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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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裁判に詳しい竜樹


呪術師の少年、キャリコは。

呆然と竜樹を見ていた。


何でこの人、こんなに一生懸命に。神乞いを途中で止めてまで。



「俺のいた国の裁きは、ある一定以上の大きな罪のものは、裁判、という形で行われます。神様は罪の真偽を判別してはくれませんので、冤罪を起こさないよう、とっても慎重に裁判が行われるんです。疑わしきは罰せず、と言われますし、冤罪が後に判明すると、大きなニュースになる程です。正直、本当に罪を犯した人が証拠不十分で無罪になったり、とか、あると思うんです。人のする事、そりゃあ、完璧じゃないです。精一杯裁判に関わる人が働いて、その上で、冤罪を作らない、原則として、そうなっています。•••裁判は、お前、罪を犯しただろ、と訴えを起こす検察官側。そして、疑いをかけられ罪を犯したかもしれない被告人。そしてその弁護人が、ルールを守って話し合います。犯罪を犯した証拠を検察官は出し、弁護人は、被告人が罪を犯さなかった、または罪が軽くなるだろう理由の証拠を集めて立証し合います。被告人も、質問に答えて話をしたりできるし、黙秘と言って、言わない権利もあります。そしてそれを、裁判官が聞いていて、法律に基づいて、今までの似たような犯罪の判例も鑑みて、最終的に裁きます。こちらでも、似たような裁判がありますか?そうですか、大きな事件の時は、あるんですね。」



キャリコは、自分が眠りの呪いをかけた、タイラスと同じ呪いをかけてもらう、それを償いの形としたかった。同じ目に遭い、関わった人に腹を収めてもらい。

キャリコの呪いを解いてくれる人が、もしいるなら、自分は眠ったまま衰弱して死なないだろう。

けれど。

中々複雑な呪いだから、父も母も、きっと、自分たちに代償を受けずに呪いを解く事は、出来ないだろう。


自分を損なってまで、父や母は、キャリコを救ってくれるだろうか?

多分、それはーーー。


キャリコは、目を、パチンと一つ、瞑って、開いた。


もし、そうなっても良い。

ぽっかりと空いたまま、呪術師を続ける。それが嫌だ、という大きな気持ちはしないけれど、なんだか、もういいかな•••サラサラ、と砂が、ぽっかりした所に滑り落ちてゆき、自分が崩れてゆくような。

それで、良いかな•••と。


思っていたというのに。


熱弁を振るう、竜樹様を見る。

何となく、じんわりもやもや、言い難い気持ちが、ぽっかりした所から、浮かんでくる。


ギフトの御方様。皆に良い事を、影響を、もたらすギフト、竜樹様が、何だか一生懸命、キャリコのべんごにん?をしたいと言い出して、神様に何だかかんだか、言っているのだ。


『ん、ん。なかなか面白いな、裁判とは。確かに起訴する方も、される方も、言いたい事があろうな。•••竜樹よ。お前は、犯罪を犯した事でもあるのか?それか、裁判官が知り合いにでも?良く知っている。知りすぎている。あちらの世界では、皆そのように、裁判の事を細かく知っているのか?』

金眼銀目を細めて、裁きの天秤を持つ、エキリーブル神が頬にかかり垂れる長い白髪を手に取って、口元でくしゃりとさせながら、興味津々に顔を前に出し、覗き込むように寛ぐ。


ん?と口を閉じた竜樹様は、次の瞬間、気を抜いたようにタハッと笑った。

「有名な裁判の判決って、新聞にも載るし、テレビでもニュースで流れるし、その、それだけじゃなくてですね。その〜、裁判って、ドラマチックでしょう?テレビや小説、本ですね、物語で、裁判をメインテーマにした犯罪の推理もの、なんてあるんですよ。追い詰められてーーだけど、逆転無罪に!とか、追い詰めて追い詰めて、罪を認めさせる!うん、『赤羅川弁護士の事件ファイル』シリーズいっぱい観といて良かったな〜、って俺今思ってます。」


