遊びごごろで、大人のお部屋
歌バトルが終わって、新しい歌が沢山聴けて満足の、王兄バランも一緒に。竜樹と3王子プラスいつものメンバー、ウィズ何でも実現バーニー君は、新聞寮にホケホケ帰る。
「竜樹様は、面白いことを、沢山ご存知ですねぇ。らっぷばとる?あんなの、歌のようで言葉のようで、戦いのようで遊んでる、楽しかったですねぇ。」
最近撮影するばかり、あまり喋らない先輩侍従兼カメラマン、ミランが、顔にかかった水色の髪をビビ、と振って。カメラ回しながらも、何だか嬉しそう。
「竜樹様と、子供達や王子殿下達が遊んでいると、何だかホッとするんですよ。」
しみじみ、言葉を落とす。
「ん?そうなの?」
竜樹がショボ、と目を細める。
そうなんですよ。
ミランは、優しい光の瞳で、瞬きをゆっくり、ニコニコ。
「絵がもつ、っていうか、見てて、あぁ良いなあ、って。大人ってあまり、自分達だけだと、こんな風に遊ばないですけど、竜樹様みたいに自由がちょっとある大人や、面倒見なきゃいけない子供達がいれば、付き合って遊ぶでしょ。それって、仕事ばっかり柵ばっかりで固まってる大人も嬉しくて、気持ちが潤う感じかな。って、すごく。時々、こんな事やるの!?まだやるの!?アハ、なんて、竜樹様の発想や、子供の元気いっぱい繰り返しに、思う事もあるけれど。専属侍従でカメラマンな私は、他の仕事がある訳じゃないから、時間や制約に押されて、イライラもしないですしね。」
良いなあ、って、思いながら、見て撮ってるんですよね。
そうなんだ。
だからといって、今までミランが、もっと竜樹に、遊ばなきゃ!なんて言ってきた事はない。
基本的にミランというカメラマンは、そこにいる当事者でありながらも、様々な時間を切り取る目であり、傍観者である。
そのミランが、良いなぁ、と。
ずっと見てきて、ただ、しみじみ言うのだ。
竜樹も、まだ遊んでる気分イェ、イェ、とジグザグ蛇行してポテ、ポテ、と歩きながら首を振ってる3王子に笑って。
あー、お返事らぶれたで、ニリヤとも、もっと遊ばなきゃ、って言ってたのに。なかなか遊べてなかったんだよなあ。
今日は、どんけつに、ラップに、久々遊べて良かったなぁ。
「よし、俺も、もっと皆と遊ぶぞぅ〜!」
イェ、イェ。3王子の真似して、わざとらしく下手なノリを披露して、歩いた。
うふ!キャハハ!と顔見合わせて、オランネージュ、ネクター、ニリヤが団子になって笑った。ミランに、お助け侍従タカラ、何でもバーニー君に護衛のマルサ王弟達、そして鼻歌イェ、イェ、と合わせてきたリズムバッチリなバラン王兄、みーんながニコニコのニッコリだった。
寮に入った途端に、小ちゃい子組3人サン、セリュー、ロンが。
「おふろはいるぅたつきとーさと、はいるぅ!」
なんて、たかたか走り寄ってきたので、竜樹は纏めてギュッギュしてやった。笑顔、笑顔。
ジェム達おっきい子組は、先に入って濡れ髪、拭き布ごしごし。湯上がりのほんわりした少年の匂い。
女の子組も、ラフィネかーさに、順番に髪の毛を梳かれて、お目々を瞑っておすまし顔、くい、くい、揺れている。
獣人国ワイルドウルフ組も、お耳とお尻尾ピルピル。お国から、お守りするために付いてきた従者達に、濡れた毛を丹念に拭いて貰って。ほこほこになってもう眠たそう。
さあ、入ってない子は、お風呂。
そして寝ましょう、だけれどね。
今夜は、大人だって甘えたい!番組の、緊急撮影をやっつけ本番でやるのだ!明日は歌の競演会だけど、だからこそやっちゃう。疲れた大人の遊びの時間。
生放送じゃない収録だから、不適切な発言も程よくマイルドに。
遊ばなきゃ、大人も子供も、頑張れないのだ。
黒い壁の四角いお部屋、ほわ、とランプの灯が温かい色に光を丸く、影を作って。
テーブルは猫足流麗な白。集まった甘えたい大人達は、皆、椅子に座って顔にお面を被っている。
服装から特定されては、と思ったかどうか、男性はそれぞれに似合う長袖、ズボンのパジャマにガウン。靴下にフカフカの室内履きは踵のないスリッパ型。
女性は体型を拾わない、たっぷりしたワンピース型の、首元までボタンが閉まった、防御力高そうな柔らかく厚い生地の寝巻きに、やっぱりガウンである。それぞれカラフルな靴下に、ピッタリの室内履きは、刺繍も可愛いスリッポン。
女性なら、なんて失礼、破廉恥な!と寝巻き姿を晒すに恥、か?
