表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/684

ニシシシ

お泊まり会は、王子達に気に入られたようで、毎日それぞれのスケジュールを終えると、ニリヤの部屋に集まるようになった。

竜樹が遊ぶための道具を手作りで用意すると、王子達はそれを楽しみに昼間の勉強や練習を頑張った。


コマや、紙飛行機に、あやとり、人生をゲームにした双六、三角陣取り、サイコロでチンチロリン、は、教育上どうかなーとも思ったが、庭で拾った綺麗な石の偽物のお金(点数数え用)で、健全に遊ばせた。どうかなーって事ほどハマるのが子供ってやつである。

まあ、大人もハマってるのだが。


チンチロリ〜ン♪

「待った待った、ミラン強すぎる!ピンのゾロ目〜!?」

「ふっふっふ!石は6個いただきますよう。私、1位かも!!」

「俺は、ションベン、だ•••。」


「ぼく、しょうにんになった?ぎょう、しょう、に、いく。2こすすむ。」

「私、職人だ。けがで一回休み。え〜。」

「私、冒険者!勇者の剣を、手に入れた!6こ進む!」


夕飯が済み、お風呂にも入って、ゆったりとした時間に、みんなで遊ぶ。

優しい味のお茶を飲みながら、ワイワイ喋って、眠たくなったら寝る。

ニリヤは、人生双六のマスの文字が読みたくて、読みのお勉強がだいぶ進んだ。


ニリヤがうとうとしだして、さて子供たち、寝るか〜、というところで、ドアがノックされ、誰かが訪れた。

護衛のルディがさっとドアの向こうに行き、何事か来訪者と話す。取り次いで言うには、ネクターの乳母だと。

何だろ?と入ってもらった。


「ギフトの御方様。ネクター様をお返し願いたく参じました。乳母のオッターと申します。」

さ、ネクター様、お部屋に帰りますよ。


有無を言わさず連れ帰る姿勢の乳母オッターは、ふくよかな女性だった。ふくよかな女性は、醸し出す包容力を感じるものだが、オッターは顔が怒っていた。多分、地顔が怒り顔なのだ。赤髪がぱっと激しく、きつくまとめ上げて後毛も無かった。

第一印象は、割と厳しめである。


ネクターは、竜樹のシャツの裾を握って、後ろに隠れた。

「やだ!帰らない!兄様とニリヤと寝るんだ!」


「何をおっしゃいますか。第一王子様と寝るなど恐れ多い。立派なエトワールの王子が、平民王子と寝るのも穢らわしい。兄弟といえど、線引きは必要です!さあ、帰りますよ!」


あーあー。

よくこの乳母で、ネクター素直に育ったよ。ミラン情報局によれば、小さい時からついている家庭教師が、人格者で面倒見いい先生なのだそうで、ネクターも影響を受けているらしい。


「オッターさん。ネクター王子は、お部屋が真っ暗で、1人なのが嫌なのですって。」

小さい頃、誰でも夜を怖く思う事はあるでしょう?それに、ネクター王子が、1人で寝たくないと思うのには、理由があるのじゃないかな。

色々考えはあるでしょうが、大人になれば自然と1人で寝るようになるのだから、しばらく俺に預けてくれませんか?


竜樹は、事を荒立てないように、お願いしてみた。怒らせて言う事を聞いてくれる人はいない。それに、乳母だということは、少なくともネクターを育てた1人ではある訳だから、大人同士がケンカする所を見せたくなかった。


「部屋は真っ暗でないと、良く眠れないでしょう!1人なのは当たり前です!誰もが通る道なのですから、甘やかしてはいけません!腑抜けた王子に育ったら、御方様は責任をどうとるおつもりで!?」


あー。

こういうの、ほんと、やだ。

声大きく強く言って勝ったら、自分の言う通りになる、そんな風に生きたら周りが敵だらけだ。


「責任とるって言ったら、預かっててもいいですかね。私はもう元いた世界には帰れませんから、ずっと王子達の面倒見しますよ。乳母のオッターさんこそ、いつかお仕事は解かれて去る方なのでは?」

「まっ•••、なんて事を!私はネクター様を思って言っているのです!」


思ってたら何言ってもいい訳じゃない。

ネクターが1人が嫌だって言うのは、ちゃんと見てくれる人、構ってくれる人、愛情を与えてくれる人がいない淋しさ、安心できるところがない不安感が、あるからじゃないのかな、と竜樹は思う。

頑張らせるには、安心できる基地が必要だ。それに、暗いの怖いとか、1人が怖いとか、頑張って克服すべきことかな、とも思う。だからこそ、明るい所にいて、人と一緒にいる人にもなる事だろう。


「最初はオレンジ色の暗い灯りをつけてあげて、眠ったら消してあげるのでもいいでしょう?そういった、面倒をみてくれる存在を、ネクターは欲しているのじゃないですか?」


「それは甘えです!軟弱です!」


竜樹はムカついてきた。

誰だって子供の頃があったろう。

甘えられる所があってこそ、大人だってそうなのに。


「でしたら、オッターさんは、暗闇も1人も怖くないと?」


「当然でしょう。私はちゃんとした大人ですもの。」


言ったな?


「では、私から、オッターさん達ネクター王子の周りで働いている人に、一本映画会を開いてみせましょう。それを観ても、同じ意見かどうか、聞かせて欲しいですね。」


そして今夜、1人でお帰り下さい。

淋しくも怖くもないんでしょう?


「なっ•••!」


「ネクターがいないと、俺たちは淋しいんですよ。だから、お願いです。」


御方様のお願いやぜ。

竜樹は悪い顔で笑った。

ニシシシ、と背後のチームニリヤの大人たちも、笑った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