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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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まんまや前から生放送


ニュース隊のリポーター女子、スーリールは、『おにぎり・まんまや』の前、少し離れた所に来ている。


何とものプロポーズをする予定の男子、吟遊詩人ノートと。

それをズラリと囲むのは、前日歌の競演会に出演していて、竜樹に携帯電話とカメラを預けられた特派員達。貴族の歌い手、吟遊詩人の、にわか突撃リポーター(見習い&お試し)達である。


沢山のカメラに、ジィー、と撮られて、吟遊詩人ノートは、緊張の上に緊張を重ねている。


「ノートさん!どうですか、今のお気持ちは。」

スーリールが、マイクを差し出して、まんまやのプロポーズ相手に分かっちゃうとマズイので、小声で聞いた。


「ひゃい!ど、ドキドキします•••。あぁ、はぁ、昨日のステージと同じ位、緊張してるっデス。」

すう、は、はぁ。息も上がっているノートは、片手にリュート。もう片手に、芯の色が温かいピンクと真っ白の薔薇、可愛らしい小さな花束。茎を束ねる、綺麗なサテンリボンがくるくるり、美しい。


「まんまやさんの、看板娘。ご長女の猫獣人の方が、お相手さんなんですよね。」

「は、はい!マオ、さんて言います。もう8年、付き合ってるです。」


8年。ノートは青年といって良い歳に見えるが、彼女、マオさんは何歳なのだろうか。一体何歳からの付き合いなのか?

スーリールがそこんとこ突っ込むと。


「彼女は26歳、ですね。18歳の時に、ワイルドウルフに吟遊で行った時、出会って。何か話が合って、その時は、冗談ぽく、俺達付き合おうか、なんて言って別れたんだけど、1年後にパシフィストで、偶然再会したんです。」

「ほう!パシフィストで!」


にわかリポーター達が、おぉ!運命の出会い!とか、素敵!なんて呟くのがマイクに入る。うん、プロポーズするには、ちょっと賑やかすぎやしないか。


マオさんは猫獣人のお父さんと、豹獣人のお母さんから生まれた獣人さんである。ハーフの獣人さんは、大まかには父か母の獣人の身体の性質を継ぐそうで、彼女はお父さん似の、瞳もきゅーんと潤んだ、陽気な猫獣人だそう。


「あれよね、妹のミオンさんが豹獣人なのよね!スッゴイセクシーなのよ!見た目は、姉妹が逆みたいに見えるのよね。」

昨夜は王宮の宿泊施設に泊まらず、王都の家に帰った吟遊詩人アラシドお母さんは、「朝ご飯をまんまやで食べようよ!ノートのプロポーズ、見に行かない?」とニンマリ。夫グラビアと、息子モール少年を誘って、家族でデバガメ•••リポートしている。モール少年も、ワクワクとアラシドお母さんの横っちょで、時々カメラを弄らせてもらっている。

「ミオンさんに付いてるファンの、しつこい奴を、ニッコリ笑顔で撃退してくれたりする、良いお姉ちゃんらしいよね。」


「姉妹仲良しらしい、とは、ウチの使用人も教えてくれましたわ。猫獣人姉マオさんの旦那様になる方は、豹獣人妹ミオンさんが認めた男じゃないと!って言ってるんですって!」

貴族出身の歌い手アマンドが、プロポーズの話なんて、歌の参考になるなる!と超乗り気で、片手のカメラでジジジィと撮影、付いてるモニターで画像を確認しながら、昨夜帰宅した家で聞き込んだ情報を、ぶっ込んでくる。


ウッ、とノートが胸を花束で柔らかく抑える。花弁が押されても、瑞々しさに折れてしまわない。王宮の庭師は、流石に素晴らしい薔薇を選び出してくれている。


ノートは、姉マオに受け入れてもらえたとしても、その後で。肉食獣女子、ミオン妹のお許しを頂かないといけないのだ。セクシーミオンは、普段、万人にニコニコと愛想が良いのだが、いやまあそれは接客業もあっての事もあるのだが、姉マオにちょっかいを出す男だけには、かなりの塩。

いや、塩どころか、唐辛子対応なのである。


「がんばれ〜ノートー。アッハッハ!」

アラシドお母さんは、完全に他人事でお楽しみの撮影である。


「い、言われなくても!じゃ、じゃあ、行って•••。」


「待って待って、ノートお兄さん!」

吟遊詩人少女、シトロンちゃんも、歌仲間に連れられて、にわかリポーターに参加している。

「お店の中じゃ、皆が全員入らないよ!2番の時、バックで歌えないじゃん!撮影も、お店の迷惑になっちゃうし、ほら、さっきから、何人か、もう朝のお客さんが、入ったり出たりしてるよ。」


そして、お客さんは、コソコソしている大勢の撮影会を、んん!?何だぁ?って感じで見て行くのだった。

シトロンちゃんは、流石に街で、8歳ながら声一本で稼いでいるだけあって、中々のしっかり者である。お店で歌わせてもらう時なんか、邪魔になる!って怒られる時もあるもんね。


「ええと、ええと、じゃあ、どうしようか。」

真剣にシトロンちゃんに、腰を曲げて顔見合わせて、ヘニョりん眉で相談するノートである。昨日の勇姿は、どうしたんだ。


「ノートお兄さん、落ち着いて。私が、マオさんをお店の外に呼んで来てあげるね。今、そんなにお客さん混んでないし、あぁでも、マオさん1人でお店番してるんじゃないよね?」

もしそうなら、お店にはお金も、これから握る商品もあるのだし、出てこれないだろう。


「1人で店を回してる、って事はないと思う。感謝祭だし、朝、持ち帰り予約握りのお客さんも結構いる、って言ってたから。」


昨夜、優勝したよ、だけ、メッセンジャーに特別料金を払って、夜に言付けを届けてもらった。そうしたら、往復で、おめでとう!と返事が来た。明日明後日は、お店がこれこれこうで忙しいから会えないけど、落ち着いたらお祝いをしようね、と。

メッセンジャーは文字が書けなくても言付けしてくれる。言付けのメッセンジャーは、言った事をメモして行って読み上げるので、伝言ゲームのむにゃむにゃにはならない。

ノートは文字が読み書き出来るが、マオさんは覚束ないとの事で、それも指定で、言付けできるメッセンジャーを頼んだのである。


「じゃあ、呼んでくるね!朝にして良かったね!絶対大丈夫、がんばろ!」


「う、うん!シトロンちゃん、頼むね!」


タタッと『おにぎり・まんまや』に走り込む、ライムグリーンの編み込み髪、ほつれ毛ホワホワ、綿毛の後ろ頭を見遣って。


「頼む•••頼むマオ•••結婚しても良いわよ、って言ってくれぇ。」




12月も、もうすぐですね。

時々余分に休んじゃうけど、11月の残り〜12月も、また頑張ってまいりますね。やっぱり目指すは週休2日くらいで。

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