三人三様
鍵盤が2段になっている、ピアノ様の楽器を、美しくひそやかに弾きこなして、バルサ王兄はBGMに徹した。
あ、これジャズだ。月まで連れて行ってくれるやつ。一回スマホで聞いただけで、流石である。
王子達は、ひくひくしゃくりあげて、竜樹に取り縋っている。1人無言なオランネージュはいるが。
よしよし、撫で撫でしてやって、落ち着いてきたところで、話を聞いてやる。
「はーい、じゃあちっちゃい子順に話しを聞かせてごらん?ニリヤ、どうしたんだい?」
「ぶ、ぶった。ヒクッ。」
うんうん、ぶったなあ。どこぶった?
「あたま、ぶった。ちょうし、のるなーって。」
そうかそうか、痛かったなあ。調子のるなーってか。
「ちょうし、のってない。だいじょうぶよって、いったのに。」
言ったのになあ。じゃあ、俺が話しを聞いてみるからなぁ。調子乗ってないよーってな。
「はいはい、ネクター、話しを聞かせてごらん?どうしてニリヤ、ぶちたくなっちゃった?」
「ウッ、うええ。だって、わ、私だけ、歌、へたなんだも。大丈夫じゃないよ。わらわれる。み、みんなの前で、う、歌ったら。」
「そうか。笑われると思ったんか。悔しかったんだよな、ネクターは、一生懸命歌ってるんだものな。」
そ、それに。
「ニリヤは、ヒック、いっぱい一緒の人がいて、ずるい。私も、夜、1人で寝るの怖いのに。乳母やは、立派な王子様でしょって。1人のお部屋こわい。まっくらで。お勉強も、ヒック、1人だし。」
オランネージュ兄様は、王になる、お勉強あるから、一緒いてくれないし。
「みんな、いい子にしてなさいって、言う。母上も、そうに言って、ぜんぜん、会ってくださらないし。」
そうかー。
「よしよし。そうかそうか。1人で淋しかったな?ニリヤが羨ましかったんな?これからは一緒に遊んだりできるからな。夜怖いのも、ギフトの御方が、言ってやるぞーってするからな。もしならニリヤと俺と一緒に寝てもいいし。」
「ほ、ほんと?」
ほんとだよ。
だからニリヤと仲直り、な?
「うん。わかった。」
ニリヤ、その、頭をぶって悪かった。
ごめんなさい。
涙目を擦りながら、ネクターはニリヤに謝った。
「うん、いいよ。」
ニリヤも、モジモジ竜樹の服を弄りながら、許してあげた。
よしよし。さてさて。
「オランネージュは、どうしたんだ?」
「私も、たまには、えーんて泣いたりするんだぞ、ってしたかった。」
みんな私を、しっかりした王になる、完璧な王子様だとか言うけど。
確かにあんまり感情の起伏って、私はないんだけど、それってつまらない人みたいで嫌だな、って思ってたんだ。
「そうかそうか。みんなは酷いなぁ。オランネージュは、まだ感情を深く揺さぶられる経験が不足してるだけだよなぁ。それに、穏やかな性格なだけかもしれないし、つまらなくなんてないよなぁ。まだこれからこれから。」
「これからかなぁ。私もネクターとニリヤと竜樹様と寝たい。」
お泊まり会だな!
「おとまりかい!する!」
王子達の笑顔を、導き出せますように。