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王子様を放送します  作者: 竹 美津
本編

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435/692

異議あり!

誤字報告ありがとうございます^_^

しんがりは、後ろだったよ。調べずに間違った記憶で書いた自分よ、ダメじゃん。教えていただけて、助かります!


バトルフィールドへ、神の眷属、レザンが、スッと立つ。

拳にはグローブ。傷しないから、良いよ、とヘッドギアは着けていない。だから、金の目光り、長い白のストレートの髪が、結んだ先で、風にはためくロープと同じ揺れ、ひゅるう、ゆるゆる、と靡いている。

耳はひこひこ、丸くふかふか。尻尾は短く、ズボンからピン!と立った。


対する相手は、リーダー選抜対戦の組み合わせの中で、最年少の青年。彼はレザンの襲撃に関わってはいないけれど、その兄が。だが、兄は商売でやむなく今、郷を離れているのだそうで、代理で仁義を果たす、と律儀に立候補したのだ。兄は悔しさ、いかばかりか。


トン、トン、と飛んで、調子を整えていた青年は、茶クマ獣人。

「レザン兄ちゃん。俺の兄ちゃんが、ごめんな。今日はよろしく、お願いします。」

ペコリ、頭を下げた。

うん、とレザンは頷いて。

《対戦は本気でだぞ。受け止めてやる!》

ニコニコっと不敵に笑った。

「•••うん!」

蟠りは、拳で散らせ!


カーン!対戦、開始!


ひゅ、ひゅん!と茶クマ青年のパンチが風を斬る。ゆる、ゆる、シュタタ、シュタ、と避けて、レザンは身体を打たせない。腕でブロック、びくともしない。

はあ、はあ、と息を荒く攻撃ラッシュ、けれども全く堪えないままに。

予備動作なしに、レザンが片手で。


ヒュ


ピタ。

鼻先で止まったパンチは、もう少し肘を伸ばせば、顔面にストレート。

一拍遅れて、パンチが起こした風がふうわり落ち着き、茶クマ青年の眦の横の髪を、ふわん、と落とした。


つつう。 ぽたん。

顎の先から汗が落ちた。

ぶるるるん!と震えて。

ストン、と腰も落ちた。


「立てない?立てないね。レザンの勝利!」


ぅおおおおお〜!!!


「想像以上に強いです、眷属レザン!絶対的強者を前に、胸を借りた若者ジュノン、良くやったぞ!先頭切って、道を作ったジュノンに、盛大な拍手を!!」


わーっ!!


正に神業とでも言うべき、一発のパンチに、皆、ふぉあああ!と目をかっぴらく。

レザンはそれから、直接レザンを襲った者には遠慮なく一撃を入れた。す、シュシュ、シュタタ!と踊るように避けては、最後に1発。ズバァアアン!!と吹っ飛ぶそれは、時に相手が気絶するほどで、力加減をそりゃもう頑張ってるのだろう。弱くするのに、だ。


重く大きな青年気絶者を運べるのは、レザンしかいなくて。

ペチペチ頬を打って、起こして、うう、と唸って目をパチリと開けた挑戦者は、目の前でレザンが、大丈夫怪我していないな、とホッとしてから、片腕を上げて勝ちを宣言するのを見た。

殴られて、何だか笑ってる奴らは、ちょっとスッキリした顔で、いてて、と立ち上がってはレザンに握手を求めて。


何だか爽やかではないか!


次代のリーダー、言い出しっぺのリグレス戦は、そりゃあもう盛り上がった。レザンが中々、一発を決めないのである。

ちょいと手招き。右に左に、揺さぶり。

レザンを追って、追って、追いかけて、はあ、はあ、何だかガクガクになった頃、見本はこうだとばかりに、ズバァン!!と。

リグレスは、顎に重たい拳をもらって、今日一番に吹っ飛んだ。


ピヨピヨピヨ


クラクラした頭を振っていると、アルトがレザンの勝ち名乗りを上げて、片腕を持ち上げて讃えるのが目に入った。

汗もかいてやしねえ。


あの襲撃がなければ、レザンは対戦をして、リグレスにきっと勝っただろう。そして、クマの郷をリーダーとして、エタニテとまとめて、それを俺たちが補助してーー。

普通に、真っ当にやりゃあ良かった。それだけで上手くいったんだ。


リグレスだって、レザンに、力及ばずの嫉妬があったんだ。


とほ、と笑って、腹に落ちてきた自分のやらかしの責任をーーー。


《リーダー選抜対戦に、俺は勝った!これからクマの郷のリーダーは、この俺、レザンが担うとする!》


え?