土曜日の夜ドラマ。

休日ゆったり、ふぅ〜ん、へぇ〜!なんて家族でまったり見るのに、丁度良いのだ、と竜樹様が続けて。


『ん、ん、ん!!何と!物語に、裁判がな!!それならば、広く裁判が民に知られようものよな?•••竜樹よ、その、あからがわべんごしのじけんふぁいる、はこちらで観られるのか!?』

「スマホの、テレビドラマ観られるサービスが生きてるから、大丈夫ですよ。」


ニコニコニッコリしたエキリーブル神様に、竜樹様もニッコリして、頷き合って何か通じ合って、いる?


『ん、ん。竜樹よ。後でこちらのテレビで、あからがわべんごしのじけんふぁいる、を、放映するが良い。良き裁きの参考となるだろうよな。そうすれば、私も観られるし。』


「はい。著作権幸せ払い履行人の、ぽん太君に、事前に連絡しておきますね。赤羅川弁護人のシリーズは、裁判の流れや、どうしてそうなってるのか、細かい情報を、初めて観る人にも分かりやすく説明してくれるんで、オススメなんですよ〜!あとは、判決の時に、いい味出してる黒瀬裁判官が、人情深いお言葉で諭してくれたりして、何だかウンウンって、納得しちゃうんですよね〜!裁判官にも色々な人がいたりとか•••。」


『ん、ん!良き、良き!』


なんだか。

キャリコは、モヤモヤする気持ち、これって、面白くない。って気持ち?と初めての感じを、淡く味わう。キャリコの神乞いの、事だったのに•••何だか神様と竜樹は、キャリコの話とは別?の事を、楽しそうで。


なかま、はずれ、か。



その途端に、エキリーブル神様が、キャリコに視線を、ふっ、と。


『ん、んんん!タイラスを呪ったキャリコの裁き、神乞いは、裁判の普及に寄与する為に、必要な神乞いであろうね。弁護人となるか、竜樹よ。して、どう弁護する?』


ファヴール教皇が、目を剥いたまま、フーッと息を吐いて安堵したのが、キャリコにも分かった。


「では、弁護したいと思います。」


キリッ。とショボショボした目をきらめかせて。

「そもそも、息子に感情を抑制する魔道具を着けた事。それは、虐待ですよね。どうにも制御しきれない、生まれながらの気質で自分でも辛い目に遭っている、などでしたら、幾分、理解はできますよ。でも、それにしたって、少し落ち着く為の、弱いお薬であるとか、彼の成長になるべく害のないものを、って、ならないですか?違う視点からも、言ってみますね。キャリコ君は、呪術師ですよね。幼いのに、すごい呪術師の才能があって、感情ありきの失敗が怖いから魔道具で抑制した。これ、間違いだと思うんです。」


クシャ、とキャリコの父と母が、顔を歪ませて小さくなった。


「呪術師の皆さんは、人の感情から欲されるおまじない、や、呪い、を扱う訳でしょう。それには、他人の感情、痛み、嬉しさ、嫉妬、悲しみ、怒り、様々な感情を、小さなもの、大きなもの、どちらも知っていて、かつ理性的に、適切に扱わなきゃならない。感情があって初めて、深く依頼をこなす事ができる。呪術師として、育てる、ならば、けっして感情を魔道具で抑制しては、いけなかったんです。年齢に合わせて、感情の学びに合わせて、呪術師の勉強を、段階的に教えていく、才能合わせじゃなくて、彼が幸せに呪術師としても生きていけるように、お父さんとお母さんが勉強の仕方を制御してやらなきゃならなかった。教える、って、何でも教えれば良いってものじゃない。違いますか?」


「ちが、ちがいません。」

「すみません•••。」


キャリコの父、クロマティクと、母フレアは、肩を竦めて背を丸く小さく。ぽそ、ぽそり、と囁くほどの小さな声で、謝った。竜樹様と、エキリーブル神様に。

竜樹様が、何でか一瞬、ムッとした。


本日は、少し短めご容赦ください。

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