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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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バタースコッチのように甘い夜


IM(ミモザ夫人)

『あったかい掌、良いですわよねぇ。私も、夫に、労られたい。って、恨みがましく強請る事なんかあるのです。チヤホヤまでいかなくても、気にして欲しい。まぁ、夫も凹んだ時、ちょっと我儘言ってみたり、甘えてきたりするので、お互い様なんですけど。M様が仰るように、考えてみれば、大人になると自分の身を無条件に委ねて、あまあまと安心して甘えられる、そんな時間は、ほぼなくなってしまいますわよね。自分で賄わないとやってられない、って所、ありますわ。結婚してて、パートナーがいるにしたって、全てがちょうど良く思い通りになる訳でなし、お互い疲れてたり、気も遣いますしね。』


M(マルグリット王妃)

『ですわよ、ですわよね。大人になる程、自分で自分を、ちゃんと甘やかしてあげないと、保たないですわよ。子育てや、女主人の仕事、求められる立場は責任ある大人として、逃れられない厳しい部分もあります。包容力を発揮する側になってゆきますし。まぁ、それがやり甲斐ある、ってとこも、勿論ありますわ!』


ハルサ王様が、マルグリット王妃を、そうなの?まぁ、そうだよね?なんて、慈しみの目で見ている。


H(ハルサ王)

『私も責任ある立場な訳だが、男は、その、女性が側にいるだけで、何だか甘やか癒されるからねぇ。妻は仕事が忙しいけれど、寝室でただ一緒に寝る時に、男とは違う柔らかい肌や、その優しい匂いに触れると、あぁ今日も無事に終わったなぁ、なんて、ホッとするんだよ。考えてみれば、若くて独身の時は、自分を上手く甘やかせずに、ピリッとしていた事もあったね。そう考えると、P嬢のその、お胸ふにふになんて、優しい可愛らしいものじゃないかな、なんて思うね。』


ヴィフアート

『甘えさせてくれて、甘えてくれる女は、良い女。男の理想ってやつ。花街では技術として習うよ。男も女も、分かってて取り入れて、潤ってる上手な奴もいる。俺は、何か嘘臭いな、って思っちゃうけど。寝たりしなくても、そっと側にいてくれる、とかのが信頼できるのは分かる。あと、そういう奴がいなければ、自分で何とかやりくりしなきゃ、ってのも。』


花街暮らしで、対人関係が擦り切れ、裏を見過ぎたヴィフアートには。色では分かりやすく満たされぬ、警戒に覆われた、繊細な甘えたの器があるのだ。


BN(バーニー君)

『甘えたいから結婚する、ってのも、ある部分あっても良いかもしれないですけど、妻帯者に聞くと、甘えられるかどうかは、関係をちゃんと深めてるかどうかにも、よるらしいですねぇ。いや、私は独身なんで、聞いた話であれですけど。お相手の気質や、自分の気質、頼りにし合えてるか、皆、声高には言わないですけど、時々滲み出る事ありますよね。私は、仕事仕事で寝るのが安らぎなのです。ダラダラしたい。神鳥羽枕で、スヤァが、至高なんですよ。あと甘味。T様、収穫祭で教会が売り出すバタースコッチって飴、味見見本めちゃ美味しかったですよ!とろけるぅ、頭に甘味染み渡るぅ!でした。今夜の出演料のバタースコッチ、忘れないで下さいね!いっぱい下さい!』


M(マルグリット王妃)

『まあ!私、まだ食べていないわ!』


IM(ミモザ夫人)

『私も!そんなに美味しいものですの?明日、教会のお店で買えるのかしら?』


ポムドゥテール

『わ、私も、その、身体を使う仕事をしているし!食べる事は大好きで、甘いものは大大好きなのです!』


女性陣がふわぁ!と盛り上がる。


ヴィフアート

『すっごく、美味しかった•••。』


うっとりと、ヴィフアートが言えば、高貴なる男性達も。


H(ハルサ王)

『あ〜。仕事の合間に甘味、必要なのだ。是非買ってきてもらっておこう。』

ニコニコ。多分侍従さん達の誰かが、おつかいに行くのだね、明日。


B(バラン王兄)

『婚約者と食べたいなぁ。なぁT殿、味見用の飴、残っていないのかい?美味しかったら私も買おう。』

おねだりのバラン王兄は、ムフフと笑み。


BN(バーニー君)

『あっ!B様、私の出演料から取らないで下さいね!T様、たっぷり!たっぷりですよ!』


そんなに美味しいのぉ?!

