐ、あちらの世界の、スマホをいじって繋がるかどうか、ってすると思ったのですよね。あちらの世界の人によくあるやつね。で、見てたんですが。』


ランセ神が、サラダをちょいと摘む。ムグムグ、美味しいですよ、なんてお皿を美倉神に寄せると、やあやあ、なんて取って、ムグリ。ほんとだ、と胡椒の効いた、蒸し鶏とナッツと青菜のカシオン風フレッシュサラダをパクッ。


『ん、で、で?違ったんです?』


うん、とランセ神。

『落ちてきたのが、街中でねえ。すぐに人が集まって、どうしたの?って心配されて。竜樹は、周りの、多分今までの世界とちょっと違う身なりの人や、建物を見て、驚いたは驚いていたんだけど。一生懸命に、集まった皆と、丁寧に満遍なく話をしてたんだよね。好感持ったよね。なるべく情報を集めようとするのは、そりゃあ落ちて初めての事だから、そうなるだろうけど、誰だってそんなに、説明のお喋りが上手い訳でもないだろう?怒りも焦りもせず、ウンウン、うん?ウンウン、ってよく聞いていたよね。』


『ああ、私もこちらに来る前の竜樹の時を、遡ってよく見てから来ましたよ。あの子は、ご近所のお年寄りやおじさんおばさんにも可愛がられて育ってるから、せっかちに遮らずに、聞いちゃうんです。遠回しな、無駄の多い、罪のないお喋りをね。』


でしょうね、でしょうね。

ウンウン、うん、と頷き合いの2柱。


『で、周りの人の勧めに従って、王宮へ連れて来られて、夕食もらって食べて疲れてバタンキュー。次の日、あの国の王やギフトたる竜樹を補助する者達と謁見、となって初めてスマホを触ったんだよ。元の世界の家族達と連絡を取って、説明するためにね。ーーー他の大陸に、竜樹より何年か前に落ちた、若い娘の星蘭がいただろう?そちらが、スマホを持ってたんで、家族と連絡もしたかろうと繋げてあげて、情報を垂れ流しにされて失敗したんで、本当は最初から閉じておこうかな、とも思ってたんだ。でもね。』


ニコリ、と美倉神が笑う。自分らの世界出身の子。星蘭も竜樹もそうだ。どちらも可愛い。失敗でさえ、なんのなんの。手は出せないが。


『人の話を良く聞く、なーんか、どっか人好きのする竜樹だから、上手くやれるかな?竜樹にも、元の家族と繋がってられるチャンスを、情報を引っ張ってこれるチャンスを、あげようと思って。どう運用していこうかなー、って、神のいいねをもらって、それを使って、って有限にしてみたりね。』


『ああ、何でもありにしちゃうより、却って制限がある方が、人って工夫したりしますよねぇ。健気なんだよな。』


ですよねえ。

御使いペタルが、2柱の神に炊き込みご飯をよそって持ってきた。きのこと栗、猪肉の旨味たっぷりである。ランセ神は木の匙で、美倉神は塗りのお箸で、一口。


ほこほこ。

『あふ、ほれでね、小麦の全粒粉を、皮を除いて真っ白い粉に、ってやったりしても、皮も栄養あるから、とか気にしてねえ。大丈夫そうかなー、って。段々とスマホを使い勝手良くしたりして。星蘭の時と同じように、動画や映画、ネットやテレビ番組の翻訳もさせてみたけど、全然垂れ流さなかったね。それには、エルフの大魔法使いカルムの誓約魔法、ギフトを取り合って戦争を起こせば、国ごと破滅する仕組みに乗っかって出来た、平和利用の周知された、良き環境が出来ていた事も大きいね。成熟してるんだよね、周りも。』


『あー、ウチは公には魔法はないからねえ。こちらも、もっと成熟していける事を願って、見守っていきたいところだなあ。うんうん、で?』


ニリヤ王子と出会った事。

平民の血をひく王子として、虐げられているニリヤを、認めさせるために、王子たちのテレビ番組をこちらの世界で作ったこと。


『元の美倉神のおわす世界を、参考にしながらも、こちらで作ろうとするんだよね。こっちの者が考えて、どうやったら上手くいくか、結果だけを抜かないで、こちらに合わせて考える。途中をやるんだよね。それで発展する事、沢山あるな、って思った。そこらへんで、ああ、竜樹は大丈夫だな、って思ってね。』




ランセ

『はじめて お使いする 番組

すごく面白かった。

君たちの 様子をみていて

情報の ひろがり 種を感じて

私も ワクワクしている。

コチラで テレビなるものが

どうなっていくのか

楽しみだね。』


とランセ神が言えば、竜樹はこう応えたのだ。


竜樹

『こちらの世界らしく、やっていきたいです。

なるべく、俺のいた世界の情報を、ただ横流すだけじゃなくて。』


ウンウン、良きかなである。

それからは。

著作権を幸運払い、できるようにしてみたり。

亡くなった、ニリヤ王子の母、リュビ妃が顕現できるように、いいねを貸してみたり。

結局犯人を追い詰め、遺された者達への未来を明るく示唆し、そして復讐の女神ルヴァンシュが、よくぞやったといいねしてみたりもした。


郵便事業に、新聞事業を始め。

『特に、新聞を売る、孤児達を養って、段々とこちらの世界に、竜樹が根を張り始めたな、ってね。』


そちらに、金平糖というお菓子があるだろう。竜樹がこっちにも、って作ったんだけども。


京都の有名な金平糖屋さん。味が沢山あって、しみじみと美味しくってね、とプレゼンする竜樹を、お菓子の神、小さな少女の姿の、ボンボンテール神が、うきゃあっ♪と歓声あげて見てもいたのだ。かの神は、いいねをあげたら、もうお菓子を作らなくなってしまうかと思って、いいねを出し渋っている。お菓子に夢中で半分忘れているとも言う。