パチパチパチ!とエタニテ母ちゃんが拍手して、ドワ!と歓声が沸いた。王族席にいる、妹イリキュートも、目をまん丸く。


「おい!待ってくれよ、それじゃあ、あんまり•••!」

惨めじゃないか。自分のやった事の、後始末さえ。

フラフラと立ち上がったリグレスの腕を、レザンはガシ!と握り。


《俺はリーダー。だから指名する。普段、パシフィストの竜樹様の下、子供達の父ちゃん母ちゃんをやってる俺らの代理として、リグレスを置く!俺もエタニテも、何かクマの郷にあったれば、転移で直ぐにも駆けつける。普段の事はリグレスとイリキュートに任せる。》


うん、うん、とニッコリのエタニテ母ちゃんに、お膝のデュランは、そうなの?と父ちゃん母ちゃんをキョロ、と見ていた。


竜樹が、スックと立ち上がって。

「異議あり!」


え、え、と流されるままに、状況を把握しきれないリグレス、イリキュート、クマの郷の者達は、お口をあんぐりしたまま、異議を申し立てる竜樹を見た。

戦いの司会のアルトは、またやってくれるね!ニヒ!と竜樹の言葉を、ワクワク待っている。


「何の罰もなしに、過去のやらかしが、レザン父ちゃんとエタニテ母ちゃんの助けで許される。彼らが許しても、俺は許せない!レザン父ちゃんも、エタニテ母ちゃんも、小さな息子デュランを残して、一度死んでいるんだ!遺していかなければならなかった無念、遺されてその小さな背に負った苦しみを、リグレス、イリキュート、2人は本当に分かっているのか!?」


ぐっ、と唇を噛む。


「リグレス、イリキュート。こちらに来なさい。」

こっちこっち、とバトルフィールドの真ん中に、すたた、と竜樹が出て呼ぶ。

イリキュートが、真っ青な顔で、ふらふらと出てくる。リグレスも、断罪、とぼとぼと。


「2人に罰を言い渡します。」

「•••はい。」

「はい。」


クマの郷の皆が、しん、と見守る。

なんて事。だが、言われてみれば、リーダーをリグレスがやったとて、イリキュートが女衆の纏め役を頑張ってやったとしたって、それが償いになろうか。皆にぬくぬくと守られて。不平不満を言いながら、聞いてももらえて。


「エタニテ母ちゃんは、クマの郷で出産していれば、死ぬ事はなかった。ほっとくとお腹の中の赤ちゃんが、大きくなり過ぎて難産になる、っていう、大型獣人特有のお産の特徴があった。そしてクマの郷ではそれに対するケア、早めの出産を促す薬湯、お産婆さんへの相談で、出産時期の見極めなど、大事な伝え継がれるべき、お産の情報があったんだ。男性のクマ獣人の方も、どうか知っておいて欲しい。」


これから、転移魔法陣で、遠くで妻が出産する事が、出てくるだろう。


「里帰り出産できれば、それにこしたことはない。その知識も広めたい。けれど、動かせない妊婦さんも、都合で帰れない事も、きっとある。そんな時、対策は必要だろう。ーーーどうだい?この2人には、俺の手足となってもらって。」


え。


「約1年間、獣人の郷を巡ってもらって、獣人特有のお産の特徴を、色々と調べて聞き取り調査してもらいたい。丁度良いじゃないか。親切に、皆が、リーダー教育して教えてくれるその手を、何だかあちこち引っ張られで、煩わしく思ってるのだって聞いたよ。その手がどんなに有難いか、郷を出たレザン、エタニテの兄ちゃん姉ちゃんが他所の土地でどれだけ苦労したもんか。」


その身で、しみじみと、味わってらっしゃい!


はい、とグローブを抜き取られて手渡されたのは、2つ折の携帯電話。リグレスと、イリキュートに、1つずつ。

「何かあればそれで連絡を。レザン父ちゃんとエタニテ母ちゃんにも持たせるし、クマの郷のクレヴィリーダーとお母さんのミュリエルさんにも持たせましょう。勿論俺にも連絡が取れます。早々魔石エネルギー切れはしないから、毎日報告するんだよ。ワイルドウルフを巡ってもらうけど、一つ注意点が。」


竜樹は、穏やかで、ショボショボ目の地味顔で、だけど侮れない、厳しく優しい笑顔で。

ぼーっ、と聞いているリグレスとイリキュートに。


「イリキュートが妊娠したなら、聞き取りが途中でも、クマの郷に戻っていらっしゃい。その身でお産を体験するという事も、大切な人生の学びで。大切な命を育む、お父さんとお母さんの、かけがえのない喜びなのだって知ったら良い。レザン父ちゃんとエタニテ母ちゃんが、何に代えても守りたかった息子、デュランへの気持ちを知る事。順番にやっていけばいいよ。妊娠出産も、必ずじゃない。1年過ぎてから、ゆっくりでも。でも、それくらいしないと、中途半端な君たちに、大事なクマの郷のリーダー代理なんて、任せられないナァ。ねえ?そうでしょう、クマの郷の皆さん!!」


大人になるには、通過儀礼が必要だ。

試練を乗り越えて、大人になって、帰ってらっしゃい!