と竜樹に視線が集まる。

うん、あれは、秋冬美味いよね。コッテリした甘さが、これから寒くなる、の身体に栄養蓄えよと、じんわり季節を感じさせる。

竜樹は、タハッと笑って。


T(竜樹)

『調理室の一番奥の戸棚に、まだいっぱいあるから、誰か、持ってきてくれる?』

と頼んだ。

皆、ムフ! まぁ! また食べられるの?などと期待に笑って。


T(竜樹)

『バタースコッチを待つ間に、お話してましょう。ーーー結婚してるしてない、したいしたくない、恋人いるいない、恋愛じゃなくて甘えられる存在がいるいない、に関わらず、ですかね。自分を傷つける訳じゃない甘え方を。1人遊びも良い、大人は自分に時々許して、バランスをとるべきだ。これは、皆さん、頷いて下さると思います。』


H(ハルサ王)

『ああ、そうだね。』


M(マルグリット王妃)

『毎日を、上手に、なるべく機嫌良く過ごすやり方だと思いますわ。』


B(バラン王兄)

『うんうん。音楽さえあれば、とは私も言わないよ。』


IM(ミモザ夫人)

『自分の機嫌をとる、って良いですわね。寂しい感じがしなくて。』


BN(バーニー君)

『むしろ疲れ切ってる時は、他者と関わるやり方じゃない方が、気が休まるっていうか。』


ポムドゥテール

『皆様が、私の恥ずかしい1人での慰め事を、受け入れて下さって。こうして、バカにされず、腹に溜めず言う事ができて、本当に気持ちが晴れるのです。』


H、M、B、IM、BN、T

『『『うんうん。良かった良かった。』』』


T(竜樹)

『きっとP嬢のように、皆には言いにくい、でも別に何も悪い事では別にない自分なりの甘え方、してる人いると思うんだ。今夜の話を聞いて、皆それぞれ、恥ずかしく後ろめたく思ったりが、少しでも減るといいな、って思うんだよ。』


ポムドゥテール

『そうでしょうか!そうなら、嬉しいのです•••。』


BN(バーニー君)

『勇気ある発言に、救われる者がいますよ。もっと恥ずかしい甘えた、幾らでもあるし、それでも全然恥じない奴もいっぱいいるけど、心をウチに秘めた繊細な人も、沢山いますからね。』


T(竜樹)

『だね、だね。』


ヴィフアート

『ここにいるのは、位のある人達ばっかだけど。人に甘える、って贅沢だと思ってた。位があって余裕があって、普通の平民でも愛されてて家族がいたり•••ケッ、て思ってた。でも、竜•••T様の所に来て。ちゃんと甘えるって、すごく、すごく良いんだなぁ、って。それに、俺だって、花街に居た時も、何かどうしようもなく自分で慰めてた事は、今考えてみれば、あったよ。』


ヴィフアートが恥ずかしそうに目を伏せる。それを皆で、温かく見ている。


T(竜樹)

『V兄ちゃん、今は1人じゃないから、お互いの甘えたも沢山しようね。』


ヴィフアート

『!••••••はい!!!』


そこにバタースコッチが届く。

タカラが、トレイから、そそそ、と。白い大きな緩い花形のお皿、ロウ引きの紙を綺麗に畳んだ上に、板状に作ってカキコキと割った素朴なバタースコッチが、幾つも乗っている。

どうぞ、お味見して下さい。の竜樹の勧めで、スラリとした手、ガッシリした手、丸い爪の手、美しく整ったしなやかな指の手、ペンだこのある手、荒れた手。様々な手が皿に集う。


パクリ。カラン。


カラコロ、カラコロ。

尖った所が、口の中で先ず溶ける。


M(マルグリット王妃)

