閑話 神々の宴はざっくばらんに 1
悠路様のリクエスト。
神様方のお話です。
早く出番来ないかなーと待ってる本編未登場の神様や、竜樹が来てからのあれこれをランセ神メインで振り返ります。
ここは神界。神の座すところ。
わあわあわぁ、と賑やかに、輝ける神気を振り撒いて、神達が集まっている。
お部屋じゃないけど、寒暖の影響もないのに、どーん!と長い長い掘り炬燵。神にお仕えする天の御使い達が、そこに続々と運ぶ、おご馳走。
御神酒だって、たんまりこ。
和やかに、わいわいと、祝宴の始まり。炬燵に足を突っ込み、取り皿を回し、お支度に大わらわ。
そしてその前にある大画面。そこには、感謝祭の第一日目、パシフィストの歌の競演会の始まり、ワイルドウルフの子供達のリポートテレビ映像が映っている。
今は円陣組んで「尻尾を立てろ!」「オオォー!!」お尻尾ビビビとしている所だ。
『掘り炬燵って、良いねえ。ぬくぬくだし、足も楽だし。』
父性を司る神、ペール神様が、その巨大なお力もあって、山のような巨体ながら何とか掘り炬燵に入れる身に仮のお姿を押し込めて、威風堂々、なのに、うふ、と炬燵布団を胸に抱きしめ、ニコニコしている。
今日は感謝祭、ここぞとばかりに捧げられた、おご馳走で、神様達の宴会である。
『歌の競演会、良いですわねぇ。人の子が、折に触れて歌舞音曲を捧げてくれるのも、何だか可愛いくて、いじらしくて、嬉しいじゃありませんか。』
母性を司る神、メール神が、優しい顔、ふっくらとした美しい指で酒盃を取り、御神酒を。ペール神の隣で、差しつ差されつ、頬はポッポと赤らみ、良い雰囲気の2柱である。
『は〜い!神の皆様!それでは、もう始まってるようだけど、今年の人の世の、神への感謝祭の宴を始めたいと思います。』
情報の神、ランセ神が、掘り炬燵から出て立って、先ずは司会を始める。ガヤガヤが、なくなりはしないけれど小さくなる。ランセ神に注目したり、ソワソワお話されたり。
特に毎年決まりなんかはなくて、祈りの力の籠った、神にとってはとても嬉しく美し捧げ物を食べて飲んで、愚痴や楽しいお喋り、時には根回し神のお仕事話なんかをしながら、人の子の様子を眺め、大騒ぎするばかりなのだけれど、今年は少し趣きが違う。
歌の競演会。
精一杯人の子達、吟遊詩人貴族の歌い手が競い合い歌を捧げる、イベント見ながら掘り炬燵で宴会。
音楽神ミュジーク神様が、ルフルン♪るんるん♪と指先で調子を取りながら期待満々、ニッコニコで画面を見つめ、あまりにも麗しい鼻歌を歌っている。
舞踊の女神、ディーベルティナ神が、その隣で。期待に堪えきれず掘り炬燵にツッ刺さり身体を左右に揺らして、御手をくねらせリズムに乗っている。
竜樹が知ったら、それって親戚中で集まって、年末の、紅白な歌合戦見てるみたいな•••?と言っただろうか。神々はどなたも、長い時をお見守りに過ごしていて、そのお力を直接バンバンと使うことは出来ない。普段うずうずもどかしく、時に退屈で、無聊を慰める宴は大好き。
年に一度、感謝祭で気持ちとしても報われ、祈りで力も増幅し、しかも楽しい歌、盛り上がるに決まっているのである。
ランセ神は続ける。
『今年は、あちらの世界からの訪れ人、ギフトの竜樹がいて、なかなか面白い年でした。あちらの世界と繋がって、コントロールしながら情報をやり取りできまいか?との提案もあって、益々面白い事になりそうです。世界の秩序を壊さないよう、深謀遠慮、先ずはお伺いを立ててくる所なんかも、まぁ、良きかな?なんて思って進めている所であります。』
掘り炬燵で早速一杯やっている他の神々も、うんうんとニコニコ。
おご馳走を運び、自分たちの分も、別の掘り炬燵があって、準備が終わりしばらくしたら宴を楽しめるはずの天の御使い達が、ひそそそ。
『ああね、ランセ神様がお許しになった、世界が繋がるスマホってのがあるんだよね。』
