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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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皆が眠っている時に


プシュー、と音がして、コクリコの腕から血圧計の圧が、ゆるゆる緩まっていく。

血圧、という概念を取り入れた時、どうやって測るか竜樹は困ったのだがーー血圧計の仕組みなんて知らないーースマホで調べに調べ、そして身体スキャナを作った時と同じように、魔法の力で血圧を感知させて、やっぱり元の世界と同じ仕組みではないけれど、きちっと測れる血圧計が出来上がったのである。

ちなみに、血圧とは、心臓から送り出される血液が、血管を押す圧力、の事である。


血圧そのものの概念は、医療従事者には、病状で脈拍が上がったり下がったりする事がいかにもだし、高血圧は自覚症状があまりないとはいえ、低血圧は立ちくらみ、めまいなどから始まる症状があったりもするので、竜樹が話せば、ああ!とすぐ分かってもらえた。

何故血圧の話をするか、というと、妊娠高血圧症候群、というものがあるからである。高血圧は、妊婦さんにとってもお腹の赤ちゃんにとっても、ヤバいのである。


パージュさんが説明する。

『血圧が高かった時、下げるお薬や予防法もあるし、知っていれば対処できます。今まで普通の血圧だった女性も、妊娠で高くなってしまう事が、あるんですって。血圧が高くなると、お腹の赤ちゃんが上手く育たなかったり、臓器に影響が出て、痙攣したり、重くなれば、お母さんの生命も危なくなる事があります。なるべく早く知って、赤ちゃんを守る為にも、血圧計も広めたいところですね。また、出産時に血圧が高くなってしまった時は、竜樹様のいた世界では、自然に分娩するのではなくて、お腹を切って産んだりもするそうです。安全に出産する為に、こちらでも、お産の医療、進めていきたいですね。コクリコおかあさんは、さて、どうでしょうか?』


『ちょっと上がってきてますけど、正常ですね。』

医師とお産婆さんが取り囲む中、お産部屋でベッドのコクリコお母さんは。

『お水、のみたい•••です。』


朝、5時。

うとうと痛みの間に寝て起きて、陣痛の間隔が2分とちょっと。

検証中の子供達は、まだ寝ているけど、お産はいよいよ、なのである。


「痙攣•••。」

ヴィーフは、ジッ、と画面を見る。耳を傾ける。

妻キャローレンは、妊娠高血圧だったのかもしれない。あの時、医師は、力を尽くしてくれたのだろうけれど•••。知っていれば。


目をグッと瞑る。


パッと開けば、画面の中では、コクリコが、うー、うー!と陣痛に呻いている。

無事に。

無事に、どうか無事に。


ヴィーフの隣では、マールが、祈る仕草で手を唇の前で組み、緊張を堪えている。


検証中の子供達の寝ている交流室では、うーうー言うコクリコの映像を、手に持つタブレットモニターで、竜樹が確認していた。そこだけほんわりと画面の明るさ。音も絞っているけれど、薄く流れている。


コクリコの父や兄、兄嫁も駆けつけて、その中でも父がお産部屋に入って、コクリコを元気づける。兄、兄嫁は別室でモニターを見ている。

貴族である父が、こうまで産室に入るのは、きっと異例であるけれど、赤ちゃんの父親に励まされる事などあり得ないコクリコであるから、どうか、慣例を破って寄り添って、と竜樹にもコクリコにも頼られて。しばしば妊娠中も、一緒に勉強をしたコクリコの父、ヴィオロ子爵ブレである。知れば知るほど、お産は奥深く、段々と一緒にお産を乗り越える気持ちが高まってきた。

今はコクリコに、コップにストローを入れてお水を飲ませてやって。何くれとなく手助けして。

ラフィネも寄り添って、お尻をマッサージしたりしている。流石にお尻をお父さんに押されるのは、コクリコもちょっと•••であるが、段々もう、この痛みがどうにかなるなら、何でもいいよ•••!になりつつある。

こんなに痛いのに、まだいきんじゃダメなのだ。


パチン、と目が覚めた。

もぞ、と交流室、布団がうごめく。

モゾモゾと竜樹の側に、ニリヤは目をコシコシ、起きて胡座の中に、とぼ、と近寄って座り込み、ふー、と背中を預けた。


『起きちゃった?ニリヤ。まだ寝てていいよ。』

『•••ウン。コクリコ、おかあさ、うー、うー、って。』


呻き声に、起きてしまったらしい。

眠いだろうに、竜樹の腕を引き寄せて、タブレット画面を近くに、見入って。

『いっぱい、いたいの?いたい、ね?』

『ウン。今ね、コクリコお母さんも、お腹の赤ちゃんも、出てきたいよー!って頑張ってるとこだよ。』

『ウン•••。』


ニリヤは寝ないらしい。

竜樹に抱っこで、布団をくしゃっと被せてもらっても、目を擦り擦り、モニター画面から目を離さない。

ジーっと見ていたが。


くふん。

くふ、くふ。グシュン。


鼻を鳴らす。

『どうしたどうした。辛くなっちゃった?』

『ウン。コクリコおかあさん、いたいね。うーって。かわいそう。うーって。かあさまが、ねんねのときと、おんなじおかお、してる。ぼく•••。』

『母様がねんねの時?ニリヤとねんねして、起きなくなっちゃった時の、お顔?』

『ウン•••ふう、うぇぇえ。』


ポロン。

ほっぺを涙が転がり落ちる。

ニリヤのお母さん、リュビ妃様が、堕胎薬を飲まされて、一緒に寝ていながら亡くなった時の顔と、今のコクリコの顔は似ているという。


『そかそか。辛いな。無理に見てなくても良いんだよ。ちょっと出るか。な。ししょうと気分転換だ。』

『グシュン。ウン。ふえ。』


腕に抱っこで、タブレットの画面を一時スリープにして、竜樹はニリヤを抱えて、よいよい、と廊下に出る。調理室へ向かうと、ゆっくり魔道具コンロでお湯を沸かし、粉ミルクにお砂糖を少し入れて、濃いめに2つ、作る。

出来上がったミルクを、2人して、ふーふー飲む。


『美味しい?』

『ウン。おいし。あかちゃんの、ミルク。ぼくあかちゃんじゃないけど、おいし。』

お砂糖も入れたからねぇ。


今日は更新おやすみしようかと思ったのですが、ちょっとだけ書いてみました。次回、産まれる、か?

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