う、う、うわあああああ!!!

歓声は渦になって。

行ってこい、行ってこい!

帰ってこいよ!クマの郷へ!

待ってるからね!

温かい声援に、レザン父ちゃんと、そしてバトルフィールドに出て来たエタニテ母ちゃんが、リグレスとイリキュートの背中をとんとん撫でる。笑顔で。笑顔で。

リグレスは男泣きに泣いた。絶対、絶対に、聞き取りの旅を成功させて、戻ってくると。


《イリキュート。身体に気をつけて。》

「お姉ちゃん•••!」

手に握っていた、どんぐりのブローチを、震えながら、手渡す。

ん?とエタニテは首を傾げて受け取ると。


《懐かしい!すてき!》

あの、幼い日のように、陽にかざして、ピカピカのどんぐり。


《イリキュート、器用。お話聞いたら、皆に、あげたらいいワよ!》

喜んでもらえるワ。


感極まったイリキュートは、ぐぶっ、と呻く。

めしゃめしゃに泣きながら。

「お、おねえちゃ、ごめなさ!うえっ、ひっく、うえええん!ごめんなさい!!」


エタニテは、ゆるりゆるりと、妹の背中を。カカカと笑いながら、撫でてやったのだ。



「さてねえ。リーダー選抜対戦が、呆気なく終わってしまって、時間が相当余った訳だけど。」

どうしよう。

テレビクルーと集まって、思案投首。

あったよね、確かこんな試合。

試合直後にノックダウンで勝敗が決まっちゃって、それ以降の番組が、何かとっても、大変になってたやつ。


「どうしましょうね、竜樹様。」

うむ。

「チリ魔法院長を転移で呼びましょう。ぽん太君に泣いてもらいます。こんな時には、ボクシング漫画の金字塔、明日に向かって主人公が真っ白に燃え尽きるやつ、放映しちゃおう。」

確か映画が2本あったよな。それだけやれば、間が持つだろう。クマの郷でスクリーン作って流しつつ、テレビでも放映。大勢に見せた時の、いいねの消費も実験しときたいし。


ブレイブ王様とラーヴ王妃様、王子たちも大丈夫〜?と寄ってきた。


「お見事な采配でした。我がワイルドウルフとしても、レザン父ちゃんとエタニテ母ちゃんが郷のリーダーになるなんて、頼もしいですし。」

ブレイブ王様が、ふふ、と笑う。

「ええ、ええ。それに、素直に謝れて、和解もできて良かったですわ。若い2人には、かけがえのない学びとなりましょう。」

ラーヴ王妃はもらい泣きである。


「ぼくしんぐ、しゅっしゅっ!」

ステップして、真似っこニリヤである。

「ガード!パーンチ!」

ネクターも、ノリノリだ。

「君たち。これから、アニメを放送するんだけど、きっと君たちみたいな、なりきりボクサーが大量に発生するからね。危ないから、ヘッドギアとかグローブしてない時に、ボクシングしちゃいけませんよ。やりたかったら、ちゃんと、やらせてあげるから。ししょうの世界では、プロのボクサーは、その拳が武器と同じとみなされて、喧嘩したら捕まっちゃうくらいに、凄いスポーツなんだぞ。」

へええぇ〜!!!

オランネージュとファング、アルディも含めて、お口開けてびっくりの王子達である。

「ボクシングの物語を放送するのだね?それは良いね、私も面白く観戦していたのだけど、いかんせんレザン父ちゃんが強すぎて、もっと見たい!本気の試合を!という不満感が残ってね。」


そう言っていたブレイブ王様が、にわかにボクシングにはまるのは、チリが来て放送をし始めた午後直ぐのこと。瞬きも少なく、目ぇかっピラいて、生死を、生き様をかけた青春のボクシング映画に没頭。

「ボクシングジムと試合場を建築するとしよう!」


勿論、クマ獣人達も、にわかボクサーになったのは、言うまでもなく。

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