くるんと流れるマッシュなウェーブヘア、クリーム色の小さな羽根が背にパタパタしている御使いペタルが、出来立ての鳥丸焼き栗と干し葡萄入り味ご飯詰めたやつ、を美味しそ!とサイドの卓で切り分けつつ。
『そういえば、別の大陸に落ちた、若い女の子の訪れ人いたじゃん、その子のスマホは、あちらの世界からの繋がり、閉じちゃったよね。』
御使いペタルより、一回り小さな同僚御使い、羽根の先と髪色が珊瑚色の、チュンとしたポレンが、その手を翳して冷たくした方が良いお酒を冷たく、温めた方が良いお酒を温めて。
その他、盛り盛りに果物を剥いたり飾り切りしたり、パンを焼いて温めたり、食器を集めて配ったり。薄衣でそれぞれ小さな羽根が、まだらに茶色かったり翠に青に美しい彼らは、神のお手伝いでギフトたる訪れ人の人となりを見聞きし噂話、ピーチクパーチク。
『うんうん。悪い子じゃないんですけどね。周り中が情報欲しい欲しいの涎だらりな囲い込み、ハーレム状態でアリンコ集りに情報が、良い事も悪い事も制御不能な暴走になりかけて。すぐさまランセ神様が、スマホでのあちらの世界との繋がりを閉じられたって。』
『あの大陸は、まだもう少しギフト達を生かして調和するには、時がかかりそうだねぇ。』
『失敗と後悔が足りんよー。』
『手痛い教訓、神様達も私たちも、誘導する訳にいかないですしねー。』
『自主性、だいじ。』
『あとやっぱり、おじさんの魂は良きですよ。世慣れて塩梅を分かってるとこ、あって。竜樹おじさんは、地味なのも、なんか浮ついてないっていうか、馴染みがよくってさ。』
『若くてもしっかりしてる子はいるよぉ。だけどなー心細い所にイケメンに囲まれて、女子高生のセイランちゃんは、ガードがペラペラで、ポワポワだったねー。情報、フィルターもかけずに垂れ流しだったもの。』
『今も3人のイケメンの間で揺れ動いてるけど、スマホが閉じて取れる情報が格段に違ってきちゃってるね。そもそも、そんなにドッと流すモンでもないのにさ、イケメン達は見切り始めてる。セイランちゃんも、スマホに依存するばっかりじゃなくて、もう一つ何か、自分の人間力で事を成そうと努力すれば良かったんだけど•••。』
『純粋で素朴な可愛い女の子なだけじゃあ、世界に一石を投じるには荷が重たかったかしらんね。』
『いーやいーや。これからこれから。女の子が大人になってく時に、偽りのモテ期を卒業して、どうするか。周りも彼女の、素朴な良さに気付く者がきっと。これからが見所だね。』
『今はギフト竜樹おじさんの話だろ。』
『あそこは上手くやってるよなぁ〜!子供達を育てたりさ、周りに考えさせたりさ、変に独占させないし、応援したくなるじゃん。』
『神々達も、期待してるみたいよ。』
ランセ神は、天の御使い達のひそひそなど、どこ吹く風。澄ました顔をして続ける。
『あちらの世界から、竜樹の話を聞きに、お客様が来ています。神無月最後の日に、出張でこちらにいらした、美倉御報文遣の神。あちらでは、お手紙の神という事で、情報を担うお力をお持ちでらっしゃいます。』
美倉御報文遣神は、キリッと結った長いしっとりとした黒髪に、神衣の袂をふわりと靡かせて、若く、そして老練にも見える深い艶々の眼差しで、手を振ってニコニコ。こちらの世界の神々にご挨拶。
『初めまして、美倉御報文遣神と申します。今日はご宴会の仲間に入れて下さいね。面白いお話をいただきまして、詳しく伺いにきました。』
『おうおう、皆でお話しような。』
ペール神が、ご機嫌で掘り炬燵から応えて手を挙げる。ヤーヤーと女神男神、そこかしこで応。
美倉神はうんうん、頷き手を挙げてあちこちに向けて受け止めて。胸に両手を当て、しん、と真剣な顔をする。