『(コロコロ)おいひいわ。』

うんうん、と皆でふくふくしながら、口の中に甘味、転がしてしばし、黙る。


T(竜樹)

『(カラコロ)ぅん、間違いない。ナッツの入ってるヤツも、美味しいんですよねぇ。』


H(ハルサ王)

『!それも、売っているのかい?』


T(竜樹)

『はい、教会で売るそうですよ。ナッツたっぷりでサクサクのやつ。』


(買おう)

とここにいる全員、ヴィフアート以外が思った。ヴィフアートは、竜樹がくれると信じている。


カラコロ。カラコロン。


BN(バーニー君)

『•••そういや、私は、仕事でリーダーたる方に振り回された時、割とギャンギャン言っても許してくれる人ばっかりなんで、そういうとこ甘えてるかな、って思いますね。言いたいこと言ってプンプンしてて良い、っていう。』


T(竜樹)

『あれはBN君の甘えただったのか。』


BN(バーニー君)

『あんまり言いませんけど、振り回すけど最終的には絶対に責任取ってくれて、言いたい事をタブーなく聞いてくれる、って、信頼感はありますよ。たまに、チクショウ!って思うけど。』


アハハハ、と一同笑い。

バーニー君は、ツン、としたおすまし顔である。


B(バラン王兄)

『物や事で甘えるのも、結構アリだと思う。知り合いの男は、高価な縫いぐるみを集めるのが趣味で、その愛らしい表情を見て、ぽふぽふと抱きしめると、物凄く癒されると言っていた。コレクションの気分もあるのだろうけど、縫いぐるみの部屋というのがあって、辛い事があるとそこに飛び込んで撫でまくるって。私も寂しい時なんかは、集めた楽譜を見ていると弾きたくなって、弾けば笑って、歌って、となるね。後は、婚約者の声が本当に、イイ。何でも良いから話をしててくれないか、ってお願いした事もある。』


T(竜樹)

『B様の婚約者さんは、本当に素敵な声ですよね。』


B(バラン王兄)

『うむ!』

ドヤ顔である。







よちち、な子虎の妹、エンリは、短いお指をお顔の横に投げ出して握ってふわり、お口もにもに、ふ、とお目々が開いた。


知らないお布団、知らない匂い、知らない灯りにお部屋。

ここ、どこ?


何でだろう。何でおウチじゃないんだろう。


ワイルドウルフのお家から、ファング王太子殿下のご学友、おにーたのアルノワのオマケとして、ぱちぴふとのお友達、新聞寮の皆の所にお泊まりだよ。って、誰か教えてあげて。


ムクリ、と床に敷いたお布団から起き上がる。周りからは、スー、クー、スピスピ、ムニャ。と寝ている人達。


「おにーた•••。」


パタパタ、とクリクリのカールから生えた、虎耳をはためかせて、お目々をクシュリ、擦る。おにーたを探して、お布団を、たし、たし、手探りするけれど。エンリのおにーたは、どこにいるのか全然分からない。