凄く言いそう、と竜樹は思っていたのだが、厚い生地で肌見せを防御したデザインのそれならば、遊びの場として付き合うのは大丈夫、と判断されるらしい。特にテレビ、ラジオの収録だもの。大勢が見ていて開かれて、いかがわしくなりようもない。
だけど、ここには顔を隠した秘密の、そして何となく親密な空気感があった。
同じように顔を隠したパジャマの竜樹が、声を変えるボタン型の魔道具を襟に付けて、ポワポワ声で。
『こんばんは。私、名乗るほどの者ではございません、Tとお呼び下さい。今夜は、秘密の大人だけのパジャマパーティ。何でも、そう、うっかり心の奥底にある、あんな事やこんな事、昼間公には言っちゃいけないあれこれを、そっと語り合う真夜中のお部屋。サル・デ・ラ・ヌーヴェル・リュンヌ。語り合うテーマは、大人だって甘えたい•••です。』
参加者を。ランプのほんのりした光と影で判別し難い上に、顔の下半分からしか映さないアングルで、ゆっくりカメラを動かして視点を流していく。音楽もない、静かな、静かな。
『さあ、ミルクの入ったお茶を一口。喉を湿らせて、皆様、自己紹介から。では、こちらのご婦人から。』
竜樹•••Tの差し出す手を前に、大きくも小さくもない女性、白い仮面、口元だけが露わになっていると、どうして色を感じるのだろう?艶っぽい雰囲気と共に。
マルグリット王妃。そう、ノリノリで来ちゃったマルグリット王妃が、パクリ、と口を開く。
『こんばんは。私、Mとお呼び下さいな。一応身分ある人の奥さんをしておりますの。女主人のお仕事も任されておりまして、既婚者ならではの、甘えたい!がありますのよ、それをお話できたら。』
ニッコリ、口元が笑む。
次々と。
眠りの呪いにかけられたタイラスの母親、ミモザ夫人はIM。
音楽だけじゃないのか!?バラン王兄は、B。
タイラスの婚約者、キリッとした美人騎士だけど、どこかズレてるポムドゥテール嬢は、P。
竜樹をお父さん的にラブ、男娼あがりのヴィフアートは色々闇を持ってそう、V。
そして、何で来ちゃったんだ、パシフィストの王様、3王子の父親、ハルサ王は、H。
私を引き込まないで下さいッと抵抗したけど、明日のおやつに釣られて渋々参加、何でも実現バーニー君はBN。
『参加者はこの7名でお送りします。身分ある方もいますが、問わぬが花、このお部屋では、ざっくばらんにお話しましょう。さて、大人だって甘えたい、ですけれども。まずこのお話のキッカケになったのが、P嬢の、寝る前にご自分のお胸をふにふにして、安らがないと眠れない、って事からだったんですよね。まぁ、ありますよね!そんな事、誰にも言えないそんな癖や、甘えた。』
P
『はい•••お恥ずかしいですが、そう言ってもらえて、ホッと致します。母が病気で寝込んでおりまして、幼い頃から、なかなか触れ合いが少なかった、多分そんな原因かと思うのですが。私、いつまで経っても、その幼い甘えと大人の何か欲望的なものも、ちょっと混ざった不埒な、そんな事が、やめられないんです。』
恥ずかしいと言いつつ、ポムドゥテール嬢は、このお部屋に出てくれる良い人である。
V