『こちらの世界から落ちて、私どもの元に来た者たちもいます。辛く寂しい日々を送ったりしながらも、異世界文化を、意識するしないに関わらず、周りに波紋、投げてくれています。主に物語で発揮されるそれは、私どもの世界を、人を、癒し、お話に心を乗せて追体験させ、明日へのささやかな希望を、勇気を、時にはほのぼのと温かい気持ちや、熱い闘志を、生み出しています。ーーーーこちらとあちら、ネットで細く糸、繋がれば、その者達が故郷の世界を、懐かしく覗く事もできましょうね。またそれも心騒ぐ事でもありましょうが•••繋がる事でお互いに納得して、発展できる事も、きっと。良いお話を進められるよう、皆様、よろしくお願い致します。』
よろしく、宜しく頼みます!とあちこちで声がして、ニッコリ。ランセ神と目配せし合った美倉神は、嬉しそうに。掘り炬燵の空きのある所に座った。隣の芸術の神、アール神が、さささ、と色もこっくりと美しい赤ワインを差し出してくる。
仲良く杯に口を付けて。
『皆さん、盛り上がるのは良いけど、うっかり力をつい漏らして、色々壊したりしないようにね!特にペール神!では楽しくいきましょう〜!』
ランセ神が杯を掲げて、ぐいっと飲む。
『『『おおぉ〜!』』』
神々がてんでに、バラバラに飲んでる御神酒を掲げて、くくっと喉を潤す。
掘り炬燵の隣同士に、美倉神とランセ神は座って、もぐもぐと秋の実り、お肉などに舌鼓。
大画面ではキャリコ少年の神乞い。
「ーー異議あり!」
竜樹の神乞い中断の叫び。
ニッコリ笑って、裁きの天秤を持つ、エキリーブル神が面白そうな顔をする。長い白髪が笑いに伴って揺れる。左は金、右は銀の目、細く弓に。
『呼ばれた呼ばれた!これはもう、私を呼んだと言っても、過言ではないよな?裁きの神乞いを中断したのだものな?話を聞きに行ってみよう!どんな面白い•••う、ぅん!神聖なる神乞いを中断した理由、しっかと聞いてこよう!』
ひゅい、とお姿を煌めかせて、大画面へ飛び込むと竜樹のスマホをぶるると揺らし。
『良いなぁエキリーブル神。私も呼ばれたいなぁ!』
羨ましがるは森の神、アーブル神。
髪に葉っぱがわさわさと生えて、そこから鹿の角が立派に。葉っぱは、さわさわ揺らめいている。
人ならぬ瞳は、丸っと潤んだ、黒目がちな鹿、睫毛が長い。
『あの者、森の葉っぱを沢山調べて興味持って使うし、それでいて無闇やたらに取りすぎないように、とか、枯葉を土に敷いたり、木を間引いて森を明るくしたり、有用な葉っぱの木だけじゃなくて、それを生かしてちゃんと生命を回して整備の事まで考えて、色々やってくれようとしているんだよねぇ。竜樹と会いたいなー。タイミングが合えばなあ!』
『それを言うなら、私だって!』
衣が(清潔だが)煮染めたようなお色の、お髭も長いヒョロリとした熟したお姿、醸し発酵の神、ファーメ。ホコホコと香ばしいパン生地の発酵した美味しい香りや、酒の香りをちょっと酸っぱくさせながら、ぱくんとおにぎりを両手で持って食べる。
『竜樹が来てから、色々発酵するものが増えたのだの。最初からヨーグルトなども、気にしてくれてのう。お酒も取り上げてくれとるし•••。酒まんじゅうも作りたいって言ってくれとってなあ。是非に、でっかいハップリとしたおまんじゅう、いやいや小ぶりで幾つでも食べられるやつか?発酵談義をしたいのぅ。』
夜闇の神、昼日の神。性愛の神に森の恋人水の神。発酵の神と双子の腐敗の神。
雷の神に、書物の神など、まだまだ竜樹を見守りチョコと関係ありげで、かつ、いいねを送り神々の庭で話をするには足りない神達が。うおおぅおう、と我も我も、竜樹に話しかけたく気にして欲しいぞ、と。
『分かってると思いますけど、無理矢理神託したり、話しかけたりしないんですよ?』
『『『分かってるヨォ〜!』』』
ランセ神様はどうどう、と宥める御係か。
美倉神が、もぐ、とチーズの肉巻きを食べてワインをグビリ。
『ランセ神、それでは、こちらの世界に来てから、あの竜樹という者は、どんなふうにやっていったので?』
卵の燻製をぱくんと食べて、ランセ神はムグムグ、うんうん。白のワインで舌を湿らせて。
『それでは、お話致しましょうね。』