ボンボンテール神は、今は掘り炬燵の端っこに座って、にまにまバタースコッチをしゃぶっている。

目の前にはナッツの蜂蜜漬けが、キラキラねっとり輝いてある。


『金平糖って、芯があるだろう?』


小さな砂糖の芯に、砂糖蜜を掛けて、段々と大きくしていく。

芯の竜樹に、ニリヤ王子、ジェム達街の浮浪児達がくっついて。

オランネージュ王子にネクター王子、カメラマンで侍従のミランに、何でも実現バーニー君。お助け侍従タカラ、マルサ王弟、段々と、段々と、四方八方にとんがり星が、大きく美味しくて甘い金平糖が、出来てくる。


求婚♡大作戦して、バラン王兄や婚約者のパージュさん、恋人達を円満に結びつけ、愛の女神アムールを微笑ませたり。

ランセ神が、ついお助けしたくなって、親切なめんどり、神鳥オーブを子供達と竜樹に託したり。(子供って生き物貰ってくるよなあ、って竜樹に思われたり)


狼獣人のアルディ王子のために、喘息に対処する、癒しの魔法や、魔道具を。

生まれた時の事故で神経が切れ、下半身が不自由な少年、エフォールのために身体スキャナを開発して、体内を見ながら神経を繋げ、リハビリすれば歩けると、希望を生み出したり。

それらを健康番組、『サンテ!みんなの健康』で広めて共有させ。

医療の神、メディコー神がウキウキで今も、大画面を見つつ(盲目の神だが、お力で分かるんである)清酒・月まどかを啜っている。


ランセ神の信徒にもなってくれた。

教会に、ご贔屓の神を祀らせ、教会孤児院をつくり、子供ら全ての父となり。お母さんシェルターで、片親の家庭も補助し。


『母性の神メール神が、代表して竜樹と話をしたんだけど、今ノリノリで吟遊詩人ノートの歌にノッてるミュジーク神が、傍からツッコミ入れたりしてねえ。その頃から、神々がみんな、竜樹、やるじゃん、話したいじゃん!ってわさわさしてきて。』




メール

『よくぞ子供達を守ると

決めてくれました。

私は、メール。

母性を司る神。

かねがね、あなたのする

新聞売りの事業なども

感心していたのです。

全ての母は、あなたの味方。

父として、どうか子供達を

守り、育ててあげて下さい。

私も、何かと力添えしましょう。』


ミュジーク

『聖歌隊、楽しみにしているから!

あの王兄、バランに一言、

かけておくから!

讃美歌、楽しみだから!』


ランセ

『あー ミュジーク

言い出したらみんな

言いたい事があるんだから。

私たちは 見守っているから

好きなように やっていくんだよ。

ではね。』



『•••私、段々と、神々をどうどうする役目になってきたりしてねえ。良いんだけど、まあ良いんだけどぉ。』


美倉神はデキャンタの、冷えた清酒・月まどかを、まあまあ、さささ、とランセ神の杯に注ぐ。おお、ととと。ありがとう、美倉神も?

いただきます、とにんまり。


2柱、表面張力でドームのようになった透き通る命の水に、口でお迎えしながら、ツイっとほろろ。しん、と沁みる。

コリコリ、お漬物食べたりして。


『ーーー神々はね、やっぱり、人や獣や虫や、植物、生き物達全て、地や天や、世界そのものに見守り慈愛の目を注ぐ訳だけど、人みたいに存在に反応してもらえて、祈ってもらえて、ほんと、それって、やり甲斐あるからね!』

ちゅっ、と杯からまた一口。

『竜樹みたいに、私たちへの信仰を、素朴に、私欲なく、いや、あったとしても子供達のためかなんかでね。広めてくれて、助けの手を上手にとって、良い関係が築けると、我々だって嬉しい訳でねえ。』

ちょっとランセ神は酔ってきているのか。ふわり饒舌である。


美倉神が、変わらずニッコリと、そしてふくふくに。

『分かります分かります。信仰を集めるためだけにやってるんではないし、時に怖がられても雷を落としたり厳しくしなきゃで、だけど、ねえ。私達だって、張り合いがあったら、嬉しいに決まってますよ。基本は押さえるにしたって、何をどうやったって公平に、なんてやれっこないですって。』


『『『ですよね〜!!!』』』


宴は大盛り上がり、歌の競演会は続々と歌い手達がのびのびと。

舞踊の女神、ディーベルティナ神が、もう我慢出来なくて、掘り炬燵の後ろのスペースで、すらり、ふわっと踊り始めている。神達、やんややんや。

ディーベルティナ神は、アルディ王子がワイルドウルフで、おぼんに踊った時も、上手に踊れて子供達を纏められるきっかけとなった竜樹に。いいねをあげたくてあげたくて、接触したくてたまらなかったのだが。話が唐突に過ぎると思い、断念している。

また踊ってね!

いっぱい踊ってね!

感謝祭の最終日、夕方から、皆で輪になって収穫祭を彩るダンスを夜更けまで、の催しをワクワクと楽しみにしているのだった。


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