『だから、そういうの誰にでもある、って俺も言ったんだ。性癖っていうかさ、可愛いもんだろ。殴られないと気持ちよくなれない、とかじゃないんだし。胸をふにふにするくらい。』
竜樹の依頼なら二つ返事、ヴィフアートがお茶のカップを両手で包んできゅむきゅむと揉みながら。すす、とミルキーな中身を飲んだ。
T(竜樹)
『うん、可愛いもんだよねぇ。俺はね、小さい頃、養母のマリ•••ウ、ゥン!母の髪を、口でハミハミするのが、やめられなかったの。甘えたい時にね。そのせいか知らんけど、今でも疲れた時とか、癒されたいなぁ、って時、無意識に養ってる子供達の髪をサラサラ撫で撫でしてたりします。それから、その、え〜と、す、好きな女性の髪を唇で感じたいなぁ、って。チュッてしたいな!って、おもいます!何か髪が好きよ、俺は。あ〜照れる!恥ずかしい!』
ヴィフアート、無言で竜樹に頭を差し出す。くりくり、照れ隠しもあって盛んに撫でる竜樹である。嬉しそうに撫でられているヴィフアートことアー兄ちゃんは、ブレずに竜樹ラブだ。
B(バラン王兄)
『クックック、クク。T殿にそんな好みがあったとはね!そうだよなぁ、何となく、甘えたいっていうほんわりした気持ちは、幼い頃の触れ合いの記憶と、無関係ではないのかも。私だって勿論甘えたいので、婚約者に、甘えまくっている!音楽の話を聞いてもらったり、一緒に聴いたり、演奏を聴いて貰ったり、とにかく、私の好きな音楽の事を一緒に体験してくれる、これって凄く私が飢えていた事なんだ。成長過程で、家族からは、音楽好きなのだね、へー、くらいの平熱な感じだったのでねぇ。』
バラン王兄は身バレだろ、な話だが、この人が話すと音楽からは離れられないのだろう。やっぱし。
そして婚約者のパージュさん、ウンザリはしてないのだろうか。
M(マルグリット王妃)
『甘えたい。凄く分かりますわぁ。私も頑張って仕事したりするのって、自分のためにでもありますけど、誰かの為に、って所だって勿論、ありますわ。そして、だからこそ、問題が起これば矢継ぎ早に、あれが終わったらこれ!これが終わったらこっち!って•••たまには、本当に、疲れ切ってしまうんですの。ちゃんと信じられる人以外に弱味を見せては、侮られる。だけど、そんな時、あぁ、誰かが、背中を、ぽん、ぽん。撫で、撫で、してくれて。頑張ったね、良くやったね、良い子、良い子。•••ってしてくれないかしらねぇ〜、って痛切に思うんですのよ。夢想しますわ。寧ろ、想像して糧にしてますわ!自分で満たしてやらないと、本当、切羽詰まった状態に、なりかねないんですもの。そうして、だから勿論、私って、あったかい掌に、弱いんですの。』
うう、身につまされる。
バーニー君が呻いた。そしてこの仮面、どうしてウサ耳、付いているんだ。
世間では連休でしたのですね!
どうりで、アクセス増えた訳でした。
気に入ったら本作、読んでやってねえ。
あと1日、惜しみながらゆっくりされて下さい。
良き休日を!!
誤字報告も幾つかいただきました、ありがとうございます。
ポロポロりすがどんぐりを落とすように間違っとる。感謝です。
(^o^)