すぐ側で、グッスリスヤスヤ、眼鏡ケースを枕の下に、あんよを隣に放り投げて眠っているのに。エンリには、分からない。


フクッとしたほっぺが、ぷるる、と震えて。

きゅああぁぁ。

不安で締まる、ちっちゃな喉から、息が漏れた。


「おにーた。おにーた。•••おうち、ない。おかーた、ないでつ。おとーた。ふぇ。」

ぷるぷるる。


震えた所で。そう、子供達を見守って起きていた、ワイルドウルフのエンリとおにーたアルノワのお家の、虎侍女の若い娘が、しましまの尻尾を優雅にしならせて。

スッとエンリの元へ、いや、寝ている子供達をえっちらおっちら避けながら、爪先立ちで。


「エンリ様。お目々が覚めちゃったのですか?大丈夫ですよ。お兄様のアルノワ様は、ほら、そこで、お寝みされています。スープルがいますよ。よしよし。」

長い髪を垂らしてサラリ、余裕があって動きやすい寝巻きのスープルが、紺の薄いカーディガンを羽織って、エンリに向けて膝をついてしゃがみ、腕を広げて抱きしめた。

エンリは、お目々に両手をギュッと押し付けて、震えたまま、おウチ、ない。おにーた、ない。と呟いている。


よし、よし。

スープルはエンリを優しく優しく撫でたけれど、そうして心を尽くして宥めたけれど、エンリはもう、おウチじゃないッ!の思いに囚われて。

しまいにはスープルの胸から、モガモガと暴れて脱出し、おウチを探しに行こうと。


ムニャ。

「•••どうしたの?」


「ニリヤ殿下。あぁ、起こしてしまって、申し訳ありません!」

スープルは、眠くてポヤポヤ混じりで混乱、暴れるエンリの力強い虎のお手てに、蹴っ飛ばし足を、何とか抑えて、髪乱れ必死だった。


「おウチ!おかーた!ない!ない!うぇえぇん!!」

ぷるぷる。


「おかーた?ないの?」

ニリヤは、眠くて、でも、思い出して。母様が、起きたら眠ったまま、起きなくて皆に連れていかれて、不安な、切ない気持ちを。

お目々擦って、ただ、黙ってもそもそ起きて、スープルが抱えたエンリを、その上から、ぱふ、と抱っこした。

はむり。虎のお耳を、お口でハミハミ。


ビクン!とエンリはどんぐりお目々を見開いて、涙をつつうと、ふっくらほっぺに流した。


「•••だれでつか?」

「だいさんおうじ、ニリヤです。きみ、だあれ?おみみ、ふわふわ。」


「えんり。」


エンリちゃん。

ポムポム、とニリヤはエンリの、虎お尻尾の生えたお尻を、優しく叩いた。

「かあさま、いないの?」

「おウチ、ない。」

ひっく。ひく。


ここ、おウチじゃないよ。

と言ったつもりのエンリだが、ニリヤに伝わったのかどうか。

ぱち、パチン。ニリヤは眠たそうに瞬きして、そうして、エンリに。


「エンリちゃん。かあさま、さがしにいこう。きっと、ししょうが、さがしてくれるから。•••あれ、ししょうは?」


「大人だって甘えたい!の撮影ですよ。」

コロン、と布団に寝転がって半身起き上がり。ラフィネかーさが、(初めての外国でのお泊まり、泣いちゃっても仕方ないわよねぇ)と微笑ましく少し困り眉で、少し心配、こちらをちゃんと見ていた。


「•••さつえい。ぼくも、いく。エンリちゃん、いっしょいこ。」

「ウン。グシュン。おウチ、さがしてくれまつか?」


ウンウン。

エンリより、少しだけ大きな、だけどまだまだ小ちゃいお手てが。エンリのお手てをきゅむりと握って、おとと、よろりと起きた。

頸の毛が、クルンとなっている。


2人(と虎侍女スープルとラフィネかーさ)は、寝ている子供達を踏まないようにヨタヨタよちよちと、オレンジ色の灯り、交流室の入り口へ。


「ニリヤでんか、うしろ、くりくりでつ。」

「ウン。じいちゃまとにたの。」

「えんりも、おかみ、くりくりでつ。」

「いっしょね。」

「いしょ、でつ。」


ぽて、ぽてり。

薄明かりの廊下を、音と光のある方へ。目指して、裸足ぺたぺた。小ちゃいエンリに少し大きいニリヤの、ボンワリした影が後ろ、そのまた後ろから、大人2人、とん。とん。と。


寮の一室をセットにして撮影している、竜樹の元へ、おウチを探しに。



誤字報告、ありがとうございます!

お話し→お話 ベット→ベッド だねだね。全てのお話とベッドがそうなっとるのかも。

でも、今、全てをチェックする余裕はなく。有り難く誤字報告いただき直させていただいとります。すみません!

そして、助かります!ご好意、む、むりなくだけれども!

(๑>◡<๑)

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[良い点] 竹 美津さま 前回は、お名前の漢字を間違えるという大失態を犯してしまい大変申し訳ありませんでした…(;´∀`) 前回のエピソードの竜樹とーさ+3王子のかわいらしいイェイェ、私もこの目で…
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